起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたら…貴方と、素敵な夜を

「家なしつってたじゃん」

 

 

「これが家に見える?」

 

 

「家つってたけど?」

 

 

「………ごめんね」

 

 

まぁ家というには簡易的すぎる、どっちかというと初回の私が作ってた雨宿りの為の拠点みたいなもんかな。

 

 

「それで、『もっと面白い事』って?」

 

 

「それはねぇ…コレ!」

 

 

岩と木で作られた棚から、縁が赤くヒラヒラとした札が取り出される。

 

 

長方形で真っ赤に染まった札、それ以外には特段目だった部分は無いが、見ているだけで背筋になにか寒いものが走る。

 

 

「……札じゃん、私の尻尾にも貼ってる奴」

 

 

「それとこれとは少し話が違うの、これはスペルカードの原型、貴方を決定する意義そのもの……まぁ、必殺技……かな?」

 

 

「必殺技……弾幕も打てないのに?」

 

 

「それは問題じゃない、これに向かって、貴方の幻想郷での『自分』を決めるの」

 

 

「博麗霊夢も、霧雨魔理沙も、スペルカードに己の立ち位置を作ってる……新しい制度なのによく対応出来たたは思ってるけれど…」

 

 

「ユウ、幻想郷で弾幕勝負をした事はある?」

 

 

「…………あ〜……まぁ、一応」

 

 

「ならその弾幕を思い出せる?」

 

 

「うん」

 

 

「弾幕は個人個人の特徴が現れる、その人以外の同じ弾幕は存在しない……基本の弾幕は除いてだけど、弾幕を見れば大体の人物さえ理解できる、その戦った相手の弾幕の特徴を教えてくれる?」

 

 

「え〜?えっと、星型でキラキラしてて……あ!お前の事吹き飛ばしたビームの奴!」

 

 

「……なるほど、やっぱりそうなのね、霧雨魔理沙、彼奴の弾幕は特徴が分かりやすいから…」

 

 

納得した様に頷くルーミアを見ていると、割とコイツも友人関係広いんだな〜って思う、まさか魔理沙まで知っているとは……。

 

 

「ともかく、ユウは早めに決めとかないといけなさそうだし」

 

 

「何で?」

 

 

「鏡見てみる?」

 

 

「……」

 

 

分かっちゃいる、分かってはいる、今の私は見た目が変化してるだけじゃない。

 

 

()()もだ。

 

 

鈍く、弱く、流されるままに幻想郷の暮らしを受け入れようとしている。

 

 

お母さんが迎えに来る、ただそれだけが頭の中にある。尻尾に対しての拒絶も、妖怪という部分に対する嫌悪も、現実世界へ帰りたいという気持ちさえも消えようとしていた。

 

 

「このままだと消えちゃうからさ、ほら……『貴方』を決めないと」

 

 

言っている事は理解できる、この夢境でせっかく見つけた運命の相手がそんな事になっている事、それが嫌だから急かしているのだろう。

 

ルーミアが恋焦がれてるのは結局、元の私なんだろうから。

 

 

「そんなどこぞの映画みたいな…でもいいの?その『未知』っていう暗闇がルーちゃんは好きなんでしょ?わざわざ連れてきてなんで……」

 

 

「ぷっ……あははは!この程度で?大丈夫大丈夫、ユウはこれだけじゃ味落ちしないよ?それに味を保つ為のものでもあるんだから」

 

 

「味落ちて、相変わらず夜は包み隠さないね」

 

 

「ユウもあの時みたいにもっと怒っても良いのよ、アレ、大好きだから」

 

 

やっぱりコイツの価値観は分からん、妖怪はみんなこうなのかと思ってたけど……。

 

 

あの子達……あ〜…なんだっけ、草の根ネットワーク?

その子達、三日前位にルーミアに手を引かれて出会った子達なんだけど、めっっっっちゃ良い子達だった。本当に同じ妖怪ですか?って位。

 

 

赤蛮奇ちゃん、わかさぎ…姫?なんだ姫って…まぁ後影狼ちゃん…みんな美女の妖怪で、普通に優しかった。赤蛮奇ちゃんに関しては人里で暮らしているらしいし、人の捕食も必須にならない限りはした事が無いらしい、今までも残飯処理みたいな感じだったらしいし……。

 

 

「…ったく、なんでルーちゃんなんかに好かれちゃったかなぁ……元々ソファとヨギボーの上でゆっくりしてただけなのに…愛しのマイホームは占拠されるし…」

 

 

「ほらほら!早く早く!妖力を繋げてみて?」

 

 

「……だーかーら、妖力の自覚すら…ーー」

 

 

「嘘」

 

 

ギクッ…!

 

 

「その為に沢山の妖怪と巡り合わせて、毎日一緒に居て、弾幕を見せ続けて、ユウはとっくに自分の身体の『違和感』に気づいてる筈」

 

 

「クソ、その為にずっと付き纏ってたのか…!」

 

 

「あはは!そう、その顔の方がずっと美味しそうだから、ずっとそうやって私を見ていてくれる?」

 

 

……本ッ当に昼との差が激しい、どちらとも素と言えば素なんだろうが、付き合わされるこちらの身にもなれよ全く。

 

 

「仕方ないなぁ……ちょちょいっと込めるだけだよ?ちょっっと使うだけだからね?」

 

 

「いいからいいから、ほら」

 

 

真っ赤な札を掴み、もう片方の手を背景に隠れた尻尾に付ける。

 

 

イメージ、私の場合はとにかくイメージだ。妖怪の部分である尻尾にしか妖力が無いと捉えているし、実際に違和感は尻尾にしか無い。

 

 

だから手を通路として尻尾から妖力を通す。

 

 

「…………」

 

 

「よし、出来た……?」

 

 

「……あれぇ?」

 

 

「…………これは…」

 

 

札は変化せず、下地に握った皺だけが付くだけ。

 

 

「はは」

 

 

「ねぇルーちゃん、ちゃんと込めたんだけ…ーールーミア?」

 

 

「…………は」

 

 

「ふふ、ふふふ、あはは………あは、…はぁ……」

 

 

「良いよ、分かった、ごめんねユウ……面白くなかったでしょ、嘘ついちゃった…」

 

 

「…なんか、今日はいつにも増して様子が変やねぇ…札が変わらんかったのがそんなに面白かった??」

 

 

「あはは!うん!面白かった!!あは、ははは…」

 

 

「それで、もう夜遅いから家帰るよ?ルーミアも今日の晩御飯は簡単なものでいいよね……森の奥から帰るのも時間かかるんだし…」

 

 

「…ダメ、今日は帰らないよ、ユウはここに泊まるんだから」

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっっっら…!」

 

 

「何も無いからねー」

 

 

「せめて星空の光ぐらい射し込むように作りゃいいのに…」

 

 

「私、宵闇の妖怪よ?」

 

 

……どーも、私です。

 

 

めちゃくそ暗い部屋で、ゴツゴツとした床に葉っぱを敷いて寝ております。何故か初日の暮らしと変わりませんね。

 

 

そして、何故か、なーぜーか、ルーミアのご自宅で寝泊まりする事となりました。

 

 

…帰ろうとすると、口を大きく開けて笑いながら、尖った八重歯見せてくるんですもの、断れるわけないじゃないですか。

 

 

「……何度も何度も聞いてごめんなんだけど、どしてルーちゃんはここまで私の事、好きなの?」

 

 

「さっき説明したのにー?」

 

 

「闇だとかなんちゃらかんちゃらはさ、言っちゃえば私自体に自然にあった事で、私がルーミアに何かアプローチした訳じゃないじゃん?一目惚れってこと?」

 

 

「ん〜……」

 

 

真っ暗闇の洞窟に声だけが響く。こうやって話してると……あれだ、修学旅行の夜を思い出す、山中だから死ぬほど暗い場所でコソコソ話してたヤツ。

 

 

「勿論、一目惚れもあるけど」

 

 

「貴方のアプローチのお陰かなぁ…」

 

 

「…今何もしてないって言った所じゃん」

 

 

「ユウは本当に嘘ついてばっかだなー……幻想郷に来て本音を話したのなんて、『あの時』位しかなさそーだぞー?」

 

 

「んで、アプローチって?」

 

 

「ユウの口から、言って欲しいな!」

 

 

……。

 

 

隣で寝ているルーミアへ勘で振り向いて、その布擦れ音を聞いたルーミアも隣を向いてゆっくりと瞳を開く。

 

 

真っ赤色の鮮血の様な瞳、暗闇に光る赤い満月。

 

 

常人、又は人里の人間であれば誰もが理解できる『死の象徴』。

 

 

 

 

「……その瞳から、目を離した事は無い」

 

 

 

幾度喰われて、幾度殺されても、一時もその瞳から私は目を逸らしていない。

 

 

赤く染まった視界()()()紅く光るその瞳を忘れることも無い。

 

 

「そう、そうね…♡ そうやって見つめられ続けてるから、そうやって仲直りって口では言ってもずっと私の事を見つめているから、私も惚れたの」

 

 

「私は……貴方を食べれるまでは幻想郷から返したくないし、ユウは私を殺すまでは幻想郷から帰りたくない」

 

 

「『それ』が、貴方の変質の原因、貴方の心に深く刻まれた殺意が貴方自体を変えてしまった」

 

 

「私の事を食べたなんて、そんな事が要因じゃないわ、スペルカードも要らない、今のユウに必要なのは…」

 

 

「ふふ…そうね……」

 

 

「私」

 

 

「かな?」

 

 

「あ〜……もう、はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後。

 

 

 

 

「い・い・加・減ッ!仲直りしろーーー!!!」

 

 

「…いやなのだー…」

 

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬ…」

 

 

「私が!もう大丈夫って!!言ってるから!!!慧音先生もルーミアも!頭下げて仲直り!!」

 

 

「そーなのか、でも私謝らない」

 

 

コイツッ!!このガキャぁ!!

 

 

「……ふふ、ははは!」

 

 

「…慧音先生?」

 

 

「ルーミアがそう来ると思って!今回は霊夢を呼んでおいたからな!!『依頼』として来てもらったから、ルーミアは弾幕勝負で負けたら諦めて貰おう!」

 

 

「「ええ!?」」

 

 

「霊夢!霊夢ー!客室のお菓子漁って無いで早くこーーい!」

 

 

慧音先生が教室の扉を開けて、大きく叫ぶと、外から木の床を踏み締める音が聞こえる。

 

 

「…霊夢かー…ちょっと不味いのだ…」

 

 

「こんなアッサリと出会っちゃうってマジ!?クソ、アリスお母様の予測通りだと私は…!」

 

 

そして遂に、扉で分かたれた縁を踏み越えて博麗霊夢とまさかの回遇を果たしてしま…ーー。

 

 

「…ーーあ、パスで」

 

 

「え?」

 

 

「ごめん慧音、ソイツが関わってるならパスよ、お菓子美味しかったわ、それじゃ」

 

 

「ちょっと待てぇーー!?!?」

 

 

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