ミレニアム郊外、廃工場前。
ここから、キヴォトスの各地へバリアントが派遣されていた。
「ここが、バイルの拠点……」
今は、エックスひとりだ。
エイミは周囲を探索して他に道が無いか調べている。
『とうとうここまで来ましたね』
スマホの中から、セレナードがそんなことを言った。
「俺も、君も……これさえ終われば、帰れるんだ」
『キヴォトスでの体験も中々面白いものでしたが……やはり、元の世界の方が落ち着きます』
「そう言えば……君にも主がいるんだろう?」
『ええ。心配はしてないとは思いますけど』
「そうなのか?」
『私は、強いので。それと……』
セレナードが一度口を閉じて、エックスにこっそり告げる。
『ノノミさんの件は、リコやヴィアには黙っておきますね』
「……あのなぁ」
『ふふっ、気にしているのなら応えてあげても良かったのでは?』
「それは無いよ……俺はレプリロイドなんだから」
『……まぁ、私もネットナビと人間の恋愛なんてありえないと思ってますので……そんなものですよね』
「お喋りは終わりだ。行こう」
『はい』
エックスは、静かに廃工場の中へ入っていった。
製造ラインは既に止まり、荒れ果てている。
「……誰も居ないな」
『入ってすぐ、見える所には配置しないでしょう。恐らく何処かから地下へ入れるはずです』
「探してみよう」
改めて見ると、確かに人が立ち入った痕跡がある。
「微かだが……足跡があるな」
『……このサイズ、10代の少女のものですね』
「そうなのか?」
『少なくともオートマタの類では』
「誰かが、先に来ていたのか……?」
足跡をたどる。
何かを探してはいるが、迷ってはいない道筋。
そして、
「……地下への階段」
『ですが、空いていますね』
地下への隠し通路ではあるだろう道が見付かった。
ただし、不用心にも閉じられておらず……足跡も中へ続いていた。
「……生徒が、入っていったのか……?」
だとしたら救助せねばならない。
キヴォトスの生徒はどうにも怖いもの知らずの気がある。
ここにも、興味本位で入っていったのだろうか。
「行こう」
エックスは、階段を降りていった。
一歩踏み出し降りるたび、エックスは息苦しさを感じる。
無意識にプレッシャーを感じているのか。
「………………」
ちょうど、右手を壁についた時。
ネチョ……と不快感を催す音がした。
「なんだ……?」
思わず右手を見る。
光源は無く、暗い……が、エックスのアイカメラには暗視機能が付いている。
特段不便はない。
それより、手に付いた粘度の高い液体は……不思議な色をしていた。
角度によっては七色に発色を変える、なんとも言えないものだった。
「何だ、これ……」
とりあえず気持ち悪いので振り払う。
『エックス、周りを……!』
「え、うわ!?」
セレナードに言われ、周囲を見回して……思わず声を上げてしまった。
エックスの降りている通路が、段々と粘液に囲まれ始めた。
「な、なんだこれ!!」
『分かりません!とにかく捕まると面倒です!』
「くそっ……!」
エックスは走り出す。
幸い、通路は狭くない……が、段々と足元に謎のスライムが増えてくる。
「ヴィア、リコ!これは!?」
『……すまない!少し席を外していた!』
準備中の2人を呼び出すわけにはいかなかったが……そうも言っていられなかった。
『エックスさんとセレナードさんをオペレートします!えっと……』
『……ゲッ!?なんだそいつ!?』
「俺も知らない!未来の敵か!?」
『分析結果出ました!レインボーデビルです!』
「レインボーデビル!?大昔に居たデビル系メカニロイドか!」
『イエローデビルの発展型だ!気をつけろ!』
「デビル系なら、コアがあるはず……探せないか!?」
『周辺に反応なし……スライムだけです!』
『とにかく広いとこに逃げろ!』
エックスはとにかく走った。
幸い、スライムは積極的に襲いかかるような真似はせず……ただ、エックスの退路を塞いでいただけ。
そして、
「抜けた……!」
階段を抜け、内装が無骨な工場跡から研究所のような施設に変化する。
「着いたのか……!」
しかし、辺り一面に輝くスライムがこびり付いている。
「いったい何が……」
『エックス、人がいます!』
「なんだって……?」
誰か、倒れていた。
白いフードが、かすかに揺れている。
「君、大丈夫かい!?」
助け起こすと……かたり、と顔に着けられていたマスクのような物が落ちる。
「う、うう……」
「良かった、生きてる……」
「けほっ、こほっ……貴方は……」
「……ん?君は……前にとこかで……?」
「あ……!トリニティの地下で……お願い……!サッちゃ……皆を助けて……!」
「えっ……??」