プリミティベビーを機能停止させるための作戦は出来上がった。
あとはタイミング次第だろう。こればかりは相手の出方を見るしか無い。
「On,gyaaaaー♪」
ベビーが泣く。メダフォース増幅。ふたりの狙いはこれではない。
しかし、この泣き声と同時に。
「「「Soooollllll.zyaaaaaa!!」」」」
残る6体のゴッドエンペラーが、背中から羽を開いてみせた。
……なんだろう。彼らの背中にあるものは、モニタ内のウィンドウを重ねた様な……既存の生物のどれでもない羽の形をしていた。個数も4枚だったり、対ですらなく5枚だったりする。
そして機能拡張を行ったからには、当然、次に来るのは。
……ゴッドエンペラー達による、一斉攻撃!!
ミサイルミサイル、重力ねじれ、光学兵器がそれぞれ地下施設を飛び交い始めた。
「うおーッッ!? あででででっ!!」
「……くっ!」
メタビーとヨウハクがベルトコンベアや研究機器を壁にして何とか防ぐも、彼らのメダフォースはそれらを吹き飛ばして余りある威力を持っていた。
数秒で赤熱し溶け出した機材から飛び出した拍子に、メタビーが肩を。ヨウハクが脊椎周りにかけて深めにダメージ。
がしゃり。それでもふたりは体勢を崩さず着地し、
メタビーがイッキと。ヨウハクがユウダチと、それぞれ視線を交わす。
「いけるか、メタビー!」
「おうよ!」
「次です、ヨウハク!」
「心得た」
頷いたヨウハクの奥手側。
先ほどは「メダフォース増加」を歌ったプリミティベビーが、次のターン……つまりはゴッドエンペラー達の放熱時間。リチャージ時間を稼ぐために、別の歌を紡ぐはずだった。
程なくしてベビーは歌い始める。
「Oh,gyaaaaaaa~♪」
「「―― 突っ込め(です)!!」」
音程で差異を判断した瞬間、ふたりは指示を飛ばした。
メダフォース制御。その内の、
ただそれは、同時にメダフォースによって指示を出されている雑兵の動きが鈍ると言うことでもある。
手動入力と個人判断の切り替えの間を縫うように、6体のメダロットが突撃した。
多脚が1体、わしゃわしゃと壁を走り。
車両が1体、その直後をカバーし。
2脚が2体、身を低くしたまま走り。
飛行が2体、跳ねるように突貫する。
6体が走ってゆくのは、スパイダによって仕掛けられた「射撃トラップ」の直線路だ。
周囲の雑兵が振り返り、追いかけようとするも、ゴッドエンペラーの脚部は機動力よりもエネルギー供給路としての効果を強く持つものだ。結果として彼ら彼女らは足元の精細を欠き、次々に暴発させてゆく。
充填・放熱の少ない頭パーツの残弾を持っていた機体が先頭を駆ける飛行型2機を狙うも、援護機体によって阻まれる。溶解攻撃と狙撃によって弾き飛ばされ、2発目はままならない。
残るは、プリミティベビー。
「Hummmm,gieeeeeyaaaaaaa!!!」
その直前に、メタビーとヨウハクが飛び込んだ。
予想の通りかそれ以上。相手は体内に溜め込んでいた継戦用途のメダフォースを攻撃に転じる構え。つまりはメダフォース抑制を解いた……解いてしまった。
そこへ真っ先に飛び込んでいたヨウハクが
「癇癪もちめ、遊んでやろう。こちらだっ……!」
「aaaaa,ahaaaaaaa!!」
ベビーは
通常の光学兵器など比ではありえない極太の熱線がコントレイルをなぞり、壁だけを溶かし尽くしてゆく。
だから、熱線を撃ち放ったベビーは上を向いた。
当然、隙だらけの地上が安全なハズはない。
がしゃり。
そこで
車両形態ですらない ――
「食らいやがれっ、――
背中に琥珀色の薄羽を広げ。
固定砲台と化したカブト虫、その角から最強最大の一撃を吐き出した。
ビームが無数。実弾も、無数。
その砲塔から放たれるのは、メダフォースよりも効率的にエネルギーを変換された攻撃だ。制御周囲に粒子を撒き散らしながら熱線が放出される。一条一条が軽々と鉄板を焼き貫き。
その中を、本命の徹甲榴弾が飛んでゆき……炸裂した。
中空に惑うこと無く揺れていたベビーが、遂に弾かれる。
へその緒がぶちり。それでも元より指揮官として設計された機体である。煙を噴き上げ、周囲に展開された原理不明のバリアの一部が欠けているが、五体満足のまま、ごろごろと地面を転がっていった。
その先に。
「――
鳴き声をあげる間も与えず……ヨウハクが、その身体に刃を突き刺していた。
変形して接近。メタビーがヘイトを引き受けた隙に変形解除して隠蔽を重ね、再変形。推力を利用して欠けた球体バリアの中へ身を滑り込ませたのだ。
防がれた右腕ごと、
ぴぃん。
「リーダー機、戦闘不能! 勝者、テンリョウイッキ&ムラサメユウダチ!!」
天井に吊られた体勢のまま、ミスターうるちが言い渡す。
互いに顔を見合わせて、イッキとユウダチは拳を合わせた。
「やったね。……でもまぁ、これで終わりじゃ無いんだっけ?」
「はいです! それでは早速、フユーンへの電力供給を中止してしまおうと思うです!」
「着陸は大丈夫なんだっけ?」
「余剰分があるので十分安全に可能だと思うのです。そこはまぁ、ヘベレケの爺様というよりはコガネの手腕にはなるですが……」
コンソールのひとつへ駆けよってゆくユウダチの傍に控えておく。
……する事が無くなったので、イッキはいきなりしんと静まりかえった研究施設の光景を見回す。
破壊されたベビーも、地面に一斉に倒れ込んだゴッドエンペラー達も、どこか
いや。
これは、
「―― イッキ殿」
「……あ、え? ご、ごめんヨウハク。何か言ってた?」
普段は寡黙なヨウハクが、イッキの袖を引いていた。
その姿が目に留まって。
「うわ、というか、ぼろぼろじゃないか。ヨウハク、ユウダチのメダロッチの中で急速修復しなくていいの?」
「主のものは、メダロッチではなくケイタイだ。機能は同様だが手動で修復を起動する必要がある。今は時間が惜しい……それに、このパーツは既に
アサルトアーマーは
件のユウダチは確かに、コンソールの画面に集中しているようだった。切迫した状況だというのに笑顔で、小さな手のひらと細い指をぱたぱたと、慌ただしく動かし続けている。
そうだ。イッキは気付いた。
彼女は機械を見るときいつも笑顔だが。
その瞳には、
……はっ。視線を感じる。意識を戻す。
またユウダチの方を見ていてしまった。会話の途中である。ぼろぼろのままでも話したい何かが、ヨウハクにはあるようなのだ。性急だろう。イッキは慌てて視線をヨウハクの方へ戻すも。
「……成程。ヒカルの兄君にも
「えーと……?」
どうやらこちらを観察していた彼は、何かを納得したようだった。
ヨウハクがかぶりを振って、コミュニケーションモニターの目を開く。無機質では有り得ない視線が、イッキをしっかりと捉えている。
「告げておこう。私では主殿の傍には居られても、友人には成ること叶わぬ」
「……? でもヨウハクもエトピリカもケイランも、ユウダチの友達だと思うけど……」
「いいや。違う。……友ではある。伴することも出来る。しかし友
何か難しいことをヨウハクは言っている……の、だろう。
最近はヒカルにもナエにも、シデンにもヘベレケにもこういうことを言われてばかりだな、とイッキは思うが。それだけ皆、ユウダチのことが大切なのだろう。
「共に育つ。並び立つ。そういうことは、イッキ殿にだけ許されている」
「……えーと、ごめん。詳しくは判らないけど……でもさ」
イッキは頬を指でかきながら、屈むように視線を合わせて言う。
難しそうな、苦しそうな顔をしているヨウハクを少しでも助けてあげたいなと思う。
「僕、決めてるんだ。誰かに言われたわけじゃなくってさ。
「……」
「だからほら。そうじゃなきゃこうやって、フユーンにまで来ないでしょ。子どもには、大人に任せるって選択肢があるからね。……というかコウジはともかく、カリンちゃんは普通に友人だと思うよ? ……それにまぁ、僕が助けに来たのには、今のセレクト隊がかなーり頼りないからってのも理由としてはあるんだけどさ」
自らの父の苦労を思い返し、苦笑をしながら。
出来るかは判らない。でも自分の友に向けて、最後の最後まで手を伸ばす。
今まで言われ続けてきた問いかけに対する、イッキなりの宣言だった。
「……そうか。……ふ」
「あっ。ヨウハク、笑ったな?」
『てめーいい度胸してんじゃねーか!』
これまで黙ってくれていたメタビーが、メダロッチの中からヤジを飛ばす。
どうやら騒がしくなりそうだな……と考えたところで。ずっと指を動かしていたユウダチが最後に弾いて、ふいーと背を伸ばした。
「終わりぃ、ですっ! これでフユーンは着陸せざるをえませんですね! それではイッキ、次はヘベレケ爺様のいる操縦室に……」
ユウダチがこちらを向く。
笑顔のまま。
――
ズシンッ。
ガ、カァァァァンッッッ!!!!
破裂音と炸裂音が響いた。
イッキとユウダチの頭上からだ。
「へっ!?」
「ですぅっ!?」
何が起こったのかは判らない。
ただ、大きな揺れと衝撃があったのは確かだった。
ふたりの居たブロックに損傷は無い。
が。パーフェクト・フユーンが元から持っていた性質……『宇宙ステーション』としての機能として、下部のブロックの切り離しが行われた。
かつて地下に設営されていた、ロボロボ団の研究棟と。
それに付随するブロックが、離れてゆく。落下してゆく。
イッキは風圧の中でなんとか周囲を確認する。
見えてはいけないハズの、水色の空が見えた。
空気が外へ引きずり込まれてゆく音がする。
視界の中央に捉えた時、ツナギの少女の脚は、浮いてしまっていた。
程なくして地面を離れてしまうだろう。
だから。
有言実行。
「―― ユウダチッ!!」
「―― イッキ!?」
誰に任せることもなく、ためらいなく、イッキは手を伸ばした。
当然身体は地面を離れた。大丈夫。元からフユーンは浮いている、だなんてどうでもいいことをイッキは思った。
……。
反重力作用が作動している、その証左。
サイプラシウムが放つ余剰エネルギーの粒子がきらきらと舞って、フユーンが浮かんでいた宙域一帯を覆っていた。
ふたりが。
べこべこしたフユーン本体が。
根っこのように取り付けられ、今は切り離されたブロックが。
周辺に位置し、余波を受けてしまった軌道エレベーターの無数の破片が。
軌道エレベーターの中途に作られた街、その下部に据え付けられていた
雨のように。血のように。日光のように。
鉄臭さと油臭さと錆び臭さが、くらげ海岸沖の遠浅の海域を埋め尽くすように降り注いで……。
さらけ出されたのは、明瞭な人の業。
オイルとスクラップの海が、作り出されていった。
・ヘルズゲート
3色ウィルスだのを吐き出すケルベロスさんが守護らねばしている場所。メダロット3より。
恐らく宇宙開発周りの廃棄物を一次処理するための施設。これでいいのかメダロット世界、とはなるが、これ以上の施設は現実的には思い付かなくもある。デブリにしろ地球内での資源循環にしろ、どうしたもんですかね。
・プリミティベビー
裏ボスではありますが、実際にはラスボス前に戦闘できますよと言う究極の初見殺し。
明らかにグレインのデザイン元だったり、予想以上に大きかったり、メダロット3の地下街アースモールで発電係になっていたりする。ので、この辺りからコガネさんと絡ませていたりします。
実際にはメダフォース制御はかなり使い所の難しいパーツで、単体パーツが高装甲高火力で押せることが前提だったりする。
ちなみに本人のメダフォースはしっかり攻撃型。相手の体力を吸収する熱線をうってきたりするのでやめてください死んでしまいます。
・パーフェクト・フユーン
ラストシューティング・ミサイル。
わからんのですよ。
・クラフティモード
ゲーム内ではイベントでしか使用されなかったモード。外付けのオプションパーツを必要とする、高火力の形態。これをパワー変形としたのは独自設定ですので悪しからず。
・テラカド君
漫画版より。実際として衛星兵器の照準照射係として稼働していたりするので……。
今作に登場させたのは、実際にはもっと非メダロット道的な兵器です。誘導弾。