「クッソ、このままじゃ隠れる木も無くなるなぁ…」
今の私にはさらに発生した問題がある。
《…ユウ、やっぱりダメそう?》
「ごめんなさい、飛べなさそうですっ…!」
原理不明で飛んでいたせいで、もう一度飛べない。
既に私が身を隠しながら移動できる場所も限られてきているし、このまま流れで勝負を決めきられてしまいそうだな…。
とりあえず足元に落ちている木片を振りかぶって投げる。
「…せいっ」
「おっと、危ねぇな」
木片は命中するより前に空中で爆散した。
ルールその3の『いかなる攻撃でも』を悪用して弾幕抜きで勝とうと最初は思ってたんだけど…。
《その為に通常弾幕を許可したからね》
はい、バッチリ対策されております。あのビームだけなら懐に潜り込んでボコボコにしたり、石つぶて投げまくってたら良かったんだけど…通常弾幕って奴?あれがヤバイ、密度と連射、取り回しが良過ぎる。
「考えろ考えろ…弾幕を打つためにやってくれてんだから、捻りだせ私」
これは勝つ為の戦いじゃない、アリスさんは私が負けたとしても弾幕を打てるようになって欲しいんだ。
霊夢って奴と最低限話が通じるまでこの世界の基礎を教えようとしてくれている。
「どうやって空を…うわッ!」
また攻撃が尻尾を掠めた、木々が範囲から消し飛ばされるにつれて命中率が上がってきている。
「空、空飛んだ時…」
どうやって飛んでたんだよ私、何が自由の翼じゃ何が、羽もがれて不自由になっとるやないかい。
微かにキッカケになってたのは……私が、尻尾の力だと思ってた時で…。
「うぉわ!?」
身体に満ちる浮遊感…!キタコレ!尻尾愛してるぜ!心の声の音声認識付きだったとはな!
「チッ、なんだよ飛べるじゃねぇか…せっかく遮蔽物をここまで減らしたってのに」
《……ふむ》
「尻尾!この世界でお前も普通なら力貸してよね!!」
出ろー!弾幕出せ出せ!尻尾、君ならやれる頑張れる!
お前がこの世界に私を連れてきたんだから、少し位は役に立ってよ!今の所お母さんの姿に変身した事と飛ぶ事しかしてない、『人』の普通がこんな世界で、妖怪の力の尻尾なら弾幕ぐらい出してみろ!
「…!!」
《尻尾が…!》
金色の毛をした尻尾が、更に輝き光を増す。
「やらせるかよ!」
「やらせてもらいますッ!!」
八卦炉から放たれるレーザーの太さが今までの二倍になり、空中に居るユウに向かって薙ぎ払うように放たれ、追尾していく。
「ふぎぎぎぎ…地面で真上に撃つもんじゃねぇぜ、全く…!」
「うっわぁ…!今まで手加減してたって事!?だ、弾幕!尻尾ちゃんまだかなーー!?!?」
光ってるだけじゃねぇか!!打つならはやく……。
「喰らえぇぇぇ!!!弾幕はパワーだぁぁぁ!!!」
「やっぱりアンタ脳筋かよッ!死ぬ!死ぬってばぁぁぁ!」
《あら、張り切っちゃって》
「これが普通な訳無いだろぉぉぉ!!!?尻尾!!尻尾様ァァァ!!」
何でもいいから!!このビームごと吹き飛ばしてくれぇぇえ!!
ピカッ…!!
「へ?」
《ッ!!!不味…ーー》
「なんだ?」
尻尾から放たれる光が、辺り一体を全て包み込んでいく。
それと共に、私も意識を失って……。
■
「ねぇ」
「ねぇねぇ」
「貴方、食べてもいい人類?」
見上げて映るのは、真紅の瞳。
「……ぁ?…………ぇ?」
「もう一度聞くね〜?貴方、食べてもいい人類?早く答えてくれないと、余りに美味しそうだから食べちゃうよー?」
残酷な程に唸る声、眩しい位輝く金髪、段々と伸びてくる小さな手に付いた赤い爪。
「…ぉ…おい、美味しくない、私なんか食べたらお腹壊して……」
ガシッと首を掴まれて持ち上げられる、到底少女の見た目からは想像出来ない馬力、それが妖怪。
首から鳴ってはいけない締め付け音がする。
「がっ…」
「嘘つき!駄目だよ、そんなに美味しそうなのに嘘をついたら……閻魔に下を引っこ抜かれるって慧音が言ってたもん、そうだ、閻魔に取られるより先に貰っちゃうね?」
「ま、まっへ…なにが……なんだか…わかんなふて…あひす…」
ブチッ!!!
「ゴポッ…」
力任せに引き抜かれた舌を放り投げて、口でキャッチする。
「ん〜!貴方の血、貴方の肉ってこんな味なのね!こんなに『生』で食べて美味しいのは久しぶり!みすちーの焼き鳥より美味しい!特別?格別?良い拾い物だなー!」
痛い……痛い?痛い、痛すぎて何が…そうだ、弾幕勝負…弾幕勝負をしていて…そうだ、やらなきゃ、アリスが頑張ってって…。
「がぷぼ…がっ…ぶべ…」
「…?何て言ってるのか分かんないけど、大丈夫?…喉に血が詰まってて話せないのかー?それなら吐き出させてあげる」
握られる首に、赤い爪が突き刺さっていく。それと同時に口周りを食べられながらユウの口の中に溜まった血を飲まれる。
「ギッ…」
「…んむっ…話を聞いた後には持ち帰るからね」
「ぐ…がっ…」
「ぶっべっ…」
「んー?」
「ジッボッ!!!」
ユウの尻尾が光り輝く。
「ーーなっ」
【恋符 マスタースパーク】
ユウを掴みあげているルーミアを『ソレ』を模したであろう色彩溢れる虹のビームが尻尾の先から放たれ、ルーミアを吹き飛ばす。
甲高い悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、見えない程遠くまで押し上げていった。
「ぶぺ…ありす…おがぁざん……」
勝った、弾幕勝負に勝った。アリスは?アリスはどこ?
魔理沙を倒した、これで退治されなくていいんだよね?
「ありす…あ゛りず……」
「…ーーアリスは貴方を覚えてないわよ、ユウちゃん」
…?視界が真っ赤で何もわかんない…けど…
金髪?
「あり゛…す…?」
「ふふ…あらあら、たった一日なのに随分と好かれちゃって……というより、貴方の誰かさんと同一視してる影響かしら?心って複雑ねぇ」
「あり……ゴポッ……げぇっ…かふッ…」
「あら、呑気に話してる場合じゃ無かったわね……改めて…今度こそ、ユウちゃん…本当に……ーー」
「幻想郷へようこそ」
■
瞳の先に映るのは温かい手、優しい目に美しい金髪。
青い瞳、洋風建築が施された家の中、人形の様な彼女と居る。
真夏だというのに虫の音はひとつも聞こえてこない、不気味な程静かなこの空間でお茶を飲んでいる。
きっとこれは夢なんだろうと感じているけれど、目覚めたくも無い。
「…ダメかしら?」
「駄目ね」
そんな敷布団で寝込む一人を放っておいて、縁側に座る金髪の麗しい女性と、巫女服を纏う少女がスイカを手に話していた。
「訳ありでごめんなさいねー?霊夢」
「……」
「本当にごめんなさい!この通り!」
「…………」
「…ダメ?」
「駄目」
「んーー……ごめんなさいっ!」
「帰してきて」
「…うふふ、ごめんなさい、それも出来ない相談なの」
「……」
こめかみに指を当てながらしかめっ面を返す。
「コイツの由来も答えない奴と話はしたくないけど?習った通り、私から紫にあげれるのはグーパンになるけど、良いかしら?」
「んもぅ…私だって工夫してる方なのよ?」
「なら人里の学び舎にでも預けておきなさい、ただでさえウチは余裕が無いって言うのに…」
「それもアリっちゃアリなんだけどねぇ…まだ少し、様子を見たくて」
「……いつもの座して待つ、ね…これだから賢者は、アンタの家に連れていきなさいよ、アンタの事情でしょ?」
「藍が嫌がると思って、止めておいたのよ……同じ狐尻尾だし、浮気を疑われちゃうわぁ〜」
「ふんっ!」
ゴツんっ!
「アイテッ、何もゲンコツを振り回すこと無いでしょう!?」
「とにかく、ここに居させるのは絶対嫌だからね、言いつけは守ってあげるけど場所は別にしなさい」
「え〜?仕方ないわねぇ……それならぁ…」
「阿求ちゃんの所、とかどうかしら?」