起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたら暖炉の前だった

 

 

「…思いっきり勘違いしちゃったわね、あの子」

 

 

「紫様、いかがでしょうか?」

 

 

「あ〜…そこそこ、そこ揉んどいて…う〜…」

 

 

「…彼の者の様子は?」

 

 

「ん〜?経過観察中って所かしら、数十日だけど良い勉強になったわ…まっ、正体不明から意味不明に変わっただけだけど」

 

 

「…数十日?まだ彼女が幻想郷へ来て数分しか経っておりませんが……紫様、冬眠のし過ぎでついに日時感覚すらーー」

 

 

「藍、尻尾舐めるわよ」

 

 

「申し訳ございません!!そしてそれは是非して頂けると!」

 

 

「んもぅ、全く……あ、あ〜ほら、そっち行っちゃダメダメ、因果も何もかもぐちゃぐちゃなんだから…ほらもう!」

 

 

(……紫様が外界のゲーム実況とやらを閲覧している時と同じ様な顔をしていらっしゃる…)

 

 

そうして空中に浮かび上がっている映像を片目に楽しんでいると、唐突に紫が扇子を持ちだし、口元へ広げた。

 

 

それと同時に身に纏う雰囲気も一転する。

 

 

「紫〜…」

 

 

「摩多羅隠岐奈様……!」

 

 

『風景』が開き、ダラ〜っとふよふよ浮きながら紫が座っている縁側の隣に着陸した。

 

 

「なんか、どーんと無いか、どーんとしたもの」

 

 

「えー?どーんとしたもの〜?また何かしたいの?」

 

 

「そう!幻想郷のあれこれソレソレでな、所謂暇という奴だから、こうどー〜んとな、したくて」

 

 

「…うふふ、それならこの子の事はどう?」

 

 

「おぉ!本当にどーん!としたものとは、紫にしては珍しい」

 

 

「知ってて来たのに、随分と恭しく話すのね、ねぇ?おっきー」

 

 

「んな訳なかろう、偶然偶然、暇つぶしに寄っただけさ」

 

 

「ふーん?」

 

 

「本当よー?」

 

 

「はいはい分かったわよ、それじゃまたね、おっきー」

 

 

「よいしょっと、またねー」

 

 

開かられた風景は、再び正常な形に閉じられていき、摩多羅隠岐奈の姿と共に掻き消えていった。

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

「っはぁ……まさか、摩多羅隠岐奈様ご本人が姿をお現しになるとは…」

 

 

「は〜ぁ、釘刺されちゃったわね…藍、スイカ出してくれるかしら?」

 

 

「はい、何等分致しましょうか?」

 

 

「橙も呼んで、皆んなで食べましょう…」

 

 

「塩も出しておきますね、川から引き上げてきます」

 

 

慎ましく立ち上がり、そそくさと皿とスイカを取りに行く藍。

 

 

真夏の幻想郷、その綺麗な川で冷やされたスイカは極上のものだろう。

 

 

「…あ!」

 

 

「しまった、関係ないって霊夢に伝えておくの忘れてた……歳かしら」

 

 

ふと、スキマの中で言われた事を思い出す。

 

 

「…歳をとってそう、ねぇ…」

 

 

「もうちょっとだけ、迷っていてもらいましょうか」

 

 

失言のせいとはいえ、完全な八つ当たりが哀れにも迷い人(ユウ)に飛んで行ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うひょぉーー!川だぁぁ!!」

 

 

天の恵み!大地の恵み!ありがとう神様!!

 

 

森の小さな小川だけど、身体を洗うには十分!

 

 

「浅いけど漸く身体を洗えるぞ〜うひひ!」

 

 

いや現状の原因は元を辿れば呪い系だし、神様やっぱりクソだわ。なんなら川を見つけたのも自力だし。

 

あの後、微かに残っていた記憶を頼りに行ってない場所を歩き回ることにしたんだけど、案外素直に水場が見つかってくれた。

 

まっ、流石に十日分のマッピング使えば見つかるか、良かった良かった。

 

 

「ん〜下流で洗うか、上で流して下にゲロ服流れたら大変だし」

 

 

下流へ赴き、服を半脱ぎしながら足を川に付ける。

 

 

「ふぅ〜…感覚的には十日振りの水洗い、気持ちいいなぁ…」

 

 

パチャパチャと楽しんでから、服を下着以外全部脱いで水につける。

 

上着を洗いきった後に下着も洗っちゃおう。

 

 

「……はぁ、マジであのコスプレ女許さん、なんで狐物語で巫女に討伐されなきゃいかないの?どんな人生送ってたんだよあの狐…」

 

 

考えれば考える程、非現実だとしてもちょっと適当過ぎるだろ。特にあの巫女、一番訳分からん。

 

 

「ん〜…?あ、まてよ?」

 

 

一瞬だが脳内に光明が差した。

 

 

「アイツ、『依頼』って言ってたよね?…つまりは私の叫び声を聞いた人が居て、しかも虫を食べる所を見た上で通報した奴がいる訳じゃん?」

 

 

あの時、あのコスプレ巫女は『依頼』で来たと言った、その依頼内容も微かに覚えている、『奇声を発して、妖精を食べている』だ。

 

 

「通報する原因は奇声、殺された原因は多分だけどあの虫を食べる事、つまりは……」

 

 

その二つの条件が揃えば、あの巫女を何時でも召喚できてしまうのでは?

 

 

「奇声をあげ始めたのは5日目から、虫は7日目で居なくなったから7日間周りの虫をかき集めてご飯にする」

 

 

「あの単語もしっかりと覚えてるぞ〜?妖精、だっけか」

 

 

あれが食べれてしまうという事は、狐物語上ではあれは本当に食料なんだ。

 

無闇矢鱈に食べまくる=畑の獣害、そう考えると巫女の正体も分かった、アレは狩人なんだろうね。

 

よく畑の獣害対策として、電気柵とかさっさと駆除するかの選択肢がある。

 

 

「…役を当てはめていくと、案外単純かもしれない」

 

 

妖精は畑の果物、私の食料役だ。あの金髪が人そのものだとして、積極的に『依頼』で私を狩りに来たあの巫女は動物駆除の役目を持っている。

 

 

それなら幻想郷=森、では無く、この世界そのもの(狐視点)を指していると思うけど…。

 

 

「…生き残るって言っても森の中だと限界がある、人里に出たいな」

 

 

川に反射する自分、元い母の顔を見つめる。

 

 

「あの金髪も、あの巫女も私の見た目と大きな違いは無い、なら人里に降りたとして速攻殺されるなんて事は無いと思うし、狐が都心に降りてくるなんて良くある事だよね」

 

 

物語上の齟齬も無い、つまり今最優先すべきは人が住んでいる場所に辿り着く事。

 

 

「ふふ…ふははは!余りにも天才過ぎる、頭の回転早すぎて脳みそバター作れちゃうぜ!」

 

 

笑いながら服を絞って乾かす為に木に掛け、高笑いした。

 

 

「妖精を全部食べて巫女を召喚!巫女がやって来る方向から人里の位置を探知!殺されようがリスポーン地点は森の中、確実に人里の位置が分かっちゃう!!」

 

 

「天&才」

 

 

「こうなりゃさっさと妖精とかいう奴、一匹たりとも残さず食い潰すしかないな!見た目死ぬ程悪いけどね!!」

 

 

 

「ーーそこまでよ」

 

 

ふと、後ろから声が聞こえてくる。

 

 

冷徹で冷血な、濡れた身体が凍る様な声。私はそのまま振り向けないでいた。

 

 

「偶然耳にして良かった」

 

 

「っすー……あのぉ…服だけ着させてもらえませんか?」

 

 

「駄目、そのまま両手を挙げてゆっくり川から上がりなさい」

 

 

「いや、本当にごめんなさい、何か勘違いをさせる……勘違いしかしない言葉を叫んでたのは自覚があるんですけど!事情が、めちゃくちゃ込み入った事情があるんです!」

 

 

「……ーー早く」

 

 

「はい!!」

 

 

やばい、本気でヤバい。気づかなかったけれど悪寒があの時の巫女位してる、コイツもまた別の役者、別の『死因』になり得る奴だ…!

 

 

「貴方、妖精を食い潰す、なんて言ってたけれど」

 

 

「違うんです!えっと、まず自分の事について話させて貰っても大丈夫ですか!?」

 

 

「…言ってみなさい」

 

 

「えっと…うーんと、車、車って分かります?」

 

 

「……あぁ、外の世界の乗り物の事?」

 

 

(…外の世界?)

 

 

「はい!合ってます、それで車に乗って移動している途中に気絶しちゃって……それで目が覚めたらいつの間にかこの森で目が覚めてしまったんです」

 

 

「外来人って事ね……それで、さっきの発言となんの関係が?」

 

 

「私はここの事情を全く、本当に一切合切知らなくて…しばらく迷子になった後、お腹がすいちゃって……その、食べちゃったんです、妖精の事、何かの虫かと思って……」

 

 

「……は?」

 

 

「お腹いっぱいになるし、生き残る為には自然の一部をおそそわけして貰って何とか……そんな状況で、変なキノコを食べたら吐いちゃいまして、今川に身体を洗いに来たんですけど……その、貴方は?」

 

 

ゆっくりと両手を上げつつ振り向こうとする。

 

 

「動かないで」

 

 

だがそれも、さっきよりも冷たくなった声で止められた。

 

 

「食べたの?妖精のこと」

 

 

「え、あはい、普通に」

 

 

「どうやって?」

 

 

「食べまし…いや、あの、ご、ごめんなさい、口の中に入れてもぐもぐさせていただいて…」

 

 

「……はぁ、分かった、こっちを向きなさい」

 

 

「は、はい」

 

 

許してくれたのか分からないけれど、一山乗り越えたみたいで……少し胸を撫で下ろしながらふ り むい て

 

 

 

「ぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「……ん」

 

 

「…っ!!」

 

 

目が覚めて、飛び起きる。

 

 

『貴方、食べてもいい人類?』

 

 

あの言葉を聞き逃さない為に……。

 

 

「……あれ」

 

 

けれどその声は聞こえず、耳に飛び込んできたのはパチパチと暖炉の火が弾ける音だった。

 

 

「起きたかしら」

 

 

「…ぁ…貴方は…さっきの、声をかけてくれた…」

 

 

お人形の様な美しく、纏まった顔。纏う雰囲気は淑女のそれだ。

 

 

「……随分と大きな尻尾ね」

 

 

「え?尻尾?あ!!本当だ!姿が元に戻ってる!いや元には戻ってないけど!」

 

 

「今から幾つか質問をするわ、答えてね」

 

 

「え?あ、はい」

 

 

「一つ、貴方のその容姿は貴方自身のもの?」

 

 

その問いに答えようと口を開くと、自分の意思関係無しに喉を使い、言葉を話し始めていく。

 

 

(……え!?何コレ!?)

 

 

「はい ですが 尻尾は違います 起きたら生えていました」

 

 

「二つ、本当に貴方は外からやってきたの?」

 

 

「はい 沢山の赤い目に囲まれて 気付いたら」

 

 

「…三つ、この森にやって来て貴方は何をしたの?」

 

 

「はい 私はーー」

 

 

(やば、有耶無耶にしてた所全部話しちゃう!と、止まって…!)

 

 

まぁ抗える筈もなく全部話しちゃったんですが。

 

 

「………ふぅん」

 

 

「最後に、貴方の名前は?」

 

 

金色(カナイロ)

 

 

「金色 夢有です」

 

 

「カナイロ・ユウ、いい名前ね…私はアリス・マーガトロイド」

 

 

「人形師よ、宜しくね…ユウ」

 

 

「ぷはぁっ…ぅ、は、はい…宜しくお願いします、アリスさん」

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