「あら……?」
ぴくり、と草木のなかでじっとしていた何かが動いた。
「私の花達が、散らされている……?無粋な方がいるのね」
しゅるり、と触手のような両手が動く。
声の主は踊るように歩き出す。
「歓迎しないといけませんわね……イレギュラーハンター」
巨大な花のようなボディを大きく開く。
――――――――――
「エクスプロージョン!!」
通算で4回目のエクスプロージョンの使用。
この特殊武器は燃費が凄まじく悪く……これで弾切れになってしまった。
「ふぅ……これで4個目か」
『ミモリの方も、順調に数を減らせているようです』
ミモリと別れ、それぞれ機械の花の処理に向かった。
セレナードが計算すると、残りの花は一桁まで減っているらしい。
『……不自然なほど静かですね』
「ああ……何か、もう一つ罠があるかもしれない」
『各地にそれなとく警戒するように流しておきましょう』
「ああ……ん?」
視界の端に光を捉える。
反射的にゼットセイバーを構えた。
「っ……!?」
爪が飛び出してくる。
エックスは体を捻り躱し……そのまま一閃。
飛び出してきたバリアント·クロウを叩き斬った。
「バリアント……!」
『エックス、警戒を。囲まれています』
『ハッ!奴さん焦ってきたな!』
『百鬼夜行全域に警告を送っておきます』
「頼む、ヒマリ」
エックスはバリアント達と対峙する。
「Dr.バイル……何を考えているんだ……!」
姿勢を低くするバリアントへチャージバスターを放つ。
数体を貫通し破壊する。
残ったバリアント達が素早く距離を詰めるが、エックスはゼットセイバーを振るい寄せ付けない。
「はあっ!!」
倒れたバリアントから爪を引き剥がし投げ付ける。
跳躍した個体にバスターを打ち込み、接近してきた個体はゼットセイバーで叩き伏せる。
『なんか……エックス、お前戦い方が洗練されてきたな』
『そうですね……ノーマルアーマーでもセイバーを絡めた接近戦に磨きがかかっています』
「そ、そうか?」
『ああ。キヴォトスでの戦いが、お前を成長させてるのかもな』
「……かもな」
一通りバリアントを片付けて、ミモリに連絡を取る。
「もしもし、ミモリ?」
『こちらミモリです!エックスさん、どうされましたか?』
「今……バリアントの襲撃を受けた。気を付けてくれ」
『大丈夫です!こちらでも遭遇しましたが修行部で片付けましたので!』
「そ、そうか……」
やはりキヴォトスの生徒たちは武闘派揃いだと改めて感じさせられた。
『エックス!イレギュラー反応だ!』
「……来たか!」
エックスは走り出した。
「場所は!?」
『百鬼夜行中心部、大庭園だ!』
「了解、急行する!!」
――――――――――
百鬼夜行、大庭園。
百鬼夜行連合学院を訪れた観光客はまずここを訪れると言われるほどの観光名所だ。
だが……桜が咲き誇る大庭園は見る影もなく、枯れ木が立ち並ぶ寂しいロケーションへと変貌していた。
その中心部に、何者かが根を下ろしていた。
「……来たわね」
「オマエが今回の元凶だな!」
「元凶?酷い言い草ですわ。バイル様は私にここを管理せよと仰られましたの」
「管理、だと?」
「ええ。バイル様がキヴォトスを支配した後のために……自然環境を掌握する。そのために……年中咲いている目障りな花を消せと命令を承ったまで」
「貴様……!百鬼夜行の皆の想いが、歴史が籠っているんだぞ……!」
「そんな不確かで益にならない物にエネルギーを割くなんて……無駄だと思いません?妖精戦争の英雄ならば……何にリソースを優先するかなんて考えるまでもないでしょう」
「……ああ、そうだな。お前をイレギュラーとして処理する」
「まぁ!なんて短絡な!私をイレギュラー認定?自然環境を管理するこの私が?」
エックスはこれ以上語らず、無言でバスターを構える。
『エックスさん。ナノマシン用の浄化プログラムをヴィアさんたちに送りました』
『そういうわけだエックス!今からお前が発射できるようにして送るから、その前に破壊するなよ!』
「分かった!戦闘能力を奪う!」
「踊らない?」
戦いの火蓋が、切って落とされた。
「失礼!」
マンドラゴが脚部を連結させてドリルへ変形する。
その前地面を掘り消えてしまった。
「そういうタイプか……!」
『気をつけろ、エックス!奴は自在に地面を移動して攻撃してくるぞ!』
「気をつける!」
セイバーとバスターを構えて、エックスは相手の出方を伺う。
「御機嫌よう!」
「そこか!」
背後から振動。
エックスはバスターを放つ。
が、両手を振り回しマンドラゴはそれを打ち払った。
「ご馳走するわ!」
「くっ……なんだこれ……!」
マンドラゴの頭部から放たれた液体をモロにかぶってしまう。
やたらと粘性が高い。
そして、次の瞬間……ありとあらゆる方向から蜂型のメカニロイドが殺到する。
「な、なんだ!?」
『その蜂蜜のせいですね……ですが、どこからこれだけのメカニロイドが……』
「くそ、鬱陶しいな!」
振り払おうとセイバーを振るう。
マンドラゴはその間にも移動する。
「何処に行った……!」
「こちらですわ!」
「何……ぐあっ!?」
マンドラゴがドリルの脚を軸に高速回転をし突進。
反射でバスターを撃つがあまり効いている様子は無い。
エックスは避けきれずに跳ね飛ばされた。
「くっ……ダメージは大したことないが……!」
マンドラゴが静止する。
そして、空に手を広げ……。
『まずい!光合成で回復されてる!』
「なんだと!?」
急いで近付こうとするも、蜂型のメカニロイド達が邪魔をしてくる。
「くそっ、こいつら……!」
思うように動けず、苛立ちが募っていく。
『エックスさん!プログラムが完成しました!』
「分かった!だが……打ち込む隙が見つからない……!」
『それなら、大丈夫です』
「えっ……?」
突如響くミモリの声。
そして……。
「とりゃー」
なんとも抜けた声がした。
……が、
「う、おっ……!?」
エックスの周囲で爆発が巻き起こる。
榴弾が落とされていた。
「なっ……」
「あ、初めましてー……。貴方がエックスさんだね……」
「あ、ああ……」
水色の髪をした、白装束の少女だ。
なんとものんびりとした雰囲気を感じさせる。
「ありがとう、助かったよ」
「気にしないでー。陰陽部の仕事」
彼女の手には、無骨なグレネードランチャーが握られていた。
今のは、彼女の援護射撃だったようだ。
「そうか。やつの動きを一度止めないといけない。援護、頼めるか」
「良いよー」
「よし……行くぞ!」
少女がグレネードランチャーを構えるのを横目に見つつ、エックスはマンドラゴに肉薄する。
「一人増えたところで!」
「その手はもう食わないぞ!」
マンドラゴがすぐさま蜂蜜をばら撒くが、少女の放つグレネードが地面に燃え盛り展開を許さない。
蜂型メカニロイドの増援は見込めないと言うこと。
そして、
『エックスさん!陰陽部から打診です!援護射撃が到達します!』
「助かる!」
マンドラゴの立っている位置へ、次々と銃撃が撃ち込まれる。
「何……!?」
「はぁあっ!!」
「くっ!?」
意識外からの攻撃にマンドラゴが怯む。
その隙を見逃さないエックスは、ゼットセイバーでマンドラゴを斬りつけた。
(浅い……!)
ギリギリのタイミングで地面に潜られた。
ボディの表面をゼットセイバーが舐める。
「エックスさん!」
「ミモリか!」
戦場へミモリも参戦。
少女が少し欠伸をする。
「ありがとうございます、チセちゃん」
「気にしないで……お仕事」
少女はチセと言うらしい。
潜ったマンドラゴにアクションが無い。
「逃げられた?!」
『いや……反応がまだあるぞ!』
「なん、うわっ……!?」
エックスの足元から蔦のようなメカニロイドが大量に地面を突き破って生えてくる。
あっという間にエックスに絡みつく。
「く、くそっ……!」
「エックスさ、きゃっ……!?」
いつの間にか、彼女たちの足元にハエトリグサの様なメカニロイドが生えている。
ミモリは、エックスに駆け寄ろうとして踏みかけたのを慌てて引っ込めた。
「いつの間に、こんな……」
「わー」
「チセちゃん!?」
チセも蔦に足を取られ引き摺られる。
ミモリが慌てて駆け寄り蔦に拳銃を連射して千切った。
「びっくり」
「大丈夫?」
「うん、でも……」
「エックスさんと、分断された……!」
「俺は良い!自分の安全を確保してくれ!」
「ここにきて人の心配とは、余裕ですこと!」
「でたな……!この程度……!?」
エックスは蔦を振り払おうと力を込めて……びくともしない事に驚愕する。
「な、何……!?」
『エックス!拙いです、スマホのバッテリーが吸われて……!あっ……スリープに』
ブツッ、とセレナードの声が途切れる。
「セレナード……うっ……!?まさか、」
「今更気づいても遅いですわ!」
「俺のエネルギーを、吸っているのか……!」
エックスと、所持している電子機器からエネルギーが吸われている。
恐らくこの蔦のせいだ。
エックスは、段々と意識が保てなくなってくる。
「う……くそ……!」
「私の花壇の栄養として散りなさい!」
マンドラゴが高速でスピンし始める。
エックスは、動けない。
「エックスさん!」
ミモリの悲鳴のような叫び。
万事休すか。
「ぐ、あっ……!?」
衝撃。
高速回転するマンドラゴの体当たりを受け……エックスの身体は宙を舞った。
エネルギーも少なく、強い衝撃を受けた為エックスの意識は一瞬シャットダウンする。
「こん、な……ところ……で……!」
――――――――――
『で、こんな所で何してるわけ?』
聞き覚えのある声に、エックスは慌てて起き上がる。
声の主は、無邪気に笑う。
エックスは、思わず絶句する。
『どうしたのさ、ユーレイでも見るような顔して』
「だって、君は……今」
『エックスが心配で心配で居ても立ってもいられなくてね!感謝して欲しいくらいだよ』
「えっ……?」
『守りたいんでしょ?この世界を』
「……ああ」
エックスは躊躇わずに言う。
傍らに立つ少年は、満足そうに笑う。
『珍しいよね、エックスが成り行きじゃなくて自分から守りたいって言うのも』
「……そうか?」
『変わったね、エックス。僕はそっちの方が好きだよ』
「ははっ……そうか」
『それにしてもエックス、僕が寝てる間に随分と女のコの友達が増えたね』
「え?ああ……皆、良い子達だ。だからこそ……バイルの手から守らなきゃならない」
『………………エックスはそういう奴だったね』
「何が言いたい」
『なーんにも。ほら、それならさっさと起きてあんなやつ片付けちゃいなよ』
「わかってるさ……だが……」
『な―に言ってるのさ。どんな逆境さえ諦めない未知数のイレギュラーハンターでしょ?ほら、立った立った』
「……ああ」
力の入らない手を握り締める。
『やれるじゃん。それじゃあ、僕は行くね。これ、良かったら使ってよ』
少年が歩き去る。
残された2丁の拳銃を、エックスは拾う。
「ありがとう……アクセル……!」
――――メタルヒーローズ、起動。
「俺は、まだ……負けてない……!」
この世界に来てから少しずつ貯めていたエネルギーの余剰分。
奇跡的にマンドラゴに吸収されても残っていてた。
エックスは、サブタンクを起動する。
――――――――――
「……来ましたね」
ディープログにて。
アロナは、慌てふためく二人を見ながら呟いた。
「来た?何が!?」
「ヴィアさん……!メタルヒーローズが起動しています!」
「なんだと……!?エックス、まだ動けるのか……いや、サブタンクか!持っていたのか!」
「私の目論見通りなら……水羽ミモリとの共鳴能力が発現するはず。これで私の目指す奇跡に一歩近づくでしょう」
「「………………」」
ヴィアとリコは無言で抗議するが、口にはしない。
いくら被害者とは言え言いたい放題されるのも流石に堪えてくる。
「百鬼夜行連合学院にちなんで……シャドーアーマーでしょうか。それならば……桜花絢爛、とか良さそうですね」
「ったく……お、アーマーを装着するぞ」
「照会します……選択したアーマーは……」
「「「え?」」」
――――――――――
「なっ……!エネルギーは吸い尽くしたはず……いえ、サブタンクを隠し持っていたのね……!なんて意地汚い!」
マンドラゴの声が聞こえる。
エックスは、震える手を大地に打ち込み無理矢理立ち上がる。
「生憎だな……!俺は、決して倒れない……倒れちゃ、いけないんだ……!」
両手に拳銃を装備する。
バスターにエネルギーを回せない今、外付け武器のほうが都合が良い。
「行こう……!アクセル!」
「そのなけなしのエネルギー、いただくわ!」
マンドラゴが両腕を地面に突き刺す。
また蔦を出すつもりか。
だが、エックスはその前にアーマーを選択する。
「エネルギー、限定解放!」
バスター、ゼットセイバーへの供給をカット。
全てアーマーとアクセルバレットへ回す。
脚部は大型化、両肩のアーマーも鋭角なシルエットへ。
ヘルメットに黄金に輝く2本角が装備される。
ファーストアーマー、セカンドアーマー、マックスアーマー、そしてファルコンアーマー。
4つのアーマーの衣装を盛り込んだ、白く輝く姿。
「装着、グライドアーマー!」
3次元を舞う鎧、ここに顕現。
そして、エックスの白いカラーが黒く染まっていく。
胸部にハメられたレドーム型のコアパーツが、青く輝く。
首にビームマフラーが装備され、オレンジの光を放った。
「アクセルトランス!!」
もう1人の友、アクセルの力をその身に宿す形態が降臨した。
「その程度の虚仮威し……!」
マンドラゴが、砲台を展開、蜂型メカニロイドを召喚する。
「遅い!」
エックスは2丁のアクセルバレットを連射し、次々と蜂型メカニロイドを撃ち落としていく。
アクセルバレットはエックスのバスターと比べて火力は劣るが、連射力は大きく上回る。
エックスがチャージショットによる一点突破型だとするならば、アクセルは豊富な弾幕による手数型だ。
「早い……!」
蔦が地面から飛び出す瞬間、エックスは大きく跳躍する。
「フレイムバーナー!」
弾倉を変更、2丁拳銃から火炎放射が放たれる。
蔦を次々と燃やし、エックスは滞空する。
グライドアーマーはその名の通り滑空能力に優れたアーマーだ。
足場が危険ならば、ゆっくり落下する事で安全化を図ればいい。
「スパイラルマグナム!」
続いて、螺旋状に軌跡を描く弾丸を2発発射。
エックスとミモリたちを隔てる蔓の壁に着弾、一発目で亀裂を生み……二発目の着弾で完全に引き裂いた。
「今です!!」
このタイミングを待っていたとばかりに……壁の向こうには百鬼夜行連合学院のあらゆる生徒たちが銃を構えて待機していた。
「ひっ……!」
「撃てっ……!」
誰かが叫ぶ。
次の瞬間、ありとあらゆる弾丸がマンドラゴに振り注ぐ。
「ひ、ぎ、あぁぁぁぁぁ!!!」
「今だ……!」
エックスは、ナノマシン停止プログラムをアクセルバレットに装填する。
「効いてくれよ……!」
「ぎっ!?」
マンドラゴに、停止プログラムがヒットする。
『良いぞ!』
『プログラムスタート……あっ!』
『どうした!?』
『そんな……プログラムが、効いていません……!』
『嘘だろ!?』
『Dr.バイルに読まれていた……!?』
そんな言葉が、エックスの耳に届く。
ならば、やる事は結局同じ。
「アイスガトリング!」
「ぐ、あ、こ、凍って、凍ってしまう……!」
弾倉を交換。
氷の弾丸を連射し……マンドラゴの身体を凍結させる。
そして、アクセルバレットを分解し……新しくロケットランチャーを生成する。
「終わりだ……!」
凍り付き、動けなくなったマンドラゴへ……最後の1打を放った。
「ブラストランチャー!!」