ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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   アンリミテッド・フライング・オブジェクト

 

 

 ふわっと着地。

 

 固いのに音が吸収された。床の材質が明らかに違う。おみくじ町でないことだけは確かだろう。

 イッキはおそるおそる、開いていた目を閉じる。

 

 

「―― うわぁっ!」

 

 

 驚きよりも感嘆が勝る。

 メダロット社。セイリュウの研究施設。メダロット研究所。そのどれにも勝るとも劣らぬ、メダロット開発のための施設が、眼前に広がっていた。

 フユーンの下のクラスターの中……なのだろうか。時折ゴゴンと揺れては戻るような音が響くが、警報は無い。

 

 きょろきょろと周囲を見回す。

 中央に置かれたコンピュータは、大きさだけでもイッキの3倍はくだらない。

 こんなブロックをクラスターから切り取った訳は、悩むまでも無いだろう。

 

 そんなことを考えていると ―― 背後。扉が開く。

 

 

「―― っておわーっっ!? イッキ!? イッキです!?」

 

「ユウダチ!? よかった、ユウダチだ!」

 

 

 ぼふりと軽い感触。イッキは正面で、飛び込んで来たユウダチの身体を受け止める。

 ぶわっと広がった髪に頬をなでられながら甘んじていると、ゴゴン。

 

 

「とっと。……無事で良かった、ユウダチ。でも、ここはどこ? フユーンの中の……ええと、クラスターの中だって、聞いたんだけれど」

 

「そうです! 合ってます! ここは空中要塞フユーンの下のメダロッ島の右下のクラスターブロックの下のヘルズゲートの下の、クラスターブロックの研究棟なのです!!」

 

 

 ユウダチが胸を張って言う。

 とりあえず、下の方なのは理解出来た。

 

 

「とにかく、ユウダチが居て良かったよ。まだテレポート機能が生きているから、地上に帰らない?」

 

 

 イッキとしては当然の提案だ。

 下層であるため主犯であるヘベレケ博士からも離れているし、行き来のための装置が生きている。これとないチャンス。

 しかし。

 

 

「いいえ。申し訳ないのですが、私はまだやるべき事が残っているのです」

 

「やるべき、こと?」

 

「はいです! なので、帰るのであればイッキひとりで……と。言いたいのです、が」

 

 

 こてりと首を横に倒した。

 目の前のイッキは、帰る気などさらさら無いからだ。

 

 

「……もしかしてイッキ、一緒に来ますか? ロボトルになると思うのですけど」

 

「うん! いくよ」

 

「ならばおっけーです!」

 

 

 嬉々とした表情で、ユウダチは自分が出てきた扉を指さした。

 暗闇が広がっている。薄明るいモニタの青さが連なっている。

 

 その中を。イッキは、ユウダチに連れられて。

 上層へと向かった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 空中要塞フユーンの構造は、こうなっている。

 フユーンの下部に、もとから連結のための構造を保有しているクラスターのブロックを基幹として巡らせて。

 その端々に、ロボロボ団の地下基地やら。ヘブンズゲートの処理施設やらといった各所からの頂き品をくっつけているのだそうだ。

 

 

「だからこうして、移動にはクラスターのブロックを経由すれば済むのです。……というかこんなものをどうやって横流し……いえ。設計図を複製されて、盗んだのでは無く作られたのも多いです。たぶんですけど」

 

「そっか。流石に何個も盗まれていたんなら、もっと早く気付くよね」

 

「だと思うのです。(にい)様の肝いりでしたからね、クラスター計画は……」

 

 

 ユウダチの視線を追って、イッキも窓の外を見る。

 フユーンの中から青空。そしてそろそろ、海が見えてきた。

 

 海が。

 そして、その向こうには。

 縦に黒い線のように伸びた ―― 宇宙まで伸びる、軌道エレベーター。

 

 

「……ということはくらげ海岸沖に向かっているのですね、このフユーンは」

 

「ユウダチはその辺りは知らされていないの?」

 

「はい、知りませんです。私の目的はあくまで、変形メダロットに関して、ヘベレケ博士から技術と助言をいただくこと。それと木星の使徒を見つけること……なのです」

 

「木星のしと、って?」

 

「今はもう地球にいる、と目されている……第4のマザーたり得る生物(・・)のことですね」

 

「だいよん。……えーっと……」

 

 

 イッキはこめかみに指を上げながら思い出す。

 ここ最近は何度も耳にしてきた言葉だ。前に話したのはメダロポリスで、ナエさんやヒカルさんも居た時だ。

 指折り数える。

 

 

「月にいるマザーがひとり。イサナガミさんがひとり。……木星の()が4だとすると、あとひとつは?」

 

「ちょうどいいですね。この通路を進んでいる内に、私から、イッキへネタバラシをしておこうと思うのです」

 

 

 くるり。廊下の中央で器用にターン、足を鳴らして踏みとどまる。ご機嫌だ。

 

 

「前にマザーが居るというお話と、メダルに上下があるというお話と、メダロットは宇宙から来たというお話をさせてもらったですよね?」

 

「うん。結構びっくりしたよ」

 

 

 いち少年としてはショッキングな内容だった。

 メダロットが侵略兵器として扱うことも出来る……というのは、流石に誰にも話してはいない。

 

 話している間にもユウダチは、前の扉を社員証のようなもので開いて、現れた階段を登ってゆく。

 

 

「そのお話の続きで……兵器という枠組みに当てはめると、マザーというのは司令官。レアメダルは隊長みたいなものなんです。基本は2つ1組で送られる。イサナガミさんはメダルを知恵の神と信仰する人らによって造られた、人工のマザーでちょっと例外。見つかっているのは木星と、月と。これで3つ。となると……です?」

 

「……あっ、地球にもマザーが居る……?」

 

「はいです! 居る、と言われているのです! ですが、未だかつて発見されたことはないのです」

 

「へー! 居るんなら、会ってみたいなぁ」

 

「うーん、これだけメダロットが普及してしまいましたからね~。もしかしたら顔は合わせづらいかもしれないのです。でもまぁ、会えるなら会ってみたいですよね!」

 

 

 拳を握ったユウダチに、イッキも合わせて拳を握る。

 単純に合ってみたい、と思うのはウソでは無い。

 

 

「……と。ロマンが有り余るところなのですが。地球のマザーというのは、かなり意図的に眠らされているという説も強いのですよね」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「はい。かつて私が住んでいたジャンクヤード近くの『遺跡』。メダルの採掘場に、かつては使者さんが来ていたようですから」

 

「使者……って、もしかして!」

 

「そう! イッキのご推察の通り! なななんと、ALN(エイリアン)型メダロット、コスモエイリアンのご登場ですーーっ!」

 

 

 ふたりでうおおーと声を上げ、きゃっきゃ、ロズウェルロズウェルと意味も無く走り出す。

 メタビー(メダロット当人)から『敵地なのにテンションたけーな、おめーら』という突っ込みが入ってやっと停止。

 

 

「こほん。とにかく。そういうのが発見されている以上、地球のマザーは使者さん方によって、意図的に見つからないようにされているのでしょうという考えですね。なにせ、月のマザーはきちりと発見されているのです」

 

「そうなんだ。……そうなんだ!?」

 

「はい。あちらは既にメダロット社の人達が起こしてしまっていると聞いています。どうなることやらー、です。……それはさておき」

 

 

 指先でタッチパネルを解除して更に先へ。

 たくさんのダクトで囲まれた区画。

 

 

「イサナガミさんの様に、強力なメダフォースを発することの出来るほ乳類がいても、地球のマザーさんからの警告はなしです。そしてもひとつ。さっき言いましたが、地球には木星からの使者 ―― 分樹のマザーが漂着しているそうで」

 

「それでも地球のマザーからはメッセージはなしなんだ?」

 

「話が早くて助かるのです。そう、今地球には……マザー並の権能を持っていると目されている、木星の使者。どこかに隠れている地球のマザー。コーダインの海には人工のマザー、イサナガミ。この3体が、ぞろりとそろって並んでいるのです……っっっ!!」

 

 

 驚愕の事実、とユウダチは両手を広げてドヤ顔。

 イッキとしてもえぇー、と声をあげたくなるが。研究者の人々であればもっとだったろう。

 実際声はあげたので、ダクトの間に反響して消えてゆく。

 

 

「……そんな感じに、私としては木星の使徒を探しているのですが。それも上のお方達の間では利権の分与が済んでしまっているみたいなので、どうなっていることやら。という感じです」

 

 

 ユウダチは合間を埋めるように、やれやれと首を振った。

 それもそうか。ユウダチはいち研究者・開発者であって、マザーを発見したからさあどうするか、に直接関与できるような立場には無い。

 あるいはシデンであれば……というレベルである。

 

 もしもそれが、イッキだったならば……。

 

 

「……でも悔しいね、それ」

 

「?」

 

 

 ユウダチは首を傾げる。

 どうにも、イッキの言葉にしっくりきていないらしい。

 

 

「ユウダチが探している木星の使徒を、偶然でも探したでも、そういうのとは関係なく持っている(・・・・・)人がいる……っていうことでしょ?」

 

「そう、でしょうか」

 

「僕だったら、思うかも。もちろん見つけた人の物だとかいうわけじゃあないし、木星の使徒が地球に来た理由とかもあるんだろうから、嫌だって訳じゃあ無いんだけど……」

 

 

 嫌では無い。

 やはり悔しい、がしっくりくる。

 

 

「―― 木星の使徒、がコスモエイリアンみたいにメダロットだったなら」

 

 

 人ではないのなら。

 そういう意味が、イッキの言葉には含まれた。

 

 ぶちり。

 

 

「……は、ぁ」

 

 

 どろりと、音がした。

 目前の泥がほどけて千切れた音だった。

 

 自分以外の、自分に近い誰かの指摘。

 それで初めて想像が出来た。

 

 油のにおい。電気の熱。冷たさを友とする肌。

 水面で膜を張っていた泥は底まで垂れ落ち、積層したヘドロを巻き上げ(にご)る。

 

 

「……なるほど、です」

 

 

 ユウダチは顔を伏せた。

 再び顔を上げた時には、いつものように、人好きのしない(・・・)笑顔が浮かべられている。

 

 

「私の目標はメダフォースの繰り方を教えてもらうこと、なんです」

 

「木星の使徒に?」

 

「はい。私のは多分、会話さえ出来れば達成できる目標だと思うのです。いずれにせよ、研究はなんとかなりそうですね!」

 

 

 そう言ってぴょんぴょこ歩き、先をゆく。

 最後の扉です。と告げて、開閉式の円扉を開いた。

 

 

「さては目的地。ここにいる疑似(・・)マザー機体の停止が目標です」

 

「疑似……マザー?」

 

「はいです! メダロット社の回答です。メダルのリミッター解除に伴う余剰エネルギーをどうするべきか。その問いに対して、メダフォースとして制御する……と応じたのが社のスパイの連中です」

 

 

 ヤツメウナギの口みたいな開閉扉をくぐり抜けたその先。

 周囲をベルトコンベアに囲まれ、青色の水槽が真ん中にどんと置かれた、地下研究所。

 

 ……それが、荒らされた跡。

 

 机は吹き飛びモニタは割れ、四方に走ったベルトコンベアは引きちぎれ。

 

 

「ここにいるベビーを、止めましょうです」

 

 

 ユウダチが真ん中の、唯一傷もヒビも壊れた箇所もない水槽をみやる。

 浮かんでいるのは胎児。……のような形をしていて。天使のようでもあって。

 赤ん坊の様に悲鳴で歌う、メダロット。

 

 

「―― Onnnn.gyaaaaaaaaa !!」

 

 

 むくりと周囲で、ケーブルに繋がれた軍用メダロット(ゴッドエンペラー)が起動している。

 囲まれる前にイッキは慌てて距離を取り、メダロッチを掲げた。

 

 

「メタビー! スパイダ、ベアー!」

 

「任せなっ!」

 

「やるクモー!」

 

「やらせんクマー!」

 

 

 ユウダチが隣でケイタイを掲げる。

 

 

「ヨウハク! エトピリカ、ケイラン!」

 

「心得た」

 

「撃つぜー、狙い撃つぜー!」

 

「ッピヨ―ォ!」

 

 

 イッキとユウダチで総勢6体。

 メダロットが並んだところで……さらに周囲からむくりと、軍用メダロット。

 

 

「Sollllllll.zyaaaaaa !!」

 

 

 8体。これでベビーを含めて合計は9。

 立ち向かうしかないので、イッキもユウダチも足を止め。

 顔を見合わせてから前を向く。

 

 

 割れた水槽。

 四方に向けてだばぁと溢れる内容液。

 少なくともホルムアルデヒド水溶液ではなかったようだ。

 

 中から登場、ミスターうるち!

 

 

「―― 合意とみて Ready to fight !?」

 

 

 そのまましゅばっと飛び上がり、最も邪魔にならないであろう天井にぺたりとくっついた。

 

 全員と、ベビーまでもが頷いたのを確認。

 上げていた手を振り下ろす。

 

 

「ロボトルぅぅぅ……ファイッ!!」

 

 






・コスモエイリアン

 その割にセレクト隊本部の椅子から手に入る。
 私的にはゲーム内りんたろうのイメージが強くて困る。

 後継の「パーツへんか」系統は沢山出たのだが、正直私は活用法を見出せなかった(

・大合体クラスターブロック

 ラスボスはお城と相場が決まっています。
 ……決まっています……かねぇ……? この後の展開的には前振りでしかない。

・9体ロボトル

 メダロット4より。
 1番の敵は時間制限。高火力で潰していかないと間に合わないことが殆ど。
 光学化ミサイルをくらえ……!

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