起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたら月見をしていた

やべ手汗凄くなってきた……臭ってないかな?髪の毛跳ねてないよね…。

 

 

「なに、アンタ…邪魔しないで、お楽しみの途中なの、見て分からないかしら?」

 

 

「ごごごごめんなさい…あああの、でも…気になっちゃって……」

 

 

「…貴方の中の『かぐや姫』がどれかは知らないけど、『難題』に聞き覚えがあるのなら、私の事ね」

 

 

「…っ!本物だぁ…!!」

 

 

やば、泣きそう…子供の頃お母さんにずっと読み聞かせて貰った色々な絵本、その中の一つの本人に出会えてるなんて…!激感動モノだ、感激で鼻水出そう。

 

 

「それじゃ退いて、今あの子と殺しあってる途中だから」

 

 

「ああぁ……も、もうちょっとだけお話を…」

 

 

「…はぁ…チッ…それと、ソコ、離れてた方がいいわよ」

 

 

「え?」

 

 

気づけば尻尾が業火に巻き込まれていた。

 

 

「ォラァァァ゛ッ!!【不死「火の鳥-鳳翼天翔-】!!…っ、しまった、退いとけ!ユウ…って遅かったか…」

 

 

「ほわっちゃぁぁぁ!?!?」

 

 

「だから言ったのに、永琳〜!えいりーん!要救助者が産まれたわよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これで治療は終了よ」

 

 

「ありがとうございます、いてて……皮膚はあんまりイメージ出来ないんだよねぇ…治ってる姿というか、表皮を張り替えるイメージというか…」

 

 

「余りに周りを見れていなかった私の責任だ……すまなかった」

 

 

「いえ!全くもって大丈夫です……10割私の責任なんで」

 

 

「そ・う・ね、私と妹紅の決着を遮った罰についてはどうしてやろうかしら?」

 

 

うぅ……ごめんなさい…あとかぐや姫に怒られてるの嬉し…。

 

 

「着かない決着の罰か?笑わせるなよ輝夜」

 

 

「あ゛?」

 

 

…本当に輝夜姫なのかは怪しくなってきてるけど、取り敢えず置いといて……永琳さんが治療をしてくれて、火傷も完璧に治った頃にルーミアも連れてきてくれたんだけど、ちょっと様子がおかしかった。

 

 

「………」

 

 

「ル、ルーミア?」

 

 

「わはー」

 

 

「あははー」

 

 

「…あの〜これって…」

 

 

「貴方のお友達もちゃんと治しておいたわよ、妖怪専用の麻酔を調合して、後は…脱力剤とかを飲ませておいたからこうなっているけれど」

 

 

い、いやいや…それだけで治るもんなんです?

 

 

「怪訝な顔をしているけれど、彼女の病名は…そうね、強いて言うなら『ショック死』しかけ、かしら?…貴方の身体が余程美味しかったのでしょう、ビックリし過ぎて死にかけていたのよ」

 

 

「……へぇ…なるほど……」

 

 

あれだけ焦らせた結果がコレか?マジで、コイツ……はぁぁぁぁ……よし、今の内にコイツのデコに落書きしまくろ。

 

 

「妖怪は死にかけると、より自身の本質…根源に近い姿をとって回復行動を取ろうとする、目の前の肉を貪り存在を保とうとしていたら、更に心と身体に負担…まぁまたビックリしちゃっておかしくなってたって所かしら」

 

 

「ほんっっとうにお騒がせして申し訳ございませんでした……妹紅さんも永琳さんもありがとうございます」

 

 

「死にかけてたのは事実だ、限りある命……大切にしておいた方がいい」

 

 

「私も妖怪の『仮死状態』は良いサンプルになったわ、それはそれとしてお代は貰っておくけれどね」

 

 

「お代…あ!お金持ってくるの忘れてた…!!…ごめんなさい、金の支払いは必ずさせて貰うので、一旦家に帰っても…?」

 

 

「それなら私も一緒に行こう、帰路も迷いの竹林は旅人をそう簡単に離してくれないぞ?」

 

 

「ありがとうございます…!!」

 

 

ありがてぇ…!本当に彼女を頼って良かった、どうやら慧音先生のご友人だって阿求ちゃんが言ってたし、これからも付き合う時は来るだろう……その時は何かお返しでも……。

 

 

「待ちなさいよ!!私との決着も何も着いていないのに、もう帰るの!?」

 

 

「今日はユウが依頼主だ、お前に付き添うのはまた今度な」

 

 

「えーー〜……ねーー…ちょっと位晩酌に付き添いなさいって〜…こんなに月が美しい夜で勿体ないわ〜…」

 

 

「こんな夜は毎回お前からの刺客が来るから私は大っ嫌いだけどな」

 

 

「まぁまぁ二人とも、ユウさんが帰るのは支払いの関係でしょう?それ位なら何時でも大丈夫だし、それに支払いもお金だけじゃなくてもいいから、少し輝夜に付き合ってあげられるかしら?」

 

 

「…………ユウ、どうする?」

 

 

「ええぇ…いやまぁ、ルーミアをこのまま連れて帰るのもなんだし……待って下さるなら、ルーミアがシャキッとするまでここに居ても良いんじゃないでしょうか?」

 

 

「……はぁ、分かったよ…満月の夜位は付き合ってやる、お前らがいつかはその光を自分自身で願って味わえるように、今日位はな」

 

 

「…?」

 

 

随分と含みのある言い方をする、まぁ私も輝夜姫をもう少し眺めたいという私個人の欲望も満たせるし、それに妹紅さんも本気で嫌がっては無いから……やっぱり腐れ縁なんだろうなって。

 

 

「…ふふ、それならお月見にでもしましょうか……優曇華、宴会の準備よ、てゐも竹林の子達を誘って来てもいいわ」

 

 

「あいあいさー!」

 

 

「はいはい、お団子と甘酒ですね…お師匠は日本酒にしときますね…あ、それとユウさんはお酒は?」

 

 

「あ、未成年なんで私は…」

 

 

「OKです…それと、貴方って幽霊か何かとの半妖だったりします?貴方からの『波長』が読み取れなくて…」

 

 

コソッと寄ってきてウサギの耳をぴくぴくとさせながらそう言われる。

 

…波長……波長?波長がなんの事か一切分からないけれど、流石にこの展開にも慣れたぞ、こういう時は大体『能力』関係だ。

 

 

「…もしかして優曇華さんも運命とか見れたりするんですか?私、よく幻想郷の人達から『見えない』やら『分からない』やら……」

 

 

「あぁ、えぇ〜…っと…うーん、基本的に私って生物の『波長』が分かって、位置やらなんやら…色々弄れたり出来るんですけど、見えないっていう相手は初めてで…」

 

 

ほら出た初めて見えないなんちゃらかんちゃら…レミリアさんもそうだけど、やっぱ私が外来人なのが原因……というか、この世界が私の夢の中だからかなぁ…。

 

 

「多分外来人って部分が悪いことしてるっぽいので、お気になさらず」

 

 

「……分かりました、取り敢えず今は…お月見!ですね、お師匠!」

 

 

「今の内に二日酔いしない薬でも調合しておこうかしら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴が始まって数時間。

 

 

永遠亭には酒気が充満し、集まったウサギや永遠亭メンバーの殆どは酒に溺れて縁側で寝ていた。ルーミアもいつ目覚めたのか分からないが、酒を飲んでダウンしている。

 

 

てゐやイナバにしても結局は日本酒に手を付け始め、一升瓶を抱えながら爆睡している、そんな中で目覚めているのはお酒に手をつけなかったユウと、これを見越して薬を調合していた永琳、自爆で酒気を飛ばした妹紅のみだ。

 

 

 

 

「リ……ザ、レクションッ…!!」

 

 

「う…ぁ…飲みすぎた…かぐや、どこだ…」

 

 

「…ダメだ、このバカ気絶してる…という事は、今回の飲み比べは私の勝ちか」

 

 

「飲み過ぎですよ、妹紅さん…はいお水」

 

 

「あぁ、ありがとう……ふぅ、よしもう一回リザレクションしとくか」

 

 

ユウの目の前で妹紅の身体がパチパチと火を起こし始め、空間に反射する虹のキラメキと共に一瞬の劫火によって肉体を燃やし尽くす。

 

 

「…不思議で、綺麗な光景ですね……」

 

 

「はは、不死者の醜い自殺だ…そう綺麗なもんじゃないさ」

 

 

その焔を見て、後片付けの手を止めて永琳も妹紅へと…。

 

 

「姫様はソレ、『綺麗で好きだ』ってボソッ…と言ってたわよ?」

 

 

「はぁ?コイツがか?」

 

 

「寝ても醒めても、暇な時は私が持ち込んだゲームか…貴方の話しかしていないわ、どれも殺意満天だけれどね」

 

 

「……そうか」

 

 

「そう怪訝な顔をしないで頂戴……月も隠れた今じゃ、余計味気無い感じになっちゃうし」

 

 

「……」

 

 

「妹紅さん妹紅さん、そこのグラス全部持ってこれます?」

 

 

「ん?ああ」

 

 

宴は終幕を迎え、お団子も売り切れ、お酒も空に。

 

 

ユウは永琳と共に後片付けをしていて、色々な世間話や身の上の話、永遠亭の少しの事情を話してもらっている。

 

 

その時間でユウが外来人で、『輝夜姫』の物語を知ってるが故の質問を永琳へと問いかけた。

 

 

『輝夜と月の関係性』

 

 

稗田阿礼の転生体、ヴラド三世の親族、現実世界の偉人が多く幻想郷に流れ着いている事から『輝夜姫』は『輝夜姫』だと確信していた為、自然と言ってしまったその質問。

 

 

『…貴方は外来人だからその疑問は最もだけど、ごめんなさい…余り、そこは語れないわね』

 

 

『…!すみません…』

 

 

……だが。

 

 

 

「……」

 

 

どうも、私です。

 

 

どんちゃん騒ぎも過ぎて、クールダウン中。……そして、私の脳内もフル活動中です。

 

 

この場所の事情に踏み込まない方がいいのは分かっているけれど、考察厨として考えざるを得ない。

 

 

「テーブル拭きテーブル拭きっと…」

 

 

…ここは、人里と余りにも文明レベルが違い過ぎる。現代とほぼ同じ、知識に関しては現代人よりも上を行っているし、日本の歴史の根幹にも『輝夜姫』として関わっている。

 

 

この人たちが何時幻想郷に来たのかは分からないけれど、割と本当に…幻想郷は私の夢なんかじゃなくて、『現実世界』の裏側な気がしてきた。

 

 

「永琳さん、団子の食べ残しどうします?」

 

 

「全部食べきっちゃいましょうか、集めてまた器に飾り付けておいてくれる?」

 

 

「はーい」

 

 

妹紅さんの本名に付いている『藤原』、これは物語や歴史で出てくる藤原家だろう。そして輝夜姫が難題の一つ、蓬莱の玉の枝を出題した相手は車持皇子、藤原氏の二代目である藤原不比等の別名だ。

 

 

…幻想郷は思ったよりも幻想的で、思ったよりも現実的、ここの繋がりを見出した時は自分の頭脳がアルティメットしてた。

 

 

「………」

 

 

今更ながら、本当に異世界に迷い込んできたことがジワジワと心に突き刺さってくる。

 

夢だ夢だと誤魔化していたが、現実世界で童話や神話、架空の物語として生き場所を無くした人達が訪れる楽園……アリスお母様は本当に真実しか言ってなくて助かってる、私のこの世界に対する解釈はあの人のお陰で成り立っているからね。

 

 

「よし、片付け終わり!寝てる人達は…私の力じゃ運べないのでお願いいたします…」

 

 

「アンタ本当に触れるだけで折れそうな細さしてるもんな、任せとけ」

 

 

「ルーミアは地面で寝かせといて下さい、あと落書きも消さないで」

 

 

「あ、ああ、分かった」

 

 

話を戻して……妹紅さんと輝夜さんが殺しあってる最中、蓬莱の玉の枝の様なもので弾幕を発射していたのも見えた、ここまで要素が揃えばどうしても考えついてしまう。

 

 

蓬莱の玉の枝の効果、不老不死の力。そして不死であり、物語的に捉えれば贈った贈られた関係にあるだろう2人、妹紅さんに関しては藤原不比等本人か分からないけれど…。

 

 

『妹紅さんへの刺客』『不死』『藤原と輝夜の名を持つ2人の因縁』『蓬莱の玉の枝』『人里とはかけ離れた現代よりも高い異常な文明レベル』『うさぎ耳を持つもの達』『妹紅さんの永遠亭メンバーに対する発言』

 

 

そして、輝夜姫の童話の結末。

 

 

ここまでくれば『月と輝夜、永遠亭の関係』も薄ら気味に見えてくる。

 

 

 

「……逃げてきたのかなぁ…」

 

 

輝夜さんに対する永遠亭の人達の姫様呼び、月を見る時の目、そしてその呵責の顔は…見せてはいなかったけれど、少し、ほんの少しだけ心の機微を感じる物言い。

 

 

「どっちだろ、輝夜姫は元々月のお姫様で地上に送られて…それからまた帰って、か…」

 

 

ここで謎なのは永琳さんだ、全くもって物語に関係ない、登場もしない人である医者の永琳さん。そして一番事情に精通してそうな人でもある。

 

 

「…なーんか、やっぱり触れちゃダメだな、『深淵をのぞく時またこちらも深淵に覗かれている』だ、やめとこやめとこ…お団子整備し終えましたよー!最後のお月見しますー?」

 

 

「お片付けお疲れ様、そうね…最後の晩酌とでも洒落こみましょうか、妹紅」

 

 

「…そうだな、月も隠れたこんな夜だ、飲んでやるよ」

 

 

「あ、お月見で月が隠れてるのもなんなんで、月出しときますね」

 

 

「ああ、それは大丈夫だ、今は月が無い方が……え?なんてった?」

 

 

妹紅が振り返った視線の先には、雲で見えなくなった筈の満月が空に現れ、嘘のように大きく近く、しかしてその光は発されること無く空に浮かんでいた。

 

 

「要らなかったか、よし消しとこ」

 

 

「……アンタも中々に大概な奴だな」

 

 

「変化の術が大概悪いだけですよ、この尻尾が悪い尻尾が」

 

 

おちゃらけた雰囲気から繰り出される術の規模に軽く引く妹紅だが、それとは別の視線を永琳は向けていた。

 

 

「……」

 

 

「今のは、幻術かしら?」

 

 

「えっと…変化の術?です、一応物質とかも諸々変身してるんで…そうだなぁ…よいしょっとォッ!!」

 

 

例を見せるために、あのビームで指を切断してから、血が吹き出して庭を汚す前に一瞬で変化させて治す。

 

 

「…ふぅ、医学に精通してる永琳さんからすれば発狂ものだと思うんですけど、一応こうやって血液、肉、骨とかはイメージでパッと作って直せますね、細胞とかの細かいイメージはしてませんけど、大まかで大丈夫みたいてます」

 

 

「……貴方の月、私の手の平サイズで出せる?」

 

 

「出来ますよ、でも何せ私のイメージだから正確性もクソも無いですけど」

 

 

「お願い」

 

 

「…わ、分かりました」

 

 

…圧が強いな…これは……少し、素が見えたか?

 

 

「……さっきとは違って、岩石の塊にしたのね……貴方は月を、宇宙に漂うただの岩石だと理解している、やはり外来人だからかしら?」

 

 

「そうですねぇ…今はもう宇宙進出とか果たしてますし、月にも沢山探査機とかが……」

 

 

「……」

 

 

「…月見を始めましょう、この岩石を眺めながら、ただ黙々と」

 

 

「永琳」

 

 

「分かっているわ」

 

 

「そうか」

 

 

ただのでこぼことした岩を縁側の傍へと浮かべて、片付けを終わらせた三者で座り、それを眺めながら残飯の団子を口にする。

 

 

何も話さず、ただ黙々と。

 

 

 

 

 

 

 

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