遠くの山から幾本もの松明で形成された小さな炎の蛇が<エターナルアイスの古宮廷>に向かって近づいて来る。闇の中からか細くも目立つ煌々とした明かりを確認したそれぞれの存在は、持てる実力や人材を最大限使って事態に対応しようとしていた。
***
「なんだ、あの松明は」
「隊長へ報告だ! 急げ!」
見張りに当たっていた<大地人>の兵士はその光景に驚いたものの、即座に小隊の隊長へ報告。そこからさらに中隊を纏める騎士へ。そこからさらに騎士団を纏める騎士団長へと話が通って行き、瞬く間に事態は貴族たちの耳にまで入っていく。
「状況は」
「我々が連れてきた騎士団が連携して壁の構築などの籠城準備を始めております。ですが……」
セルジアットの言葉にとある貴族が報告中にもかかわらず、言葉を詰まらせる。<エターナルアイスの古宮廷>はたしかに溶けない氷で作られた神秘的な宮廷だが、宮廷であって砦ではない。堅牢な城壁はもちろんのことバリスタなどといった防衛設備も存在しないので、いまから籠城準備を拵えても間に合わない可能性の方が大きかった。
だが、長く領主会議を開催して来たセルジアットもこの土地の護り難さは十分理解している。なので、いざという時の避難先や避難経路を指示していると、扉から1人の騎士が入って来た。貴族の話し合いを中断させる行いは無礼な振る舞いであるため、貴族がそのことを怒ると彼は慌てながら『松明のことでナオキという<冒険者>が取り次いでほしい』と伝えて来たのでセルジアットは二つ返事で入室の許可を出す。
「話し合い中に失礼」
「うむ。そなたは何を知らせに来た?」
「私から報告するのは2つ。まずはレイネシア姫がやり遂げました。現在、130人の<冒険者>と共に海の上です」
正に『失礼している最中』なことを暗に伝えるセルジアットだったが、ナオキが報告して来ることに目を瞬かせた。間髪入れずにナオキは義勇兵を募ったレイネシアが<冒険者>130人を連れて船にて<アキバの街>を発ったことを報告すると、思いのほか参加してくれたことや貴重な海上での移動手段を提供してくれたことに感謝するセルジアットと渋々といった感じで感謝の言葉を口にする貴族たち。
しかし、ナオキの次の言葉に漏れなく全員が腰を抜かした。
「<マイハマ>に移動していた<冒険者>と連携して周囲の地形に詳しい<大地人>の方を案内人として何人か引き入れ、既に<ナラシノの廃港>にて下船。
「なっ、早すぎる! その情報は本当なのか!?」
「せ、せんにひゃ……多すぎじゃないか!」
既に
【やぁ、ナオキ君。どうしたんだい】
【いえ、シロエ……さんやクラスティさんから聞いた進捗を貴族の皆様に話したのですが、信じてもらえなくて】
【その口調……。絶賛、報告中かな?】
【そうです。セルジアット様もいらっしゃいますね】
【なら、……姫、ちょっと良いですか】
なにやら企みを思いついたクラスティがしばらく念話を閉じる。何が何やら分からないナオキであったが、セルジアットが今の状況を聞いて来たので端的に『クラスティ様と話していました』と告げた。すると、どうやらクラスティは貴族の間ではかなり好意的な存在へと昇格しているらしく、口々に『あの方と姫が』などと聞こえて来たのでナオキは内心モニョっていると、件の彼から折り返しの念話が掛かってきた。
【はい、ナオキです】
【ナオキ君、今からレイネシア姫の言葉を代弁してもらうよ】
【了解です】
どうやら姫の言葉で信じてもらう試みのようだ。こんな展開になるのなら協力的だったあの魔法使いの老人にも長距離連絡手段としてついて行ってもらえば良かったことを反省するが、覆水盆に返らずということでナオキは素直にクラスティ経由でレイネシアの言葉を貴族たちに伝える。
彼女の言葉を要約すると以下のようであった。
まずは<アキバの街>の発展具合が目覚ましいということ。各職業の<冒険者>が自らの特技や知識で発展している街はとても眩しく、それでいて温かであったという賞賛が多分に含まれた言葉に嬉しくなるが、変に反応して貴族の顰蹙を買うのも嫌なのでナオキは極めて無表情に話す。
次に予想よりはるか多くの<冒険者>が義勇兵として参加してくれたこと。シロエの話では職人といった分類を除けば<アキバの街>の2~3割の<冒険者>がこの遠征に参加しているため、『これでも少ないんやけどなぁ』と未だに重い腰を上げないやつらに毒づきながらもナオキは無表情で言葉を続ける。
最後に参加している<冒険者>の質について。今回、ついて来ている<冒険者>の多くが戦略などを組み立てるのに必要な地図の読み方を把握し、あまつさえこの戦の作戦や行動目的さえ把握していると報告した彼女の言葉に貴族たちは開いた口を塞げずにいた。
(あー、シゲ先生言うとったなぁ。昔は地図も貴重品で戦略物資やから、上に立つのがそういった教養持っとったって)
彼らの驚きようにシゲルと話していた雑談の内容を思い出すナオキ。大学教授の彼の御高説を信じるのであれば、地図や作戦の内容を把握できる<冒険者>は1人1人に長距離通信手段を持った指揮官と同等の教養と素質を有している。そこからさらにレベルにおける武力が付与されるのだが、それを抜きにしても1300人もの指揮官クラスの人員は彼らから見て驚異的なのだろう。
「『なので、御祖父様や貴族の皆様。レイネシアはこれより、クラスティ様麾下の<冒険者>の方々と共に戦場へ参ります』……、以上です」
「で、でたらめだ!」
「いや、ナオキ殿。そなたのいっておったことは真実であろう?」
「はい。クラスティ様経由ですが、たしかにレイネシア様のお言葉です。彼がこういった場で虚偽の内容を報告するような人柄ではないということは、皆様もご承知だと思いますが?」
「わしは既にナオキ殿という人物を信じておる。他に意見は?」
セルジアットのどこか威圧感のある問いに全員は口を噤む。そうして全員が押し黙ったところで1番に報告したかったレイネシアたちについての連絡を済ませたナオキは、『次の報告を行います』と本題の要件を切り出した。
「ところで皆さん、山から伸びる明かりはご覧いただいたでしょうか?」
「貴様の目は節穴か? そのことでこうやって……」
「ダルテ候、控えよ。ナオキ殿、それがどうした」
先程の仕返しか、少々棘のある言い方をする貴族にセルジアットを小さく戒める。1分1秒すらも惜しいこの状況を無用な言葉遊びで浪費するわけにはいかないとナオキに続きを促すと、彼はその明かりの正体は
「……あれ? なにも仰らないのですか?」
「そなたがそう言っておるのだ、既に証拠もあるのだろう。報告を続けて欲しい」
てっきりもう1度『信じられない』からの『証拠提出』という流れが待っていると思っていたナオキだが、周囲の貴族たちは黙りこくっていたことに首を傾げた。彼らからしてみれば既にナオキが報告することの信憑性はセルジアットのおかげで最大値であるため、これ以上余計な時間を使って対応が後手になるのを防いだに過ぎなかった。
先程のやり取りからセルジアットもナオキが既に証拠を取得しているのだろうと予測して続きを促すと、ナオキは数枚の写真といくつか印が付いた地図を机の上に置き出した。
「この周辺の地図と証拠です。
「なんと……。もう偵察を終えているのか!?」
写真という精巧な絵に映った
ただ、この結果についてはナオキも予想外のことである。実をいえば<大地人>の兵士が
その際にソウジロウとの出会いに飢えていた<そうきゅんファンクラブ>の
そのまま彼女たちは特に反撃にも会わなかったため、無事に
「ナオキ殿、一体どうやって偵察をしたのだろうか」
「まぁ……それは……。
そんな経緯から入手した情報なのだが、詳しい事情を説明するのがダルくなってきたナオキはひたすら『
「既に我々は増援部隊を要請しています。つきましては皆様、彼女たちを一度この宮廷に受け入れてはもらえないでしょうか」
「彼女たち?」
「総勢100名。ほとんどが女性です」
「ひゃっ……!」
総人数を聞いた貴族たちは本日何度目かも分からない驚きの声を上げる。<冒険者>の最大戦闘単位は96名の<レギオンレイド>だが、それは<エルダー・テイル>内で定義づけられた数だ。
もしかしたら<レギオンレイド>以上の規模で戦う可能性もあるかもしれない。そう考えたナオキたちが『人数制限なし』という触れ込みで招集した結果がこれだ。──正直、集め過ぎたかもしれないし、この後のキャンプにてソウジロウが大変な目にあうだろうが、彼ならばなんとかなるだろう。……多分。
「受け入れよう」
「それしかありますまい」
「然り」
自分たちの命と<大地人>貴族としてのプライドを天秤にかけたのだろう。あっさりと受け入れの許可をもらったことに少々拍子抜けするが、ナオキは会議室前の伝令が走っていくのを見届けてからソウジロウへ連絡を取る。すると、数分もしない内に<エターナルアイスの古宮廷>に唯一続く1本の橋に100人余りの<冒険者>が姿を現した。
『<西風の旅団>のソウジロウ=セタです! 円卓会議からの救援を連れてまいりました!』
外からは大声で叫ぶソウジロウの声。予め、ソウジロウとナズナにはキャンプの面々を連れてきてもらう手筈だったため、これでは事前に部隊を伏せていたと吹聴するようなものである。
何か言われることを警戒するナオキであったが、周囲からは『これで一安心』という声。一安心とばかりに彼は作戦を伝えるために周囲を見渡した。
「丁度到着したようなので、我々の作戦についてご説明します。我々はこちらの道から来る
「構わないが、何をするつもりかね」
「いえ、"火炎びん"などを飛行可能な召喚獣に持たせて空から広範囲を焼き討ちしようかと」
平然と言うナオキに貴族たちは驚くのも疲れたのか、表情から諦めの反応が見て取れた。それほどまでに<大地人>にとっては常識外の作戦であったが、<冒険者>でありながら『外』の人間であるナオキにとって空爆の再現など検証の価値もないほど容易い。不安事項と言えば物資の不足だが、これもいざとなればカラシンに頼んで配達をウッドストックや<グランデール>のギルドメンバーに頼めば速達便を兼用した戦力を送ってくれるので大丈夫だろう。
そう考えていると、唐突にセルジアットがナオキの名を呼んだ。
「ナオキ殿は別の部隊を指揮する気はないか?」
「仰る意味が分かりませんが?」
「既に騎士団の大半は<マイハマ>に帰したが、それでも大事を取って近衛の一団が残しておる」
「さらに意味が分からないのですが?」
「そなたはこの老骨に部隊を率いて戦えと言うのか?」
違う、そうではない。よく抜け抜けとそういうことを言う。思いの丈を叫びそうになった喉にナオキは素早く蓋をする。
正直なところ、<冒険者>の集団の中に<大地人>を紛れ込ませても使い物にならないだろう。ガンガン前線を押し上げていくであろう<冒険者>は指揮官の指揮が無ければ基本的に自由なため、そんな存在に<大地人>は追いつくことも敵わないだろう。加えて装備やレベルの関係上、必然的に彼らを守らなければならないという制約によってこちらの動きも制限される恐れがある。どちらにしても、碌なことにならないのは確かだ。
だが、<大地人>の貴族たちにとってセルジアットからの提案は必ず飲み干さなければならない杯に等しい。ここで『御冗談を』と蹴るのは簡単だが、そうなったことで貴族たちとの間に溝を作るのは円卓会議としては損失だ。
それに、<冒険者>はレイネシアの呼びかけに手を取っている。そう考えれば彼の提案を楽観的に見れば、<大地人>と<冒険者>の間を補強する意味合いが強いのではなかろうか。
チラリとセルジアットの方を見ると、ナオキの視線に気づいた彼はふっと表情を緩ませる。──どうやら筆頭領主様はとんだ狸のようだ。
「……近衛の命は保証できませんよ。こちらは<冒険者>ですが、彼らは<大地人>だ。先日も言いましたが、調理法や調味料という明確な違いがあります」
「そうだな。では、その場に最適な味付けと調理を施して欲しい。これでどうじゃ? "料理人殿"」
先日のやり取りを上手いこと返されたナオキはしばらく苦虫を嚙み潰した表情を浮かべるが、幾分か経った頃にため息と一緒に『御意』と返答する。長年<エルダー・テイル>に居たおかげで多少の戦闘指揮は出来るが、それはゲームだった頃で本格的な命のやり取りをしたわけではない。そんな人間に死んだら終わりの<大地人>の兵士を預けるなど酔狂どころではない話だと文句たらたらで会議室を後にすると、目の前に鎧を着込んだ集団が待ち構えていた。
「ナオキ殿ですね」
「はい。そういうあなたたちは……」
「コーウェン家に使える近衛です。本日はよろしくお願いします」
頑強な鎧と顔すらも見えない兜に身を包んだ男はそう言ってナオキに握手を求める。しかし、初対面にしては彼の口ぶりは久方ぶりに会った相手に声を掛けるように気安く、聞いた覚えのある声だったナオキは恐る恐るといった様子で聞いてみる。
「どこかでお会いしましたでしょうか?」
「ほう……。お気づきになられるとは、流石は<冒険者>の
そう言って兜を取った男の顔にナオキは『あっ』という声を上げる。彼は数日前、セルジアットとサラリアからの偵察クエストを受ける前にアカツキの手で看破された最後の密偵であった。さらに、ナオキの気付いた声を合図に後ろに控えていた兵士が次々と兜を取るとナオキに気付かれて部屋を後にした顔がいくつか混ざっていた。
「某はローウェンと申します。ここに居る者も含めて既に近衛は引退しておりますが、此度はセルジアット様の御身をお守りするべくお傍に就いております」
「なるほど、実働部隊とは別の実力者集団というわけですね」
ナオキの言葉にローウェンは黙って頷く。レベルは25と<大地人>にしては高く、他の者も23や21と精鋭部隊という言葉は誇張ではないことが分かる。
ただ、そこに『<大地人>としては』という枕詞が付くのはナオキもローウェンも分かっている。ゆえにその後は何も言わずに特技の確認をしながら彼らは<西風の旅団>や<そうきゅんファンクラブ>の面々が勢揃いした場へと走って行った。
***
「まーたこの子は厄介ごとを拾って帰って来たよ」
「うっさい。とりあえず、セルジアット様麾下の近衛部隊30人や。弓関係イケるっぽいから、ボクは今から若旦那へクロスボウとか弓の発注するわ。ナズナはその間にパーティの編成を頼む。ソウジロウは
矢継ぎ早に指示を終わらせたナオキはすぐさま<フレンドリスト>を表示させる。
というのも、今回の厄介ごとである近衛部隊を野戦に参加させるようなタマはナオキにはなかった。近衛部隊も近衛部隊でいち早く
<大地人>であれ、<冒険者>であれ、こういった出来ないことを出来ないと言ってくれるのは非常に助かる。それこそ、今回の防衛戦では彼らの犠牲無く終わって欲しいと願うぐらいに愛着が湧いたナオキは出来得る限りの支援をしようとカラシンに念話を図った。
【どーも、若旦那。今、<アキバの街>?】
【そうだけど? 今、補給とかでドタバタしててさ】
【初心者用のボウガンと長弓。矢とかボルト込みでもらえる? あとは火炎びんとか……】
【ちょちょちょ、なんで初心者? 火炎びん? また、変なこと考えてたり?】
念話の向こうから懐疑的な視線を感じるほどの声色。いつもいつも実験しているわけではないのに疑って来る商売人に一応何も企んでないことをアピールしたナオキは、『どうせバレるだろう』と事のあらましを話した。
特に火炎びんなどの使い道を話した際にはどん引きされ、なぜだか<大地人>の部隊を率いることになった話をすると大笑いされたが、一応カラシンに事情をすべて把握してもらった。
【でもなぁ。ほら、
今回の作戦は電撃戦である。クラスティの先行打撃部隊は敵の主力戦力とぶつかる間近で、その他の部隊は機動力を十分に確保したうえで主力から外れた所謂『はぐれ』を包囲。被害が少なくなるように山間部に押し込んで押し潰すのが最終目標だ。
そのために必要なのが補給のやりくりである。いくら念話があっても常に移動し続ける部隊にポーションなどの補給品を受け渡すだけでも一苦労だし、
だが、そんなカラシンのぼやきにナオキは人を小馬鹿にしたような口調で『何言っとるんや?』と問いかける。
【<グランデール>居るやん。あれ、ウッドストックさんから郵便屋始めたって聞いとらん?】
【……あぁー!】
どうやら本気で忘れていたらしい。この分だと依頼するだけでもカラシンに負担がかかると危惧したナオキは彼に物品の用意だけを依頼した後にウッドストック本人へ念話する。
話の齟齬が起きないようにこちらの事情と第8商店街の事情を話し、その上で今回の作戦の補給を採算度外視でやってもらうよう頼むと、彼はすぐさま受諾。曰く、『良い宣伝になる』らしい。
【じゃあ、<ミドラウント馬術庭園>に行けば良いんだな?】
【そこに本部があるはずやから、そこで念話通信のフレンドを登録してからやな。あと、<エターナルアイスの古宮廷>に運ぶやつは腕っこきで頼むわ。そのまま戦闘に参加してもらうかもしれへんし】
【あぁ、はぐれが来たんだったか。なら、俺が行くしかねぇな】
【えぇんか? たしかに助かるけど】
【竜騎兵が城を守るんだ。良い絵だろ】
【あぁ、さいですか】
打算込々だが、たしかにレベル90の<冒険者>が召喚獣込みでやってきてくれるのは心強い。どのぐらいで到着するかを確認したナオキが念話を切ると、全員が漏れなく彼の方を見ていた。
「準備は?」
「出来てるよ。もうソウジやあたしはそれぞれ一言ずつ言った後だから、あとはあんただけ」
ナズナの言葉にパーティごとに固まった<冒険者>と<大地人>が一斉に頷く。そんな彼/彼女たちの姿にまるで昔から一緒に居たかのような気持ちになったナオキが咳ばらいをすると、
「戦う準備は……出来とらんよな」
マイナス思考一直線の発言にそれぞれが目を大きく見開くが、ナオキは平然と続ける。
ここには<大地人>の貴族が大勢居ること。そのために<大地人>にとってここが急所となり得ること。だからといって<冒険者>が前に出る必要はないこと。不敬を通り越して『なんでここに居るの』と言われそうなぐらい危ない発言のオンパレードであったが、それでもナオキは言葉を続けた。
「やけどな、そんな時にとある姫様が言うたんや。"自由な<冒険者>に物事を頼むなら、言葉で飾らずに礼節を持って頼み込むべき"と。現にそのお姫様は1000人以上の<冒険者>を動かす旗印になっとる」
おそらくは裏であの眼鏡たちが良いように転がしたのだろうが、あの怠けの虫がよくぞここまでの<冒険者>を動かしたものだ。そう思いながらも既にこの
「それに、礼節を持って頼んできたのはその姫様だけやない。そのお祖父様もや。セルジアット・コーウェン。自由都市同盟イースタルの筆頭領主様がここを守って欲しいと直々に頼んできた。……そう頼まれたら、やらなあかんわな?」
返事の代わりに武器で地面を小突く音が響く。やや男臭い反応だが、彼女たちの心は男臭い反応だと思わぬぐらい烈火のごとく燃えていた。
──だが、まだ足りない。
「さらに……や。この戦いは<冒険者>だけの戦いやない。周りを見てみ」
周囲には精鋭部隊のみならず、外壁を補強したり、壁から射掛けるための弓矢の備蓄などを数えている兵士が居る。彼らは時折こちらの方をチラチラ見ていたのは分かっていたので、ナオキは彼らもこの舞台に巻き込もうとさらに声量を上げた。
「あの人らは<大地人>やけど、
「やだ!」
「無理!」
「私も戦う!」
「兵士の皆も、こんな女の子だらけの<冒険者>に全部任せようと思うか!」
「そんなこと出来るか!」
「弓矢の点検急げ!」
「ポーションも忘れるなよ! 俺たちもやれるんだ!」
ナオキの挑発染みた物言いに、<大地人><冒険者>問わず次々と戦いの舞台へと名乗りを上げていく。
やがて、兵士どころか騎士や彼らを纏めるべき存在の騎士団長も名乗りを上げていき、宮廷内の戦闘部隊は急速に纏め上がっていく。
「これで皆、須らく同胞や! <冒険者>は前に出て後ろに居る同胞を守る! <大地人>は後ろから前で戦う同胞を助けて欲しい! 作戦開始や!」
『応っ!』
月明かりにキラリと輝く
(ナオキってあんな感じで話してたっけ)
(多分、久しぶりのレイドに格好つけただけでは?)
(んー? ボクってこんな変なキャラやっけ)
ただ、ナオキの態度にソウジロウとナズナ。そしてナオキ本人は『らしくない』と疑問に持っていた。
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1国を容易く滅ぼすであろうと称された暗殺教団の歴代の長たちが、闇の中から光ある者たちに奉仕するために集った同胞たちを守るために振るわれ続けた短刀。
代々この短刀を所有して来た者たちの遺志により、実力と人望がある者の手にいつの間にか収まっている。
また、所有者の発言力を高めると共に、指揮下に入った者の素質を飛躍的に上げる。
ジジジッ
直次の盾がいつの間にか名称が変わってたやつと思ってくだされば