片田舎に拠点を構える、飲んだくれなプロヒーローのお話 作:ホム竜
朝、目を覚ますと、耳に誰かの話し声が聞こえてくる。
眠気眼を擦りながら、声がした方向に目を向けると、そこにはつけっぱなしのテレビが。
続けて、テレビの少し下のほうへ視線をずらすと、おそらく昨夜に散らかしたのであろうコンビニの弁当と缶チューハイの空き缶がいくつかが、小さな机に転がっている。
いまだに回転の悪い我が脳みそを、それはもう必死に回転させて昨夜のこと、そして今日のことを思い出そうとして、ふと視界の端のデジタル時計が気になった。
ソファから手を伸ばし、何回か空を切りながらも何とか手に取ることができたデジタル時計を、ぼーっと眺め、あることを思い出す。
「……あ、今日
五年前に天下の雄英を卒業した俺は、そのまま自分の事務所を持つ……ことはなく、最初はそれなりにこの界隈で過ごしている、いわゆる玄人なヒーローが経営している事務所で少しばかり活動。そのあと独り立ちして自分の事務所を持ったのが二年前だ。
そのままゆったりとヒーロー活動を続けていたら、いつの間にか飲んだくれなおっさん一歩手前なプロ(笑)のヒーローだ。
よいこらせ、と声を出しながらソファから起き上がり、机の上に広がっている惨状を片付ける俺は、ようやく回りだした脳で、今日のスケジュールを立てていく。
「(今日本当は朝に横断歩道の旗振りがあったけど、寝過ごして出来なかったから……、とりあえず村のパトロールか?そのあとは適当に飯食って、それから――)」
田舎だから、というわけではないが、こんなところに大物ヴィランなんてものは早々出てこない。精々が空き巣程度だ。
そういうことをする奴の大抵は、戦闘に向かない個性なので、飲んだくれの俺でも簡単に捕まえることができる。
なので、都会にいるような格式ばったヒーローみたいにちゃっきりしていなくても何とかなるのだ。
――なーんて考えながら、冷蔵庫に入っていたおにぎりをそのまま口にし、ヒーロースーツに着替えていく。
といっても、真っ黒なシャツと裾を絞ったズボンを履き、その上からこれまた真っ黒なローブを身に纏うだけで終いである。
「いってきまーす」
……さて、今日もヒーロー活動、頑張りますか。
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今は昼でも夕方でもない、午後の3時30分ごろ。
少し遠くにある中学校から帰ってくる中学生たちに目を向けながら、俺はパック酒を飲みながらパトロールをしていた。
といっても名ばかりで、現にこうして酒を飲みながらなので、ぶっちゃけパトロールになっていない。ただの散歩だ。
たまにすれ違う近所のおばちゃんたちに挨拶をしながらさんp……パトロールをしていると、商店街についた。
……まぁ、商店街にしては小さいが。
俺は、一応パトロールだしなぁ、と心の中で言い訳をしながら商店街に入り、中を物色していく。
「な、に、か、な、い、か、な~――「きゃああああああ!!?」――……っと?」
顔見知りに挨拶をしながら肉屋なり八百屋なりと、いろいろなものを眺めていると、前のほうから悲鳴が聞こえてきた。
俺は肉屋の、いつもより安くなっているバラ肉から目を離し、悲鳴が聞こえた方へと顔を向ける。
そこには、女性もののカバンを手に持った、覆面の男がこちらに向かって走っているようすが見えた。その後ろには、おそらくカバンを盗られたのであろう中年の女性が尻餅をついて倒れている。
「どけぇ!!」
周りの人たちを押し倒しながら走ってくるひったくり犯。
どうやらヒーローである俺が見えていないようだ。まぁ、傍から見れば奇妙な格好をしたただの一般人にしか見えないからな。
なんて考えていれば、もう犯人は目と鼻の先だ。
「はぁ~あ、起こってほしくなかったな~。問題事」
これからあるであろう後始末のことを考えると、一気に憂鬱になる。
思わずため息をついてしまうぐらいには憂鬱だ。
「ちょ、ちょっとあんた!危ないから下がりなよ!」
肉屋のおばちゃんが、近づいてくるひったくりと俺を交互に見ながら慌てたように言ってくる。
そんなおばちゃんに俺は、なるべく気楽な感じで話す。
「大丈夫だって、俺ぁこれでもプロのヒーローだぜ?」
「どけって言ってんのが聞こえねぇのかぁ!!」
ちょっと目を離したすきに、もう5歩ぐらいで俺に手が届きそうな距離にいるひったくり。
思わず目を瞑って現実を見まいとするおばちゃん。
今気づいたが、よく見るとひったくりの左手を見ると、小振りのナイフを持っているのが見えた。
……あれ~?遠くで見てたときは素手だった気がしたんだけどなぁ。見誤ったかなぁ?
……はい、たぶん酒飲んでたからですねぇ、やっぱり仕事中にお酒はだめだね!
それはともかく、そのナイフの切っ先が俺のほうを向いて近づいてくるのを黙って見てやるわけにはいかない。
俺は、ひったくりの動きに合わせて1歩近づき、相手の顎に向かって掠めるように蹴りを放つ。
その間、1秒あるかないか。
正直酔いで相手の頬を蹴り飛ばす可能性もあったが、今回は特にそんなこともなく
俺は思わずホッと息を漏らすのと同時に、前のめりに倒れ伏すひったくり。
そのあとはひったくりの身動きをとれないようにして、適当に警察に連絡をし、カバンを持ち主に返しながら、なんやかんやあって俺は今、帰路についている。
最初は商店街(小)のみんなに褒められたりなんやりをされて気分の良かった俺だが、そのあと待ち受ける苦行を思い出して、速攻げんなりした結果、なにもやる気が起きなくなって、仕方なく家で書類を書くために帰路についているところである。
「あ~、くそ!あのひったくりに出会わなければ、あのめんどくさい書類を書かずに済んだのに!あーほんとくそ!!」
なんて愚痴を吐き溢しながら、家の前にたどり着くと、予想だにしてないものが目に飛び込んできたのだった。
まず、尋常じゃないまでに瘦せ細った体。
もう飯全然食ってないんじゃねってぐらい瘦せているのが、服越しに見てもわかる。
そして、今じゃ普通だが、個性がなかった時代には珍しい、染めていない、正真正銘の金髪。
特徴をあげればまだまだあるが、今はそれを割愛するとして、そんな人物が俺のマイホームの前に立ち塞がっている。
そいつは、俺の気配か何かを感じたのか、ゆっくりとこちらに振り返ると、その病的なまでに痩せた顔全体に笑顔を浮かべてた。
「やぁ、久しぶりだね。
そいつは――その人は、No.1ヒーロー、オールマイトその人だった。
はじめましての人ははじめまして。
久しぶりの人は、遅くなってごめんなさい。
生粋の飽き性こと、ホム竜です。
就職やらなんやらで忙しい日々を送っていましたが、会社の休憩時間に小説を書けることが判明したため、久しぶりに書きました。
今のところは休憩時間だけでしか書けていないので、カメの歩みよりも遅い投稿ペースにはなりますが、よろしくお願いします。