10月7日 ソロモン近海 暗礁宙域
「アンタレス作戦開始。全艦出撃せよ」
「アンタレス作戦開始、アンタレス作戦開始、セイバーフィッシュ隊発艦はじめ、MS隊、発艦はじめ」
ルナツーの地球連邦軍艦隊が、ソロモンに攻撃をするために出撃した。サラミス級15隻、マゼラン級3隻、コロンブス級3隻の艦隊がソロモンに向けて出撃。暗礁宙域を活用しソロモン近海にたどり着いていた。
そして
「そぉら行くぞ!!もうMSはジオンだけのもんじゃねぇ!!」
「ヒャッハーーー!!!」
「MSα小隊は先行しろ!β小隊はセイバーフィッシュ隊と共にα小隊が開けた穴に突っこめ!」
「セイバーフィッシュ第1中隊は俺に続け!」
コロンブス級2隻から発艦したセイバーフィッシュ80機、コロンブス改級から発艦した初期型ジム40機がソロモンに向けて青い光の線を引きながら今まで負け続けてきた戦いの勢いを取り戻すかのように勢い良く飛んでいく。120個もの青い光の後ろを、到底戦闘機とは思えない大きさの、しかし戦闘機のような見た目の機体…プロトGファイターが飛ぶ。
「ソロモン…、夜叉…。アイツだけはあたしがこの手で殺す」
憎悪の感情を燃やしながら。
ソロモン
管制室
「知ってるか?ドズル閣下って意外と子煩悩らしいぞ」
「知ってる、この間なんかミネバ様のために制服のトゲトゲをお菓子にしようとなされたらしい」
「おいおい、ミネバ様はまだお菓子をお食べになられるお歳ではないだろう…。気が早いというか、先を見据えすぎというか…。…ん?おい、なにか反応が…」
「なんだ…?!敵艦隊及び艦載機をレーダーで確認!!」
「クソッ!!緊急警報!!」
「何事だ!!」
「ラコック少将、連邦の攻撃部隊をレーダーで確認!サラミス級15、マゼラン級3、コロンブス級3!それと、艦載機が約120っ!!恐らく、MSもいる模様!」
「先行しているのが10機、本隊はその後ろです!」
「即応待機中の部隊を出せ!スクランブルだ!!出せるMSは直ぐに出せ!第2防衛ラインまでで食い止めろ!!」
警報で駆け込んできたラコック少将が矢継ぎ早に指示を出す。
「スクランブル!即応部隊は速やかに出撃せよ!!」
「敵艦載機約120、艦数21!!発進急げ!!」
「敵にMSらしき反応あり、充分警戒して迎撃に当たってください!」
管制室は慌ただしく即応部隊に指示を出していく。そしてスクランブル司令はナガトとシン率いる白狼隊にも届く。
「姐さん、機体の調子は」
「スラスターの調整に3分ちょうだい!」
「了解だ、コックピットで待機する!」
スクランブル命令が出たナガト達はパイロットスーツを着てコックピットに乗り込む。マツナガ隊は機体の調整が終わっており、すぐに発進する。ナガトはコックピットに座り、機体を立ち上げ機器のモニターをチェックしていく中、アルハイゼンがコックピットの中を覗く。
「大尉、これを」
「これは…」
「御守りです、僕とミヤビ少佐の手作りです!」
ナガトが受け取ると、ミヤビもコックピットに上がってくる
「お待たせ、調整は完璧よ。必ず帰ってきて」
「ありがとう、行ってくる」
アルハイゼンとミヤビは敬礼しながらコックピットから離れていく。それを見ながらナガトはコックピットハッチを閉め高機動ザクを起動する。グポンというモノアイが光るとバーニアを吹かし宇宙を駆け抜ける。
「ナガト大尉、こちらソロモンコントロール、敵の艦載機数、およそ120!反応から恐らく、モビルスーツもいる模様!」
「ソロモンコントロールこちらナガト、了解。我が軍の動きはどうなっているか?」
「既にガトー大尉やカスペン大隊、マツナガ隊、他迎撃可能な全部隊が迎撃に上がっていますが、既に第1防衛ラインは突破され、第2防衛ラインでなんとか食い止めている状態です。ナガト大尉は、第2防衛ラインに向かってください!」
「了解した、第2防衛ラインにはどこの隊があたっている?」
「マツナガ隊、カスペン大隊です、前面の第1防衛ラインにはガトー隊、迎撃部隊の1部が展開し、これ以上の敵の侵入を防ぐために奮戦しています」
「シーマ中佐の艦隊は?」
「あと10分で戻ってきます!」
「了解、第2防衛ラインに向かい敵を撃退する」
「幸運を!」
ソロモン管制と通信を終えたナガトはスロットルを押し出しザクを一気に加速させる。
ソロモン宙域 第2次防衛ライン
既にマツナガ隊をはじめとした迎撃部隊が連邦の主力部隊と対峙し、猛攻を何とか凌いでいた。
「ぐぅ…!数が多い!!これ以上は!!」
「アルト少尉!泣き言言わない!」
アルト少尉とコゼット中尉は互いに背を合わせながらセイバーフィッシュや連邦のMS、ジムを撃墜していく。セイバーフィッシュは1対1であるなら敵では無い。だが、それが2機、4機となって襲いかかってきて、捌いても捌いても攻撃は止まず、セイバーフィッシュよりは数が少ないとはいえさらにモビルスーツの相手もしなくてはならない。如何に白狼と恐れられるシンの部下といえど、限度があった。そんな部下をカバーしながら第2防衛ラインを持ちこたえさせているシンの負担は比にならないものがある。シンがほんの一瞬、機体をとめた時、ジムが背後から襲いかかる。
「なっ…」
連戦による疲労でシンは反応が遅れた。ビームの剣が刺さろうとしたその時だった。
「させるかよぉぉぉぉ!!!!」
ジムの上方からスラスターを全開にしてナガトの駆る黒とピンクの高機動型ザクが突進し、ジムのバランスを崩すとそのままヒートサーベルでジムのコックピットを串刺しにする。
「わりぃ、遅れた。無事か?」
「ナガト!」
「「ナガト大尉!!」」
串刺しにしたヒートサーベルを引き抜くとジムを蹴り飛ばし機体腰部にマウントし、ザクマシンガンに持ちかえる。
「間に合ったな、損害は?」
「今のところは無いが、補給には戻りたいところだ」
「俺がここを引き継ぐ、マツナガ隊は速やかに戻って補給を済ませてきてくれ」
「無茶言わないでくださいナガト大尉!!こんな数相手に!!」
コゼットは悲鳴のような声を上げる
「俺一人じゃないさ、カスペン大隊がいるし、教官たちが来る」
「教官…まさか?!」
ナガトの余裕そうな顔と、教官というワードにマツナガは顔を驚かせる
「わかったなら早く行ってくれ、戻るまでは必ず持ちこたえてみせる」
「むりはするなよ」
「必ず戻ります!」
「どうかご無事で!」
マツナガ隊はシンを戦闘にAフィールドを離脱した。それを見送りながら、ナガトはセイバーフィッシュの群れに突撃しザクマシンガンで、蹴りで、次々と撃墜していく。ジムが3機、ナガトのザクを目掛けて突っ込んでくる。
「雑兵がいくら数を集めても!!!」
1機目のジムがビームサーベルを右手に突っ込み、2機目、3機目がマシンガンを撃ち、逃げ場を無くすように弾をばら撒く。
「なぁ、お前連邦軍だろ?なぁ、その首置いてけ!!」
2機目、3機目のマシンガンの弾を無視して1機目のジムの懐に潜り込み左肩のスパイクアーマーでコックピット目掛けて突進、バランスを崩させるとヒートサーベルで頭部を跳ね首の結合部分から串刺しにする。がら空きな背中を見せられた2機目のジムがビームサーベルを抜刀し背後から襲いかかる。ビームサーベルを振り上げたその時、ナガトは振り返らずにジムのコックピットにザクマシンガンを向けそのまま引き金を引く。ゼロ距離で120mmを10数発撃ち込まれたジムのコックピットは蜂の巣にされ爆発する。3機目のジムは僚機2機を撃墜されたことで一瞬動きを止める。それを見逃さず、一気に加速し背後に回り込み背中からヒートサーベルで串刺しにし3機目を撃墜する。
まるで旧時代の地球の東洋の島国の、キュウシュウ地方にいたバーサーカーと呼ばれた一族のように連邦のモビルスーツと、セイバーフィッシュのコックピットを破壊していく。
5分もかからずセイバーフィッシュ5機とジム3機を落とされ、目の前に立ちはばかるナガトのザクに連邦軍は足を止めてしまった。それを見逃すはずもなく、カスペン戦闘大隊が連邦を横ばいから思いっきり殴りかかる。練度の差は歴然、されど数の差には叶わずか。
戦闘前の連邦総数、セイバーフィッシュ80機、ジム40機、プロトGファイター1機、総数121機。そのうち戦闘開始10分後、生存セイバーフィッシュ50機、ジム20機、プロトGファイター1機。連邦側の損失50、残存戦力71機。
対してジオン、各迎撃即応部隊ザク44機、カスペン戦闘大隊12機、マツナガ隊3機、ガトー機、ナガト機、総数61機。損害、各即応部隊12機、カスペン戦闘大隊4機。残存戦力45機。
どちらが勝つか、神をも知らぬ。
「よくやった、ナガト大尉」
ナガトの高機動型ザクの前にカスペン大佐の高機動型ザクがやってくる。
「いいえ大佐殿。助かりました、あのままでは数の暴力にやられていたところです。本当に助かりました。」
「よい、まだ戦えるな?」
「もちろんであります大佐殿。」
「よろしい、なら私に続け。共に奴らを討ち取るぞ。」
「はっ!」
カスペン大佐の高機動型ザクがスラスターを吹かしてジムの2個小隊に突っ込むと、ナガトもそれに合わせて突っ込んでいく。ジムはナガトとカスペン大佐の機に気づき、マシンガンを撃って撃墜しようとするが、2人に弾はかすりもしない。
「お前隊長機だろ?その首置いてけ!!」
カスペン大佐より先に突っ込みナガトはジム小隊の1番機をヒートサーベルで縦に一刀両断すると大爆発を起こす。その煙幕を利用してカスペン大佐は2個目の小隊の隊長機のコックピットをヒートホークで押し潰す。各小隊長を失ったジム小隊は混乱に陥り足を止めてしまった。それを熟練の2人が見逃すはずもなく、ヒートホークで、ヒートサーベルで、ザクマシンガンで、蹂躙されるように撃墜されてしまう。
しかし数の差は連邦が有利。撃っても撃っても減らない連邦の物量に一般兵のみならず、熟練搭乗員も疲労が見え始めていた。そんな中、ソロモンコントロールから連絡が入る。
「ソロモンコントロールから各機、緊急連絡!敵艦隊のうち1個艦隊がこちらに向かって接近中!!あと200で接敵!」
「なんだと?!ふざけるな!」
「連邦め、焦れったくなりおって直接叩きに来たか!」
ナガト機とカスペン大佐機が2機並ぶと突っ込んでくる敵艦隊に目を向ける。
「敵艦隊、目視で確認。サラミス級5、マゼラン級1。相手にとって不足なし!」
「いくぞナガト大尉。カスペン戦闘大隊は、各小隊事に戦闘行動を継続!敵モビルスーツを撃滅せよ!!」
「「「「「はっ!」」」」」
カスペン戦闘大隊は、その洗礼された編隊戦闘で第2防衛ラインに侵入したセイバーフィッシュ、ジムを相手取り確実に数を減らしていく。
ナガトとカスペン大佐は2機で敵艦隊6隻に吶喊しようとしたその時だった。
「マツナガ隊補給から戻った、またせたな!」
「ナガト大尉!」
「ご無事ですか!」
「やっと来たかマツナガ隊!突っ込んできている敵艦隊を潰す!俺たちに続け!」
カスペン大佐とナガトが先陣を切り、その後ろをマツナガ隊3機が続く。
「カスペン大佐、マゼランを叩きます。援護を!」
「いいだろう、援護する!」
ナガトのザクが速度を上げてマゼラン級に突っ込む。それを援護するためにカスペン大佐は対空砲を引き付けながらザクマシンガンを撃ち対空砲を潰していく。その間にナガトはマゼラン級の懐に入り込み主砲をザクマシンガンで蜂の巣にし、艦橋をヒートサーベルで両断、爆沈する。その間にマツナガ隊がサラミス級3隻を轟沈、その後カスペン大佐とナガトがサラミス級を1機1隻で爆沈。これによりセイバーフィッシュ、ジムの部隊は混乱し、戦線維持が困難になっていた。
連邦軍が撤退しようとしたその時だった。防衛ラインの奥、連邦軍艦隊がいる方から戦闘の光が見える。そして、無線が入る。
「待たせたねぇ、遅れた分の仕事はするさ。損害の酷い隊から下がりな!」
シーマ艦隊が、宇宙攻撃軍武装偵察隊が間に合ったのだ。シーマ艦隊による猛攻により連邦の艦隊は壊滅、敗走を始める。母艦等を失いそうなジムやセイバーフィッシュの残存部隊は撤退しようとするが、シーマ艦隊から発進した精鋭と、シーマ中佐の隊が正面から。背後からカスペン戦闘大隊とナガト、マツナガ隊が猛攻を仕掛け全機が殲滅されようとしていた。
「シーマ中佐!」
「ナガト!無事だね?良く守り抜いた」
「カスペン大佐やマツナガ隊、即応部隊のおかげです。シーマ中佐こそよく間に合ってくださいました。」
「なぁに、ソロモンの危機さ。飛んで帰ってきただけさね。」
「シーマ中佐麾下の艦隊だから出来たことでしょう、やはり教官がシーマ中佐でよかった」
「ふっ、可愛い坊やさね」
シーマの高機動型ザクとナガトの高機動型ザクが合流し無線で話をしている時だった。
「シーマ中佐ッ!!」
シーマ機の後方からピンク色のビームが飛んでくるのをナガトは機体を前に出し、シーマを庇う。機体をずらしたおかげで左肩、左足を吹き飛ばされる程度ですんだ。
「クッソ!どこのどいつだ!」
プロトGファイターが放ったビームがナガトの機体を半壊させ、接近する。そして、プロトGファイターから無線が入る。
「夜叉のパーソナルマークのパイロット、ナガト・ヨシノだな。あたしはあんたの死神だ」
「はっ、死神様が仕留め損なってんぜ。なぁおい、お前女か?」
「それがどぉしたァ!!!」
プロトGファイターがナガトのザクに突っ込みナガトが間一髪で避けると巴戦が始まった。
「なぜ撤退しようとしない!というか今まで戦線に参加せずに今更何を!!」
「待ってたのよ、このときをよぉ!!!」
「なんだってんだ、クソっ!連邦の女子に狙われる言われはねぇぞ!!」
「あんたが殺したぁぁぁ!!!あたしの夫を!父を!故郷をぉぉ!!!!」
「ッ!」
乱射される機関砲とビームをギリギリで避けながらナガトは顔を歪ませる。戦闘機動によるGもそうだが、連邦のパイロットの言葉にもナガトは思うところがあった。
「オーストラリアにコロニーを落としぃ!!父の乗る艇を沈めぇぇ!!夫の乗るセイバーフィッシュを撃墜したのは、全部全部あんたなのよぉぉ!!!だからあたしはあんたを!!!」
「くっ!!!だからと言ってぇえ!!!」
「堕ちろぉぉお!!!」
「うぉぉぉぉお!!!!」
プロトGファイターがビームを放つ。ナガトは機体を翻すがビームが右足を吹き飛ばす。残った右腕でヒートサーベルを握り、プロトGファイターのコックピットを串刺しにする。
プロトGファイターのパイロットは声を上げる時間もないままヒートサーベルで焼かれこの世をさった。
『お前を消して許さない』
ナガトの耳に、プロトGファイターのパイロットの声が囁かれる。
「…許さなくて結構、コロニー落としに参加し、数多の連邦兵を殺してきた俺は、決して許されてはいけないのだから。」
ほぼ全壊した高機動型ザクのコックピットでナガトは暗い顔をし呟く。
「ナガト!」
シーマ機、マツナガ機がナガトの機体を回収する。
「シーマ教官、シン、曳航頼みます。」
「任せろナガト。よく無事だったな」
「流石は私の教え子だ。」
「ハハハ…。」
ナガトは力無く笑い、瞼を閉じた。心身ともに疲労困憊であったナガトは、そのまま気絶するように眠ってしまった。目をさましたときにはコックピットではなく医務室であった。