起きたら尻尾が生えていた   作:カピバラバラ

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起きたら空を飛んでいた

「数日は泊まっていきなさい、夜の森は危ないから」

 

 

「何から何までごめ……いや、ありがとうございます」

 

 

どうも、あの後も沢山ビリビリしたけれど何も無かった私です。

 

 

挙句の果てには拾ってもらったお方の家に居候しても良いと言われてしまい、申し訳なさで溺れてしまいそうな今日この頃。

 

 

最初の十日間が死ぬほど浅く感じる程の濃密な一日だった。このめちゃくちゃ親切で優しくて神がかった容姿と性格を兼ね備えたアルティメットお姉さんに拾われなかったらどんな末路を辿っていたか。

 

 

「…ユウ、貴方……今更なんだけど、今までちゃんとご飯とか食べてた?その待ち人に酷い事とかされていなかったかしら」

 

 

「酷い事?別にそんな事されてませんけど…」

 

 

「……その身体の薄さは元来のもの?」

 

 

「あ、はい」

 

 

「良かった、気絶している貴方を運んでいた時に余りにも軽かったから驚いたわ、服も大人のものだったし…ブカブカで細い場所が良く見えちゃったから」

 

 

「肥えない体質なんですよね…えへへ」

 

 

私の良い所その2!

 

小さい時に色々口に突っ込みすぎて消化力お化けになりました、まぁでも乙女のプロフィール欄に『消化力が強い』とか書きたく無いけど。

 

 

「なら寝床は…そうねぇ場所は貸してあげれるんだけど、布団が無いからその尻尾を使えるかしら?」

 

 

「分かりました、…何度も言わせて下さい、本当にありがとうございます、アリスさん」

 

 

「どういたしまして、素直に感謝を受け止めれる子は好きよ」

 

 

未だにアリスお姉さんが私に良くしてくれる理由がイマイチ掴みきれないけれど、ここまで良くしてくれる人ならドス黒い本性があったとしても甘んじて受け入れよう。

 

 

なんてったって私、残機無限なんだから!トライアンドエラー、二度と味わいたくないけれど相手を無理に疑いたくも無い!

 

 

「明日もさっきの特訓は続けるんですか?」

 

 

「うん、せめて飛ぶ所までは面倒を見てあげる、基礎の基礎を教えないまま放っておくのも私の美徳を損なうしね」

 

 

…ここから少しの間はビリビリ漬けかぁ……。

 

 

「あら、ご不満そうな顔しちゃって…大丈夫、やり方も少しずつ変えていくから」

 

 

「顔にでちゃってた…あはは、ごめんなさい」

 

 

「後、明日からは家事周りも手伝って貰うから、今日は早く寝た方がいいと思う」

 

 

「はい!それでは失礼して……」

 

 

空けてもらったスペースにモゾモゾと尻尾を埋め込んでいって、自分のベッドスペースを作り……そこにダイブ!

 

 

うっひょー!!久しぶりのリラックスタイム!!あぁお母さん、あぁソファーとヨギボー…今はこの尻尾に浮気するのを許してね。

 

 

早くこの夢から覚めて、絶対に帰ってみせるから…。

 

 

「おやすみなさい、ユウ」

 

 

「はい、おやすみなさいアリスさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

端っこで丸まって眠る彼女を起こさない様に、忍び足で歩きながら本棚から禁書を取り出す。

 

 

「……」

 

 

今日、本当に偶然拾った子だけれど、まさか外来の妖だとは思いもしなかった。外の世界で管理されていない妖怪が迷い込んでくるのは初めて見る。

 

 

しかも魔法の森に流れ着いてきて、意図して来た訳でも無く、又力を失ってやってきた訳でも無い。

 

 

「…『真実の口』が何故禁術なのか、よく理解出来たわね」

 

 

こちらの複数回の質問に対して、相手の記憶の奥底にある全てを吐き出させて答えさせる『真実の口』、一見すればメリットしかなく、何故これが禁書に指定されているか分からなかったが…。

 

 

著者はこう説いた、『真実とは残酷である』『真実とは哀しみである』『真実とは耐え難き真理である』と。

 

 

「…『語られた言の葉が 残酷で哀しく耐え難きものであったとするのなら 私は己の喉を塞ぎ己の眼を閉じ己の命を断つであろう』」

 

 

『真実の口』で語られる内容は、真実であるが故に……それがどれだけ受け入れ難い話だとしても事実であるのだと。

 

 

「まず間違いなく、彼女は妖怪…なのに、人間…か」

 

 

ありとあらゆる要素が彼女を妖怪だと告げているのに、彼女は己を人間と呼ぶ。尻尾が後付けというのも事実だとしても精神に一切の変容が見られない。

 

有り得ない話では無い、尻尾が生えた要因がどうであれ人が妖怪へと変質する事例は稀にある、が…ここまでの精神の堅牢性は珍しい。

 

 

それに妖精を食べる、なんて。

 

 

「…困ったわね、狐の妖怪かと思っていたのだけれど」

 

 

狐変化の妖術は幻術に分類されている、しかし彼女が恐らく化けていたであろう待ち人の姿……その時に着ていた服の事だ。

 

彼女の姿が戻ったというのに、服は物質としてその形を保っていた。

 

 

「妖術というよりは…パチュリーの錬金に近いもの…?だとしても原理が説明出来ない」

 

 

錬金術は魔力と物質の融合による『錬成』だ。空の飛び方も知らないこの子が出来る芸当じゃない。

 

 

「オマケにこの毛……」

 

 

これも酷い有様で、彼女が震えながら尻尾を切られている時は良かったけれど、その後はというと…。

 

 

「……」

 

 

取り出した禁書の内の術、その1つの『分解』の式を組み上げていく。

 

 

たった一本の毛、それに何重にも式を張り付けて…。

 

 

「シャンハーイ」

 

 

「…ありがとう」

 

.

慎重に上海から渡された魔石を砕いて、丁寧に術を発動する。

 

 

「…さて」

 

 

パキンッ!!

 

 

「…………はぁ」

 

 

…式側が砕かれた、禁術が毛一本に手も足も出せない。

 

 

「全く、とんだ掘り出し物ね……迂闊に霊夢の所へ寄越さなくて良かったわ」

 

 

彼女には現実と記憶の齟齬も大きかった、森での行動も話して貰ったのだけれど、数十日もの齟齬があるとは…。

 

 

彼女が最初に出会った金髪で人食い、つまりルーミアにも練習中に人形を通して話を聞いてみたけれど。

 

 

『道端で寝っ転がってた〜…お腹を壊すって言ってたのだわ、だから見逃してあげた』

 

 

『うん?うん、ついさっきの事だよ?』

 

 

「……」

 

 

「…………」

 

 

「あーもう、今日は寝て明日考えるわ!上海、おいで!」

 

 

「シャンハーイ!」

 

 

「飛び方の練習も考えないとね…この子は少し、放っておくには謎が多い」

 

 

カネイロ・ユウ、貴方は確かに来るべくして幻想郷に来た者よ。

 

 

…待ち人とも暫くはお別れになるかもしれないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………」

 

 

『ねぇ』『アンタかって聞いてんのよ、答えなさい』

 

 

『ねぇねぇ』『あっそ、分かったわ、それじゃ…」

 

 

「ぅ……ぁ…」

 

 

『貴方、食べてもいい人類?』『さようなら』

 

 

「どわぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

「……お、おはよう」

 

 

「ぁああ…!!うぅ…おはようございます!!!」

 

 

「朝から随分と元気ね…」

 

 

クソが!!めちゃくちゃ寝覚め悪いわ!!あの人食いとコスプレェェエエ工!!絶対許さんからなぁ!?

 

 

「顔を洗って歯を磨いて、そしたら朝ごはんの支度をしましょう」

 

 

「はい!」

 

 

「その後はこのリストに乗っている野草とキノコをユウに集めてきてもらうから、宜しくね」

 

 

「了解です、アリスさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタスタと歩いて外に取り付けてある井戸へ水を汲みに行く。

 

 

本当はアリス様と呼ばせて貰いたい所だけど…嫌がりそうだし止めておこう。

 

 

もうあの妖精とかいう虫を食わなくて済むし、雨風凌げる場所を定期してくれて面倒見てくれるって…。

 

 

「何度考えても、聖母だなぁ」

 

 

この夢の世界で出会った奴ら、どいつもこいつも終わり散らかしてばっかりだったから、この優しさが身に染みるぜ……。

 

 

「…まだちょっと眠い」

 

 

アイツら(悪夢)に叩き起されたせいで、まだ少し目がボヤけている。

 

元々休日はぐっすりと寝る派なのになぁ……。

 

 

「ふわぁ〜…っ…ねむねむ……」

 

 

欠伸が止まらん、水で顔パシャパシャしても全然眠い。

 

 

「………あれ」

 

 

足元を見てみると、裸足で外へ来てしまっていた。ボーッとし過ぎだろ私、寝惚けるのも大概にしてそろそろちゃんと目を擦って……。

 

 

「…あれれ?」

 

 

そういえばおかしい、裸足で歩いてるのにその感覚が無いんだけど。

 

 

「……」

 

 

屈んで手を足に付ける、ふくらはぎからなぞって足の裏へ。

 

 

そう、足の裏に。

 

 

「……飛んでる?」

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