魔理沙と呼ばれた少女が物陰から現れ、ニヒルに笑ってアリスを指さした。
「マジでお前らしくないな、ただの小狐の妖怪だろ?」
やれやれ、と言った感じで箒を呼び出すその姿は正に魔女と言って差し支えない、しかして見た目は私と同じか少し上程度の幼さを残している。
「いえ?彼女は正真正銘の外来人よ、ここへ迷い込んできたらしくてね」
「……はぁ?おいおい冗談も大概にしろよ〜?妖怪が外来人って名乗ってるだけだろ、ったく、らしくもなく騙されやがってさっさと退治しちまっても…」
……あぁん??こいつ、さては脳筋だな?
八卦炉を取り出す手を掴んで止める、第六感が告げてんだ『ソレはヤバイ』ってな、ここで何も対話させずに消し飛ばされる訳にはいかない。
「魔理沙さん、でしたっけ」
「なんだ?まぁ、そうだが」
「私は金色夢有、今私に付いているこの尻尾のせいで…ここ、幻想郷に迷い込んでしまいましたが、私には現実世界、外の世界に家族が待っている『人間』なんです」
「それをなんの根拠も理由も無く、消し飛ばされたら魔理沙さんは…普通に人殺しですよ?」
「ハッ!何言ってんだ、どう見ても妖怪の奴がそんな事言ったって命乞いにしか聞こえないな」
ムッキーー!このがきゃぁ!!人が真剣にやめてください死んでしまいますって両手を挙げて降参してる (喧嘩腰) のに漬け込みやがって!!
「まぁでも、アリスが面倒見てる奴に手を出す気は無いけどよ…妖怪、お前がアリスを騙そうとしてんなら話は別だぜ?」
「…魔理沙、私がそんな簡単に騙される様な奴だと思ってるの?」
「い〜や?でも弘法筆の誤りって時もある、普段絶対にこんな事しないお前が物珍しんだよ、私はアリスを心配してその妖怪を退治しとこうぜ、って言ってるだけだ」
…前科持ちが過ぎるので私からはノーコメントを貫くしかない。
そりゃそうか、恐らくアリスさんの友人であろう魔理沙にとっては見ず知らずの奴を急に拾って面倒見始めたら……こんな世界じゃその拾った奴を怪しむよなぁ。皆が言ってる妖怪妖怪って、あの金髪人食いみたいな奴だろうし。
さっき珍しいって言ってただけでアリスさんは根本的に優しい人だ、まだ少しの時間しかお付き合いしていないけれど……それでも人の良さが染み出て見える、私だってそんな友人が詐欺に騙されそうになってるなら止めに来るよ。
「…なら、丁度良かったわ」
「あん?」
「ユウ、魔理沙と弾幕勝負をしなさい」
「え゛」
「貴方の練習方法には大体目算が付いた、少し手荒に行くわよ」
WTF!? アリス様???私飛ぶ練習してた所ですよね?しかも弾幕を打つ所か無理無理プリンって叫んでたばかりなんですけど!?
「無理です!!」
「そうだぜアリス、拾われ野良妖怪と私とじゃ勝負にすらなんねぇって」
「ええ、だから魔理沙にはある程度条件を絞って戦ってもらう、そして勝った方の言う事を負けた方が聞くこと、ユウが負けたら魔理沙の言う通りにするし、魔理沙が負けたらユウの要求を呑んで退治は諦めなさい」
「OK!カネイロ・ユウだったか、幻想郷での『あいさつ』って奴を教え込んでやるよ」
ええええええぇぇぇ……。
「あ、ちなみにユウはまだ弾幕の打ち方すら知らないから少し待っててね、魔理沙」
「……はぁ…?お前、そんな奴を勝負に乗せてんのかよ…」
これから私、どーなーっちゃうのーー!?
…と、テンプレを心の中で叫ぶしか無い。普通にヤバイ、油断してたけどこの世界…こういう人ばっかだった!クソ!もう誰も信じられねぇ!!
「大丈夫、私は貴方の本音は大体分かってるから」
「その上で、貴方は私をちゃんと信じて…頑張りなさい、貴方は貴方が思っているより『面白い』わ」
…うぅ。
クソッタレ!アリスお母様にそんな事言われて引き下がれる訳無いよ!!舐めんなこちとら見ず知らずの森で妖精喰っとった奴やぞ??
霊夢とかいう奴にぶっ殺されて、金髪に27回喰われて、そして圧倒的ママ味を持つアリスお母様に拾われて……はや十一日!
「…リセットでも仕方ないか……分かりました、頑張ります」
■
「やっぱり無理だってーーー!!!」
木!木!木どこ!次次次次!!遮蔽物管理!射線を通さない!
暇な時間な時の殆どをFPSに費やした私のマクロ&ミクロを舐めんじゃねぇぇーーー!!!
「…なんだアイツ、野猿かよ…だが狙えない訳じゃない」
「まさかアリスがこんな縛りを付けるとはな、喰らえ【恋符 マスタースパーク】!!」
次の足がかりにしようとしていた木が消し飛ぶ。
(あっぶね!今掠った!?)
「おわぁぁぁ!?どぉわぁ!?」
《魔理沙から目を離しちゃダメよ、ユウ》
尻尾にしがみついている上海人形から声が聞こえる。
《弾幕勝負、この世界の常識…これがこの世界の『普通』よ、貴方は既に幻想だと思っている世界に足を踏み込んでいるの》
「だからって私にどうしろと……ッ!!危な!!死ぬ死ぬ死ぬ!!」
《これは普通の事、貴方が『人』だとしても出来る範囲の事よ、魔理沙だって『人』の範疇なんだから》
「本当に!? 私の知ってる『人』ってこんな事出来ないと思うんですけどね!!」
《ふふっ…漸く出会った時の口調に戻ってきたわね、私はそっちの方が愉快で好きよ?》
言ってる場合かーー!? アンタら全員破壊兵器かなんかか?あの霊夢も私に向けてこんなもの打ってたとかバカだろ!!
人はビームを撃てない!光弾も打てない!人の素の身体以上の事を機械と技術抜きで出来るかぁ!!
知ってるかアンタら、銃でも木は消し飛ばせないよ??コレってよぉ…人がミサイルやら爆弾やらポンポン打ってる様なもんでしょ!
「こっちは弾幕なんて打てやしないのになぁ…!!」
魔理沙に課された条件は三つ。
一つ、開始を宣言した場所から動かない事、又私は魔理沙の攻撃が届かない場所まで逃げない様にアリスの監視を付ける。
二つ、魔理沙側からの攻撃は二種に限る、通常弾幕と【恋符 マスタースパーク】と呼ばれるスペルのみに限定する。
三つ、魔理沙の身体にカネイロ・ユウのいかなる攻撃でも命中した場合、ユウの勝利となる。
「聞けば聞くほどめちゃくちゃ効率的な練習ですね!アリスさん!!」
《そうね、貴方が弾幕を打てるようになれば勝ち、それまで魔理沙の的にされ続けるっていう話だから》
「ひっでぇなぁ…!私が心配して来た意味無かったんじゃないかー!!」
「ビーム撃ちながら同情してんじゃねえぇぇぇーーー!!」
はい、という事で酷い状況になっている私ですどうも。
なんだこのファンタジー、誰が納得出来るよコレに。人型破壊兵器が普通の世界ってなんだ、マジで。
確かに金髪人食いみたいな妖怪が跋扈してんのならこれぐらいが人間の普通なんだろうけどさぁ…。
「喰らえッ!!小分けマスパ!!」
「うぎゃぁぁぁぁああ!! なんか囲い込まれる様に小さなビームがァァ!?!?」
《……撃ち方の指定を忘れていたわね》
「もうヤダこの世界!!早くお母さん私を目覚めさせてよ!!これが夢だと願ってるけど、日曜日に消えた娘の心配具合は如何ですかね!!」
『頑張って〜』
…またイマジナリーマイマザーが手を振っている気がした。
「うわぁぁぁんん!!」