「エックスの奴、今日はカイザーの仕事か」
ディープログ、ロックマンX部門。
ヴィアが肩を鳴らしながら呟いた。
「はい。理事長が参加する大事な会合での護衛だそうです」
「あのエックスが個人の護衛か……世界が変わればやることも変わるってもんか」
「そうですね。今日はイレギュラーも出ませんし進展はなさそうですね」
「たまには休息日を設けないと俺たちだって保たねぇぜ……」
……ヴィアがそう発言した直後、監視モニターからけたたましいアラートが鳴り響いた。
「「………………」」
リコはジト目でヴィアを睨めつけ、ヴィアはリコから視線を逸らす。
「イレギュラー反応確認……ここは……」
「……エックスが仕事で来てる海域じゃないか……?」
「エックスさんも、とんだ不幸体質ですね……」
「ハッ!本当にな……よし、エックスとパスを繋ぐぞ」
「はい!」
――――――――――
『エックス!イレギュラー反応を確認した!』
突如、ヴィアから連絡が届く。
「ヴィア!拙いことになった……今、俺達が乗っている船に爆弾が仕掛けられている」
『はぁ!?』
「今は……迂闊に動けない」
『今何やってんだ!』
「セレナードをこの船の電脳に送り込んで爆弾を見つけている……!」
『それで見つかれば苦労はしない……か』
『エックス、一通り確認してきましたが見当たりませんでした』
「やはりか……」
スマホのなかに戻って来たセレナードからの報告を受け、エックスは肩を落とす。
セレナードに目線を戻した瞬間、通知と共にスマホが震えた。
マナーモードにしていたので着信音は鳴らない。
『エックス、オートでんわです』
「え?ああ……」
『もしもし!エックスさん!』
「うわっ!?」
電話の相手はノノミだった。
結構な大声だったので思わずスマホを落としそうになる。
「の、ノノミ?どうしたんだ?」
『大変です……私たち、人質になってしまったみたいで……』
「な、なんだって!?」
『会議室の扉が開かなくなってしまって……』
『貴様、誰と話して……エックスか!?』
『ちょっと、やめてください!』
「ノノミ!?」
『やはりエックスか……!』
「……理事長!?」
ノノミのスマホを奪ったのか、理事長が通話に割り込んできた。
『出入口で通信端末を提出していたから連絡は出来なかったが……今は好都合だ。エックス、さっさとこの会議室のドアを破壊して救出しろ』
「……済まないがそれは出来ないかも知れない……先ほど、犯人と接触した」
『仕留めたのか?』
「……この船に、爆弾を仕掛けたと言われた。恐らくお前たちを人質にしている」
『なんだと……相手は』
「雇われた傭兵が1人だけ。そっちは?」
『こちらには何も連絡は無い。エックス、貴様はまず爆弾を見つけ出し解体しろ。その後我々を救出に来い』
「了解。それと、スマホアプリはノノミに返してあげてくれ」
フン、と理事長が鼻を鳴らす。
『……エックスさん』
「安心してくれ。必ず俺が助ける」
『……!はい、待ってます!』
通話終了。
『待機中の部隊へ通達はしますか?』
「連絡を取ってくれ」
『了解しました、繋ぎます……』
コール音が鳴る。
『よう、エックス』
……だが、電話に出たのはカイザーの社員ではなかった。
「カルレルか……!」
『悪いが、お前のオトモダチには大人しくして貰ってる』
「貴様……!」
『エックス、ここは1つ俺と勝負しようじゃないか』
「勝負、だと……?」
『ああ。お前が勝てば依頼主をバラすし爆弾だって解除してやるよ』
「………………内容は」
『外に出てみな』
カルレルに促されて、エックスは廊下から屋外へと出る。
広大な海。
乗船している客船以外周りに……。
「……あれは」
遠くに、白い輸送船のような物が見える。
『巨大なイレギュラー反応確認!オメガと同じ規模です!』
「なっ……まさか」
『タイムリミットは奴がここに辿り着くまで!ゲームスタートだ!』
通話が切られる。
エックスは思考を切り替える。
「リコ!ライドチェイサーを!」
『えっ!?えぇ!?使うんですか!?』
「何だっていい!とにかくあの船がここに辿り着く前にアレを無力化しなければ……!」
『わ、分かりました!ライドチェイサーを転送します!』
エックスの眼の前に、ライドチェイサーが現れた。
「アディオンか!またピーキーなのを送ってくれるな!」
『そいつが一番速い!行ってこいエックス!』
「了解!」
ライドチェイサーに跨り、エンジンを始動。
「行くぞ!」
――――――――――
(エックスさんなら……大丈夫)
会議室内、ノノミはぎゅっとスマホを抱き締めた。
窓の外で……何かが洋上へ飛び出して行ったのが見える。
(あれは……エックスさん?)
「あれはなんだ?!」
誰かが窓の外へ指を差し叫ぶ。
「輸送船……?この海域に他の船は居ないはず……」
「おい……アレ、向かってきてないか……?」
「まさか、さっきの揺れは……」
『クーックックック……お集まりの皆様方。ご機嫌は如何ですかな』
先ほど、黒服の男を映していたモニターから老人の笑い声が聞こえる。
「Dr.バイル……」
役員の一人が、ポツリと呟い。
『お初にお目にかかる。ワシの名はバイル……先ほど諸君が黒服から抹殺を依頼された本人じゃ』
「な……情報が漏れていた……!?黒服め……!」
「待て……そんな話で黒服が我々をコイツに売る必要があるか……?」
「……要件はなんだ?」
『クーックックック……話が早い。どうだ?ワシに雇われてゲマトリアを討つつもりはないか?』
全員が息を呑んだ。
ゲマトリアに反旗を翻す……そんな、誰も想像すらしなかった所業。
それをこの老人は提案してきたのだ。
「……ゲマトリアを敵に回す、それが理解出来ているとは思えんな」
『残念だがこれは依頼ではないのだよ』
「何……?」
(あっ……爆弾……そういうつもりで)
ノノミと理事長は二人でアイコンタクトを取る。
これは、最初から拒否択の無い脅しである。
『この船には爆弾が仕掛けられておる。その意味が分かるな?』
「なっ……貴様!」
役員たちが一斉に顔を青ざめる。
窓のガラスを叩き割ろうにも防弾性でびくともしない。
ノノミも生憎と愛用のミニガンはガンロッカーに預けてしまっている。
頼みの綱のエックスは……先ほど船外へ行ってしまった。
(エックスさん……!)
『1時間だ。その時に色良い返事を待っておるぞ……それと、逃げた所で無駄じゃよ……ほれ!』
バイルが手を鳴らすと……遠方に見えていた輸送船が変形を始めた。
「な、何だ……!?」
「おい、輸送船が……!」
輸送船が、変形を始めた。
――――――――――
『エックスさん……!?あ、あれ!』
「どうし……なっ……!?」
リコの警告と同時に……輸送船が、立ち上がっている。
いや、変形しているのだ。
「変形……まさか、アレ自体が……!」
船体がスライドし、両サイドから巨大な腕が現れ……船首の瞳と巨大な口が開く。
咆哮、そして……その頭上にヘイローが現れた。
「預言者……!」
『王国を護りし古代の守護者……コクマー。貴方が何故……』
通信の奥、呟くようなアロナの声が聞こえた。