ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

44 / 73
30話 そう思う

 

 場所は戻り、地下の実験場。

 カメラアイをむき出しにし、雰囲気の変わったゴッドエンペラーを正面に、イッキ達はその場を動けずに居た。

 ただ1人、ヘベレケ博士の高笑いだけが実験場に響き渡る。

 

 

「がっはははははーっっ! 遂にやった! やってやったぞ!!」

 

 

 小柄な身体でぴょんぴょんと跳ねては喜びを表す博士。

 その目の前に立つゴッドエンペラーは、1機。

 

 

「……ドコへ……ユkう?」

 

 

 かくり、と首を傾げると背中の翅がふるふると震える。

 パーツの隅々にまで、翅と同じ色の薄縁色が浸透しており、メタビーは思わず後ずさった。

 

 

「くっ……なんだ、コイツ!?」

 

「博士、何を……!」

 

「なに、懇切丁寧に説明はしてやるわい」

 

 

 ゴッドエンペラーの後ろから、ヘベレケ博士が声を鳴らす。

 ぎしりと義手を動かし、その人差し指を立てて。

 

 

「知っておるかの? メダロットの情報処理装置である六角貨幣石……メダルには能力とは別に、確かな『位』が存在しておる。コヤツのメダルは、その『上位(レア)メダル』の内でも最も力を持つ個体なんじゃい!」

 

「レア……メダル?」

 

「左様。人間で言う長兄みたいなもんじゃ。流石に母となるメダルは制御しきれんからの。……このメダルにも、エネルギーを取り込んで『増える』機能 ―― 今はパーツの修復に使われておる『脱皮(スラフ)システム』が備わっておる。他のメダロットの数倍の力での。母の個性を最も受け継いだと言って良いじゃろう。只の玩具では持て余しかねないその力も、リミッターを解放された今ならば、最大限に発揮しうる」

 

 

 母と子、上位メダル。

 スラフシステム、増える機能。

 イッキにとって、何もかもが聞いた事のない事象ばかりである。

 困惑したイッキの様子を見て、ヘベレケ博士は不満そうに鼻を鳴らした。

 

 

「ふん、アキハバラめ。使い走りにした子ども等に、この程度の事も伝えておらんのか? あるいはあのムラサメの娘が役目を担っていたのやも知れんが……」

 

 

 はき捨てるように言葉を残し、ヘベレケ博士は後退する。

 

 

「ドコへ……ソウ。ソウ、dあ」

 

 

 替わりに、ゴッドエンペラーがずいっと前に出てきた。

 薄暗い光をまとって、一回り大きくなったかの様な各パーツ。威圧感は半端では無い。

 

 

「その機体の中に入れられておるのは、かつてのロボロボ団の首魁が持っていたカブトメダルを複製し……ワシが手を加えて基礎設計からメダリアシステムを組み込んだ、上位メダル。子どもにも判りやすく纏めれば、要は、『最もスラフシステムを効率的に扱える個体』じゃよ」

 

「―― ワタシhあヤクソク、ヲ、ワスレtえイナイ」

 

「テンリョウ・イッキよ。お主のメダロットも同じカブトメダルじゃが……さあ、相手になるかの!?

 

 

 その言葉を最後に、ヘベレケ博士は部屋の奥へ。フユーンでの例を見ても、ロボトルは得意ではないようだ。元より任せるつもりであったに違いない。

 脚部のキャタピラを回して、ゴッドエンペラー……「ラスト」が距離を詰める。

 

 

「……く」

 

 

 イッキは後ずさる。

 何をどうするという策があった訳ではない。ただ、まともにロボトルをして決着がつくものなのか ―― 判断しかねたのである。

 

 

「ワレラ、母wお同ジクスル子ラ」

 

 

 一歩。

 

 

「ソウdあ。ダガ、ワタシhあ忘レテイナイ。ツマリ、シッテイル」

 

 

 もう一歩。

 

 

「……。……よし」

 

 

 中央部から僅かに押し込まれた場所で、一瞬だけ後ろを振り返り、いよいよイッキは立ち止まる。

 空間的な余裕はまだまだあった。策が浮かんだわけでもない。

 それでも、覚悟だけは決まった。

 

 

「……やろう、メタビー! ベアー! スパイダ!」

 

 

 少女を背に、精一杯の見栄を張って少年は叫んだ。踏み留まる理由としては、これだけでも十分に過ぎたのだ。

 叫びに応え、目の前に3体のメダロット達が並ぶ。

 

 

「おうよ、勿論だぜ! 理屈はともかくこの出力だ。どうせコイツを止めなきゃ、この基地ごと潰れちまうだろうからな!」

 

「やってやるクマー!」

 

「なせばなるクモー!」

 

 

 仕切りなおしの間に此方のパーツは復活している。ゴッドエンペラーのパーツも、頭のカメラアイだけがむき出しのままだが、その他の全てが新品同然にまで修復されていた。

 双方、戦闘の体勢は整っている。

 ならば。

 

 

「―― ネムrい続ケヨ、兄弟!」

 

「―― 知るか! オレらはまだ、イッキと一緒にロボトルしてーんだよ!!」

 

「ロボトルゥっ……ファおおっっ!? ……っふぅ」

 

 

 再開と同時に、メタビーとラストはぶつかり合った。

 ビームにも見えるエネルギーの集合体が、それぞれ頭上から撃ち放たれる。衝撃波が荒れ狂い、イッキは思わず顔を覆う。因みにミスターうるちが衝撃波に飛ばされた破片を頭に受けて気絶した。カリンが様子を確認しに行ってくれているのでそちらは任せておいて。

 顔を伏せたのも一瞬の事。すぐさま顔を上げ、メダロッチを構えて叫ぶ。

 

 

「いつもの通り、援護と支援だ!」

 

「クマー!」

 

「クモー!」

 

 

 突貫したメタビーを援護するべく、残る2体が回り込む。

 初っ端メダフォースの余波を楯に、メタビーはラストへと接近戦を仕掛けていた。

 

 

「だらぁっ!」

 

「―― オオッ!」

 

「うお!?」

 

 

 オチツカーで相手を蹴り上げ……ラストは僅かに距離が離れた隙を逃さず、足元にミサイルをばら撒く事によって強引に距離をこじ開ける。

 ラストは煙が晴れる前にその中から飛び出し、距離を取った。自分の放ったミサイルによって脚部パーツにダメージが入っている筈だが、纏われた薄縁の光によってすぐさま傷は見えなくなってしまう。どうやら回復は瞬時に行えるらしい。

 メタビーが接近戦を仕掛けたのは、武器の充填放熱の差があるからだ。だがしかし、こうも離れてしまえば火力的にはゴッドエンペラーの間合い。

 ただ、その隙はベアーが埋める。

 

 

「―― 喰ラエ!!」

 

「クマママーーっ!

 

 

 体勢を崩しながらも放たれたラストの一斉射撃を、後ろから飛び込んで勢いをつけて受け止める。

 両手の楯が凄まじいエネルギー波によって溶解してゆく。

 その後ろから、爆音と閃光が止まぬまま、スパイダが接近する。

 両手両脚をクモの様に開くと、びしり。

 

 

「メダフォース増加だクモ!!」

 

「―― !?」

 

 

 電子的な色合いのクモの足が広がる。ラストの背に回り、両手を羽交い絞めにしながら、スパイダはメダフォースを発動させたのだ。

 クモの糸のような光がメタビーとベアーに繋がり、それぞれ枯渇させられていたエネルギーを充填させてゆく。

 

 

「クマッ! 防御は任せてメタビーは突き進むクマ!!」

 

「頼んだぜ!」

 

 

 溶けかけた両腕を構えるベアーの援護を受けて、メタビーは再びラストへと接近を始める。

 だが、メタビーとラストは両者共に射撃機体。接近するまでの距離こそが勝負である。

 そして何より、ラストはヘベレケ博士によって予め充填されたメダフォースを、手足の如く使いこなしていた。

 

 

「―― aaaッッ!!」

 

「クモッ!?」

 

 

 羽交い絞めをしていたのが仇となった。

 ラストが背の翅を動かすと、スパイダは凄まじい勢いで吹飛ばされ、壁に激突する。

 

 

「―― ソコdあ!」

 

 

 解放されたラストは、すぐさま射撃の充填に入る。

 熱線と爆風とが吹き荒れた。中距離からミサイルとレーザーによる威嚇射撃を挟み、充填放熱を頭のブレイクで上手く埋めてくる。

 

 

「くっそ!!」

 

「回り込むぞメタビー!」

 

 

 イッキの指示に「おう!」と返し、メタビーがベアーの背中に掴まる。車両型脚部の推進力によって牽引されたメタビーは、ラストの射撃圏内から急速に離脱した。

 正面から突破するとすれば、これら火器をメタビーの「一斉射撃」で黙らせる事は可能であろう。

 ただ、右腕が「フレクサーソード」になっている分、全射撃を集中させる「一斉射撃」の撃ち合いではゴッドエンペラーの側に分がある。そこへメダフォースの扱いに長けているラストの技量が重なっては、援護機体がいたとしても、打ち勝てるかどうか……という判断だった。

 射線を抜けて、左側。時間が掛かった分、放熱を終えたラストが、照準を定めて待ち構えている。

 とはいえメタビーも、スパイダによって増強されたメダフォースをこの距離まで温存することが出来た。ベアーも、援護が可能な分の装甲を残している。

 

 煙の山を貫いて。

 両者は、正面から激突した。

 

 

「「―― 一斉射撃!!」」

 

 

 ラストの薄翅が振動し、サイプラシウムの過剰活性によって身体が僅かに浮き上がる。相手を見下ろす位置(ぎょくざ)から、正しく皇帝の姿で、全パーツからエネルギーを放出する。

 メタビーの背部に薄翅がぶるりと開き、左手と頭から鋭くエネルギーを射出した。ベアーを追い越し、2倍以上は太い相手のエネルギー波と、衝突。

 

 

「―― 負けるな、メタビー!」

 

「頑張って下さい、メタビーさん!!」

 

 

 メダフォースがぶつかり合う衝撃の中、イッキはメダロッチへ向けて、カリンは虚空へ向けて声を発した。

 だが、ラストの全霊が込められた「一斉射撃」は見た目からして段違いのエネルギー量である。メタビーの放った「一斉射撃」は徐々に押され始め、飲み込まれ。

 

 

「―― 防御は任せてと、言ってあるクマよッ!!」

 

 

 余った粒子は、ベアーが纏めて受け止めた。

 両腕の楯が粉々に砕け、ティンペットがむき出しになり、脚部の一部が損傷する。

 が、その後ろから飛び出したメタビーには傷1つついていない。

 

 

「止メタ……!? 直系デスラナイ、薄メラレタ、只ノ子らgあ……」

 

「そりゃあそうだ!!」

 

 

 驚愕の言葉を漏らすラストの目と鼻の先に、メタビーの姿があった。

 言葉を放ちながら、「オチツカー」で蹴り上げる。ラストは放熱を終えていない右手でそれを受け止め、間近ににらみ合う。

 

 

「オレらは同じメダロットだろうが! ものを壊す兵器なんかじゃねえ! メダフォースの1つや2つ、受け止められて何がおかしい!!」

 

「……!」

 

 

 ヘベレケ博士の言葉を踏まえたメタビーの言葉に、ラストは僅かにたじろぎながら。

 

 

「……シカシ、ワタシhア、憶エテイルノダ。ワタシrあ子ドモハ、眠リ続ケル使命ガアル……!」

 

「そりゃあお前さんにも理由があるんだろうよ、けどな!」

 

 

 メタビーが押していく。

 ラストの左腕から放たれたレーザーを、あろうことか、メダフォースの放熱板として利用する事によりビーム化した、右手の大爪で切り裂いて。

 

 

「オレらとイッキも! カリンとクイックシルバも! コウジとアリカも……ユウダチだって! 出逢って悪かったとは思ってねえぞ!」

 

「ッ……悪イ、悪クナイトイウ問題デhあナイ……!!」

 

 

 ラストの無機質な青のカメラアイがぎょろりと唸る。

 無機質だが、しかし、今そのカメラアイには確かな感情が込められているのがひしひしと感じられた。

 向かい合うメタビーの、黒地に縁のコミュニケーションモニターが、にやりと釣りあがる。

 

 

「へっ、やっと面白くなってきたじゃねえか!!」

 

「ダマレッ!」

 

「っ! 装甲は脚部のが残ってるぞ、メタビー!!」

 

「サンキューだイッキ!!」

 

 

 装甲値の残った部分を防御に回す。

 直近からの重力射撃を、勢いを増す前に振り上げた右脚で受け止め、フレクサーソードで右腕を握りつぶし。

 

 

「ッグ……ソレデmおワレラハ! 増エル使命ニ従ウ訳ニハイカヌノdあ!」

 

「重要なのはそこじゃねえ! 増えるだの増えねえだの!! それを無理やりってのが間違いだろうが!!」

 

「悠長ナ! ソrえデハ遅イッッ!!」

 

「判んねぇだろ!!」

 

 

 ラストの放ったミサイルを左腕を犠牲にして防御、フレクサーソードでそちらも破壊。再度のブレイク射撃を右腕を犠牲にして防御する。

 傷を覆うべく広がってゆくラストの翅は、唸るメタビーの翅が阻害し。

 断線したマッスルチューブを晒したまま、素の骨組み、ティンペットのまま掴み合う。

 

 

「違ウ! 遅イッタラ遅インdあ!」

 

「お前は俺らの事、知らねえのに!」

 

「オマエダッテ、外nお脅威ナド知ラヌ癖ニィ!!」

 

「知らねえけど、それならこれから知りゃあいい!」

 

「ソレgあ! ドレダケ! 大変ナ事カッ!」

 

「だとしても暴れて良い理由にはならねえ!」

 

「眠rい続ケルノガ最善ナノダッ! ワタシラ兄弟hあ!!」

 

「一緒に居たい奴らだって居んだ! 自由にさせろよ!!」

 

 

 まるで子供の喧嘩の様相だが、威力が違う。

 2機がぶつかりあうその度に豪風が吹き荒れる。

 

 

「オ気楽ナ奴mえッッ!!」

 

「るせえマザコンッッ!!」

 

 

 両腕を失い。

 ラストが大きく背を逸らす。

 メタビーが大きく背を逸らす。

 互いに頭を相手に向けて、思い切り振り下ろした。

 

 

 ―― ガッッツゥゥンッ!!

 

 

 頭突きの応酬。

 謎の力場がぶつかり合い。

 べこりという鈍い音と共に、仰け反ったのは、ラストの側だった。

 

 

「ッグォォッ!?」

 

「……っ馬鹿な!? ただのお遊びではなく、心操術としてのメダフォースのぶつかり合いで、ラストが負けるなど……!?」

 

 

 後ろでは、ヘベレケ博士が驚愕を顕にするも。

 ラストの凹んだ頭部からアンテナが飛び散り、ジャイロが狂う。

 平衡感覚を無くし、たたらを踏んでよろけ、薄羽が散り散りになってゆく。

 

 

「今だメタビー! 残弾2! 反応弾だ!!」

 

 

 イッキの指示に素早く、メタビーが両腕を腰に着け、僅かに頭を下げる。

 砲塔が水平に。カブトムシの二股角から2本 ―― ミサイルが飛び出し、ラストの胴体を貫いた。

 傾くラストに向かって、メタビーが叫ぶ。

 

 

「―― 上手くやってみせる! オレらは!! オマエだって!!」

 

 

 立ち昇る爆炎が、地下研究室を照らし出す。

 轟く音をもってロボトルの決着を告げた。

 

 





・決着
 メダロットのお約束としてラスボスは「反射」すれば良いのに……とは、言ってはいけない。
 だって、4の連戦はそれだけじゃ駄目ですものね。
 ……でもグレインはタイムアタックを反射しましたよね。やっぱり反射で良いのに。

・メダフォース
 何がずるいって、ラスボス戦のゴッドエンペラーは始めからメダフォースチャージマックスなんですよね。その癖こっちは未チャージですし。

・ビーム化した、右手の大爪
 新世紀メダロットより「ビームソード」。メダフォースが充填されているほど威力が上がる攻撃です。

・メダフォースのぶつかり合い
 イメージはビームサーベルが鍔ぜり合う感じのアレでしょうね。確実に。
 もしくは殴り合い宇宙。

・頭突きの応酬
 お前ら射撃メダロットじゃねえ(苦笑)!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。