「はいマスパ」
「どわぁぁぁぁ!!??クソあぶねぇな!!なにすんだテメェ!髪の毛焦げたじゃねえか!!!」
「死ぬことになるんでしょ?やってみなよ、今の私はやり直し無限の最強状態だからな」
「何わけわかんねぇ事言って…ーー望み道理やってやりましょうか、『逆さ地蔵』!」
天邪鬼がマントを広げれば中から小さな地蔵がぽろぽろと落ちて、一斉にその地蔵の視線がユウへと向けられる。
呪詛、呪怨、そのような生易しい呪いなどではなく神仏を所以とする『悪鬼』になれ果てた悪鬼地蔵達からの殺意。
一度見つめられれば肝を取られ、二度見つめられれば
「秘蔵の逸品だ、しっかりと味わいやがれ!!」
ーーだが。
殺意の目を向ける地蔵達の、鬼のような表情が消気へ変わり、逆に泣き出しそうな、赤子のような表情へと変わってしまう。
地蔵達が見つめるユウの顔には、赤い目玉が浮かんでいた。
「なるほど、そういう感じの奴か…いやぁ、サトリの力も便利だな~」
「……あん?」
「おい、なんでお前何事も…ーー」
「精神汚染系に読心系が勝つって珍しいな…そりゃ地獄の主してるだけの力はありますわ」
「聞いてんのかお前……ッ!?はぁ!??」
天邪鬼が驚くのも無理はない。自分が投げかけた『逆さ地蔵』の力が効いてないどころか……ーー。
全く同じ見た目をした『逆さ地蔵』が、目の前の少女の手元から出てきたのだ。
天邪鬼と『逆さ地蔵』の視線が合う。
「やっべ」
「……ふーん?」
こいつにも効いてない、か。まぁこんな危険物用意するくらいなんだから、自分に向けられた時とか、利用されたときの対策位用意してるよね、そりゃそうだ。
「…ふぅっ、ふうぅぅ~…何なんだテメェはよ…!」
「私の事はどうだっていい、先に鬼人正邪…さんの事から教えてもらうね」
という訳で、サトリ妖怪の力を使って心の中にお邪魔しまーす!
住所から素性まで、ぜーんぶ素っ裸にしてやんよ!人様の家覗いて……あいや、アリスお母さまの家にふてぇ真似しやがって!!
「ほー?へー?ほへぇ?」
小人の姫、打ち小槌に下剋上…輝針城…?ほほ~。
「ぐっ、この嫌ぁな感覚…それにその目玉、サードアイか!クソッタレ、外来人はこれだから博打要素が…」
「ふむ、分かりました」
「協力してもいいですよ、貴女の下克上計画」
「……」
「存分に利用してもらえれば幸いです、まぁ別に成功するとは思ってないけど、やってみる価値はあるんじゃないかな~って思うんで」
この人…妖怪は結構面白い事思いついてたわ、幻想郷すべてをひっくり返す、強さ逆転の幻想郷大返し。
良い案だとは思う、普段滅多に人を招かないアリスお母さまが工房に人を連れ込んでるのを片目にして、興味本心暇半分で覗いたところ…。
博麗霊夢が討伐を許さない、それでいて最大級の変数になりえる外来人の妖怪だったという訳だ。
「勝手に全部のぞかせてもらって申し訳ないですけど、貸せるのは力だけ…ーー『検証』の為に私も勝手に貴方を利用するんで、ほんと好き勝手何でも言ってね、協力するから」
「ーーこりゃぁ、踏んじゃいけないもん藪から突きだしましたか、私も焼きが回ったな」
「まぁそうですね、それと鬼人正邪さん…『逆転』の能力、十分に使わせてもらいます」
サトリ妖怪の力を使えば今まで表象的にしか再現できなかった変化の術も、その細部まで再現できる。
もうすでに私は尻尾の力を使うことに拒否感は……ーーとっくに無かったな、帰る為に何でもしてやるの『何でも』は比喩じゃねえぜ?
「コピーもできると、お前みたいなバケモンが出てきたのなら博麗霊夢がすぐやってくると思ったんですけどねぇ?」
「もう何回も殺されてるんでぇ、何すればダメなのかは分かってるんですよーだ」
「……冗談の通じないお方だ、全く」
別にそのしゃべり方しなくても、って言ったって、天邪鬼には逆効果か。仕方ない、色々分かったこともあるしこの奇跡の巡り会い(悪い方)に感謝しながら今日は追い払いますか。
「ほれ、分かったのなら今日は閉店ガラガラです、しっし」
「ああ、また来る」
「次のご来店を心の底から拒否しております、って言うのが天邪鬼風かな?」
「けっ、気にくわねぇ店員だこと」
踵を返し、夕日の中帰っていく天邪鬼を眺める。
皮肉の応酬をしていたら、もう晩御飯の時間だ、さっさと米やら味噌やら変化の術で出して…ーー。
「明日は紅魔館だ」
私の幻想郷攻略は始まったばかりだが、宣言させてもらおう。
ここから先は、RTAだと!!
ふ、ふは、ふはははは!変化の術最強コンボを思いついた私に敵は…ーーいっぱいいるけど!なんとかできる気しかしない!
この程度の火の粉なら払えるようになって、流れに流されるだけじゃなくなった私の活躍を…明日以降刮目するがよい!
「ふぁ~あ、ねむ」
ーーとりあえず今日は、食べて寝ときます。
■
「さてさてさーて」
良く食べて良く寝て朝日を浴びながら歯磨きをしている途中の私だ。
人里の事は一週目の記憶でほとんど理解しているので、今回は人里の外に更に視野を広げて活動していきたいと思う所存で、その足掛けに取り合えず大妖怪たるレミリアさんのビッグネームをお借りしようと思いましてね!へへへッ。
と言っても前言った通り頭も要領も悪い私が誰かを利用しようとしても失敗するだけなので、鬼人正邪との協力関係にしても一方的に利用される側、そして紅魔館でも媚を売っての使用人ルートを基本としていこうかな。
いつか繰り返しの果てに色んな手段を使うかもしれないのが怖いけど……ーーお母さんの言う通り、自分にされて嫌なことは人にするなの鉄則を破らないことは誓うさ。
「……お母さんって単語出すだけで寂しくなってくる…」
「もう、ちゃんとしなきゃなのに」
「……」
「はぁ」
家に帰りたいなぁ、人生苦労は買ってでもしろって言うけどさぁ、苦労なんて基本しない方が良くね?
夢や目標に向かっての努力に苦労が含まれるだけで、別に私がこんなことに巻き込まれる理由にはならないと思うわけ。
「ーーでけぇ独り言だな」
「…正邪さん、朝早いのに勤勉ですね」
「今回も窓からこんにちは、だ、お前の『利用される事で』『利用する』立場が気にくわねぇもんだから、押しかけに来ましたよ」
「その話し方するのなら私もタメ口にした方が良さそうなんですかね?」
「黙れよ、あんまりイラつかせんな」
「はいはい、で、何用です?」
「元は私が突っかかったのが悪いんだか……それでもお前は一方的に私の事を知っておいて、自分の事は何一つ外に出しやがらないもんで、まぁ、なんだ」
「「気にくわないからやることなすこと邪魔してやる」」
「かな?いやぁ、初日早々嫌な人に絡まれたもんだよ、全く」
「私のセリフだっての」
ん、そうだなぁ…言ってることには嘘偽りなさそうだし、今日の予定は紅魔館に行くだけってところもあるしでどっちでもいいんだよね。
どうでもいいとは言わない、正邪さんの計画は内容だけ見るとあの『博麗霊夢』にすら勝てるかもしれないものだし。
『何でもひっくり返す程度の能力』
なんか激やばチート宝具の打ち出の小槌を使って、力量関係をひっくり返す……ーーつまりは幻想郷の弱肉強食そのものを下剋上する凄い計画な訳なのだが…。
正邪さんを一度撃退しちゃった以上、彼女からは私も下剋上対象の一人だ、孤独で孤高の天邪鬼は誰にも靡くことはないし、本心で誰かの下に着くこともない。
根っからの逆張りってわけ、そんな人相手に真面目に対応するだけ無駄無駄の無駄なのでぇ~…。
結論は放置!好き勝手してもらいましょうではないか!
「早速レッツゴー!目標は以前と同じ交友関係まで戻すこと!正邪ちゃんには私が満足するまで付き合ってもらうからね!」
「ちゃんて、てかどこ行くんだよ」
「え?紅魔館と地獄と太陽の花畑」
「ーーマジで最悪だよお前、つるむんじゃなかった…!!」