「ハッ!」
エックスは氷柱からコクマーの周囲の氷原へ飛び移る。
しっかりと凍結しており、踏み抜く心配は無かった。
「セレナード、見えるか?」
『視界共有。エネルギーの流れを見ます』
エックスの電脳とセレナードを直結。
処理を任せる。
その間にエックスは凍らせた端から全てを砕きつつ迫るコクマーへ走る。
咆哮と共に振り下ろされる巨大な手のひらを躱し、もう一度振られる反対の手のひらへ、
「ノヴァストライク!」
エネルギーを纏った高速の体当たりでぶつかる。
質量差は確かにあるが、コクマーの動きが一瞬止まる。
『エックス!奴の手を伝って本体に乗り移れ!』
「了解!」
特殊武器を選択。
「ストライクチェーン!」
エックスのバスターからエネルギーの鎖が発射される。
先ほどぶつかったコクマーの腕に刺さり、エックスを引き寄せる。
『コクマーが飛翔体を発射!』
「対処する!」
コクマーの背部から多数のミサイルが発射される。
冷気を帯びた槍のような形状だ。
『ん……?』
ヴィアが何か引っ掛かった様な声を出すが、エックスはそのまま走り出す。
上空から飛来するのなら、上に向かって放つ特殊武器が御誂え向きだろう。
「ライジングファイア!」
振り注ぐ氷の雨に向かって、炎の塊を打ち上げる。
エックスはそのまま走る。
『……!コクマーのヘイローの真下からエネルギーが流れ出ています!』
「ヘイローの真下……?」
コクマーのヘイロー。
船として表現するのならほとんど船首の位置だ。
だが、立ち上がっている姿からすれば最も頂点にある場所だと言っても過言ではない。
「うおっ……!?」
動き出したコクマーが、腕を登るエックスを振り下ろそうと身を捩る。
振り落とされそうになるも、ゼットセイバーを突き刺して耐える。
『またミサイルが来ます!』
「キリがないな!」
ゼットセイバーをオフ。
支えがなくなり、エックスは空へ投げ出された。
「ツインスラッシャー!」
Vの字を描く様に放たれる衝撃波。
それをミサイルに向けて連射する。
「くっ……!」
迎撃しきれずにスレスレを一発貰ってしまう。
バランスを崩して転がるように着地した。
「また振り出しか……!」
『口を広げている……!エックスさん!気をつけてください!』
口部からの強力な攻撃が来る……、そう身構えてエックスは防御の構えを取る。
「ガードシェル!」
目の前に貝殻状の防壁を展開、衝撃に備える。
だが、実際に発射されたのは攻撃ではなく……。
「……これは!?」
黒い霧。
コクマーの目の前に吹き出されたそれは、攻撃力を持っていなかった。
『やっぱりか!エックス、避けろ!』
「何……ぐっ、あっ!!?」
エックスの身体が横方向へ吹き飛ぶ。
前方からではなく、側方からの衝撃で意識していなかったエックスはたまらず吹き飛んだ。
『え、えぇぇっ!?何処から!?』
『アイツ、イカ墨を吐いて自分の腕をガードシェルの無い側面から出して攻撃しやがった!』
『なっ……預言者ってこんなのなんですか!?』
『………………違います。何らかの要因でコクマーの存在が別物に改造されています』
「くっ……不意を疲れたか……!」
盛大に滑ってようやく止まり、立ち上がる。
だが……コクマーとの距離は開いてしまった。
「手ごわい……!」
『エックス、あの攻撃手段には心当たりがある』
「何……?」
ヴィアが確信を持った様に答えた。
『あれは本来、アインヘリヤル八闘士のテック・クラーケンが持つ技だ。なんでコイツがそんな事出来るか分からねぇが……』
『おそらく……合体させられている……と言った所でしょうか』
『何か分かったのか、セレナード?』
『ヘイローの直下に、微かに人型らしき物が見えたような気がします』
「なるほど……」
どうにかして、あそこまで登らなくては。
しかし、手数が足らないとエックスは焦りを感じている。
1人で戦うには巨大過ぎる。
注意を引けなければ、取り付くことすらままならない。
「誰か、居てくれたらな……」
ぽつり、と思わず弱音が溢れてしまった。
思えば……ここまでいつも誰かと戦っていた。
今回は、久しぶりに一人だ。
いつの間にか、誰かと肩を並べることが当たり前だと感じていた。
「お呼びでしょうか?」
「……へ?」
なじみの声がして、思わず顔を上げる。
そこには……何やらよく分からない、バイクの様な乗り物に乗るヒマリとエイミが飛んでいた。
「ひ、ヒマリ!?エイミ!?どうしてここに!?」
『接敵する前に連絡を入れておきました』
「セレナードさんから映像を受け取っていました。こんな時のために用意した……と言っても試作品ですけど……これをお見せする時が来ましたね」
「それにしても……大きいね、アレ。一人じゃ非効率」
ヒマリは凄まじく厚着をしていた。
顔の周りも衣服のフードでもこもこしている。
対するエイミは……なんと水着姿に上着を羽織っているだけ。
レプリロイドのエックスから見てもあまりにも寒そうだった。
「二人とも……来てくれて嬉しいよ」
「あら、エックスさんからそう言われるとは……私たちも相当信頼を勝ち取れていると見えますね」
「部長、エックス。あんまり長々と話してる暇はないかも」
『ミサイル、発射されました!』
エックスが一歩前に出て、ゼットセイバーを抜き放つ。
「マグマブレード、最大出力!」
業炎が舞う光の剣が振り抜かれ……氷のミサイルを次々と撃ち落とす。
「行こう!」
「ええ!」「うん」
三人が、飛び出した。
この状況で来てくれる援軍、となるとやっぱこの2人かなと。
臨戦にしたかったけど設定的に登場タイミングが合わないので衣装はそのまま、武器は試作品、バイクはライドチェイサーの流用となります。