時系列的にはフユーン編。
ただしこの辺から2正史編と同じ内容は挟まないので、実質アナザーコーダイン編からの地続きとなります。
とはいえイッキが日付をまたぐので、黒菱形マークはとりあえず便宜的につけておこうかなと。
◆4
結論から言うと、イッキが寝る前に気にかけていた事件はいずれも解決となっていたようだ。
アリカが調べていた「小さなロボロボ団」の事件については、怪盗レトルトおよびレトルトレディーと協力することが出来、花園学園の行方不明の子ども達を「保護」するという顛末となったようだ。
下水道に出来ていたロボロボ団の地下基地は壊滅。イッキが案内されたフユーンの遺跡までは、どうやら見つかっては居ないようだが。
妥当なところだな、とイッキは思う。レトルトさん達が協力したのであれば穏便な解決に向かうだろうな、共思う。これがセレクト隊だけなら判らないが。現隊長のアワモリ氏はやや強引なきらいがあるからだ。
ストンミラーはあの後、ユウダチが回収しメダロット博士およびナエの所で修理回収を行った。
きちりとヘベレケ博士、さらにはスルメにまで許可を取りつけて、メダリアシステムのパージを実施したようだ。イッキは実際に現場にも同行したのだが、何をしていたのかは深くは判らなかったので「ようだ」と伝聞系にしておくことに。
同行した際には、メダルに関する技術協力でやってきていたニモウサク・ユウキ氏(現メダロット社CEO)になぜかまじまじと顔を見られ名前を復唱され、名刺まで渡されたのが気にはなるが。
とはいえシステム剥離のためにメダロット社の設備を借りたため、彼がいることそれ自体は不思議ではない。ヘベレケ博士発祥のシステムと言うことで技術流出的な面での防護も必要ではある。イッキとしてはとりあえず、深くは考えない事にした。考える必要は、いずれあるのだろうけれども。
で。長かったが。
残るはロボトルランキングの事である(最重要)!
「―― うーん、強い!」
『さっすが、アジアランキングとなると見たことない機体が多くて苦労すんよなぁ』
メダリンク筐体の外に出て、イッキは大きく伸びをする。メタビーの声にもやや疲れが見て取れる。
そう。今日も今日とてメダリンク! 絶賛小学生たるイッキは、長期休暇に突入するや否やロボトルランキングに精を出していたりした。
『で。今のジャー・スイハンとかってヤツがアジア15位だっけか?』
「うん。その前のローレル探偵事務所さんがアジア20位の筈だから、多分その辺だよね」
2人で筐体横の端末でポイントを確認する。
単純に上に勝てば、手に入る点数が大きくなる。ただし新参のイッキは蓄積されたシード的なポイントがないため、かなり多めに稼いでおかなければならなかった。
「それでもかなり勝てているから、ランキング自体はあがってるけれどね。ほら」
言って、イッキは自分の端末をひっくり返す。
メタビーがモニターアイをぱちくりさせて。
『おおっ、これか? オレたち12位って書いてるじゃねーか!』
「そうみたい。結果が出てるぞ!」
ふたりしてグータッチ。メタビーは足をがちゃがちゃさせて喜んでいる(落ち着かない)(でもサイカチスなので関係はない)。
アジア12位。小学生としてはかなり早期で上位のランキング入りである。実はユウキCEOに注目されていたのもこのせいだったりするのだが……。
『なら、もう少しでユウダチとかその兄とかともロボトルになんのか?』
「うーん、どうだろうなぁ。ユウダチがアジアランキングで上位になったのはかなり前だよ? そろそろワールドランキング入りしていてもおかしくはないよ」
そう。ユウダチやその兄シデンという前例があるために、イッキ自身はメディア露出とかが皆無なのである。
しかももっと視野を広げれば、ユウダチが
ちなみにイッキも先日レトルトの正体ばらしの後、改めて彼の戦歴を漁ってみたのだが、これまた凄まじいもの。
なにせ彼は小学生の頃の戦績を元手に、中学生に入るなりスポンサードを受けてプロ入り。すぐさま日本ランキングの最年少記録やシリーズ最多勝などなど。ほとんどの賞を総ナメしてみせたのである。
世界リーグにまで乗り出し、いくつかの重賞大会を制覇し。
(そして ―― 中学3年の頃に活動を中止。プロ名義での活動は無期限休止になった)
今では彼はおみくじ町唯一のコンビニのいち店員だ。
イッキとしては、先日イサナガミに言われた気になることもある。この件については近いうちに知っておくべきだろうという予感はあるので、自分の中の予定帳に刻んでおくことにする。
「……まぁ、いずれにしてもいつかはユウダチともロボトルすることになるだろうけどね」
『楽しみだな! あのカミキリヤロウ……いや、クワガタなんだっけか? まぁどっちでもいいや。アイツに勝つには、まだまだロボトルしてかねーとな!』
コーダインから帰ってからこの方、この通り。メタビーは一層ロボトルにやる気を出していた。
イサナガミさんとの約束のこともあるのだろう。現在のイッキ達の立ち位置からするに、ロボトルの強さというものには、とにかく際限なく上が見えているのだから。
「さて。今日はどうする? まだやれそうか、メタビー?」
『どうすっかねー』
んーと唸りながら、メタビーは脚部の変形機構をむやみやたらにギコギコと動かしてみせる。
「気になるのか?」
『おー。少しな』
だろうな、とは思っていた。
ロボトルの最中もぎこちなさはないが、確かめるようなためらうような、そういう雰囲気があったからだ。
「歪んでる……わけでもないか。だってその辺りはメダロッチ内で自動整形がかかるし」
『おう。精査でもそう出てる。だよな?』
『僕もそう思うクマー』
『だと思うクモー』
僚機からみても異常は無いようだ。
数値的な異常では無い。ならば「違和感」と評するのが適切なのだろう。
「変形かな? いちばん酷使はしてるけど……」
イッキとして思い当たるのはやはり、サイカチスに特有の変形機構に関する部分だ。
ロボトルランキングも上がってくると、流石に出し惜しみはしていられなくなった。当初は初見殺しで突破できていた相手も、対応力をあげてくる。変形するメダロットがいるというのも知れ渡っているようだ。
『んー、どうだろな。どっちかっていうと、変形それ自体は
「そうなのか? じゃあなんだろ」
『オレらで考えてもキリはなさそうだな。今度ユウダチにあったときに聞こうぜ!』
メタビーの提案はご尤も。
なのでこれもイッキの脳内予定帳に書き込んでおくことにしておいて。
『そんじゃま、もう一戦いっとくか!』
『頑張るクマ―!』
『頑張るクモー!』
などと。
当のメダロット達がとてもやる気なので、再びメダリンク筐体の中へと向かうのであった。
◆◆
「―― ヘベレケじいさま、ほんとにやるのです?」
「ふん。これはワシとアキハバラめの意地のぶつかりあいじゃわい」
メダロポリスの地下。未だセレクト隊に見つかっていない辺りに置いてある、フユーン船内にて。
水晶玉を被らず外したままのユウダチは、呆れた表情で話しかける。お相手は、謎の装置の調整を続けるヘベレケ博士だ。
ユウダチは溜息を隠そうともしない。
「はぁ。まぁ確かに、意地があるというのは判るのです」
メダロット博士こと、アキハバラ・アトム。
フシハラ博士の弟子として、ヘベレケ博士とは相容れない相手。そうだと聞いている。
(強硬派のヘベレケじいさまと、温和派のアトム。世間に受け入れられやすいのはどちらか、と言われればそれはアトムに決まっていますからね)
彼と彼との間において。研究的な意味での相違は、実のところ存在しない。あくまで現存する人らに対して「どういったアプローチをかけるべきか」という立ち位置が違うだけだったりする。
だからこそユウダチは理解も出来る。ヘベレケの感じているのであろう「焦燥感」に類するものを、彼女自身は感じざるをえない立場に居るのだから。
「どうせ
ヘベレケが拳を握る。背中の鞄から伸びた義手が台パン。
「そんなんは我慢できん! ナナメ45度で叩けば直るかも知れんじゃろう! ワシはの、結果はこの目で見届けんと性に合わんのよ!! ……そも、おぬしの敬愛するアガタ・ヒカルの兄君とやらも、あ奴には救われなかっただろうに?」
「えぇ。アトムには。でもヒカル
そこだけは違えてはいけないと、ユウダチは胸を張る。
愛だのなんだのは気に食わんと呟いて、今度はヘベレケが溜息。
「ならば聞くがの。あのアガタヒカルと同じかそれ以上の感覚を生まれ持ち、育ててもしまったおぬしは ―― どうやって立ち上がるつもりじゃい」
「……わたしは倒れてないのですよ?」
ぐでり&どろりと首を傾げるユウダチ。
年相応の可愛げは、瞳の汚泥によって薄れてはいるが。
「言い分が判らんわけじゃああるまいに。おぬしはどうせ、学童期を脱してしまえば、人の集団に排斥されるぞ」
「……ヘベレケ博士とおんなじに、ですか?」
「違わい。アガタヒカルとおんなじに、じゃ。ワシゃあ言うほどひとりじゃあないんでの」
そうでなくては、研究などと言うものは出来はしない。
実際として。ロボロボ団の力を借りて作り上げたメダロッ島地下の基地に集まった研究員達は、ヘベレケ顔馴染みの(アースモール暮らしの際などにできた)古友人。もしくは彼に師事するためにと現存の研究の埒外にまで追いかけてきた、奇人変人共なのである。
そう認めるのは癪ではあるが、彼を慕っていると言い換えても良いだろう。そこにピチピチのギャルがいないのは、ご愛敬。
「ユウダチよ。あの10日間の時は1人で立ち上がったみたいじゃがの。それとこれとはまた別じゃ」
「……理屈は判るのです」
ユウダチにも友人はいる。カリンやコウジなどはその筆頭だろう。
ただ、
ヘベレケの言い分は判る。義務教育を終えれば、ユウダチらはそれぞれの道を辿ることとなる。ただでさえ研究に熱を入れがちなユウダチがカリン達と接する機会は、更に目減りする。
その上で社会に出ればなどとは……考えなかったわけではないが。
「そう。理屈はそうです。でも、わたしは……」
「……ふん」
考え込んだユウダチを見て、ヘベレケが鼻息。
しばし黙った後。
「まぁいいわい。なるようになるじゃろ。それとは別に、今回の
「あっ、はいです! それについてはお任せを!」
「こないだのメダリアシステムについては、ワシが間引いてやったんじゃからの。……まったくサケカースのヤツめ。お宝としてのメダルに固執しとるからといって、よく分からんメダリアにまで手を出すほど阿呆だとは思わんかったわ」
「ですが今回のフユーンの件で、ロボロボ団とは縁切りですかね?」
「蟻たちを使った掘り出しがもういらん分、世間の目くらましも人手も必要は無くなるが……地下基地の後片付けまでは働いてもらうかの。そもそもアヤツらへの貸しが多すぎて元手が取れておらんしの!」
がっはっは、とヘベレケ博士は大きく笑って話をしめた。
『はかせー。砂漠から手に入れてきたフユーンストーンの
「おお、早かったの。コガネ。……さて、ではしばしの起動実験を挟んで浮かすとするか。この浮遊要塞を!」
入り口から入ってきたメダロットの声に応えて、最後に電源を入れる。
壁に奔る光りがややも雷光を帯びる。不思議な浮遊感に包まれる。
「ウォッカたちにも伝えておくとするか。……さてい、おぬしらの理想を貫こうとするならば。このワシに反攻してみせい、アキハバラども!」
ヘベレケ博士の言葉の通り。
数日後。メダロポリス上空に、謎の人工物 ―― 浮遊要塞フユーンが出現する。
要塞はメダロポリス周辺に暫くとどまり、衆目を集めてから、(セレクト隊のメダロットは軽くあしらわれ)、スピーカーをジャックして宣言する。
『悔しかったらワシを止めてみせい、アキハバラの使いめ! オヌシの
入院したりリハビリしたりしてました。機会を見計らいながら再開します!
リハビリ込みなせいで本編の時よりも展開が冗長(丁寧とも言う)になっている気はする。
所要:配信見ながら3h。今ちょっと推敲がきついので最低限で。
・ローレル探偵事務所
メダロット8より。主人公の上役みたいな感じの人。みたいというか上役。
名義として事務所を出しているので、実際イッキがロボトルしたのは誰なんでしょうというお話。
8は結構、王道のメダロットなんですよぅ! 主人公があの見た目で探偵ですしパシーラさんとかクレソンさんとかちょっとだけ心残りがありますけどもそもそも4人は多いしサブヒロイナーとしてはミントさんのルートがあるだけで満足というかなんというか以下略
・オヌシの大事な女の子
再びの説明。大事なことなので(
ヒロイン選択の場面。
本来はアリカorカリンとなる。
・立ち上がった
実際にはそんなひとりって訳じゃないですけどね。
ただまぁ、この話を聞いた上で釣り出し……つまりはヒロインに彼女を使おうと「発案した」のがヘベレケ博士なところに、作者私的な彼に対する人情味を感じていただければ幸いです。