チュンチュンチュン……。
「……んーーー」
鳥の鳴き声…朝か……。
「ん」
「そうだ、マイホーム手に入れてたんだっけ……頭いっったぁ…」
目を開けて天井を見る。ボヤ〜っとしたまま以前の事を思い出した。
最初の数十日は木と葉っぱで作った秘密基地みたいな奴が家だったからなぁ…。
ていうか、頭がガンガンしてクソ痛い。
「んーと?何してたんだっけ?」
…晩御飯食べに行って、鰻食べて…そっから記憶が……。
…ーー右手が重い?
「……ーーっ」
隣で私の尻尾と腕を抱き枕にして、可愛く寝息を立てて寝ている金髪。
「ルーミア……そうだ、あの後我慢しきれなくなったルーミアがお酒飲んじゃって…てか、なんで下着?……あれ?私も?」
それで酒癖がコイツめちゃくちゃ悪かったんだよな?お酒口移しされて、目が覚めたら…。
……。
ウグワァァァァ!?!?
「こっちは高校生だってのに…!」
何したかは覚えてない、何されたかも覚えてない、だけど、だけど…!!
「…聞き出しても覚えてないだろうし、何も変な事やってないのを祈ろう」
札〜…札、どこだ〜?外出歩けないからなぁ。そもそもルーミアに退いてもらわないと…。
「……」
「………もうちょっと寝よ」
隣で寝ているルーミアを見ていると、家のヨギボーを思い出すモチモチ感と安心感がある。一回あんなバチバチに喧嘩して、二十七回喰われても、喉元過ぎればこんなもんか……。
とりあえず、二度寝します。
■
どうも、私です。
最近は振り回されてばかりで、私の目的に辿り着くまでに随分とバタバタしていましたが……そろそろ本格的に帰る為の行動を起こそうと思います。
……本当は、お母さんが迎えに来るまで待っておきたい。夢境の中だと分かっていて、迎えに来るはずが無い、出来ないと理解していても……数年分の生活費は用意されていて家もある。
だから待ちつづけていたいよ?でも、そんな私の姿はお母さんに見せれないから…頑張ってみる。
博麗霊夢、その存在を打倒or説得して帰る、一度話をしてみなきゃまだ分からないけれど、アリスお母様の見立てでは永住を勧められると来た。
なので取り敢えず、尻尾を持っている妖怪ハーフ(仮)として、色々学んでおこうと思いまして……。
「宜しくお願いします、慧音先生」
「宜しく、これからはユウも寺子屋の生徒だ」
慧音先生に頼る事となりました。現在昼休み中の寺子屋に居ます。
「と言ってもユウは…確か外の世界である程度の教養はある筈だ、だから教える事は他の生徒とは違うものになる」
「ユウの見た目的には混ざってても大丈夫そうだけどなー」
「ルーミアはちょっと反省しといて」
「うー…」
ちなみにルーミアには『私は未成年を誑かした悪人です』って掛看板を付けさせて正座させてある。結局何があったかは話してくれなかったし。
「確か、高等教育、だったか?それ程まで学業を納めているのならば、児童との授業に混ざってしまえば逆に成長の妨げになる、故に個別授業を取りたい訳だが、それもそうは行かない」
「寺子屋にも時間割があるからな……ならば、どうするか」
それから話してもらった事は、実は慧音先生が前々から計画していた事の様で……。
「完全な!妖怪と妖精専用の塾の講師を担当しよう!!」
「…なんで時間割を気にしてる発言から、更に突き抜けてそうなっちゃうんです???」
「要は行う授業に不備が出来てしまうのなら、完璧に分けて2グループともに教えたらいい!外の世界でもクラス分けというものはあるのだろう?」
「まぁ、はい」
でも、確かに妖怪や妖精を人のグループに入れて授業する事には大きな問題があるらしい。
それは……人間の為に作成している授業である為に、妖怪や感性のズレている妖精にとって『内容の習得が困難である事』だ。
「チルノやルーミア、ちょろちょろと寄ってくる野良の妖精とかもそうなんだがな、大妖精は除いて感性……というか、人の視点じゃないからこそ勉強をどれだけ分かりやすくしても理解しきれないんだ」
少し極端になるが……例え話として、『1+1』という問題、これに対して児童は『数学』だと理解して、『1+1』の問題が求めるものが『2』という数字、数学の答えだと自然と理解している。
だが、妖怪は妖精は、『1+1』というものを『数学』だと理解していない、更に言えばそれが求めている答えが何かすら分かっていない。
『1+1』という文字だとしか分からないんだ、例え計算出来たとしても、それは理解では無く記憶による答えのコピー。
「私が教える様な人外の生徒の殆どは、ルーミアやチルノの様なものばかりだ、大妖精は除いてだが……まぁ、これにずっと悩んでいた」
「だから完全に分けてしまおうと?」
「ああ、丁度ユウの様な特例、転機が来たからな……ユウの話題を出せば阿求も納得するだろう、どうやら君は謎の依頼人のお得意様らしいし」
「……でもそれって、慧音先生はどうするんです?結局先生の身体は一つだし……負担は2倍ですよ?」
「ははは!単純に2倍という訳でも無いさ、少しは仕事量が増えるだろうがさして問題無い」
…いやいや、そんな単純に行くわけ無いだろうに、現代日本ですら教師は超過酷なブラック職だぞ?
「何故なら、妖怪妖精に向けての塾は『夜の部』として開講するからだ」
「実は言うとな、寺子屋の人間の子供達は浅めの夕時に返しているんだが……チルノ、ルーミア、その他諸々含めた人外の生徒は寺子屋に夜まで居候している事が多い、私とじゃれあったり遊んだり、弾幕を外の庭で撃ち合っていたり」
「……そっか、なるほど…そういう事ですね?」
「そういう事」
つまりは普段の夜での生徒との関わり合いを、そのまま『夜の部』として公認の塾に置き換えようとしているのか。
「あいつらは基本自由奔放、天真爛漫だ、ちゃんとした授業を作ったとして聞く奴は少ない、でも私はちゃんとその為の授業も用意してある」
「用意してあるって……どんだけ待ち望んでたんですか…」
「ずっと考えていた事だからな!人とを繋ぐ橋になるには、まずどちら共の事情を考える必要がある……まっ、そんな妖怪の為のものなんて役所が許してくれる訳無かったんだが」
「そこで私かぁ…」
よーー考えとりますわ!というか私の事情がちょっとおかしいのが良かった、人として滞在しながら必要なのは妖怪の知識、児童には混ざれなくて、平等を保つ事が出来ない。
……ま、といった感じでですね。
「今から私は阿求の所へこの話を持ち込んでくる、生徒になったばかりで済まないが、少しの間はお休みだ」
「行ってらっしゃいです〜」
手を振って、ニコニコとしながら爆走する慧音先生を見送る。
……完全に昼間、ニートになりました。
「ねぇユウ、どうするの?」
「え〜……暇になっちゃったしなぁ…」
「なら、遊びに行かない?魔法の森、妖怪と妖精の遊び場に、妖術と能力の使い方、勉強しに行きましょ?」
「…………」
この提案危険と言えば危険、普通と言えば普通。
「うん、お願い…案内してくれるかな?」
「分かったわ、それじゃ…手を繋いで?」
「う、うん…」
なんでこんな艶めかしいの…?
「…あら、うふふふ…ねぇユウ、こう見てみると、私お姉さんみたいね?」
「んー?なんでさ」
「それは…ユウの方が小さくて、ユウの方が幼そうだから」
「はぁー??」
「人里の小さな子の為のおべべを着て、同じ髪色の、近い年齢の人に手を繋がれて人里を歩いてる、どうかしら?」
「……う…ん、まぁ………待って、同じ髪色?」
何言って……私は純正日本人の真っ黒な……。
「は、あははははは…!もしかして気づいてなかったの?」
「え、え?まって…まって、何が…!?」
指で髪の毛を攫い、視界に入れる。
「私には貴方に何が起きているか分からない、けれど貴方が『特別』なのは分かってる」
「だからこれからも、仲良く、親しく、お願いね?ユウ」