【完結】デカグラマトンハンターX   作:塊ロック

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忘れていましたが章で分けてみました。


エックス、退職……!

 

――初めて見た時は、傭兵らしくないガキだと思っていた。

金の匂いが一切しないソイツは俺たちの仕事場に混ざって平気な顔してブリーフィングを受けていたのを覚えている。

 

離しても見れば俺達のように薄汚れていない、真っ直ぐな目で真っ当にらしいことを言っていた。

 

正直、気に入らなかった。

こんなやつ、この界隈じゃあ生きていけない。

幸いにも今日のパーティーの警戒程度じゃあ死にはしないが、幸運な奴だ。

 

 

……そう思っていたのも束の間だった。

 

知らない、気味の悪い勢力の襲撃。

 

セントネフティスの令嬢の誘拐、美術品の強奪。

俺達はみすみすやられたのだ。

 

だが、いの一番に追撃に出た奴がいた。

 

………………あの、青い若造だった。

 

そして俺は思い出した。

やつが……蒼き雷霆と呼ばれていたのを。

 

カイザーの奴らがアイツを慕っているのを。

 

そして………………奴の力が『本物』だというのを思い知らされた。

 

奴は、令嬢を奪還して帰ってきたのだ。

 

 

 

 

それから、少しずつ奴を追っていたところ……目を付けられた。

 

『傭兵……喜べ、仕事をやろう』

 

いけ好かないジジィだった。

そして、このジジィがキヴォトスを少しずつ浸食している異物だと言うのを知る。

 

迷った。

奴に伝えるか。

 

情報を集めるだけ集め……そして、術中にハマってしまった。

 

「見損なったぞ、カルレル!」

 

そして。

久しぶりに出会った奴から……そう言われた。

 

内心驚いていた。

見損なうほどの評価を、奴は俺にしていたらしい。

青い。

何処までも甘く、青い。

 

……けど、だからこそ。

 

俺はコイツに賭けたのかもしれない。

本当に、コイツは天性の人たらしだ。

 

「頼んだぜ……イレギュラーハンター、エックス……」

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

『……エックス、悪いが……立ち止まってる時間はないぞ』

 

苦々しく、ヴィアは口を開く。

そして……エックスは、視線を上げてヴィアを通信ウィドウ越しに睨んだ。

 

「……分かってるさ」

 

歯を食いしばり、拳を握り、エックスは立ち上がった。

カルレルが残してくれたデータ。

これで……バイルの居場所が分かる。

 

「ヒマリ、エイミ……このデータを頼む」

「……承りました」

 

エックスがスマホをヒマリに手渡す。

二人は、そのままライドチェイサーに乗って帰って行った。

 

 

エックスは、夕日の沈む水平線をしばし眺める。

 

「解決したようだな」

「理事長、無事だったのか……」

「……一応私は貴様のクライアントなのだから最優先で生死を確認するものではないのかね?」

「……すまない。少し、疲れた」

「珍しいな……キサマが弱音を吐くなど」

 

エックスは、無言でカイザーのクレジットカードを取り出す。

 

「理事長」

「なんだ」

「今日限りで、退職する。これは返す」

「……思ったより、早かったな」

「目処が立った」

「なるほど……カードは持っておけ。金の動きがなくなり次第凍結する」

「……助かる」

 

カードを理事長に押し付けられる。

エックスはそのままポーチに戻した。

 

「あのバイルとか言うジジィを倒しに行くのだろう」

「……ああ」

「もう雇い主ではないが……ひとつ頼みがある」

「聞こうか」

「叩きのめしてやれ」

「……言われるまでもない」

「ではな。せいぜい死ぬなよ」

 

そう言い残して、理事長は去って行った。

 

「エッ!!タイチョウガタイショク!?」

「ソンナァ」

「シカタナイカ……」

「タイチョウ……」

 

そんな声が、理事長の乗り込んだ帰りの船から聞こえる。

 

「………………」

『良かったのか?』

「……元々仮の身分だ。いつか捨てる日が来る」

『エックスさん。私たちも帰りましょう』

「そうだな……」

 

甲板に置かれたライドチェイサーに手をかけようとして、

 

「……エックスさん!」

「ノノミ……」

 

息を切らせて走ってきたノノミが、声を上げた。

 

「良かった、無事で」

「良くないです!」

「えっ……おっと」

 

ノノミは、そのままの勢いでエックスの胸に飛び込んだ。

 

「こら、危ないだろう……俺のボディは硬いんだから怪我するぞ」

「全然、無事じゃないじゃないですか……っ!」

「………………」

「今回も、無理して……ボロボロになっちゃってるじゃないですか……!」

 

ノノミの拳が、エックスの肩を打った。

 

「それは、」

「どうして、どうしていつもエックスさんが苦しまなきゃ、ならないんですか……」

「……俺が、そう選んだから」

「どうして……!」

「俺は、イレギュラーハンターだからだ」

 

ノノミを身体から離して、ポーチの中で奇跡的に無事だったハンカチをノノミに渡す。

 

「意味がわかりません……」

「俺が、そう言う役割のレプリロイドだから」

「……本当に、貴方は人間じゃないんですね」

「何度も言ってるだろ?」

 

ノノミはそのままハンカチで目尻を拭う。

 

「……所でエックスさん」

「なんだい?」

「カイザー、辞めたんですね」

「ああ」

「じゃあ……今から貴方を雇います」

「………………えっ?」

 

ノノミが笑顔で手を差し出してきた。

 

「今は、フリーなんですよね」

「いや、ノノミ?」

「報酬はカイザーPMC提示の2倍。休暇と福利厚生は要相談。上司は私です。悪い話ではないと思いますよ☆」

 

強かに笑ってウィンクするノノミ。

エックスは苦笑して……首を横に振る。

 

「ごめんな」

「………………そうですよね」

 

ノノミの笑顔が消える。

波の音だけが、響いている。

 

「じゃあ、私は帰ります。エックスはどうされるんですか?」

「一度ミレニアムに戻る」

「……そろそろ、帰っちゃうんですか?」

「……ああ」

「寂しくなりますね」

「俺もだ」

「え……?」

「過ごした時間は少ないけど……この世界に、少しだけ愛着が湧いたみたいだ。友達も出来たし」

「なら、残りますか?」

「それは、出来ない」

 

向こうの世界に置いてきたものが多過ぎるから。

 

「……冗談です。それじゃあ」

「ああ。また」

「……はい☆また会いましょう!」

 

エックスはライドチェイサーに跨り、海の上へと飛び出した。

 

その背中を見送るノノミは、呟く。

 

「あーあ……どうしてあんな人、好きになっちゃったんでしょうね……」

 

手にしたハンカチを、ギュッと握った。

 

 

 

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