「よし、それじゃぁ勝負ありッ!勝者はユウね、お疲れ様」
「イエーイ!勝った勝った!ボコボコに殺されかけたけど勝ったよフランちゃん!」
「これでユウはずっと一緒に遊んでくれるってことね!ずっと、ずーーっと遊ぼうね!ユウ!」
「ん、うん、そそ、そうね……えっと、家とここを行き来する事になるとは思うけど……」
「そんな事しなくても大丈夫!ねぇお姉様、お部屋って幾つも空いてるでしょう?そこにユウを住まわせてもいい?」
「止めときなさい、部屋は空いててもユウが困惑しているわ、冷や汗だらだらよ?ユウの事情に合わせて決めてあげなさい」
「えー?ねぇユウ、ユウは私とずっと一緒に居てくれるよね?ね?」
「あぅあぅあ……そ、その…ちょっとこの話は一旦同居人に持ち帰ってから…」
「ならその子も紅魔館に住ませてあげる!紅魔館にはお仕事もあるし、メイドとして働いて貰って、それで、それで……」
「あわわわわ……」
フランがユウに詰めかけているのを遠目から観察しながら、レミリアが墜落した咲夜の元まで歩いていく。
パチュリーも一旦離れ、三人で二人の掛け合いを見ていた。
「お勤めご苦労、咲夜」
「ありがとうございます……少し気がかりな事は残りましたが、ご満足頂けましたか?」
「貴方が最後の時止めで手を抜いた理由も分かるわ、『アレ』はもう殺しきれない、フランが何かしたわね……」
「記録映像を確認してみる?凄いことになってるわよ、あの子」
「後で確認するわ……それと決める事も決めた、『アレ』は紅魔館で子飼いにする、霊夢や賢者の頑固者に任せておけない、既に目を付けられてるかもしれないから、パチェ…頼める?」
「任されたわ、今までの結界よりも最高のモノを用意してあげる……異変は起こすの?」
「…………まだ、運命は何も告げていない、命令とはいえ咲夜が負けるという因果は何処にも存在していなかった、動き出すのはまだ後にしておきましょう」
勝負の中で、『アレ』の能力を測りたかった為に咲夜の勝利条件は『私達が判断する』という満足するまでの無茶難題としていた。
パチェの作品の模倣から始まり……首が完全に断たれ、幾1000本のナイフに貫かれても再生し、その瞬間は瞬きすらしていないのに察知出来ず、最後には魔理沙のスペルカードの模倣。
本人はスペルカードという認知すら無かった、あの火力を変化の術で担保する事は出来ない、妖力が絶対的に足りずに威力は再現出来ない筈だけど……パチュリーに観察させたアレは魔理沙本人のものと同一だった…。
「行っている事の規模と本人の器が合ってなさ過ぎるわね、例の化け狸の頭領にその映像を見せたらひっくり返るわよ」
「ひっくり返るだけで済むかしらね、下手し次の跡継ぎ先に選ばれるかもしれない、狐という部分があったとしても、己のプライドも矜恃も種族の誇りも投げ捨てて頭に据えるわ」
「アレの力の使い方を何処のバカが仕込んだのかは……恐らく同居人ね、ここに来るならキツいお灸をすえてあげる…!」
「……そして、『アレ』の力の本当の使い方もね」
策略と計略、とまでは行かないけれど利用はさせてもらう。
フランの狂気と能力、それを解決できるかもしれない方法が転がり込んできた、しかもフランに気に入られて。
「流石は私、天運にも恵まれている」
「天運に恵まれている奴は天運に恵まれているなんて自分で言わないわよ」
「うっさいわねぇ……」
■
ど、どぅも…ワタクシでござる……。
「ルーちゃん!ルーミアァッ!!起きてーー!!!?死ぬなぁ!?!?」
「あへ……うひ…」
「ルーミアァァァ!!!???」
法悦とした顔でピクピクと跳ね、動かなくなったルーミアを急いで人里外れの病院へと運んでいる途中です。
闇をダラダラと垂れ流しながら溶け始めているルーミア、そんな状態は見たことが無いと何処の場所も断られ、妖怪相手の病気や治せる場所へ移動中です、確か教えて貰った名前は…永琳診断所、なんでも治してくれると噂の病院らしい。
「迷いの竹林を突っ切るには……貴方の事、頼りにしていいんですよね!妹紅さん!!」
「あぁ、任せろ」
阿求ちゃんを即頼って良かった、じゃなきゃ酷い目に合ってたかもしれない……迷いの竹林は素人が入れば二度と脱出できないと噂になっているらしいし。
「普段アイツらは診断所を解放していない、解放される事も無いだろうが……『検体』としては別だ、研究される代わりに治してもらえるよ、きっとな」
「良かった……本当にありがとうございます、妹紅さん」
「なに、別に無償でも無ければ慈善でも無い、貰うものは貰ってるから気にするな」
優しい御方やで本当……。
…なんでこんな事になってるかというと、フランちゃんと一旦お別れして家に帰った時の事だ。
少女回帰中❁⃘〜
「それで?」
「ルーミアも一緒に……その…泊まり込みしないかな〜?って…」
「……」
「…」
えと、その…あの後フランちゃんにお別れをして…帰ってきたら……ルーミアが家の中を真っ暗にしてブチ切れてた…。
「嫌」
「そ、そっか…」
「どうして浮気相手の家に泊まらなきゃいけないの?」
「浮気て……そんなつもりじゃ…」
修羅場、それ以外に表現の仕方が無い。私の表現の自由は奪われたよ。
「紅魔館から連れ去って、太陽の花畑でデートして、弾幕勝負で共暮らし、浮気以外の表現はある?」
「うぐ…」
「それと、多分……」
「……」
「…………」
多分?多分なんですか?黙らないで下さい怖いです。
「ねぇユウ、貴方…」
「今も私を殺したい?」
「……それは…」
…そういえば、フランちゃんに何かをされて髪色が元に戻ってから、随分と気分が良かった。
あれだけ心の奥で渦巻いていた殺意も何もかも夢の様に消えているし…。
以前なら即断即決で『うん』と返事をしただろうに、今は別にどうでもいいとすら思っている。
「やっぱり…!」
「ごめんってばぁ…確かに今そう思って無いけどさ、ルーミアの事は嫌いにならないって…」
「違う、貴方はそれでいいのよ……私が怒っているのは、貴方を変えてしまったフランの事、彼女を今すぐにでも食い殺したい位にはね」
えぇぇ……重いよ…私を巡ってで殺人事件とかシャレになんないって…。
「…ルーちゃん……」
「こんな、こんなにもっと……ユウを美味しそうにして、それで独り占めしようとしているあの子を今すぐにでも…!!」
「そっちかいッ!!!」
「わ、急にどうしたの…?」
「なんか!こう…妖怪に傾いてた事がパーになったとことか!殺意を抱いてくれなくなった所とか!そっちかと思ってたら、食べる事って!反省してた私がバカみたいだわ!返せ私の反省」
「何よ!大切な事なのに…!ユウのバカ!」
「ま、まぁ大切な事は人それぞれだし……確かにそれはごめんなさい…」
「嫌よ、ごめんなさいの証をくれないと許してあーげない!」
「証ぃ?」
「…そうね、ユウの事少し食べさせてよ、味見したいな…腕一本頂戴?」
「まぁそれ位なら……ちぎるのは辞めてね?ちゃんと痛くないように切りたいし」
という訳でスパッと断ち切ってぱぱっと変化で治す。
切った途中でボタボタと大量の血が畳に付いちゃったので、それも変化でクリーニングクリーニングっと……。
「いてて……よし、どうぞ、零さず食べてね?洗うのにも変化の術する必要あるし…」
「……ふふ、ありがと!頂きま〜すっ!」
「あーーんッ!」
…細いとはいえ一口でいくなよ一口で、やっぱり化け物は化け物なんだな…。
食いごたえなさそうな腕が目の前でぐちゃぐちゃボキボキバキバキと、異様な音を立ててどんどん食われていく。
その姿を見るのは…案外心にくるなぁ……ソレ私の腕だぞ?もっと丁寧に食べて欲しいのに…。
「………」
「どう?」
「お」
「お?」
「美味しーーあへ……あはは……おいし…」
「……ルーミア?」
「うひ、あへ……」
ルーミアの身体から闇が溢れ出し、どんどんと姿を失って溶け始める。
「ル、ルーミア!?!?」
「おいしーー!!あはーーわはーー!!!」
「ルーミアァァァァァ!!?!?」