ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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   クラスター・ブロック

 

 

「ユウダチめぃ! あやつ、真っ直ぐにこのフユーンのエンジンを狙いに行きおったーー!? もう戦闘まで始めておるぅぅぅっ!?」

 

 

 義手を背中の鞄から生やした老人……ヘベレケ博士が、どったんばったん地団駄を踏む。

 小さな身体のどこにそんな力があるのだろうか、というくらいに暴れに暴れて。ある程度発散し終えると、ふんと鼻息を吹き出した。

 

 

「壊すのか? 壊すつもりかっ!? ……そもそもあれはアースモールで稼働を予定していた、発電送電に特化したプリミティベビーのレストア機体じゃというのにぃぃぃぃッ! 製造させたりちょろまかしたりするのに、どれだけワシが苦労したと思っておる!!」

 

 

 これらフユーンを作り上げたヘベレケ博士としては、(わめ)きたくもなるもの。

 かつてのタイヨウが所持していたモグモグフヨードから複製し、メダフォース管制に特化調整したレアメダル。

 メダリアシステムを外付けで追加するための各部パーツ。メダフォースを電力に変換するための施設。どれもこれも、高価が過ぎるものなのだ。熱量さえあればタービンは回せるので、メダフォースコントロールに関する技術的な問題だけではあるのだが。

 

 

「と、い、う、か! 折角カット済のフユーンストーンを利用し各種兵装も備え、多機能ブロックも装着出来るほどの反重力を発生させうるパーフェクト・フユーンが完成したというのに、分解させられたら出番がこれで終わりなんじゃがっっっッッ!?」

 

「でしょうねぇ。ユウダチちゃんは容赦とかなく止めちゃうでしょうし……」

 

 

 コガネという個体名を持つメダロットは、彼の横。手元で位置情報を確認しながら、エネルギーの副路を辿るべくシステムを動かして行く。ヘベレケ博士がどったんばったん。

 ……とはいえ、ユウダチとヘベレケとの間に契約上の問題は無い。彼女が担っていた囮の役目は終了している。後は互いに容赦なしの後腐れ無しというのは、今作戦における約束事でもある。

 

 

「あのベビーを外されてしまえば、この状態なんぞ維持しておれん! やはり脚なんぞいらんのじゃ! さっさとパージのためのシステムを……」

 

 

 ぶつぶつと言いながらも手早く、コントロールパネルを弄り出す。

 その時だった。

 

 

「―― 博士! 博士!!」

 

「なんじゃいコガネ。こちとら今から、倉庫部分と居住区部分と廃棄炉とジャンクヤード部分の切り離しを……」

 

 

 コガネは主人の忙しさを理解しつつも。

 それでも必要な報告を、慌てたまま、続けた。

 

 

月から(・・・)の照準照射を感知しました! 端的に言って、狙われていますっ!!」

 

「なぁぁぁん……じゃとぉっ!!??」

 

 

 

 

 ◆◆

 

 

「On.gyaaaaa♪」

 

「イッキ、狙うのはプリミティベビーだけでもおっけーです! メダフォースの指揮系統さえ叩けば、複製メダルの方……ゴッドエンペラー達の方も無効か出来るですっ!!」

 

「了解! 普通のロボトルと一緒だね!!」

 

 

 白の翼を広げ、目を閉じ。巨大な頭を抱えるように手足を縮こめたプリミティベビー。

 羊水があるわけでも無いのに、不可思議な力で中空にぷかぷかと浮かんでいる姿は、どうしようもなく「不気味」という形容詞が似合うものだ。

 既にロボトルは始まっている。その周囲に8体のゴッドエンペラーがぞろりと並んで、こちらへと殺到した。

 

 メダロットの機体数は相手が9のこちらが6。勝利条件はおそらくベビーの撃破。

 相手のメダロット達は全部が全部、イッキも見たことのない機体ではあるが、少なくとも純正ではないだろう。全機体が両手に見覚えのある騎士型の盾を装備するという、守りに長けたパーツが選択されているからだ。

 その間を逃げ惑う、メタビーとヨウハク。

 

 

「この状況だと、その普通ってのがむずかしーんだろーがよ!?」

 

「なんとかできぬ状況でもないはずだ ―― ツェアッ!!」

 

 

 ケイタイから飛び出しざま、ヨウハクは近くに寄ったゴッドエンペラーの脚部を切り払う。

 そのままヘイトをかっさらって、群れを成すゴッドエンペラーの間へと突っ込んだ。

 

 

「Sol.zya ――」

 

 

 ゴッドエンペラーはヨウハクをエイミング。

 両手が楯ということは、攻撃パーツは頭だけと言うことだ。無機質な顔が可動域を越えてぐるりとまわり、重力ねじれ(ブレイク)攻撃を撃ち放ち。

 

 

「.zya !?」

 

 

 味方機にフレンドリーファイアなどかましていた。

 多数とのロボトルにも慣れたヨウハクの、接近戦ならではの戦い方である。ブレイクを受けた機体は右手の楯が跡形も無く吹き飛んでしまった。少なくとも威力は凄まじいようだ。

 

 イッキは戦況をみながら、ゴッドエンペラーの壁の向こうを見やる。

 

 

「……それに加えて、だね」

 

「Oh,gyaaaaaaー♪」

 

 

 奥ではプリミティベビーが変わらず、泣き声を発している。

 ベビーからの攻撃が無い以上、あれはパーツの正常稼働であるはずだ。ならば効果はなんなのだろう。

 答えを求めながら周囲を見回す。よく見ればベビーは自身が入っていたポッドと謎の光りのヒモで繋がっており……あれで指令などを出しているのだろう。

 イメージとしては胎盤とへその緒を模しているのだろう。メダロットのモデルとしては正しいが、なんとなくの不気味さは拭えない光景である。

 

 とはいえあれを断ち切るくらいなら攻撃した方が早いのだろうか……?

 イッキはこの状況について考えながら、クマとスパイダに指示をとばしてゆく。

 

 

「メタビーを守ってやってくれ!」

 

「了解クマー!」

 

「それっていつも通りだクモー!」

 

 

 両手盾のクマ(奇しくも同じ構え)。

 そして全身設置装備のスパイダが、前に出たリーダー機の後を追う。

 当のメタビーは。

 

 

「だはははーっ! 必殺・喧嘩キック!!」

 

「Solllllll!i!1!」

 

 

 ヨウハクに(なら)って、射撃機体なのに近接戦。ゴッドエンペラーの後頭部を蹴り飛ばしてなどいる。

 同時に脚に付いている変形用のタイヤを回して、ティンペットを根元から折り飛ばすおまけつきである。頭がガクガクキュラキュラと鳴った後ぶつんと吹き飛んでゆく様は、恐怖以外の何物でもない。

 

 

「テンリョウ9、赤子8! 戦闘続行!」

 

 

 初撃破された機体数をミスターうるちが律義にカウントする。

 わらわらと集まったゴッドエンペラー達の視線は、依然としてヨウハクに集中していた。その間を、イッキとユウダチのメダロットが駆けてゆく。

 

 

「溶けるピヨォォォ!」

 

「―― シッ!」

 

 

 ケイランが装甲を溶かし、ヨウハクが的確に溶解部を切断。

 どうやら装甲ではなく神経伝達部を狙っているようで、腕が形を保ったまま自重に負けてだらりと垂れさがって。

 だからといってそちらばかりを注目していると、こうである。

 

 

「後ろ向いてんじゃねーっつーの! だらっしゃぁ!」

 

「カブトの総大将の邪魔はさせねーっての! 狙い撃つ!!」

 

 

 メタビーによる喧嘩キック。

 間に入って援護防御をしようとした機体は、エトピリカの狙撃によって足を止められているのである。

 

 これで9対7。数は有利になった所だ。

 攻め所だろう……と考えていると。

 

 

「イッキ! あのプリミティベビーの泣き声はおそらく、メダフォース制御なのです!」

 

「えーと……メダフォースの、制御?」

 

 

 ユウダチが寄ってきてくれていた。

 戦闘はしばらくヨウハクに任せておけると判断したのだろう。

 

 ……寄ってきてくれていた。

 ただ、端的に言って、距離が近い。

 

 

「はいです! 元々は原始のマザーとしての権能を司るために作られたパーツですので……んー……多分ですけど、大食漢のゴッドエンペラー達を8機も起動するためのエネルギー供給源として扱われているかと!」

 

 

 もうどすんと体当たりされたくらいの距離まで来る必要はあっただろうか。あと相変わらず笑顔が生理的な恐怖をくださる。

 しかしイッキが抱えていた疑問点に対する説明はきちんとくれた。つまりは。

 

 

「メダフォースのエネルギー増加。あと減少……というか抑制も出来るパーツなのかな。それなら子機からメダフォースを撃たれる可能性は少なさそうだね?」

 

「おそらくは! 精緻な稼働を捨ててまで撃ってくる可能性はあるですが、それはヨウハクたちが何とかしてくれるでしょう。あと考えられるのは……」

 

 

 ユウダチはどろりとした視線をイッキから外して、前を見る。

 

 

「最も制御に長けて居るであろうプリミティベビー自身が、最後の反撃手段として扱ってくる可能性、です!」

 

「わかった。ならこうしよう ――」

 

 

 近くに居る間に打ち合わせを終えておく。

 まとまった所で、再び互いのメダロットに指示を出す。

 

 

「タイミングがきたら合図を出すぞ! 頼んだ、メタビー!」

 

「まっかせな!」

 

「狙いは変わりなし、です! 合わせるですよ、ヨウハク!」

 

「心得た」

 

 

 ゴッドエンペラーに埋もれたヨウハクが跳躍し、わずかに距離を取る。

 タイミングを取り易くしてくれたのだろう。イッキとしてはありがたい限りである。

 

 

「On,nnn.gyaaaaaー♪」

 

 

 泣き声。ゴッドエンペラー達を起動させた際と、同じ声。

 この声が無線によるエネルギー供給源だとすると、これはメダフォースの増幅効果を持つはずだ。

 まだだ。タイミングではない。

 

 ぎ、ぎ。

 

 

「おわーっ!? 首無しティンペットに脚、つかまれた!?」

 

「シィッ!」

 

 

 メタビーの足にしがみついた手と骨を、ヨウハクは容赦なく切り捨てた。

 ついでにティンペットへ伸びていた「へその緒」も斬り捨てて、足元にばらけた部品から距離を取る。互いに背を合わせて陣形を組み直しながら。

 

 

「うおっ……。あ、あんがとな」

 

「……個体としての機能は停止している。メダルからの命令は無い。だとすればデータシートの読み込ませが如く、親機が直接的な命令を出しているのだろう。あの歌声でな」

 

 

 ヨウハクの視線の先には、歌い続けているプリミティベビーの姿がある。あのへその緒でダイレクトな操縦も出来てしまうようだ。レコードの再生に近い随分と原始的な命令方法だが、推察の通りなら確かにメダルは必要ない。

 イッキとしてはメダフォースが便利過ぎるな……とは思いつつも。そんなに便利なものだからこそ今現在、マザーの奪い合いなんてものが行われているのだろうとも思う。

 

 イッキ自身から顔を突っ込んだわけではないが。

 イサナガミとの接触などは行ったので、無関係というわけでもない。

 

 

「多分、一斉射の後になると思うのです。こちらの行動を抑制するための歌は……」

 

「だね。そうだとすると、こっちから仕掛けた方がいいのかな?」

 

「釣りですね。良いと思います、です! ……ヨウハクもこのために高機動に変形可能な、ソニックスタッグのパーツを用意していますし……あとは接近してからの制圧力が必要です?」

 

「それはメタビーに任せて。この間、メダロット博士とナエさんから追加のパーツを貰ってきてあるんだ」

 

「あぁ、なるほど……! アレ(・・)が完成したのですね!」

 

 

 がっくんがっくん頭を振る楽しそうなユウダチに、イッキはうんと頷く。

 それらはメタビーの脚部格納に収容してある。出し所があるとすれば今だろう。あの怪人Z仮面とのロボトルで自壊(・・)するまでエネルギーを放出できたメタビーなら……今のカブトメダルなら、制御も可能なはずだった。

 

 あとは出し所。タイミングだけだ。

 暴れに暴れる赤ん坊に、指揮官(メダロッター)のなんたるかを叩き込んでやろう。

 

 

 






 めちゃくちゃ久し振りですが書いたなら更新をします(確固たる意思


・データシート
 イメージはトイレットペーパーのあれ。
 別にトンツーでも0か1かでもいい。オイルショック。

・必殺喧嘩キック
 漫画版のあれ。タイヤキュラキュラ。

・パーフェクト・フユーン
 脚(コンテナ・ブロック)がついてる……飾りじゃ無いのか……。

・9体ロボトル
 実際には全滅させないとなりません。これ見よがしに再生機体もってきてるんじゃねぇよ校長(怒。

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