『ユウ、頑張れ』
『立って、嫌な事、悲しい事をぶっ飛ばせ、這い蹲ってでも見返してやるんだ、自分にも相手にも、こんな辛い事でも止まらないんだぞって』
『それでも…辛くて悲しくて、もう立てないって全部嫌だ〜ってなったら』
『お母さんの事、呼んで』
『絶対に迎えに行くから』
「待ってる、ずっと」
ーー身体の変質から、1週間後。
「ユウ」
「なあ」
「聞いてるの?」
「お前!あたいの話聞いてるのかって!!言ってるんだけど!?」
「…ん…」
「寝坊すけ!せっかくさいきょーのあたいがお前を強くしてやろうって話なのに!ちゃんと聞いてない奴は教えてあげないぞ!」
「うん、ごめんね」
「も〜!ごめんなさいも軽い!もっとうやまう様に言えー!」
「チルノ様のお話でさいきょーになりたいです!お願いします!」
「宜しい!」
どうも、私…ーーはぁ。
ちょっと、話す元気も無い、どうしたらいいか分かんない。
「あははー」
「チルノちゃん!的準備出来たよー!」
身体の変質、私が何をして今こうなってるのかは大体予想がつく、『耳』だ。ルーミアの耳を食べたからきっとこうなっている。ただの人の部位だったら問題無かっただろうに、コイツが妖怪だから…だろうねぇ…。
「的…カエル……?」
「よし、しっかり見とくんだぞ?」
チルノちゃんの周りの空間から氷の粒が現れ、凝結し弾幕となってカエルに命中すると……。
「……」
凍った…。
「こーゆーふーにするんだぞ、分かったか?」
「どーゆーふーにだよ!?」
カエル氷漬けになってんだけど!?え?弾幕って破壊するだけじゃなくて、こんな個人個人で性質変わってんの??
「大ちゃんもやって見せてやれ!ユウは大ちゃんの…後輩?だからな、先輩として背中を見せるんだ!」
「う、うん」
大妖精こと大ちゃんの弾幕は翠色、チルノちゃんとは違って物質的なモノでは無く、ただの光弾ではあるが…それでもカエルをぶっ飛ばした。
……こっちは普通なのか。
「……やっぱり理解出来ないや」
「ごめんね…私の言葉じゃ説明出来ないかも、『出来ない』なんて妖怪初めてだから……」
「大ちゃんは悪くないぞ、ユウが物分りが悪いだけだ」
「あははー」
こんちくしょう、ずっとピーチクパーチク言いやがって、確かにずっとやって貰って分からないの一点張りは悪いと思ってるけどさぁ…。
……頭の中でずっと悩んでる事があって、こっちに集中できないんだもん。
「も〜…幽香の所へ突き出した方が覚えてくるんじゃないの?」
「チルノちゃん駄目だよ!?そんな事したらユウさんが消し飛ばされちゃう!」
……消し飛ばされたい、てか死にたい。早く髪色を元に戻したい。『何が起こっているか分からない』身体でいたくない。
それがずっと頭の中にある、でもこの今を捨てるには……、
「ねぇ、ユウ」
「……はぁ、何?」
「面白い?」
「物珍しいよ、こんな世界」
「面白い?」
「…面白いよ」
「もっと、面白い事しない?」
「…………断っても連れてくんでしょ?」
「ええ、だって貴方が『面白くなればなるほど』きっと…私の『
「……」
最近の悩み、最大の頭痛のタネが一生話しかけてくる。
1週間経って、私の身体に異変が現れてずっとだ。ルーミアにも元々の友達や居場所があったはずなのに永遠と。
寝て起きては私の髪の毛をむしゃむしゃしてるし、町では一生腕にピッタリだし、お風呂も食事も睡眠も自由時間が一切無い。
慧音先生に相談しろって?したよ、した上で……。
『ルーミアッッ!!!』
『慧音の頼みでも駄目よ、私はユウと一緒に居る』
『ならば……弾幕で決着をつけよう』
てな感じで、頭突き抜きのガチ喧嘩が始まりかけました。
止めたんですけどね、勿論ちゃんと理由はあります。なんとですね……慧音先生の夜の部、作れたんですよ。
……何日も使って、私も阿求ちゃんの所に押し掛けて……それでようやく作った慧音先生の夜の部の塾が……始まって、数秒でぶち壊れかけなければ私だって慧音先生に戦ってもらいたかったよ。
結局その後はギスギスしてそのまま、ここの魔法の森で私は霊夢に勝つ為の修行をさせられることになりました。
それが昨日の事。その間にチルノちゃんと大妖精ちゃんとも仲良くさせて貰って、こんな感じ。
「それじゃ、バイバーイ……」
「また明日も遊ぼうなーー!ユウ!」
「またねー!」
夕暮れが映る湖を背景に、手を振って2人とお別れする。
妖精についても大分情報は手に入れた、自然の顕現、自然そのものを由来とする肉体と精神……霊力、魔力も妖力も混ぜこぜの『自然』を体現する力。
だからこそチルノちゃんの弾幕は氷になったし(本人曰く氷の妖精)大妖精ちゃんは、翠色の少し鎌鼬や自然を彷彿とさせる弾幕の形。
……そして。
『妖精を、食べる?』
『『………』』
『あははは!!ユウは本当にバカだな!そんな事出来たとしても美味しくなさそー!』
『あはは、まぁでも出来ないと思いますよ?私達妖精は基本死ぬことは無いですし、口の中に入れれる程の妖精でしたら自然に消えていたと思います』
『そっかぁ…』
『…!うふふ、ユウ?そんな事聞くって事は、もしかして?』
『………うるせ』
この事については未確認、っていっても私が死ぬ前の事だから今の私には関係の無い事だが。
「わはー」
二人と別れてどんどん森の奥に進んでいく、夜になればなるほど力を増す妖怪にとって今からの時間は正に本領とも言える時間帯。
ルーミアはその象徴、暗がりが、闇が強ければ強いほどその妖力を増していく。
私にはその傾向は無い、ぐちゃぐちゃになり掛けてる私の頭の中でも、私にはお母さんが居る。
とっくに限界なんだなら、迎えを待つだけで許してくれるかな、お母さん。
「どこ連れてくのさ」
「そろそろユウも、本当に楽しい事したくなってきた頃かなって」
「楽しい事ぉ?今の所私はルーちゃんにクソみたいな事しかされて無いけど??」
「……あは、ユウも、『獣』を辞める時って事」
「……」
「私、本当に貴方の事が好きなのよ?ありとあらゆる意味で大好き、心の底から愛してる」
「聡く、強く、暗く、深く、そして可愛い」
「だから?お前の評価に一喜一憂すると?」
…ルーミアは夜になると口調が変わる、頭が回るというかなんというか、めんどくさい。
「つまりは一目惚れって事、貴方を餌としてじゃなくて、純然たる殺意を持って私に逢いに来た時から……私は貴方から目を離せない」
「貴方に手を伸ばせば、伸ばした手が私に返ってくる、覗き込んで見えるのは暗闇だけ、そしてそれは私でもあった」
「お前……本当に塾に居た時と同じ奴か?流石に難しく話し過ぎでしょ…愛の告白にそんな言葉使わなくてもいいじゃん」
「分かる?貴方の暗闇に私は誘われているの、私が誘っているんじゃないわ、貴方が私の手を返してくれていない」
「……はいはい」
毎度毎度の事だ、どうも魅力的な餌へヨダレが止まらないみたいです。
毎晩毎晩元気になっては屋台に連れてかれ、毎晩毎晩元気になっては私を褒めたたえまくる。
そしてその度に、私に『何か』を踏み越えさせようとしていた。
それも私は理解しているさ、妖怪関連だろう?
つまりはなって欲しいんだよ、完全な妖怪にね。
「人を殺す?人を食べる?妖怪らしい事をさせて、同じ妖怪にしようとさせて、何がしたいの?チルノや大妖精、人里皆との『ルーミア』は嘘なの?」
「違う、違うよユウ」
「それは、幻想郷の常識」
「貴方は外来人、ユウはユウの世界の常識で生きてきたのよね?それなのに血と肉の実感をこの世界で得ても尚、貴方は自分の存在に違和感を持っていない」
「全身が浸かる程の深淵、暗闇に居て……そう、ユウはここに在る」
「人里の私は嘘なのかと聞いたよね?私はあの姿も本当、ただ単に純粋で在るだけ……ねぇ、貴方の常識は教えてくれないの?貴方の常識は、なぁに?貴方の本当の
「………………」
「私はその闇に惹かれて仕方が無い、妖怪という種が愛す暗闇を、闇を貴方は色濃く……妖怪でさえ見通せ無いほどの純度を持つ」
「それが未知そのものであるのなら、どれだけ私は貴方の事を知れてないの?私はユウに全てを教えれるよ、幻想郷で知り得る知識も、貴方が望む帰り方も…霊夢を説得出来るまで、私の全てを使っても何とかしてみせる」
「……だから」
「ねぇ」
「ねぇねぇ」
「貴方の闇、食べてもい「いよ」
「……え?」
「いいよ、それでお別れ」
「……あぁ……ぁは、あはは、あははははははははは…」
「また!また!!……うふふ…あはは!」
「…食べないの?」
「うん、まだ食べない」
「……はぁ」
「着いたよ、ちょっとここでまってて」
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暗くジメッとした空間。所々にキノコが生えてるわ雑草ばっかで肌に悪そ〜。
「いらっしゃい、ユウ」
「私の家へ」
「……洞穴かなんかですか??」
「酷いのだ…」