起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたら経営顧問との話し合いだった

 

 

「まず一言…貴方が提供してくれたその尻尾の毛の研究で…力になれなくて済まなかったわ」

 

 

「いえ!全然大丈夫です、なんなら労力を割いてくれただけでも有り難くて…ほんの少しの進展でも教えてくれてありがとうございました」

 

 

「…良い子ね、ウチに本を盗みに来るバカにもその可愛げを分けてあげて欲しいわ……」

 

 

紅魔館に盗みに来れる大胆不敵な奴もいるんだ…。

 

 

「それで、その先のお話って…?」

 

 

「貴方を拒絶する理由ね、要は怖いのよ、ウチのお嬢様は貴方が怖くて仕方がないの」

 

 

「ちょッ、パチェ!?」

 

 

…へ?どんな理由かと思えば、案外普通な事だったな。

 

 

「レミィには運命が見れる程度の能力があるって貴方に話していたわね、そして初めて見えない相手も貴方だと」

 

 

「はい」

 

 

「それはね?レミィにとって500年を超えて、初めての経験なのよ」

 

 

「…なるほど」

 

 

「わー!わー!!パチェ!ちょっと!!!」

 

 

マジでシンプルな問題だったか、怖いのね。そりゃ怖いか、500年以上を生きてきて初めての経験を前に、大事な大事な妹のこれからの人生を揺るがす様な事態に対応している。

 

 

逆に凄いよ、ここまで平然と会話出来てたのも…。

 

 

「……その上で雇われたい、というのなら条件があるわ」

 

 

「逆に条件を達成したら雇ってくれるんだ……ありがとうございます」

 

 

「お礼を言うのはまだ早いわ、条件を言いましょう…魔術を発動するわ、私の前に来てくれるかしら、フランも少しこっちへ来てくれる?」

 

 

「はーい!」

 

 

「了解です」

 

 

 

パチュリーさんが空間から色鮮やかでめちゃくちゃにデカい宝石を取り出し、私の頭とフランちゃんの頭に手を置いて呪文を唱え始める。

 

 

「…コホンッ…《一つ 汝嘘偽りなき応答をせよ》」

 

 

「《二つ 汝自由意志を抱き、だが決してその刃を契約主に振り翳す事無きように》」

 

 

「《三つ 汝に下される命に歯向かうこと勿れ、そして互いの信用の元にこの三つの盟約は破棄される》……よし、もう動いていいわ」

 

 

…なんか、色々変な言葉が聞こえたような……。

 

 

「右手挙げて」

 

 

「はい」

 

 

自分の意思とは関係無く、返事と右手があげられる。

 

 

「下げて」

 

 

「はい……って!!案の定じゃないですか!?」

 

 

「ふふふ、あんまり迂闊に魔法使いの領域に入る事を許可しちゃダメよ?でもコレは大丈夫だから安心して、私達と貴方の信用と信頼が合致すれば全ての契約の効力は失われるわ」

 

 

「…なるほど、条件ってこういう事なんですね…めっちゃ便利」

 

 

「……まぁ…そもそもこの魔法が貴方に掛けれた時点である程度は信頼しているわ、『盟約』と言っていたでしょう?これは貴方が真に私達へ敵意も害意も抱いてない事に加えて、フランに対しての忠誠…というよりは、『彼女を受け入れている』事が根底に無いと結べないものなのよ」

 

 

「な、なるほどっ…!!」

 

 

めーーちゃ便利、魔法ってここまで便利なのね…。

 

 

「これで正式に雇用してくれるという訳ですか…?」

 

 

「…そうね……ある程度の受け答えをしてもらった後に、もう一つお願いしていいかしら?」

 

 

「いいですよん」

 

 

「咲夜と弾幕勝負をして欲しいの」

 

 

「え?あ、はい……え?」

 

 

……。

 

 

…!?!?!?

 

 

「相当不満が溜まってそうだし、負けても何にも無いからお願いできる?」

 

 

む……り、無理無理無理!!あの殺気ガンギマリイカレメイドさんと弾幕勝負!?弾幕勝負の域を超えてぐちゃぐちゃに切り裂かれそうなんですけど!?

 

 

「ご、ごめんなさい…それは出来ません…」

 

 

「…あら、どうして?」

 

 

「ひっ!?さ、咲夜さん…えっと、その…」

 

 

 

「そもそも私、弾幕が打てないんです…」

 

 

 

 

「「「「……え?」」」」

 

 

 

「…あれ?フランちゃんには言ってなかったっけ?」

 

 

「ううん、初耳…氷砕き、ユウがやってなかったのは出来なかったんだね…」

 

 

うぐぉぉッ!!無邪気な憐れみが私の心に…!!

 

 

「貴方、あれ程高度な術を使っておいて……いや、術と呼べるか怪しいものだからなのかしら…」

 

 

「…弾幕が打てない、ね……カネイロ・ユウ、その原因に覚えはあるの?」

 

 

「あいや、原因も何も…出来ないってだけですよ?悪い所がある訳じゃないんです、強いて言うなら頭が悪い」

 

 

「……妖術と呼べるものを使っておいてそんな訳……いや、貴方なら有り得るのね…!なるほど、なら打つ手はあるわ」

 

 

「え?あるんですか?」

 

 

無いでくれよ!無かったら何事も無く終われたじゃん!?

 

 

「空が飛べて、妖術らしきものを使えるのに弾幕を打てない、いうなれば貴方は、『サッカー』が出来るのに『走り方』も『ボールの蹴り方』も知らずにいる状態」

 

 

…ふーん?なるほど?…てかサッカー知ってるんだ、相変わらず文明圏分からんなぁ…。

 

 

「それはひとえに奇跡と言って差し支えないわ……貴方の中で、周囲の世界よりも己の精神の構築の方が上回っているの」

 

 

「圧倒的な自己認識の強さ、いや…自分の認識への絶対的な信頼」

 

 

「そ、そんなら大層なものじゃ無いと思うんですけど…というかそれって、つまりは…」

 

 

アリスお母様から何度も念押しされた言葉…。

 

 

「そうね…有史以来、魔法は人の当たり前を打ち壊してきたわ…カネイロ・ユウ、貴方の常識も変わる時が来たのよ」

 

 

常識に無い概念、固定概念を打ち壊す時だと。

 

 

「……でも……それは…」

 

 

それは、私がああやって納得したからで、私に関わらない尻尾の妖力を使って術を使用してるのも…【狐の妖怪】だからだし…。

 

 

私は、私を規定する当たり前で生きているんだから、『当たり前』を変える事は出来ない、何とか咀嚼して納得し、受け入れるだけだ。

 

 

「ふふっ、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫よ、貴方の常識が変わっても、貴方自体が変わる必要は無いわ…その為の魔法、その為の錬金術よ…!」

 

 

出会い初めよりもテンションのボルテージが上がったパチュリーが、意気揚々と懐から鮮やかな赤色の宝石を取り出し、空へと放り投げる。

 

 

「魔法とは奇跡…けれど研究により今や奇跡では無くなり、ただ全てと同じ『造られたもの』へと変わり果て……遂には魔法は奇跡では無く魔術として『設計図』があるものになった、そして形を変え錬金術等の物質へと堕ちていった」

 

 

「見せてあげるわ、あの中途半端な魔法使いでは一生かけても辿り着けない、96点満点の魔法というものを」

 

 

 

 

宙に放り投げられた赤い宝石は落下する事なく、そして誰の干渉も無く空を飛び、鮮やかな色彩を発している。

 

 

独りでに動き、独りでに弾幕を放ち、自立した思考があるかの様な立ち振る舞いを見せた。

 

 

「科学は長い年月を掛けて魔法を凌駕した…ならば、次は…」

 

 

「魔法が科学を凌駕する時よ」

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