起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたら地獄へ行くことに

「お時間よろしいです…ーー」

 

 

ズガァンッ!!!

 

 

「ひゃぁ!?!?」

 

 

ノックを続ける文の頬を、朱色に染まった剣が掠める。

 

 

「キャハハハハッ!!レーヴァテイン、その子…殺して」

 

 

主の命令に従い、無礼者を焼き切らんと燃え盛る剣が独りでに動き出す。

 

 

「ほへっ?やっばい、退散たいさ……キャッ!?」

 

 

一瞬で駆け出そうとする文の頭上に、『もう1人』フランが現れ、逃げようとした文の背中を空中から踏み潰した。

 

 

「鴉如きが誰の時間を邪魔したのか、しっかり分からせてあげる…!!」

 

 

「グエッ…『命の保証は無い』が…これ程とはッ!【無双風神】ッ!!」

 

 

射命丸文の弾幕の特徴は、その速さ。彼女の弾幕はただの粒の光弾であり、一見して特別な特徴は無さそうに思えるが……『速さ』によって、ただの粒は一筋の光となる。

 

 

レーザーにしか見えない光弾がフランの身体を貫く……。

 

 

「……」

 

 

「ぐぁぁっ……お、折る気…!?」

 

 

 

だがフランにとっては逆に損傷部位が少ないというだけの事、文の翼を両手で掴む手は離れず、加わる力は増していく。

そして文は紅魔館で禁じられていた事を防衛本能とはいえ、破ってしまった。

 

 

その処罰が下る前に……

 

 

「フランちゃん」

 

 

ユウが割り込む。

 

 

「大丈夫?」

 

 

「……ふーっ…うん、大丈夫」

 

 

「服と身体、治してあげるからさ……ほら、こっちおいで?」

 

 

「うん…!」

 

 

文を投げ捨てて部屋に戻っていくフラン。

 

 

フランの内在的で時折表面に出てくる狂気は、微かに漏れ出るだけでも他者へと多大な影響を与える。狂気と恐怖は伝播し、普通であれば彼女の狂気によって発狂する者が殆どであり、実力者だけしか防ぐ事が出来ない。

 

 

だがそれ故に無垢である彼女への、狂気の向こう側の『フランドール・スカーレット』という少女に対しての甘言は…深く、そして簡単に受け入れられた。

 

 

「どうする?お外で遊ぶ?また新しいお友達も紹介できるけど…フランは要らないって言ってたから……そうだ!あの緑髪の、フランちゃんが『お友達』って言ってた子とも遊びたいな〜」

 

 

「そうだった!ユウもあの子が見えるんだったね…!よ〜し、それじゃぁ今日は私がユウお姉ちゃんに私の友達を紹介してあげる!着いてきてー!」

 

 

「待って待って、日傘と服の破れた所作り直してからね、その間に私の血…吸ってもいいよ〜」

 

 

「わーい!」

 

 

 

先程とは打って変わって少女の姿を見せる彼女を尻目に、その殺意の手から逃げれた文がこっそりと紅魔館を逃げ出そうとするが……。

 

 

「射命丸文」

 

 

「…これはぁ…不味りましたねぇ…」

 

 

「お嬢様が、お呼びよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅い部屋、紅いソファー、そこに腰掛けて目の前の紅い椅子に座る大妖怪と向き合う。

 

 

「清々しいわね、ここまで約束を裏切られると……逃げ出さなかった事だけは褒めてあげる」

 

 

「ぐぐっ…申し訳ないです…」

 

 

「…『妹との面会に何があっても責任は取れない』『妹を傷つけない』私、ちゃんと話の内容を貴方に伝えたわよ」

 

 

わざとらしく、懇切丁寧に言葉を文の耳へと届ける。

 

 

「全く……あの子が関わると運命が曇る…こうなるなら貴方に写真集の許可なんて出さなかったわ」

 

 

冷静を装ってはいるが…本当は可愛い可愛い妹のレミリア専用写真集を作る、などという殆ど引っ掛け詐欺みたいなものに騙されて入館許可を出してしまった事を、心の底から後悔していた。

 

 

《本当、レミィはポンコツの妹バカねぇ…全部のリスクを自分の欲望に流されてんじゃないわよ》

 

 

「悪かったわね!!」

 

 

「あ、あの〜それで……私は如何なる処罰を…」

 

 

「…そうねぇ……まず吐いた唾は呑み込みなさい、写真集は作る事…約束を守った上でね?次は無いわ」

 

 

「そして私の要求に1度だけ、いつ以下なる時でも従う事」

 

 

「最後に、ユウを詮索するのは辞めときなさい」

 

 

「……分かりました、ですが最後の…ユウさんの詮索を辞めるというのは…」

 

 

「そうね、貴方からすればアレの特ダネは見逃せない事でしょう、私も理解はしている、だから『辞めときなさい』としか言わないわ」

 

 

「けれどそこに踏み込めば、フラン以上に貴方の自己責任でお願いする事になる、それだけよ」

 

 

「……あの低級妖怪は…フランさんを制御しているのですか?」

 

 

「相変わらずプライドが高いわねぇ…『低級妖怪』…ふふっ…それと、制御している…か」

 

 

 

…ずっと、そんな考え方だったからダメだったのかもしれないわね。

 

 

フランが、いつか己の狂気を制御して紅魔館の外と触れ合い、1人立ちをして飛び立っていく、そんな幸せな運命を目指していた。

あの元来の狂気と向き合って……でも、『向き合う』終着点が狂気の制御だったものね。

 

 

あの狂気に触れて、見て、味わって共に歩もうとする事のなんて難しい事か。それでも私は、あの子のお姉ちゃんだから。

 

 

 

「……先、越されちゃったわね…」

 

 

「ユウはあの子の友達よ、それ以上でもそれ以下でも無いわ」

 

 

「…あの人が紅魔館に来て何日目です?」

 

 

「2日目」

 

 

「絆されすぎですってば、レミリアさん…」

 

 

「それも理解している、だから貴方を見逃しているのだけれど?少しはユウに感謝しておきなさい、フランにそのまま殺されなかった事も含めて」

 

 

「分かりましたよっと」

 

 

《…シスコン、妹バカ》

 

 

「本当にうっさいわねぇ!?少し位品格のある姿を保たせて欲しいのだけれど!?」

 

 

《はいはい、それと…今からあの子たちが外出の許可を取りに来るわ、そこの新聞屋はさっさと隠れるかお出かけ先のフランの笑顔を取る準備でもしておきなさい》

 

 

「了解です〜……はぁ、全く、宝箱を開いたらとんでもない厄ネタだった気分ですよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっつい…」

 

 

どうも、私です。

 

 

「ひから……びる…」

 

 

「まだ先は長いよ?大丈夫?」

 

 

「だい…じょぶ、変化〜…」

 

 

水作って…あ〜…おいし…。

 

 

という訳で、フランちゃんに連れられて緑髪の友達が住んでいる場所…。

 

 

通称、『地霊殿』へと向かっている最中です。

 

 

「…あ!ねぇユウ…地霊殿に居る時は、お水は飲まない方がいいかも」

 

 

「今の内に沢山飲んどいた方がいいってこと?どうしてかな?」

 

 

「水はね、『地霊』の呼び水になっちゃうから…ユウお姉ちゃんもお化けが入った水を飲むのは嫌でしょ?」

 

 

「うげっ、確かに…体内の水は?」

 

 

「地霊にそこまでの力は無いってこいしちゃんが言ってた」

 

 

 

説明しよう!説明されたことをそのまま転用して説明しよう!!!

 

 

なんと幻想郷、『地下』もありました。

 

 

そも、幻想郷には様々な神様やらなんやらが居る、冥界もあれば地獄もある。冥界とかに居る浮遊霊は地上で裁きを受けたりなんなりされる前の人達だが…。

 

地霊殿はまた別、いろーーんな、本当に色々な地獄や天国、魂の行き着く先が幻想郷にはあって、地獄には地獄の事情もあるらしく……。

 

 

「昔に切り捨てられた地獄の一部……『旧地獄』かぁ…」

 

 

こいしちゃん?って子がフランちゃんにある程度歴史も話してたみたいで、その昔…地獄の勢力がデカすぎ問題が発生したらしく、色々紆余曲折あって…その土地を縮小する事にしたらしい。

 

地霊殿が立っている土地は地獄としての役割は終わってるけど、未だに蔓延っている怨霊とか地霊だとか、地獄の霊達が居たり、灼熱地獄の跡地に縛られていたりしてるとか。

 

 

 

「まさか生きてる内に地獄へ行くとは、帰ったらお母さんに自慢しよ」

 

 

「……お母さん?お母さんか…ユウのお母さんはどんな人なの?」

 

 

「えっとね、私を数倍愉快にして、めちゃくちゃ根性があって、優しくて強くて頼れる大人」

 

 

「素敵な人なんだね…!」

 

 

「うん、この世界でも大切で面白い友人や、フランちゃんと出会えたけれど…やっぱり、私はそれでも『お母さんの為に』帰りたいって思える位には凄い大人かなぁ」

 

 

「そっか、ユウもいつか帰っちゃうんだよね…お母さんが居るから……ねぇユウ、そのお母さん…私が壊したら、ユウはずっと私の傍にいる?」

 

 

「それは…」

 

 

「……」

 

 

「んふ、はは!フランちゃんはまだまだ甘い!!お母さんを舐めちゃいけないよ?私は、フランちゃんがお母さんを壊してる所なんて欠片も想像出来ないもん」

 

 

「それに、私は思ったよりもこの世界が好きみたいだからさ、きっと帰れたとしても皆の、フランちゃんの元に居るよ、絶対に」

 

 

「お母さんを連れてね☆」

 

 

フランちゃんがどんな事をしようが、お母さんはスっとやってパコんと頭叩いて、色んなことを教えてあげられるだろう。

 

だって、私がこうなってるからね。それにフランちゃんへの言葉の9割はお母さん由来だ。お母さんならきっと495年の孤独を埋められる、

 

 

 

「…そっか、それじゃ私待ってるね、ユウがお母さんを連れてくるまで」

 

 

「うむうむ」

 

 

「…着いたよ、ここが地霊殿へ繋がる穴、こいしちゃんに特別に教えて貰ったんだ」

 

 

「……深すぎない?」

 

 

すんごい深い穴、人2人分の大きさしかないが、底に関しては全く見えない。

 

 

妖怪の山だっけ?その麓にこんな穴があるなんて…。

 

 

 

「それじゃ着いてきてねー…よいしょっ!」

 

 

「え?飛び込まなきゃいけないの?あ、フランちゃんちょっとまってぇ!?」

 

 

フランに引っ張られて、そのまま穴へと落下する。

 

 

 

「おわぁぁぁ深すぎぃぃ!?!?!?」

 

 

 

と、取り敢えず!飛んで落ちる!秘技…上に落ちる変態だッ!!真っ逆さまのまま直進するぞぉぉぉ!!!

 

 

 

「ユウお姉ちゃんー!だーいーじょーぶー?」

 

 

「…大丈夫だよーー!!!…深すぎない???え?どうなってるの?」

 

 

 

何度も繰り返して申し訳ないが、本当に深い。…地獄へ落ちるって(物理的)ってここまで長いものなのか。

 

 

真っ暗闇で、ずっと落ちている。

 

 

長い時間落下し続け、そのまま上下感覚と平衡感覚が無くなり始めた時。

 

 

 

 

「ヘブァッッア!!??」

 

 

頭が空に突き刺さった。

 

 

 

「もご、ふごごごご」

 

 

いっっったぁぁぁぁ……てかあれか、これ地面か……落ちてたもんな。

 

 

「ふごっ…」

 

 

足を思いっきり引っ張られて、誰かが地面の中から引き上げてくれた。

 

 

 

「ありがと、フランちゃ…ーー誰?って、君は…!」

 

 

 

「私?私はこいし!やっぱりお姉さん私の事見えてるのね!あの時はごめんなさい、逃げちゃって…いきなりのことでビックリしちゃったから…」

 

 

 

「いやぁ全然大丈夫……という事は、もしかしてここが…?」

 

 

「そうだよー!ここが地獄の辺境」

 

 

「地獄へ、地霊殿へいらっしゃい、ユウお姉さん」

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