起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたので修行をば

 

 

「人里の外、ですか」

 

 

「…そうですね、一応危険区域は記載していますし、山と花畑に立ち入った人の命の保証はしていません、以前の異変の元凶…紅魔館の住人も会話は出来ますが、根本は吸血鬼と言われる外来の大妖怪です」

 

 

「霊夢さんのお陰で幻想郷のルールに従っていますが、あまり楽観的に立ち入ることはオススメしませんね」

 

 

「…はい?強くなりたい?…強くなりたいですか??ふむ、帰るために……」

 

 

「……あ〜…そうですねぇ…仮の目付け表をお渡ししておきます、どこも命の保証は無いですが……弾幕、ならアリスさんの所へ…ーー」

 

 

「え?アリスさんとは会うとほーむしっくになり過ぎて心が折れそうになるって?……はぁ」

 

 

「ならばやはり紅魔館、その門までをオススメします、行き道も中々険しく修行になります、何より……」

 

 

「『彼女』が居ますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、私です。

 

 

ルーミアにこねくり回されて数日、ようやっと人里の外に出て修行を積みたいと思います。

 

 

…急にどうしたんだって?どうしたもこうしたもねぇよ!!霊夢とかいうシリアス殺戮マシーンとこちとら戦わなきゃいけねぇんだぞ!?!?

 

 

私が目の前でふざけようものなら、あの初回みたいに吹き飛ばされて終わり、頭のイカれた最強巫女にギャグワールドは通用しません!!

 

 

 

 

 

「ココガテキノホンキョチカ!」

 

 

という訳でやって参りました紅魔館、幻想郷を霧で覆ったらしい化け物の住処。

 

 

「……赤すぎるだろ」

 

 

建物の見た目はぜーぇんぶ真っ赤、門や壁、館に至っては赤以外の色なんて無いんじゃないの?あの立派な時計塔は除いて…。

 

 

「…!」

 

 

森の陰からこっそり門を覗いてみると、言われた通り『彼女』が居た。

 

 

 

「……」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

「………zz…」

 

 

 

……寝てる。

 

 

 

『紅美鈴』阿求ちゃんに教えてもらった紅魔館の門番。紅魔館のメンバーとしては最も温厚で人や妖怪を害するどころか、迷ってしまった人里の人間や妖精、妖怪達と遊んであげているらしい。

 

 

武術を使用している妖怪で詳細は不明、好きな事は修行と……紅魔館のメンバーには秘密らしいけど、居眠りだと言うのだ。

 

 

つまりは私と同族…!!

 

 

 

「…す、すみませ〜ん」

 

 

 

「…」

 

 

 

「美鈴さん?美鈴さ〜ん?」

 

 

 

「……ふがっ…起きます起きます…」

 

 

 

「……」

 

 

 

「…め、美鈴さん?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「……もう一回寝てんじゃねぇぇぇ!!!!」

 

 

「どぉわぁぁぁ!?!?ごめんなさい咲夜さん!?ねて、寝てないですよ!!?」

 

 

「……って、あれ?何ですか、ただの子妖怪でしたか…」

 

 

……コイツ、マジで私と同じ匂いがする…ルーミア連れてこなくて良かった、絶対顔に落書きとかしだすから。

 

 

「え〜っと、どうしましたか?迷子にでもなりました?」

 

 

「あ、ご親切にどうも……でもその、少し事情があって…私美鈴さんに会いに来たんです」

 

 

「私に?」

 

 

「美鈴さんは、物凄くお強い武術の使い手で…弾幕勝負でも気を操る強者だと人里の方に教えて頂いて、その…」

 

 

「修行をつけて頂きたいんです!」

 

 

「…あ〜…そういう事ですかー…良いですよ?未熟な私では余り教え切れる事も少ないですし、お仕事もあるので余り身になれるとは言いきれませんが…」

 

 

ふふ…ふはははは!その顔!

 

 

クックック…私は知っているぞ?チルノちゃんとかにも聞いたからな…修行って言ってわちゃわちゃ遊んでくれるって、メッチャいい人なんだってなぁ…?

 

 

だがしかし、私はその『遊んであげる』顔じゃダメなんだ。

 

 

その良心こそ隙なんだよぉッ!教えてやるぜ極悪半妖怪(仮)の手腕って奴を…!

 

 

 

「教えて貰うのに勿論タダとは言いません…!どうぞこちらをお納め下さい…」

 

 

美鈴さんに、ふわふわなものを手渡す。

 

 

「……これは…? …っっ!!!!」

 

 

「こ、この手触り!この感触!!軽く手を押し込むだけで指が沈み込み吸い付くような柔らかさ!肌の温度に合わせたしっとりとした冷たさ!」

 

 

「そして圧倒的モフモフ……な、なんですかこの枕ッ!!」

 

 

「更になんと、野外で使っても汚れが付かない防護札付きです」

 

 

「何ィッ!?!?」

 

 

そしてここですかさず土下座!!

 

 

「お願いします!!本当に強くなりたいんです!私にはどうしても帰らないと行けない場所があるんですぅ!!」

 

 

「うっ…うぅ…」

 

 

その名も良心つけ込み大作戦。

 

 

普通に話が出来る普通に優しい人は、普通に申し訳なさも抱くという事。阿求ちゃんや皆から仕入れた情報を元に、美鈴さんの性格は大体把握した。

 

 

優しく温厚、そして面倒くさがり、ならば贈り物と全身全霊のお願いでその良心を刺激する。

 

 

この枕は渋々私が自分の手で尻尾をチョキチョキして作った物だ、人里を駆け回って材料を掻き集め、霖之助さんの所へ行き保温と状態保存(軽)の御札を入手、後はフワフワマイスター私の手によって完璧に調整された至極の一品、いや!逸品!!

 

 

高い買い物になったけど、安全安心に強くなる為には致し方無し。

 

 

 

「どうか、この通り…!」

 

 

「い、いや!あの、別に修行をつけないって言ってる訳じゃ無いですし、こんな高そうな物は受け取れ無いというか…」

 

 

「シクシクメソメソ…」

 

 

「あ〜もうはいはい!大丈夫ですって、ちゃんと受け取りますから!」

 

 

勝ったァ!第三部、完!!!

 

 

「はぁ、全く…こんな子供妖怪に悪知恵を仕込んだ人は何処のどいつなんだか」

 

 

…あ、後別に美鈴さんは純朴な訳でも無く、普通に妖怪らしい妖怪の精神してます。でも人を襲ったなんて記録は無いと言われたし、外来妖怪と言ってもまた別枠の人なんだろう。

 

 

明らかチャイニーズな衣装してらっしゃるし、如何にも龍拳っぽい。

 

 

「あ゛り゛か゛と゛う゛!!!」

 

 

「もう、泣きつかなくても大丈夫ですよ…ははは、どんな話を聞いて私の元に来たんだか…」

 

 

「私゛にも…色々事情があり゛まじでぇ…」

 

 

「事情ですか」

 

 

 

 

少女説明中❁⃘〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、それで霊夢さんに……霊夢さんかぁ…んーー…」

 

 

取り敢えず何回も死んでいることは隠して、ある程度の事を話してみた。

 

 

「私では厳しそうですかね…?」

 

 

「というよりは、もし勝てる様になっても一筋縄ではいかなさそう、って感じですね」

 

 

「…え?」

 

 

「贈り物の分、話の中で少し私が気づいた事について話してあげますね」

 

 

その1

 

幻想郷の裁定者である博麗霊夢が、外来の呪い持ちを即座に外の世界へと帰していない。

 

 

「パス、と言われたんですよね?つまりは彼女に話を聞いてもらえるようになったとしても何らかの事情があり簡単に帰れるとは限らない」

 

 

「…なるほど」

 

 

その2

 

半妖になる呪いなんて、私の長い人生でも聞いた事の無いもので、帰ったとしても解呪の目処は無い。

 

 

「もし帰ったとしても、解呪出来なければ…いつか貴方は再び幻想郷に戻る事になると思いますよ?」

 

 

「…あ〜……」

 

 

その3

 

霊夢の勘が貴方を指し示した。

 

 

「…まぁこれは霊夢さん特有のものなんですけどね、彼女物凄く勘がいいんですよ、文脈的に…その上で貴方を勘で退治しようとしていたけれど、身体が動かなかったというのは…」

 

 

「……珍しい事です、とにかく言いたい事は一つ、貴方は既に霊夢さんに敵視されている、話し合いが出来るとは思いません」

 

 

「えぇ…」

 

 

「…で、霊夢さんには私が貴方を幾ら鍛えても勝てませんよ」

 

 

「えええええぇ!?」

 

 

「私が本気で教え込んだとしても、貴方が行える限界のソレは霊夢さんの修行の何百分の一に過ぎない、霊力身体能力共に地獄の様な修行を積んでこその肉体、又は博麗の巫女なんでしょう」

 

 

「貴方が修行に何百年掛けて辿り着く『その先』に、霊夢さんは既に居ます、なんなら寿命勝負に持ち掛けた方が早いですよ」

 

 

うっっわぁ……終わった…全部目論見がパーだよパー。

 

 

てか博麗の巫女って何?唯の人間なのに強過ぎるでしょ、どんな修行してんだ…?

 

 

「寿命勝負…」

 

 

「ええ、私達は妖怪ですからね、霊夢さんと言えど寿命はあります…ですが、貴方の目的とは致命的に相性が悪い」

 

 

「ユウさん、貴方に一つ質問をしましょう……ユウさんは外の世界へ出れた、そして貴方の待ち人、お母さんがこの作戦の結果、先に寿命死していた場合、貴方はどうします?」

 

 

「どう……えっと、もうどうしようも無いし……そこまで生きれるなら私も人間じゃ無いし、お母さんも居ないならどっかで大人しく土の養分にでもなってるかと」

 

 

「そうですね、幻想郷と外の世界はある程度時間の捻れがあるとはいえ、数百年のズレはどうなるか私には分からないです、そして数百年の間によって貴方の精神も変質を起こすでしょう」

 

 

「そもそも貴方は、『外の世界にお母さんが居るから』帰るのであって、主軸のお母さんが消えてしまえば意義を失う」

 

 

「……はい」

 

 

「まっ、こんな感じですかね〜…私からアドバイス出来る事はこれ以上には…霊夢さんと直接話してみる、ぐらいですし、自殺行為と言えば自殺行為だし……」

 

 

「…ありがとうございました、美鈴さん……一度帰って、整理してみます」

 

 

「それが良い事でしょう!枕ありがとうございました〜……まぁ、そこまで気を落とさずお元気で」

 

 

「は〜い…」

 

 

とぼとぼと、帰路に着こうとしていた時の事だった。

 

 

 

 

 

「お待ちを、お客様」

 

 

 

「…へ?うおっ!?!」

 

 

 

瞬きすらしていないのに、唐突に目の前に銀髪の美女メイドが現れる。

 

 

 

「主が貴方の事をお待ちになっております、是非とも紅魔館へ」

 

 

「え、へぁ…あの…」

 

 

「咲夜さん…そりゃどうしてまた、というか驚かせすぎですよ?ユウさん腰抜かしちゃってるし」

 

 

「……美鈴、貴方も呼ばれているわ」

 

 

「ん??え、何でですか?」

 

 

「その優しく抱き着いているものが原因じゃないかしら、門番とあろうものが不審者からの贈り物に随分と嬉しそうね?」

 

 

「あ、ぁのぉ…たは〜!ごめんなさい!」

 

 

「ソレを持って館内まで来なさい、お客様をもてなしながら……それではユウ様、私は先に失礼致します」

 

 

と思ったら、また瞬きすら…というか視界を彼女から動かしてすらいないのに消え去っていった。

 

 

「あちゃー…こうなっちゃったか」

 

 

「あ、あああのぉ〜今の人は……」

 

 

「咲夜さん、紅魔館のメイド長です……そうかぁ、レミリア様がユウさんを…ふむふむ、取り敢えず今からユウさんはお客様なので、私が紅魔館を案内させていただきますね!」

 

 

「え、ぁえあふほへ…」

 

 

ヤバい、ヤバい……ヤバい!!!ルーミアも居ないチルノちゃんも慧音先生も居ないのに、異変を引き起こした大妖怪のお膝元にご案内されちゃう!!

 

 

「それでは私の後ろに着いてきて下さいね、ユウさん」

 

 

「は、はい!!よろしくお願い致します!!!」

 

 

「はは、大丈夫ですよ、取って食う訳じゃ………………かどうかは分かりませんが、まあまあ、肩の力を抜いて下さい」

 

 

……はは、ん?取って食われるの???

 

 

「ははは」

 

 

え?ハッキリしてよ!ねぇ!美鈴さん?美鈴様!?紅美鈴神様!!?

 

 

 

美鈴さーーーーーーん!!?!!?!?

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