ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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8話 目前来る大嵐(タイフーン)

 

 さて。メタビーがリーダー機。しかしロボトルは3対3を上限として行われる。つまり、ユウダチが担当するのは残る2機。

 そう決まると、ケイタイから、ヨウハクともう1体……見覚えの無い機体が転送される。

 ロールスターというレーザー射撃を得意とする赤の体部。そしてランドモーターの排気筒を模した両腕を組み合わせた、混合機体である。

 

 

「ユウダチ、それは?」

 

「はいです! さきほどロボロボに(たか)られていた『コウモリ』メダルの子 ―― エトピリカです。相手が相手、空を飛ぶ相手にはこの子が活躍できますですよ」

 

「おうおう。狙い撃つぜ!」

 

 

 元気に挨拶をするエトピリカの横で、ヨウハクはコミュニケーションモニターをやや歪めて見せている。

 

 

「……またロボロボ団か。相手はこの鳥達か、御主人」

 

「ええ。お願いしますです、ヨウハク、エトピリカ!」

 

「悪いけどお願いするよユウダチ。それにヨウハクと、エトピリカも、僕に力を貸してくれ!」

 

 

 ヒカルの言葉に小さく頷きながら、ようやくと2人が前を向く。

 タイヨーの並々ならぬ気迫に包まれながら……しかし、レフェリーにとって誰がというのは関係なく。

 ここが決戦と踏んでいた今回の彼は、ガラクタの山から飛び出した。

 

 

「―― 合意と見て宜しいですね?」

 

 

 見事なまでに油塗れのミスターうるちが、ガラクタの山の上に華麗に着地しては声を響かす。

 既に驚く人はおらず、そもそも彼とて驚かせようと企んでいるのではない。ただ忠実に、ロボトルのレフェリーをこなそうとしているだけなのである。

 とはいえその登場の仕方はやはりの「神出鬼没」に尽きるのだが……と、腕を掲げ、振るう。

 

 

「それでは始めます! ロボトルゥ……っ、ファイトォッ!!」

 

「焼き尽くしてくれる!」

 

「「「ぼぉーッ!!」」」

 

 

 開始が告げられると同時、ヘルフェニックス3体が縦に並んで殺到した。

 飛行機体の有利さは、ガラクタの山においては十二分に発揮される。要するに、ガラクタの山の上は「動き辛い」のだ。

 この地形に適した脚部は、地上であれば多脚型。浮遊している場合なども地形に影響されず推進力を確保できるだろう。

 勿論、空中からは地上を狙い辛いという弱点もある。ヘルフェニックスの様な格闘機体であれば狙いは幾分かマシにせよ、近づかなければならないというのは大きなマイナスである。

 さて。ならば相手方、タイフーン陣営の狙いは……

 

 

「オレかッ!?」

 

「メタビー、逃げろ!」

 

「つってもこの足場を二脚じゃあな……って!」

 

「ぼぉーッ!」

 

「うわちぃぃッ!!」

 

 

 ガラクタの山に足を取られている間に、先頭のヘルフェニックスが射程内に接近していた。

 左手から吐き出された炎がメタビーを襲う。我武者羅に振り回された炎は、飛行型の推進力に後押しされ、メタビーの右腕を激しく焼いた。

 メダロットに感覚を通達するニューロン・ファイバー・レジン・ポリエステル素材がじくじくとした継続的な痛みをメタビーに与え……

 

 

「メタビー、もう1体来るぞッ! 飛べッ!!」

 

「ふーっ、ふーっ! ……っとうぉぉ!!」

 

「ぼぉーッ!!」

 

「んぼぼぉーッ!!」

 

 

 残る2体の攻撃を、今度は身を低くする事で間一髪回避に成功した。

 メタビーの後から駆けてきたヨウハクが、ヘルフェニックス達への追撃叶わず、苦々しげに空を見上げる。

 

 

「―― ちぃ! 彼奴らめ、降りて来さえすれば!」

 

「……なんだクワガタ、お前、届かねーのか?」

 

「む。ぐぐ……」

 

「やーいやーい、役立たずーっ!!」

 

 

 両手を振ってニヤリと笑うメタビーが、ヨウハクの横で跳ねる。

 緊張感の無いメタビーへ、ヒカルは叫んだ。

 

 

「いいから今の内に反応弾だメタビー、ってまた来るぞーッ!?」

 

 

 その指す先では、またもヘルフェニックス3体が重なって突撃陣形を組んでいた。

 ヒカル達の様子を、腕を組んだタイフーンは見下ろしているが……小さく呟く。

 

 

「カブトメダルに、ムラサメの娘。こんなものか? ……ならば容赦は必要ない。やってしまえ」

 

「「「ぼぉーッ!!」」」

 

 

 翻り、三度メタビーへと突撃を始めるヘルフェニックス達。

 

 

「ちっ……反応弾で先頭の奴をつぶしても、次の奴から炎を浴びる……何か、何かないのかヒカル!」

 

 

 メタビーの声に、ヒカルは黙り込む。

 が、ヒカルは知っている。

 彼の隣には今、ユウダチが控えている事を。

 

 

 ―― がつん。

 

 

「……しゅぼっ!?」

 

 

 突如鳴り響く重い音。

 突如として頭部をへこませ、先頭のヘルフェニックスが飛び落ちた。

 

 

「ぼぅ!」

 

「ぼぉッ!」

 

「―― ふむっ」

 

 

 タイフーンが、思わず感心したような表情を漏らす。

 しかし先頭のヘルフェニックスを倒されても陣形を崩さず、残る2体が上下に分かたれメタビーへと迫る。

 

 

「成る程、そう言うことかヒカル!」

 

「おう! いっけぇ、メタビー!」

 

「ーッ、反応、だぁぁぁぁん!!」

 

 

 ボボンッ!

 という射出音と共に、メタビーの二股の角を模した銃口からミサイルが放たれる。

 

 

「ぐげぇッ!?」

 

 

 ミサイルは僅かに弧を描いて、上から迫るヘルフェニックスの頭の付け根に突き刺さり爆発、撃墜。

 が、もう一方。最後の1機。

 正面から迫るヘルフェニックスがメタビーを狙って、頭パーツの嘴を開き ――

 

 

「させぬ!」

 

「ぼぉーッ!!」

 

 

 その隙間に、両手を交差したヨウハクが割り込んだ。

 炎を纏ったヘルフェニックスが、勢いそのままヨウハクへと衝突する。

 

 

「ぐ、ぅ!」

 

「ぼぼぉーッ!!」

 

 

 じりじりと両腕を焼かれ、破損。

 剥き出しになったティンペットでヘルフェニックスの頭をねじ込みも、今度は脚部が破損する。

 既に満足に稼働できるのは頭パーツだけとなったヨウハクが、叫ぶ。

 

 

「……頼むっ、エトピリカ!」

 

「索敵あんがとな、ヨウハク!」

 

 

 遥か後ろに控えていたエトピリカ。

 ロールスターの頭部脚部にランドモーターの両腕を装備。

 その内の「対空射撃」の特性を持つ左腕を、足場の悪いガラクタの山の上から水平に、膝立ちになってしっかりと固定する。

  最初に(・・・)|ヘルフェニックスを撃った分の放熱を終了。

 

 コウモリメダルが得意とするのは、空間把握を生かした高次射撃。

 ヨウハクと押し合っているヘルフェニックスを、確と照準に入れる。

 

 

「狙い撃つです、エトピリカ!」

 

「ああさ! くらえやっっ!!」

 

 

 どしゅ ―― がつんっ。

 

 

「……しゅぼっ」

 

「御見事」

 

 

 ヨウハクのすぐ側を抜け、(あやま)たず、格闘攻撃後に無防備となっているヘルフェニックスの頭部を打ち抜いた。

 対空弾頭によってバランスを大きく崩したヘルフェニックスは、その後自重によってガラクタの山に叩き付けられ、その機能を停止する。

 

 

「リーダー機、戦闘不能! 勝者、ヒカルあぁーんど、ユウダチ!」

 

 

 ミスターうるちがキレの良い動きでヒカルとユウダチの腕を取った。

 かと思うと「ではわたしはこれで」と話してそそくさと退散。当初の光景……ヒカルとユウダチ、タイフーンが向かい合った構図へと立ち戻る。

 しかし、先ほどとは違う点がひとつだけ。

 

 

「……ふむ。カブトメダルの所持者を見くびっていたぞ。それにムラサメの娘。お前がクワガタを持っているのは聞いていたが、どうやら貴様も見直す(・・・)必要があるな。確かに、お前は障害となったようだ」

 

 

 タイフーンが見下ろしながら語る。

 ヒカルはその内容に僅かな違和感を覚えたが……今はそれよりも、タイフーンの視線の先である。

 

 

「……ふむ。これは分が悪い」

 

「よう。よくもムラサメ家の嬢ちゃんに手を出してくれてんじゃねえか、ロボロボめ」

 

「潰すもぐ」

 

「埋めるもぐもぐ」

 

「するもぐ、するもぐ」

 

 

 タイフーンは屈強な大柄の男だが、それに負けず劣らずの身体をもつ炭鉱夫達がユウダチの存在に気づき、周囲を取り囲んでいたのである。

 

 

「よくやってくれたぜ、坊ちゃん。シデン坊ちゃんの居ない間にじゃりんこに何かあったら、ただじゃすまねえからな」

 

「えっ、あっ、はい」

 

 

 先頭に立っていた男がヒカルの肩を叩き、そのままタイフーンの前まで歩み出る。

 

 

「さてどうするよ? 大人しくセレクト隊に突き出されちゃあ、くれねえか」

 

「……」

 

「何とか言ったら ―― 」

 

 

 睨まれても無言のタイフーン。

 いぶかしんだ男が1歩を踏み出すと。

 

 

「―― カブトとクワガタの少年少女。また逢うこともあるだろう」

 

「びゅーん!」

 

 

 後ろから飛んできたメダロット、レディジェットによって一瞬の内に空へと舞い上がってしまった。

 しばし、ぽかんと全員が空を見上げる。

 ……いや、正確にはユウダチだけは地面からヨウハクを抱き上げて。

 

 

「よくこなしてくれました。戻ってくださいです」

 

 

 嬉しさの色を見せてはいるものの、ある意味では淡々と、まるで先程までのロボロボ団との激闘など無かったかの様に片づけを始めていた。

 

 

「……ユウダチ?」

 

「あ。勝利、おめでとうございますです。ヒカル兄さま!」

 

「うん。ありがとう、ユウダチ。君のエトピリカの対空射撃がなかったら、危なかったかもしれない」

 

「はふぅっ! それは、偶々相性のよい装備を持っていただけなのです!」

 

 

 底の見えない笑顔でヒカルを讃えるユウダチに、ヒカルは笑顔でもって返した。

 元から荒れていたガラクタの山は、ロボトルの現場となっても殆ど影響が見られなかった。

 そのため片付けなどの必要もなく、炭鉱夫たちは暫くロボロボ団の襲来を警戒し、ボナパルトから逃げ出した雑魚ロボロボ2人をふん捕まえてから陽気にガラクタの山を去っていった。

 ひとしきり勝利を喜んで、炭鉱夫たちに手を振って分かれたユウダチは、ガラクタの山に寝そべってケイタイの画面とにらめっこを始める。

 彼女はやはり、油に塗れる事を毛ほども気にかけていないらしい。

 

 

「はふぅ。先程のロボトルで、ヘルフェニックスの脚部パーツを貰ったです。これでフェニックスメダルの子にも身体を作ってあげられますね」

 

「あ、ユウダチ。ティンペットはあるの?」

 

「はい。女の子だからと、ナエお姉さまから頂いた女型のものがあるです」

 

 

 ぎとぎとの手でケイタイを弄り、時折ツナギで両手を拭きながら。ユウダチは見下ろしすヒカルの顔を見て様相を崩すと、ガラクタの山から立ち上がる。

 

 

「今日は横槍を入れてしまいごめんなさい。町内大会に出るんですよね。兄さま、頑張ってくださいです!」

 

 

 此方へ向けて上目遣いに、ぐっと拳を握るユウダチ。

 そんなユウダチに、ヒカルは、

 

 

「ああ。頑張るよ……絶対に」

 

 

 これで、少なくとも勝ちたい理由が1つ増えたのだ。

 ほんのりと決意を強固にし、次週、ヒカルは心のままに町内大会を勝ち進んでゆく。

 

 





・エトピリカ
 クチバシと飾り羽が美しい海鳥。
 何故ユウダチがコウモリメダルにこんな名前を付けたのかは不明だが、当初名前はビーバーもしくはバービー(ビースト・バードの頭から)になる予定だったとか。
 抱いてもユウダチの頭が冴えたりはしない。靴下もはいていない。

対空射撃(アンチエア)
 飛行型脚部のメダロットに絶大な効果を発揮する弾種。ゲーム的に言えば、飛行型と潜水型の脚部は「推進」「機動」のデフォルト値が高めに設定されており、またそれらと相性のよい地形である「砂漠」「水辺」におけるその他の脚部相性マイナス値が非常に高いため、そのバランスをとるための処置と言ったところ。……現在のメダロットで機能しているかはちょっと怪しい。
 因みにメダロット2以降、アンチエアの威力は増し増し。

・ロールスター+ランドモーター
 ヒカルのライバル、ユウキがよく使う組み合わせ。実はパーツテストの名目で借り受けている。
 メダロット社とはこの辺からの付き合い。

 20160509.追記修正
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