片田舎に拠点を構える、飲んだくれなプロヒーローのお話 作:ホム竜
俺は今、パック酒を片手に新幹線に揺られている。
結局あの後、最終的にオールマイトが土下座をもしようとしだしたので、仕方なく……ほんっとに仕方なく、オールマイトの補佐として、雄英の教師になることになった。
まぁなるって言っても簡単なことではなく、いろんな書類とか、資格試験とか諸々を、ヒーロー活動をしながら行わなければならないという激務に追われることになったのだが、まぁなんとか入学式までに間に合わせることができた。
ほんとオールマイト許すまじ。
てな感じで、内心でオールマイトへの恨み辛みを吐いていると、目的地に到着したのか、新幹線が動きを止める。
俺は荷物を持って席から立ち上がろうとするが、突然新幹線全体に衝撃が走り、俺は再び席に座らされる。
──その反動で、アルコールが体の中で暴れ始めた。
「うぼぇっ!?」
急激にせり上がってくる胃液。思わず飲み込むが、口の中が酸っぱい……。
俺は胃が落ち着くまで深呼吸を繰り返すと、激しい吐き気は治まるが代わりに、イライラが湧き上がってくる。
「ちっ! んだよ、オールマイトからの懇願でここまで来たってのに、なんで俺ばっかりこんな目に……!」
パック酒を一気に飲み干し、新幹線に設置してあったゴミ箱に叩きつけるように捨てながら、俺は新幹線から降りようとすると、駅員らしき人物が出入り口に立ち塞がる。
「悪いんだが、通してほしいんだけど」
「申し訳ございません! ただいま線路の上に
「なら好都合だな。外に出させてもらうぞ」
「!? いけません!」
まぁ、外に敵がいるのに出ようとすれば止められるわな。だけどまぁ、俺、
「安心しろよ、俺もヒーローだ。飲んだくれ、だけどな」
俺は駅員に向かって、少しだけニヒルに笑みを見せつけた。
「嘘をつくな! こんな格好のヒーローはいるわけがないだろ!!」
後ろにいた子供に指をさされながら、そんなことを言われてしまった。
まぁ、今の俺の恰好、無地のTシャツにジーパンだからな。傍から見りゃあ、ただの少し遠出をしているおっさんだわな。ごめんな少年。
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まぁなんやかんやあって外には出させてもらえた。
ちなみに少年には、「こんなのヒーローじゃない!」と言われて泣かれてしまった。だからすまんて。
「にしても、これは随分な暴れ具合だな」
辺りを見回してみるが、駅は半壊、線路はぐちゃぐちゃになっている。むしろよくこの列車は無事に止まれたな、なんて思いながら一両目に近づいてみれば、車掌室が見るも無残な状態になっていた。
列車から目を離し、少し先の方から聞こえてくる轟音の方へと歩いてみる。
そこには数人のヒーローと、八本の長い首を持ったドラゴンのような生き物が戦闘を繰り広げていた。
「八岐大蛇とか、めっちゃいい個性じゃねぇかよ……」
俺の勘違いじゃなければ、あれは日本神話とかに出てきた怪物、八岐大蛇だ。
……道を間違えてなければ、上位を狙えるヒーローにもなれていたのかもしれないのに。運命って相変わらず残酷だ。
あ、火ぃ吐いた。
こちらに向かってくる火の玉を脇にずれるように移動して避けると、八つの首のうちの一つが俺の方を見てくる。
「な!? なんでこんなところに一般人がいるんだ!? 自殺願望なら別のとこでやれ!!」
ヒーローの一人が俺のことを見てそう叫んでいるが、もちろん俺は止まらない。ていうか、仮にもヒーローならそんなこと言っちゃダメでしょうよ……。
「おいおい、一応これでもヒーローなんだぜ? 俺は」
そう言って体に力を入れると、脳内に何十もの人型の影が映りだす。
これが俺の"個性"。これが原因で人生マジで大変だったけど、ヒーローとして使うならこれ以上のものはないと自負している。
「いくぜ、日本神話の蛇野郎! 変身! ──────!!」
以下、応戦していたほかのヒーローからの証言
「あんなの、敵とヒーローの戦いじゃねぇよ……。まるで世界の終わりでも見てるような気分だった……」
「あのヒーローが、なんで今まで無名だったのかわかんねぇよ。敵も敵だったけど、あいつもあいつでバケモノだよ、あれは」
「一昔前の作品だけど、まるで【ゴジラVSキングコング】でも見てるようだったよ。それよりも遥かに迫力とか色々凄かったけど。まぁあと、彼には事後の諸々とかやってほしかったなてのは、正直思ったかな」
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「君の実力は評価してるけど、この遅刻癖は何とかしてもらいたいね。こちらとしては」
「……すんません」
俺は今、目の前にいる自身よりも遥かに小さい存在に対して、できるだけ身を縮こませながら土下座をしていた。
「まぁ今回は道中で敵に遭遇して、それの対処に遅れていたみたいだから不問ってことにするのさ!」
「あぃざいます! 根津校長!」
根津校長が寛大な方で助かった……。っていうのはさておき、こんな感じでわかると思うが、俺はあの後無事雄英に辿り着くことができたものの、既に受験は終わっており、今は複数の教員と共に合格か不合格かを決定している最中だった。
で、俺はその重大なことを決めているところに、荒いノックをしながら入ったところ、まぁ当たり前だが、注目され、今に至る……というわけだ。
で、根津校長からお叱りを受け、いざ自分の机に向かうと、そこには天井に届きうるほど積み重なった紙の山が。
「スゥー……えーと、これは?」
「君の分の仕事さ! まさか遅れてきてみんなと同じ量の仕事ができると思ってたのかい?」
「いえ、頑張らせていただきます……」
今日はもう酒が飲めないことが確定した。
ちょっと最近さぼりすぎたので、少しずつ更新していきます
主人公の"個性"の片鱗が見えてきました