ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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 今回更新分で、メダロット2編(イッキ編)は終了となります。
 次の33話も引き続きご覧くだされば嬉しいことこの上なき、なのです。


32話 集束して収束、そして終息

 

 ロボロボ団の悪事、そしてメダロットの暴走に端を発する一連の事態は、こうして幕を閉じた。

 事態の解決は、直接はイッキの手柄とならず、セレクト隊の案件に預かられることとなった。元隊長であったアワモリの様々な私的汚職が判明し、その存在意義を問われたセレクト隊の株を回復するための一手段として利用されるという事だ。とはいえ、替わりに隊長職についたトックリの人と柄から、イッキが学生を終える頃には世間にも発表される旨が予定されている。

 そもそも事件の舞台周辺ではイッキの活動は知れ渡っているため、実は、早くもプロや日本代表としての活動に誘われていた。イッキとしては学生が終わるまでは……と漠然と考えてはいるものの、メダリンクなどを活用した覆面メダロッターとしての活動ならばその点についても配慮が出来るため、一考の余地はあった。

 何よりメタビーが乗り気である。メダロット当人が乗り気ならば無理に断ることは無いか……と、未来の話しながら肯定側に傾いている。

 

 ヘベレケ博士については、その後セレクト隊につかまった……という事になっているらしい。

 「らしい」というのも、メダロット博士から後の経緯を大雑把に尋ねたところ「高度に政治的な判断」とやらがなされ、ヘベレケ博士の身柄それ自体は自由だ、ということを聞いたからである。彼が今誰と、何処に居るのかは定かではないが……いずれにせよ、これ以上の事件が無い事を祈るばかりである。

 

 一応ながらの報告に。カリンとの仲も進展した。

 コウジどころか両親からも公認の仲となり、今では毎日の様に顔を合わせている。花園学園のカリンちゃんファンクラブからは血涙のレーザービームを集中砲火され、ギンジョウ小学校に実は在ったちょんまげファンからも嗚咽の声が漏れていたりするのは全くの余談。

 それだけにマルガリータの例のお礼が尾を引く気がしているが、それについては事件の後、具体的に言えばフユーンで、既に上位に嬉しく上書きされているのでイッキ的には心配ない。カリンもどちらかと言えばナエの様な包容力がある方なので、特に気にしてはいなかった様子だ。

 とはいえマルガリータとも、妹分として、現代と行き来する手段を得てたまにロボトルをしていたりする。彼女は最近、正式に王女となったようだ。プース・カフェ共々、性質は変わらず。じいやを困らせているのは言うまでもない。

 

 ヒカルとナエは相変わらず。

 ロボロボ団の事件が少なくなると同時に、怪盗レトルト、レトルトレディとしての活躍も息を潜めたが、相変わらず仲の良さそうな日々を送っている。カリンの家に寄った後などは、同じアパートから出てくるのをいつも見かける。聞くところヒカルとそのメダロットもメダロット社でテスターを務めているらしいので、イッキもその内にロボトルをする機会があるだろうか、と楽しみにはしていたり。

 

 暴走メダロットの件が収束し、フユーンの観光地化も進み、世間はいつもの日常を取り戻した。

 すると、メダロット専門デパート「メダロッターズ」から、「パーツンラリー」なる企画が開催されていた。

 新作パーツやロボトル規定(レギュレーション)内に改修されたゴッドエンペラーのパーツまでが品として提出されたその企画には、イッキやメタビーも参加し、見事に優勝を飾った。シラタマさんの暴走はあったものの、いくらゴッドエンペラーとて改修後。加えて中身(メダル)が違うので全く問題にならず鎧袖一触。事件にすらならず解決と相成った。

 この事件を通して、イッキはメダリンクの順位も上げた。本気のコウジにも辛うじて勝ち越し、現在は日本地区1位。これからはアジア地区にランクを広げて、上位を狙っていくつもりだ。

 

 変わらず傍に居てくれるメタビーやカリン。幼馴染としてのアリカ。ライバルとしてのコウジ。近所の仲の良い年長者としてのヒカルとナエ。メダロット博士からは新型やメダロットについての講義を受ける。

 いつもの、日常と呼べる日々だった。

 

 しかしそんなイッキの周囲にも、着実に変化は訪れる。

 

 

「―― 本当に行くの? ユウダチ」

 

「はいです。前年の夏休みを通して、私の本分は研究者にあるのだと、改めて知ることが出来ましたからです!」

 

 

 年が明けて、イッキも学年をあがろうかというこの時期に、ユウダチは転校の日を迎えていた。

 現在地であるメダロポリスの空港には、ユウダチの友人であるイッキ、カリン、コウジ、アリカの4名が集まっていた。他にもヒカルとナエもこの場に顔を出している。

 

 

「ヘブンズゲートか。こりゃまた遠いなぁ……」

 

「ふふ。ですがヒカルさん、近々ロボトルの世界大会……メダリンピックなるものが開催される予定で、ヘブンズゲートにある学校も学童部門の参加機関として登録をしていたはずですよ。もしかしたら、イッキ君達なら再会が近いかもしれませんね?」

 

「そうなのです!? 流石はナエ姉さま、情報が早い。ふーむ……わたしも、向こうでもロボトルは続けるつもりなのです!」

 

 

 むんと腕を捲くる少女に、ヒカルとナエが笑いかける。

 少女が転校する運びになったその原因は、メダロット社におけるゴタゴタだった。メダロット社は長年かけて作り上げた巨大な天空都市「ヘブンズゲート」を遂に稼動させ、宇宙開発へと乗り出す旨を先日の記者会見で発表。それに乗じて、ヘブンズゲートへメダロット本社を移設するのだそうだ。

 これを期に、ユウダチの実家……ムラサメ家が運営する「ロボトルリサーチ社」が、メダロット社と合同で新たな計画を打ち出した。重役を務めるユウダチの兄が、宇宙テーマパークとして「クラスター計画」なるものを始動するのである。

 メダロット社の一員として頭を働かせるユウダチも例外ではない。彼女が所属していた部門における研究成果である「メダチェンジ」などは、特に宇宙におけるメダロットの稼動を念頭においているため、兄の仲間として妹たるユウダチも計画に参加をする事を決めたらしい。

 そのため、彼女は本日をもって、メダロポリスからヘブンズゲートへ移住する。花園学園からも転校する運びとなっているのである。

 

 

「サイプラシウムを上手く使えば、半永久的な推進剤として利用できることが照明されたのです。NAVIシステムについてもレイニーと改良を続けて行きたいですし、キリカの遊び相手にもなってあげたいです。あ、そうそう! isocaとの調整もしたいですし、先日鹵獲されたプーパシリーズの解析も待っていますです!!」

 

 

 ユウダチは指折り数え、楽しそうに、次々と予定をあげてゆく。

 専門的な語句を空気を読まずに連呼するその様は、ユウダチの奔放な気性を表しているかのような輝きに満ちていた。勿論、その眼はどろりとしたままではあるが。

 

 

「―― なので、頑張ろうと思います。ヒカル(あに)さま、ナエ姉さま。お世話になりました! イッキ、コウジ。アリカに……カリン! 貴方達と過ごせた時間は、とーーっっっても! 楽しかったのです!!」

 

 

 カリンの親友である彼女が居なくなる訳ではない。彼女がイッキ達の友人でなくなる訳でもない。距離が離れるだけだ。

 しかしただ距離が離れるという一時が、人の縁を薄めることも多々あるのが世の中というものである。ただでさえ彼女の行く先は宇宙なのだから。

 楽しげに笑うユウダチを見ながら、イッキがそんなことを考えてしまうのも仕方が無い事だろう。

 

 

「イッキ。わたしが遠征を決められたのは、貴方のおかげでもあるです」

 

 

 そんな思考を呼んだかのように、ユウダチはイッキへと声を掛けていた。

 思わず目を見開きながらも、イッキは尋ねる。

 

 

「どういう事?」

 

「えーとですね。率直に言えば、カリンの体調が心配だったんです。コウジはちょっと頼りなかったんですが、イッキになら任せることが出来そうだと思うです」

 

「おいおい。……確かにまぁ、オレが頼りなかったのは認めるけどよ」

 

「あはは! まぁ、コウジもその内にメダリンク回線を使用したロボトルランキングを、アジア地域枠に昇格するですね? イッキもですが……そうなれば、わたしやシデンあにぃとの対戦も間近です。いずれまた、という事なのですっ!!」

 

『その時には全力を尽くす事を約束しよう』

 

 

 ユウダチの本来の主役機、ヨウハクがメダロッチの中から声を挟んだ。エイシイストの時とは違う声音に、若干の差異は感じるものの。とはいえ向かい合った際にも感じていた気遣いというか、研ぎ澄まされた清廉さには一点のにごりも見られない。

 

 

『本当に全力だな? 約束しろよ!!』

 

『二言はない。……ふ、カブトムシという奴らはどうしてこうも好戦的なのだろうな』

 

 

 メタビーとヨウハクがいつものやり取りで占めると、いよいよ飛行機の搭乗時間がやってくる。

 アナウンスにしたがって、手荷物だけを抱えたユウダチが、登場口へと向かう。

 イッキ達の列から、カリンが一歩前へと進み出る。

 

 

「ユウダチちゃん。……どうか、お元気で!」

 

「はいです! カリンも、最近は体力もついてきましたが……体調には気をつけるです!!」

 

 

 最後に親友との言葉を交わして、どろりと笑みを浮かべて、ユウダチは飛行機の中へと乗り込んでいった。

 後には、見送る側のイッキ達だけが残される。

 

 

「……行っちゃったね」

 

「……はい。わたしの、始めて出来た友達でした」

 

 

 飛行機が飛び去った発着場の中。空を見上げながら、カリンは寂しそうに呟いている。

 その分も、ユウダチが埋めていた分も、イッキは托されてこの場に居る。カリンという少女の隣に。期待には応えたい。しかし、イッキがユウダチに替わる事が出来ないのも事実である。

 せめても未来に期待を。これからを楽しくしてあげようと、イッキは小さな手を握り返しながら、心に誓うのであった。

 

 






・メダリンピック
 3の軸となる大会。世界大会が何種類あるのかは分かりません。ほんと。
 遂には宇宙にまで行く。

・例のお礼
 小学生的には気になる案件かと思いまして。

・同じアパートから出てくるのをいつも見かけ
 深読み厳禁。素直に考えて宜しい。
 ……。
 ……いや、むしろ素直に考えても……?

・レイニー
 やはり本作中には登場しません。シスター。
 ゲーム版NAVIでは良い所を持っていってくれます。
 ……5とかNAVIとか、是非ともリメイクされませんかねえ……(望み薄。

・isoca
 漫画版NAVIに登場する主人公。クワガタバイザン。
 これ以上は語るまい……(ぉぃ

・体調には気をつける
 別に以降のナンバリングで、カリン病弱設定が忘れられる訳ではない(力説
 だって4でもその名残がありますし……子供の時だけ病弱って、よくある話ですし……!

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