【完結】デカグラマトンハンターX   作:塊ロック

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Freesia

 

「……終わった……のか……?」

 

ようやく、絞り出せた言葉は……そのひと言だった。

 

「エックス」

「シグマ……!」

 

シグマが、満身創痍のエックスの前に立つ。

周りに居たノノミ達に緊張が走る。

 

「よくやった」

「は……?」

「今更私に隊長ヅラされても不愉快だろうがな。これだけは言っておきたかった」

 

シグマは、狂気など感じさせない毅然とした態度でエックスに向き合っている。

 

「かつて、私が言ったこと……残っているようだな」

「何を……」

 

 

『良いか、エックス。我々イレギュラーハンターには引き金を引くのを躊躇ってはならない時がある』

 

『それが、力無きものの剣となり盾となる我々の定めだ。忘れるな』

 

かつて、シグマが悩むエックスに向けた言葉。

エックスはそれを思い出す。

 

「今のお前が何度私を倒し立っているかはデータでは知っている……だが、今の私は生憎と過去の複製なのでな……。少しは良心とやらが残っているらしい」

「………………」

 

エックスは、呆然とシグマを見ていた。

 

「では……さらばだエックス。これからもお前の選んだ道を歩み続けろ」

 

シグマは、エックスに背を向け……光の粒子となって消えた。

 

……エックスは、膝をつき涙を流した……。

 

「あ……あぁ……」

 

涙を流すエックスに、誰も声をかけられない。

そして、エックスはうめいた。

 

「ありがとうございます……シグマ隊長……!!」

 

反乱を起こし、エックスと長い対立をしていたシグマ。

しかし……イレギュラーとなる前のシグマは、生みの親ケイン博士の最高傑作であり……誰からも慕われていた、理想のイレギュラーハンターだった。

 

エックスとて、彼に憧れていなかった訳ではなかった。

 

……しばらく、エックスの啜り泣く声が廃墟に木霊した。

 

 

「エックス」

 

タイミングを見計らって……セレナードが口を開く。

 

「セレナード……どうやってここまで……?」

「今はキヴォトスにディメンショナルエリアを展開中です。ネットナビも実体化出来るのですよ」

「そうだったのか……」

「私も、ウラインターネットの王と呼ばれた存在……それなりに、強いですからね?」

「ははは……助かったよ」

「さて……」

 

セレナードが大きく伸びをする。

 

「セレナード……行くのか」

 

エックスは、片腕だけでなんとか涙をぬぐう。

どの道片目しか無事ではなかったが。

 

「ええ。流石にこれで終わりでしょうし……私にも待っている人が居ますので」

「分かりました。転送シークエンス開始、セレナードさんを元の世界へ転送します」

 

リコが手元のタブレットを操作する。

すると、セレナードが足元から粒子となって消え始めた。

 

「お世話になりました……ロックマン、エックス」

「こちらこそ。元気で、セレナード」

「ああ、ヒマリにもよろしく言っておいてください」

『聞こえていますよ、セレナードさん……楽しいひと時でした』

「ヒマリ……フフ、さようなら」

『はい』

 

通信が復旧し、セレナードへヒマリが語りかけた。

セレナードは微笑み……消えた。

 

「さて、エックス。どうする?」

「どうって……」

 

ヴィアがエックスに確認を取る。

エックスは後ろをちらりと見て……。

 

「彼女達に、挨拶をしたい」

『分かりました。もう少しだけ保たせます』

「アロナ……良いのか?」

『大丈夫ですよ』

「そうか……ありがとう」

 

エックスは、振り返り……思い思いの表情を浮かべた少女たちと向き合った。

 

「今更だけど……皆、よくここまで来たね」

「気が付いたらD.U.に居たんです」

「えっ……そうなのか?」

『私が……彼女達に個人的なお願いをしたので』

「なるほど……?」

「……グスッ、おにーさん」

「おっと」

 

イブキが、エックスの腰に抱き着いた。

エックスは、イブキの頭に手を添えた。

 

「行っちゃうの?」

「……ああ。そろそろ、帰らなきゃ」

「もう……会えないの?」

「……ああ」

 

エックスは、去らなければならない。

彼は、この世界に残った最後のイレギュラー。

 

このままでは、キヴォトスはゼロにならない。

 

「……分かった」

 

イブキは、涙でぐちゃぐちゃになった顔を無理やり笑顔にする。

 

「またね!」

 

それでも、イブキはそう言った。

子どもゆえの無邪気さか、それでも現実を凌駕せんとする覚悟か。

 

「……ああ。また」

 

エックスも、イブキにそう答えた。

 

そして、次はマリーが、エックスの手を握る。

 

「マリー……」

「エックスさん。貴方に貰った勇気は億千万ほどありました」

「大袈裟だな。その勇気は、元々君が持っていたものだよ」

「それでも、キッカケをくれたのは……貴方です」

「それじゃあ、どういたしまして……かな?」

「はい……お世話になりました、エックスさん」

「ああ……ありがとう、マリー」

「……さようなら……!」

 

マリーは、そう言うと手を離し……後ろへ下がる。

続いてミモリが恥ずかしそうに前へ出た。

 

「一人ずつ別れのあいさつをすると言うのも、なかなか気恥ずかしいものですね」

「そういうものかな……思えば俺は、こうやって誰かに挨拶することはなかったから」

「そうなんですか?」

「ああ……挨拶するような間柄の人たちは……皆居なくなったから」

「……それじゃあ、私達が初めての戦友です!」

「初めての……ではないけど、君達は間違いなく戦友だよ。ありがとう」

「こちこそ……!二度も百鬼夜行を救ってくださり、本当にありがとうございます……!貴方は、本物のヒーローでした……!」

「さようなら、ミモリ」

「エックスさんも……お元気で……!」

 

ミモリが下がり、今度はキリノがエックスの前に立ち……ビシッ、と綺麗な敬礼をした。

 

「本官は!エックスさんに本当に色々と助けてもらいました!貴方の教えてくれた事、本官は忘れません!」

「俺はただ……君の努力の後押しを少ししただけさ。キリノは、真面目で、努力家で、目標に向かって頑張ってる。俺は少し羨ましかった」

「え……?」

「俺はずっと悩んでいたんだ。イレギュラーを処分することに……。でも、君は……自分のやりたい事、出来ることを一生懸命全うしている……そんな姿が……俺は、羨ましかった」

「……では!今度はエックスさんが、本官をお手本にしてもいいんですよ?」

 

キリノが、照れたように笑う。

エックスも釣られて笑った。

 

「じゃあまずは射撃の腕前が俺を超えたらだな」

「うっ……それは……」

「ははは……」

「うぅ……!エックスさん!」

「痛い痛いちょっと、待って待って」

 

顔を真っ赤にしたキリノがエックスの肩を叩く。

 

そして、

 

 

「………………」

 

 

ノノミが、来た。

 

「ノノミ……」

「……です」

「……え?」

「お別れ……したくないです……」

「の、ノノミ……?」

「やっぱり自分の気持ちにウソをつけません……お別れしたくないです……エックスさんと離れたくないです……!」

 

ボロボロと、ノノミが涙を流す。

後ろを見ると……イブキも釣られて泣き始めてミモリがあやしている。

 

「……俺も、出来ればここに居たいって気持ちがあるのも嘘じゃないんだ」

「グスッ……え?」

「でも、向こうに置いてきてしまったものが……たくさんあるんだ」

 

戦友も、守るべきものも。

向こうにはまだまだたくさんある。

 

「ノノミ」

「は、はい!」

「ありがとう。君に出会えて、良かった」

「……最後まで、ズルいですよ……!」

「俺は、誇りあるイレギュラーハンター。イレギュラーが居る場所が、俺の居場所だ」

 

エックスは、ノノミ達に背を向ける。

これ以上は、足を止められない。

 

「ヒマリも、世話になった」

『こちらこそ。楽しい時間でした』

『エックス。私、忘れてない?』

「そんなことないよ。ずっと心配してた」

 

ヒマリに通信を繋ぐ。

勿論、エイミの無事を確認する。

 

「今まで、ありがとう」

『うん。お疲れ様』

 

エックスは歩き出そうとする。

 

「エックスさん!!」

 

ノノミが、その背中に叫ぶ。

 

「私は……っ!」

 

「私は……!貴方と出会えて……幸せでした……!!」

 

「………………ああ」

 

エックスは、微笑む。

皆に向けて、サムズアップをする。

 

そして、ヴィア達の下へ……歩き出した。

 

「もう良いのか?」

「これ以上は、未練になる」

「はい……」

 

ヴィアとリコが、頷いた。

 

「お疲れ様でした。エックスさん……今から、貴方を元いた場所に転送します」

「頼む」

「悪いんだが……記憶は、消させてもらう」

「ああ」

 

ヴィアが申し訳無さそうに告げる。

元より了承済だったエックスは、特に迷うことなく返事をする。

 

「……良いのか?」

「彼女達の記憶も、消えてしまうのだろう?」

「……はい」

「なら、俺のも無くなったほうが……良い」

 

一度、彼女たちの方を向く。

皆、思い思いの表情だが……気丈に手を振ってくれていた。

 

「じゃあ、転送するぞ」

 

リコが手元のタブレットを操作する。

……エックスの周囲が歪み始めた。

 

エックスは、少女たちに向けて叫んだ。

 

 

 

「……さようなら!」

 

 

「「「「「さようなら……!!」」」」」

 

 

 

エックスの視界は、白く染まった。

 

 




いつも胸に溢れてる 貴方への思い

永遠は無いから

今は傍に居てほしいの
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