起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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悪夢

 

「……んっ…んーー〜っ」

 

 

「………寝てたか」

 

 

「………?」

 

 

「…なんか、気持ち悪いな」

 

 

台所へ向かって口をゆすぐ。

 

 

「ガラガラ……ペッ……」

 

 

「………」

 

 

「水」

 

 

何の変哲もない水だ。それが排水口を通って下水に流れていく。

 

 

よくよく考えてみれば人里には最低限のインフラ整備があるんだな、だったり…こんな綺麗な世界でも下水はあるよな、とか、そんな適当な事が頭を過ぎていく。

 

 

「……」

 

 

「ルーミアは、帰ってきてないか」

 

 

「……」

 

 

「慧音先生のところにでも行こっと」

 

 

 

玄関でわらじを履いて外へ出る。

 

 

尻尾を隠す札も忘れずに貼って、寺子屋へと向かおうとする。

 

 

 

「よぉ、狐の嬢ちゃん…昼飯買ってくか?」

 

 

声をかけられた、以前おにぎりを買ったお店の店主さんだ。

 

 

「…里中で狐って呼ぶの、前から辞めてくれませんって言ってますよね?」

 

 

「尻尾隠して尻隠さず……顔も体躯も全く同じなのに、誰も気づいてない訳ねぇがな!大抵の奴は普通に察してるぜ?ガッハッハッ!」

 

 

「はーいもうここで昼飯買うのやめマース」

 

 

「いやぁ、すまんかったって…ちゃんとアンタの感想で改良し続けてんだ、買っててくれよ…最近は人気も出てきて弁当を買うより俺の所で安くデカい握り買う方が良いって言ってくれてるしな」

 

 

人里には塩が流通してない、海が無いからだ。淡水しか無いこの世界じゃ、『旅人』と呼ばれる身元不明の方が持ってきて商業してくれる以外に入手法は無い。

 

 

それ故に醤油とかで塩味を得るしかない、てことで現代知識チートで改良しました。

 

 

「あ、そうだ…梅にぎり買ったげるから、ルーちゃん何処にいるか知らない?」

 

 

「今日は見てねぇな、寺子屋は見て回ったか?」

 

 

「今から見に行くとこ、はいお金」

 

 

「あいよ、ありがとさん、行ってらっしゃい」

 

 

貰ったおにぎりを人かじり。

 

 

 

ゴリッ。

 

 

と、妙な感触。

 

 

「種でも噛んだかな…」

 

 

「……」

 

 

「寺子屋、行くか」

 

 

 

 

人里は明るく賑やかだ、幻想郷の広大な土地の中では決して大きなコミュニティとは言えないが、それでも根強い人同士の繋がりで一生懸命生きている。

 

 

 

「…」

 

 

おにぎりを頬張りながら道を歩いていると、親子連れの子供と目があった。

 

 

「「……」」

 

 

私の内なる悪戯心が働いたのか、お母さんが店前に並んでいる野菜とにらめっこしている間に、近くに行ってこっそりその子だけに見えるように尻尾を出してあげると…。

 

 

「……!!」

 

 

目をキラキラとさせながら、尻尾に飛びついてもふもふにこにこ、かわいい。

 

 

「バイバーイ」

 

 

「ばいはーい!」

 

 

可愛いものを堪能してまたおにぎりを人かじり。

 

 

ゴリッ、とまた妙な感触があるけれど、もう気にしなくなった。

 

 

そしてまた、行き道に沢山の人と会話をする。

 

 

「ユウちゃん、お出かけ?」

 

 

「寺子屋ですよん」

 

 

「気をつけて行ってらっしゃい」

 

 

他愛ない会話だけど、これでも人里の殆どの人とは顔見知り。阿求ちゃんと絡んでるのも大きいかな。

 

 

 

寺子屋の前に辿り着いて、門の小窓に立つ。

 

 

 

「……」

 

 

「………」

 

 

妙な胸騒ぎがする。

 

 

「…………」

 

 

ドンドン、とノックをして、いつもの少年に出会いたい。

 

 

「うーんしょっと、あぁユウお姉さん…どうしたんですか?今日は寺子屋は休みですよ?」

 

 

「……良かった…うん?なんで安心してるんだろ…あ、そうだ…ルーちゃん来てない?昨日の夜から帰ってきてなくてさ」

 

 

「ルーミアさんですか?寺子屋には〜……来てませんね」

 

 

「そっか、ありがと裕太君」

 

 

「いえいえ…ルーミアさんをお探しという事は、これから阿求様の元へ?」

 

 

「そうだね、そこにも行ってみるよ、それじゃ」

 

 

「はい、気をつけて行ってらっしゃいです」

 

 

寺子屋を後にする。

 

 

私がよく阿求ちゃんの所へ寄るものだから、ルーミアまで阿求宅へお邪魔する回数が増えているらしい。

 

 

 

「……」

 

 

 

ゴリッ。

 

 

 

おにぎりはもう食べ終わったのに、口の中に感触があった。

 

 

 

ゴリゴリと、歯が砕けてしまいそう。

 

 

 

道を歩いている。

 

 

 

「……」

 

 

「ねぇ、ユウお姉ちゃん」

 

 

「……?」

 

 

「フランちゃん?」

 

 

後ろから声が聞こえてきて、振り向くとフランちゃんの後ろ姿がある。

 

 

「…!日傘ささなくて大丈夫なの!?」

 

 

「うん」

 

 

「…何かあったの?」

 

 

「何も」

 

 

後ろ姿のフランちゃんは人外である箇所を隠していない、このままでは霊夢がすっ飛んできてボコボコのボコにされちゃう。

 

 

だから、札を取り出そうとした。

 

 

「……っ」

 

 

ーー身体が動かない。

 

 

だが金縛りじゃない、誰かに押さえつけられている。そしてその人物にも覚えがある。

 

 

「こいしちゃん、やめて」

 

 

「ユウお姉さん」

 

 

私を背後から抱き締めて拘束していたのは、こいしちゃんだ。

 

 

「……」

 

 

「…二人とも…」

 

 

何かが起きていた。異常な何かが、朝からあった『何か』が蠢いているんだ。

 

 

空がこんなに晴れやかなのに、目の前のフランちゃんすら見えない。

 

 

 

 

「ルーミアちゃんの居場所、知ってるよ」

 

 

「……」

 

 

「教えてあげる」

 

 

 

「ついてきて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何処まで行くの、フランちゃん」

 

 

返事は無い、今もフランちゃんの後ろ手を握って連れて行ってもらってるだけで、顔すら見せてくれない。

 

 

人里の外、いつもルーミアとチルノ達が遊んでいる場所の更に奥側。

 

 

 

 

 

「…ここは」

 

 

辿り着いたのは、無骨な洞穴。

 

 

 

「ルーミアの、家」

 

 

 

再び腕を引っ張られて、洞穴の中へ。

 

 

 

「…ルーミアは、居ないか」

 

 

「ねぇフランちゃん、ルーミアは…」

 

 

「居るよ」

 

 

「…っ、何処に居るの?…そもそも、この状況は…2人のせい?」

 

 

焦りと困惑、フランちゃんとの会遇以後『異常』に対する耐性がいつの間にか失われていた私は、思わずフランちゃんの手を強く握ってしまった。

 

 

 

「ここに、居るよ」

 

 

顔を帽子で隠したまま、くるりと振り向いて指をさすのは……。

 

 

 

「………何を…」

 

 

 

()()()()

 

 

 

「ユウ」

 

 

そしてまた、私を呼ぶ声がした。

 

 

 

「……」

 

 

 

「っ!!?」

 

 

 

「お母さん…?」

 

 

 

「どうして、起きる時間が来ると思う?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「分かんない」

 

 

 

「それはね、ユウ」

 

 

 

「夢は、いつか醒めるからだよ」

 

 

 

 

 

 

 

「起きて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「……んっ…んーー〜っ…」

 

 

 

「…寝てたか」

 

 

 

「……」

 

 

 

「……ルーミア?」

 

 

上半身が重い。

 

 

ルーミアが布団の上から私に重なっていた。

 

 

「ぁ…え?ル、ルーミア?」

 

 

()()()()()()()()

 

 

「ルーミア??ルーミア!!!」

 

 

「ルーミアッ!!!!!」

 

 

どう考えても即死、でも彼女は妖怪だ。

 

 

妖精が完全に死なない様に、まだ……。

 

 

「ま……だ…」

 

 

 

「ぉえっ…」

 

 

 

「…気持ち、悪い……」

 

 

 

首が無い死体が気持ち悪いんじゃない。

 

 

 

口の中が、気持ち悪い。

 

 

 

吐き出そうとして、口に指を突っ込んで気付いた。

 

 

 

「…うぇっ…おぇェッ…え?…血……?」

 

 

 

 

「…ぁ……ちが…ぅ…」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「わた……し…のじゃ、無い」

 

 

 

「ルーミアの……血だ…」

 

 

 

 

 

 

私の手の中に、何かが握られている。

 

 

 

 

 

「……赤い、札?」

 

 

 

それはあの洞穴で見た、スペルカードの原型。

 

 

 

「…【夢符】」

 

 

 

頭の中に言葉が流れ込んできた。

 

 

 

そして、その言葉を口にする。

 

 

 

 

 

「【常闇の少女】」

 

 

 

 

 

 

 

 

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