リコたちに協力する旨を伝えた日から少しして。
エックスは部室から借りた部屋に戻っている時だった。
「あっ、エックスさん」
「ん?君は……?」
すぐ後ろを通り過ぎた少女から声を掛けられた。
「早瀬ユウカ……で合ってたかな」
「はい、そうです。先日はありがとうございました」
「いや……あの時は咄嗟に動いただけだから」
ミレニアム生徒会、会計担当の早瀬ユウカだった。
生徒会と言えばリオが会長だったが……最近彼女と顔を合わせていない。
何かしらの別件で動いているのだろうか。
「全く……こんな時に会長は何をやってるのかしら……」
「リオの事かい?」
「ご存知でしたか?会長ったらこの前から行方不明で……」
「え?」
「ああすみません、こんな話。それで会わせたい子がいるんです」
「俺に?」
「はい、先日の騒動の時に私と一緒にいたんですけど……」
「ああ、あの白いシルエットの子か」
「ちょっと連絡取りますね……あっ、このあとって何か予定とかありますか?」
「いや、特に無いよ。戻って休むくらいだから」
「あ、そうなんですね。ごめんなさい、また後日で……」
「こんばんは、ユウカちゃん」
「あ」
ユウカの後ろからまた誰か現れた。
流れるような長い白の髪が印象的だ。
「誰とお話を……あら、こんばんはエックスさん」
「こんばんは、ええと……」
「生塩ノアです。ミレニアム生徒会で書記をやらせてもらっています」
「よろしく、ええと……」
「ノアで良いですよ」
「えーっと、ありがとうノア」
元の世界では相手の事を基本的に呼び捨てで呼んでいた為……キヴォトスでの氏名に少し戸惑いを隠せなかった。
「先日はありがとうございました」
「怪我は無かったかい?」
「はい、お陰様で」
「それは良かった」
エックスもノアも朗らかに笑う。
「ノア、そろそろ……」
「エックスさんが良かったら、何かお礼がしたいのですが……」
「ノア……?」
ユウカが少し驚いた顔でノアを見た。
エックスも反応に困るが取り敢えず聞いてみる。
「気にしないでくれ」
「私の気が済まないんです」
「けど……」
なんだかちょっと押しの強い子だなとエックスはなんとなく思う。
「ノア、エックスさんが困ってるわよ」
「あら、そうでしたか。ごめんなさい、差し出がましくて」
「気にしないよ。お礼の件はまた機会があったらでいいかな」
「はい、構いませんよ。あ、これ私の連絡先です」
「え、あ、ああ……」
ノアはメモ帳に素早く書き込んでエックスに手渡した。
書記を名乗るだけ有ってかなりの速記で、しかも機械で書いたかのように読みやすく丁寧な字だった。
「ノア……」
「どうしたの?ユウカちゃん」
「貴女……ちょっといつもより変じゃない?」
「うふふ、まるでいつも変みたいな言い方ですね」
「違うわよ!」
「……あはは」
エックスは、思わず笑みを溢した。
なんとなく、日常を感じて……これがたまらなく愛おしい。
だからこそ……この愛すべき日常を守らなくてはならい。
これが壊されるなんてことはあってはならないからだ。
「それで、今度のお休みとかどうでしょう」
「えっ」
「ノア……その辺にしときなさい」
「嫌ですねユウカちゃん。冗談ですよ」
「そうかしら……その割には顔がガチよ」
「うふふ、そうかしら」
「あ、あはは……」
いたたまれない気持ちに包まれるエックスだった。
「申し訳ないけど今すぐに返事は出来ない。でも、余裕ができたら……できれば連絡する。それで良いかい?」
「え……はい!」
ちなみに次の休日はノノミと会う約束をしています。
……ノア、こんな感じで良かったかな。