お嬢様と往く、『スーパーロボット大戦31』   作:和鷹聖

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前回はそうとうふざけてしまい、申し訳ありません。
ああいう時でないと、羽目ははずせないので……

さて、前回の事は忘れて、次行きましょう。


05 お嬢様、凶鳥と出逢う

 

 

『 連邦本部 』

 

「……『神文明エーオス』。それがこの女の、ね。」

「ああ。」

 

ファイクス・ブラッドウッド准将を一応説得したカルディナ一行は、ファイクス自身から一連の原因を告げられたのだった。

 

 

──『神文明エーオス』

 

それは太古の昔に存在していた古代文明で、過去に様々な生命のある惑星に干渉し、生命の知性化を行い文明を発展させてきたという。

だがそれと同時に自らを「神の文明」と自称し、自分達の意にそぐわないような進化を遂げた文明を「創造主としての責任を取る」という名目で一方的に攻め滅ぼして来た経緯もある。

そこは、スパロボ過去作で言えば、『Z』の御使いや、『V』の超文明ガーディムのような、言ってしまえば迷惑千万の()()した存在であった。

さらに、知性化を行った生物の遺伝子に『服従遺伝子』と呼ばれるDNA情報を埋め込み、『支配の波動』と呼ばれる感応波を放つことで意のままに操る事が出来るという厄介な事もしている。

 

「さっきの電波はそれでしたか……」

「南極で()()を最初に発見した我々は、ファーストコンタクトで放たれた『支配の波動』でその大半が耐え切れず、死んだ。私は有効利用出来る可能性があって、辛うじて生き延びさせられたのだ。」

「波動自体に強くし過ぎると、その生命体の精神が耐え切れずに狂い死にしてしまう可能性を有していましたか……やはり封じて正解でしたね。」

 

ファイクス自身、『支配の波動』に拮抗するのに3年は掛かり、その間は激しい自傷行為で我を正そうとしていたようだ。

想像を絶する経緯があったようだ。

 

「ですが、先程は然程効いていなかったように見受けられましたが……」

「ああ。側近のヘラウテーラには多少抵抗出来る因子があるため、対抗は出来ただろうが、私は必死になってようやく気を辛うじて保てる次第だ。だがあれは今まで感じた事のない波動だったが……今回はそれが効かなかった。」

《ああ、それでしたらこの基地に出荷しています我が社の商品の影響ですね。》

「何……??」

「え……V.C.何かありましたっけ?いろいろ出荷していますので心当たりが……」

《あの『支配の波動』とかいうものは『呪い』や精神制御等の、電位操作に該当しますが、それらは『バルサミコ酢』で解除出来る程度の力しかありませんでした。ほら、お嬢様が『ポケット』に入れていた……》

「ああ、バルサミコ酢。熟成期間が足りなくて手持ちのワインを継ぎ足したあれですか。」

「……ちなみにそのワインはどんな代物だ?」

「いえ、品質的には普通のワインですわよ?ただ、術式構成の段階で解呪能力をMaxにしてしまって……作った当時は『解呪、最強!』とか思って、大量生産してしまったんですわよ。」

 

そんなものを世間に出していたのか!?と戦慄するファイクスとヘウテーラ。

しかも安価で栄養もあって美味しいため、出荷地域は非常に広く、好評である。ついCMを作ってしまったのはその影響もあってだ。

故に今では広範囲の国や家庭に好まれて使われているが、薬物の異常や洗脳とかも解除し、更に異常状態に対し、抗体を作ってしまう効果もあり、一部で多大な混乱を出しており、紛争地域の脱走兵の増加や、薬物依存症患者が激減したという事態が発生しているが、流石にそこまでは預かり知らぬカルディナであった。

だが……

 

「非常に美味しいと好評なのですがあれ、うっかり溢すと付与魔法とか解けるんですよね。それに当時使っていた空き瓶を再利用していたため、お家のワインセラーにも未だに何本か紛れているんですよ。」

「うそぉ!?ヴィータ、それ本当!?もしバレたら……」

「……公爵(クリストファー)様に怒られそうです。」

 

震えて恐怖するヴィータに、頭を抱えて戦慄するカルディナ。

ボトルの再利用という偽装がバレたら、お説教コースは絶対だろう。

彼女らにとってそんな事よりも身内に怒られる方が怖いので、当の本人達にはどうでも良かったりする。

 

閑話休題。

 

そしてそのような影響もあってなのか、この世界(スパロボ30)の地球もエーオスの干渉によって発展と進化を遂げた文明に当たるようで、その影響は多々あるようだ。

そしてそんなロクでもない手段を講じる集団である以上、当然ながら世界には『抑止力』が働く。

 

エーオスを倒すべく、同じくエーオスの干渉によって発展した宇宙中の戦士達が文字通りスパロボの軍勢の如く集い、集まった集団があり、これらとの戦いによってエーオスは敗北を喫した。

 

しかし全員死亡した訳ではなく、唯一生存していた者がおり、後にドライストレーガーとなる戦艦の素体と共に南極で眠りについていた。

 

その生き残りがオルキダケアであった。

 

そしてオルキダケアは諦めてはいなかった。

己の持てる手段を全て使ってでも、自分達を滅ぼした者達に復讐を───

 

そして未だ画面の中でのびているオルキダケアを見て、カルディナは溜め息を吐いた。

 

「……そしてアズ───ひいては『A機関』の子供達はオルキダケア……いえ、エーオスの先兵になる予定だった訳ね。」

「そうだ。だが『A機関』の者達はオルキダケアに対する対抗策の一つでもある。『支配の波動』を跳ね除け、抗える力を持つための、な。」

「……だからあんな拷問と同様の過酷な訓練を施したって言うんですか?」

「否定はせん。早急に力を積んでもらう為には、手段を選んでいる暇などなかった。オルキダケアに真意を知られずに遂行するには限られた手段、方法しかなかったのだ。」

「だからと言ってそれが許されるとでも──!」

「無論、そんな事は思っていない。それが我々の罪だ。少なくともオルキダケアの件が終われば、『A機関』の事は公表し、然るべき沙汰を受けるつもりだ。しかしどんなに恨まれようともやるしかなかった。我々には時間もなかったからな。」

「……」

「だがお前達がそれを、オルキダケアを封じ、覆した……礼を言う。そして、アズ・セインクラウス……済まなかった。」

 

深々と頭を一同に、そしてアズに頭を下げるファイクス。

それは苦難を耐えて来た男の、心からの謝罪であった。

だが、そんな事でアズの気持ちは晴れる訳もなく、アズにはどうしようもない憤りが残る。

だがそれを諌めたのはカルディナであった。

 

「──アズ。ここに来る前に話し合ったでしょう。『恨みは恨み、償いは償い』よ。この男には利用価値は充分にあるんだもの、それを果たさせてからね……それ以外は、駄目。」

 

カルディナが連邦本部にカチコミを極めに行くと決めたその後、カルディナはアズの気持ちについて整理させた。

ファイクスが原因でアズに辛い過去を背負わせたのは事実。

だが、それを血の連鎖で繋げる訳にはいかない。

アズの義兄とて、アズにそれを望んでいる訳ではないだろう、(当の本人がするかは別として。)それはアズを辛くさせる選択肢でしかない。

なので、ファイクス自身を強く恨む事は良しとしても、その償いは別の方法でさせる、という事にした。

 

「それに今は、追われなくなった事を喜んだ方がいいわ。もう追われる事に怯える日々はなくなったのよ。」

「……うん。」

 

ひとまず納得はしたアズだが、それでも燻る憤りは消せないようで、アズは独り部屋を出て行くが、誰一人アズを追わなかった。

 

「……良いのか、追わなくても。」

「無理に気持ちを呑み込め、なんて言えません。『A機関』でアズが体験した事はそう簡単に振り切れるものじゃない事は承知してます、今は気持ちの整理が必要でしょう?辛い過去に向き合う時に支えは必要でも、いざ向かい合えるのは自分だけ……今のアズにはその時間が必要なのです。私達が出来るのは、アズが必要とした時に、手を差し延べる事ぐらい……アズにはそれくらい跳ね退けるぐらいの心の強さは持って貰いたいんです。」

「まるでお前もそうあったような物言いだな。」

「その辺りは嫌と言う程経験済みですわ。」

《掌握したシステム越しには見ていますので、何処にいるかは把握してますので、今は自由にするのが一番かと。》

「……私が言う事ではないが、あの娘がお前達のような者に拾われて、(さいわ)いだったと言える……礼を言うぞ。」

「……ファイクス准将、よくもそんな風に真正面から言えますわね。」

「何がだ?」

 

まさかファイクスから真正面からお礼を言われるとは、流石に気恥ずかしくなって顔を逸らすカルディナに、表情こそ解らないが、態度が『どやぁ』なV.C.とヴィータであった。

 

「ま、まあ今のアズには私より上手くアドバイスが出来る()()がおりますので、そちらは任せるとして、ファイクス准将……そしてオルキダケア。もう起きていらっしゃるのでしょう?貴女にも伺いたい事が御座います、宜しいでしょうか?」

 

カルディナの声に反応し、そしてゆっくりと起き上がるオルキダケア。

その表情は何とも言えない神妙な顔をしていた。

 

《……いつから気付いていた。》

「電位体が目を覚ませば、気配で判りますわ。」

《小娘、お前は本当に人間か?》

「純粋な人間(ヒューマン)であれば、笑えたんですがねぇ……残念ながら半分人間では御座いません。」

《ふん。少なくとも、今の妾ではそなたに楔を打ち込まれいている状態、無駄に抵抗はせんわ。》

「……そうか。なら答えられる範囲でならいいが、何が聞きたい?」

「それでは……この本部を今日、もう一度調べた時にわかった事ですが……地下にある機体、あれがどうしてここにあるのですか?」

「知っているのか?まだロールアウトもしていないのだが……」

《……もしや他次元にもあるのか、あれが。》

「ええ……ではお尋ねします──」

 

そしてこの話が予想外の展開を迎えるのだった。

 

 

『 連邦本部 通路 』

 

(──わかってる、お姉ちゃんの言う事は正しい、全部予想通りで、そして全部わかって気遣ってくれてる事も。そして、やっぱり自分の気持ちの整理が付かない事も……)

 

呆気なく終わったアズと『A機関』との関係……その速さは事前にカルディナから知らされた通り、半日どころか瞬く間に終わった。しめて一時間と言ったところ。

早急な事態解決を誰もが望んだこともあり、早急に事態が進んだ。

そして、解決──

 

「私は……」

《──アズ。》

「うひゃあ!?って、V.C.?びっくりしたぁ……」

《失礼しました。》

 

アズの髪を留めてあるゴムの飾りのコスモス(V.C.)が悪びれもないで起動し、

この1ヶ月、優れた姉達を持つアズがへこたれたのは、星の数知れず。当然ながら挫折は何度もした。

そんな中で相談をよくしていたのはV.C.であった。

ヒトであれば角が立つものの、AIであればそこは和らぐ。

そしてアズもそこは嫌がらず、愚痴も含めて普段から話をしていたのだった。

実際、カルディナがアドバイスをしても時折、正論ハラスメントギリギリの厳しい事を言ってしまうため、鉄華団を相手にするよりも難しかったりする。

なのでアズが落ち込み、そして復活する傍ら、知らないところで、カルディナの頭の上で「ヘイヘイへ~イ♪私のアドバイザー能力は如何ですかぁ~♪」と得意げに踊るダンシングフラワーがいたりする。

その度に暗い笑顔で悲鳴を上げるコスモスで花占いをしていたとか。

 

閑話休題。

 

《上手くいったと思うのですが、結果に満足出来ませんでしたか?》

「ううん。この結果は私も望んだ事だからいいと……思う。でも……」

《釈然としない、ですか?》

「うん。」

《なら、一つ一つ整理して行きましょう。今回の事はお嬢様方主体でしたが、アズは良かったですか?》

「かもしれない……私じゃどうする事も出来ないから。」

《ファイクス准将はこれ以上アズを追わない事を宣言してくれています、安心しましたか?》

「うん、それは安心してる。でも……」

《心残りは『A機関』の事でしょうか?》

「そう、かもしれない。でも敵討ちがしたい訳じゃない、それでも何がしたかったんだろうって、漠然としているの……」

《劇的なものを期待していましたか?》

「劇的……うん、別に誰かを倒したりしたい訳じゃない、でも私自身で何かしたかった……?カルディナお姉ちゃんみたいにズバッて……」

《自分の手で解決したかったのですか?》

「……うん、そうだ。私、自分でどうにかしたかったんだ。でも……」

《フフフ。》

「え、V.C.、笑った?」

《失礼しました。でも初めて出会った当初のアズからは考えもしない発言でしたね。》

「あ……」

 

そこでようやく自覚する。

自分はいつに間にかそんな風に考えられるようになっていたのだと。カルディナ達と出逢う前は、そんな事すら考える余裕すらなかった流されるまま生きていた自分が、いつの間にか『自分の力でどうにかしたかった』と思っていた。

 

《アズ、以前にも言いましたが、人は生きる上でどうしてもままならない時が多々ある、と。》

 

出会った当初、V.C.がアズに言った言葉であった。

どんなに望もうとも状況や環境、そして人の『(えにし)』によってはどうしようもない───ままならない時があると。

逆に言うなら状況や環境、縁が望む域までに届いていれば、大概の事は何とかなる、場合によっては望むままに事態をコントロールする事が可能なのだ。

そしてそんな大概な事を可能としている身近な存在こそが、

カルディナである。

 

《ですがあのお嬢様を手本にし過ぎると、どうしても『どうして自分は──』と劣等感を錯覚してしまいます。あの人は良い意味でも悪い意味でも()()()()()()です。》

 

今までの環境と状況故に、カルディナは無理でも強靭な成功の道筋(サクセスルート)を構成する必要があるため、闊歩するフラグと化しているカルディナ。

ゾンダーを倒すべく幼少より森羅万象を極め、人身掌握に長けるように学び、さらに『道を極める』という底無し沼に予備動作なしの多重分身で最深深度への直行を喜んで行う人物だ、そんな人間を辞めているような人物に拮抗する事は、命を極限まで摩耗し、その削りカスでさらに自分の命を燃やすようなもの。

その生き様、能力は正に理想そのものであるが、当人がそれをやって大丈夫なら、自分もと安易に真似をする事は高度な自殺である───

 

アズはカルディナの真似をしようと悉く失敗し、絶望した時に聞いたV.C.の言葉で、その事を思い出した。

 

ではアズのように、己を凡人と思う者はどうすべきか───

 

《『意志』を見せるんです。『自分はこうしたい!』と。そして『助けて、手伝って!』と。安易な真似は駄目ですよ?あの高貴なる者の義務(ノブレス・オブ・リージュ)の塊みたいな人には直に訴える……それが一番です。》

「でもそれじゃ、自分の力でやってない事になるんじゃ……」

《残念ですが、アズにはまだそんな問題解決能力はありません。それに強権者の力を頼る事は悪い事じゃないです。むしろ頼る事もまた力───人脈です。》

「人脈……」

《今回この結果を迎える事が出来たのは、アズがお嬢様を動かした事にあります。それもまた「力」です。》

「それも、力……なんだ。」

《そしてアズだからこそ、成しえた。それは独力で事にあたるよりも、ある意味難しいです。お嬢様は短い間でしたが、会社の仕事を通して、それを教えたかったんです。》

「あ……」

 

言われてみればその通りだ。会社はあらゆる分野の事を行われなければならない。特に『C商会』はその傾向が特に強い。

アズが携わったCMも様々な技術者が手掛けなければ出来ず、そもそも売る食料も広範囲に亘って従業員が関わっている。

カルディナはその最中核にあたる。

だが……

 

『私とて、様々な要素が絡み合って強く見えるんです。商売一つとっても私独力でやるなんて無理無理。一番大切なのは、如何に心を通わせられるか、ですわ。』

 

人は1人では何も出来ない。しようとすればいつか破綻する。

意思疎通が円滑に出来る事そこ最強なのだ。

それもカルディナですら例外ではない。

 

《アズ、独りで事を成したい気持ちは誰だってあります。私もその方が早いと思ってしまう部類の一つです。ですが今はこう思います。人でも機械でも『繋がりこそが宝であり、力』だと。》

「あ……」

 

そもそも、この状況はアズとカルディナ達が出会ったからこそ起きた結果なのだ。

そう考えると、怖かった気持ちも少し安らいできた。

 

《怖い気持ちはすぐに治まる事ありません。ですがそれをどんな形であれ、私達『姉妹』は受け止める事は出来ます。》

「でも迷惑じゃない?」

《何言ってんですか、『姉』は頼られてナンボです!そのためにこの世界の最大級の組織一つ潰す事の出来る姉が、アズにはいるんですよ?》

「あ……あははは!確かに。」

《……少しは元気出たようですね。》

「うん。それに少し気持ちの整理がついたかな?確かにまだ『A機関』の事はトラウマになってる……でも私には頼っていいお姉ちゃん達がいるってわかった。だから……少し気が楽になった。」

《宜しい。》

 

自然に笑うアズにふんす、と誇らしげに喜ぶV.C.。

その時であった。

 

──ピピピピピ

 

「あ、アラームが鳴った。という事は……」

《幻術で眠らされた基地内の兵士達に掛けた術が解ける時間ですね。この後はファイクス准将の状況説明を予定しています。》

 

そして基地内にファイクスの声が響く。

内容は突如テロリストに襲われて、基地に幻惑を見せる特殊なガスが撒かれ、制圧されそうになった事。

それをたまたま来ていたファイクスの客人と共に、ファイクス自身と部下達と共に撃退に成功した事が放送で説明された。

基地内の兵士達は困惑していたが、危機が去った事にひとまず安堵し、状況復帰に遁走していた。

 

「……これで、どうにか治まった、のかな?」

《その様で。》

「じゃあ、私達は帰る準備を──」

《──アズ、伏せて!!》

「!?」

 

──爆発音と衝撃が、基地を大きく揺らす。

 

咄嗟に伏せたアズは平気であったが、遁走する兵士達は壁や床に叩きつけられる者が続出し、基地全体が混乱する。

 

「い、いったいなにが……」

『き、緊急警報!基地外部に未確認の機動兵器と思わしき物体1!後方より同型を多数確認!大きさ40mと推定!基地に向かって攻撃しています!』

「館内アナウンス……って、敵襲!?」

《……敵は索敵範囲外からイかれたスピードでこちらに来ました。サテライトリンクの索敵もかいくぐって……そのために索敵とお知らせが遅れました、屈辱!》

「V.C.……とりあえず、お姉ちゃん達のところに戻ろう。」

《わかりまし───待ってください!》

 

今度は何事かと思いきや、アズは窓の外に巨大な機械のライオンが空を駆ける姿を見たのだった。

 

「あのライオンは……カルディナお姉ちゃん!」

《マギウス・ギャレオン……お嬢様が出撃しました。》

 

基地に攻撃したのは鉄色の胴体に、一対の砲門と脚のみを備えた40mクラスの大型のマシン。それがおおよそ十を超えて中隊編成でやって来たのだが、その中央をマギウス・ギャレオンが掻き回し、さっそく一機撃墜する。

次いでどこからか現れたのか、機械の新竜(ドラゴン)古竜(ドレイク)魔狼(ガルム)有角翼馬(アリコーン)不死鳥(フェニックス)が空を舞い、他のマシン達を牽制する。

 

「やった、マギウスマシンだ!これならあいつらを撃退出来そう!」

《いえ、駄目です。》

 

一機撃墜までは良かったが、敵機の中で一機だけ抜きん出て突出する機体がいた。

他の機体より倍は速く、旋回と同時に砲撃を繰り出してはマギウスマシン達の連携を崩しにくる。

攻撃こそ当たらないが、外れた砲撃が周辺に飛び火して被害が出始めている。それどころか、基地を中心に周辺地域すら無差別に攻撃している。

アリコーンガオーとフェニックスガオーの連携したマギウスフェザーで広範囲を防いでいるが……

 

《このままでは、押し切られます!》

《止めるためにはファイナル・フュージョンするしかないが!》

《弾幕が多過ぎてフォーメーションを組めないよ!》

《防御はアリコーン、ツールはフェニックスが担当だからな、エネルギー切れは時間の問題だ、これは拙いぞ。》

《ドラゴンとドレイクがいなければ継続したエネルギー供給は出来ない。かといって強行してしまえば周辺の被害は甚大……こうなりゃ少しでも数を減らすか、あのすばしっこいのを抑える事が出来ればねぇ⋯⋯》

《マギウス・ガオガイガーなら一度に相手も出来ますが⋯⋯!》

「その為にこの状況をどうにかしませんと……!」

 

悪魔達、天使達が愚痴る程には面倒な相手であった。

被害を無視してファイル・フュージョンを強行するか、我が身を省みずに、耐えてじっくり各個撃破するか。

究極の二択であるが、カルディナ達はどちらの挑みも、望みはしない。

どちらも犠牲が出る選択肢だ。

 

《ですがこのままでは……》

 

そんな中、基地から緊急発進したMSがあった。

ジェガンやアンクシャ、リゼル等の可変型MSである。

 

「あ、駄目!!」

 

だが突出したあの機体がカルディナ達から矛先を変えたようで、基地から出てきたMSに急襲、攻撃を仕掛ける。

連邦本部所属のパイロットである以上、腕の立つ由緒『名無しのモブ』であるが、それすら軽く超える機体スペックは、放つビームを悉く避け、カウンターで撃ち込まれた砲撃が次々に叩き込まれ、機体は撃破されずとも、戦闘不能にまで追い込むダメージを与える。

 

「──フュージョンッ、マギウス・ガイガァァァーー!!」

 

その時、マギウス・ガイガーへフュージョンしたカルディナが、その間に割って入った。

ガイガークローで殴り飛ばし、弱って動けないMS達からその機体を引き剥がした────が、その間際に近距離からの砲撃が何発も炸裂し、ガイガーも吹き飛ばされたのだった。

 

「────!!」

 

……そしてその光景を目の当たりにしたアズは、どうしようもない驚愕と恐怖を感じ───それ以上の勇気を振り絞って駆け出した。

駆け出した先は、先程の部屋。

だが、そこにはヘラウテーラとヴィータ以外は誰もいなかった。

 

「はぁ、はぁ……ファイクス准将は?」

「あの方なら先に行きました。」

「ならヘラウテーラさんでもいいです、私に空いている機体を貸してください!」

「……それは無理だ。お前に貸せる機体は()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「え……?」

「アズ……戦う決意をしたんですね。」

「うん。」

「義姉としては複雑ですが、戦士としてはその気持ち、応援します。」

「……どうやら嘘ではないようだ。案内する、ついてこい。」

 

 

『 連邦本部 地下ドッグ 』

 

「───!?」

「……来たか、アズ・セインクラウス。」

「ファイクス准将。それにこの機体は……」

「奴らの狙いがこの機体だからだ。どこから情報が漏れたか解らんがな……今は最終調整に入っている。」「……」

「だがこれはまだ未完成品でな、先行して完成させた『1号機』とは違い、応急処置のパッチアーマーやADテープで仮留めしている箇所もあり、本当の意味で『未完成品』だ。」

「使えるんですか?スペックは?」

「最低限動くように整備してある。それでも現行機よりも性能は高い──使うか?」

「はい。」

「……迷いが無くなったようだな。お前の義姉に、もしもの時にと言われ、調整を急がせたが……何故急に戦う気になった?」

「……正直戦うのは怖いです。でも、大切な人が苦しんでいる姿を見るのは、もっと嫌。だから戦うんです、否応なしに持たされた力ですが、私が生きるために、後悔しないために!」

「……お前の義姉の言う通りだったな。」

「え?」

「わかった、遠慮なく使え。」

「はい!」

 

 

『 連邦本部 戦闘空域 』

 

 

《───お嬢、大丈夫か!?》

「ええ、この程度問題ないですわ。」

 

吹き飛ばされたマギウス・ガイガーだったが、特にダメージはなかった。

だが、相手が厄介なのはそのままである。

 

《ですが、このままでは……》

「こうなれば、ガイガーのままであのすばしっこい……高機動型と称しましょうか。奴のを討ちます。その分、皆さんには無理を掛けますが……」

《構わねぇさ。》

《ジリ貧だからね、やっちゃってよ。》

《お嬢様の意志のままに。》

「ありがとう……では───!?」

 

───だがその時、『スパロボ30の世界』がカルディナに牙を向く。

 

何故ならカルディナの視界の右上に信じられないものが映ったからだ。

 

 

BGM select 『 Divine beast 』

 

 

♪~

 

「……は??」

 

その瞬間、軽快な音楽と女性シンガーのコーラスが響く。

 

♪生きてる 冷めた視線に苦しみ

 見えてる 本当の自分に向き合えずに

(Woo Wooo~♪)

 

そして流れ始める歌に呆気に取られ、つい動きを止めてしまうが、同時に基地内の地下搬入口から、勢い良く()()機体が飛び出した。

そして手に持つフォトンライフルの銃口をマギウス・ガイガーを狙う高機動型に狙いを定め、撃ち出す。

 

《───!?》

 

意表を突いたようで、動きに動揺が見られバランスを崩された高機動型撃。

更に───

 

《──ターゲット・ロック、アズ!》

「うん!リープスラッシャー、行って!」

 

バックパックにマウントされた複数のビーム発生器が射出、輪っか状に繋がる事で誕生した『リープスラッシャー』で、高機動型がその変幻自在で多彩な動きで切り裂かれる。

撃破まではいかなかったが、バランサーに損傷を受けたのか、高機動型は後退する。

 

そして無事だったカルディナは、流れるBGMの事は思考の脇に置き、目の前に現れた()()()()()()()()()()に意識を向ける。

 

《お嬢様、この機体は……》

「私が知るものとは違い、メインカラーがネイビー色で細部にも変更点はあり、何より『アッシュ』のようなバイザーを付けてますが、あのデザインは間違いなく───ヒュッケバイン!

 

しかも初期型のパーソナルトルーパー、ヒュッケバインが今、カルディナの目の前に現れたのだった。

 

《こちらの世界で『XXX(XENOGENEIC X-FACTOR X-TYPE)プロジェクト』で製造された、名前を『ヒュッケバイン30』と言いましたね。》

「准将とオルキダケアからさっき聞いた通りだわ。未完成品と聞いていたけど何とか間に合ったみたいね。でもパイロットは誰が───」

 

すると、そのヒュッケバインから通信が入る。

 

「───お姉ちゃん!」

「アズ!?まさか貴女が……!」

 

そして、ヒュッケバイン30からの通信の主はあのアズからだった。

 

 

《NEXT》

 

 

 


 

『 次回予告 』

 

戦場に流れる『Divine beast』。

遂にその姿を現したヒュッケバイン30。

だが、謎の強敵である高機動型がマギウス・ガオガイガーのファイナル・フュージョンを阻む。

そしてアズよりの提案……起死回生のため高機動型に立ち塞がるヒュッケバイン30。

今ここにアズと高機動型との死闘が始まる。

そしてそんなアズにカルディナがとった策とは……

 

次回、『お嬢様と往く、スーパーロボット大戦31』

06 お嬢様、ヒュッケバイン30を援護する

 

これが勝利の鍵だ! 『マギウス・フェザー』

 

 

 





……いやぁ、しかし今年の夏も暑かったですね。
執筆中、ぐだって書けなかった日が何日あったか。
その分、家族サービスに費やしました。

次回は翌日です!

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