あとちょくちょくコラと言うか変なロックマンネタも混ぜてますがこれも不快でしたら止めます。
バイクを停め、振り向いた瞬間……黒い制服が目に入った。
「正義実現委員会……?」
思わず呟いてしまう。
昨日の背の高い少女と……その隣に、首筋に一本線の入った不気味なイメージの少女が居た。
二人はエックスの呟きに気付きこちらを見た。
「………………」
先日の件もあり、エックスは身構えてしまったが……。
「正義実現委員会、委員長の剣先ツルギです。先日は失礼しました」
……ものすごく恭しく礼された上に謝罪までされてしまった。
「同じく、委員会副委員長の羽川ハスミです。私の判断不足でエックスさんに危害を加えたことを謝罪します」
背の高い少女……ハスミもそう言って頭を下げた、
「そんな……君たちは自分の役目を果たしただけだ。頭を上げてくれ」
「しかし……」
「俺が面倒な肩書を持っていたのが悪いんだ。この話はここで終わろう」
「感謝します」
ツルギと名乗った少女が頭を上げて、エックスに向き直る。
「先日、あの後……ティーパーティーから正式にゲストになったことを聞かされました」
「ああ、コレの事だね」
エックスは首から下げていた身分証明を見る。
「貴方はミカ様の庇護下に入っています。ただし……」
「分かってる。身の振り方には気を付けるよ」
「……貴方はカイザーに身を置くには清廉潔白過ぎる」
黙っていたツルギが、口を開いた。
「……そうかな」
「先日、シスターフッドからの嘆願と資料を見てから、何故貴方のような男性がカイザーにいるのか……理解に苦しむ」
「何故、か。単純に成り行きっていうのも大きいかな……」
ファーストコンタクトは拉致だったし。
「……そうですか」
「では、エックスさん。我々はこれで」
「ああ、それじゃあ」
こうやって毎回平穏無事に終われたらな……と誰も居ないのにぼやくエックスだった。
そう言えば、今日はリコとヴィアが居ないから通信もかなり大人しい。
何かあったんだろうか。
そもそも彼女達にも調べごとをしてもらっている手前気にはなるが……。
(連絡が無いのなら大丈夫だろう)
とにかく、教会に向かおう。
マリーが居るかどうか分からないが……。
(……シスターフッドからの嘆願?)
はたと先程の会話を思い出す。
(誰かが正義実現委員会へ俺の扱いを撤回させたってことか……?)
シスターフッドはトリニティの政治に不干渉を貫いていると聞いた。
なのに、何故……誰が?
誰がエックスの為に動いた?
ミカでは絶対にない。
彼女はそういった根回しを好まない気がするし、何よりそんな義理はない。
大体トリニティに来てまだ3日と経たない。
そんな中で誰が……?
「……あ!」
考え事と懸念のダブルサイクロンがエックスの頭の中をぐるぐるしている時、誰かの声に足を止めた。
何となく喜色の多い声音だった。
「エックスさん!」
「……マリー?」
顔を上げると、箒を手に笑顔でこちらに手を振るマリーが居た。
「おはようございます!お早いですね。お祈りですか?」
「おはよう、マリー。調査だよ」
パタパタとマリーが駆けてくる。
「調査、ですか……?」
「ああ。この周辺や……地下について調べたいんだ」
「地下……ですか?トリニティの地下……そんな話は聞いたことないですね」
(………………一般生徒には伏せられている?)
ミカが案内した地下通路。
この様子を見る限りマリーは存在を知らない。
他校からの転入生が通る通路にしては知名度が無さすぎないだろうか?
「何か、古い資料のある場所を知らないかな」
「そうですね……図書委員会を訪ねてみるのはどうでしょうか」
「なるほど……お誂え向きの名前だ」
「良ければ案内しましょうか?」
「良いのかい……?掃除中じゃ?」
「あっ……どうしましょう」
とは言っても教会の敷地内は手入れが行き届いている。
「俺も手伝うよ」
「え、いえそんな……エックスさんはティーパーティーのゲストですし……」
「俺がやりたいと言い出したんだ。気にしないでくれ」
「えっと……それじゃあ水やりをお願いします」
「分かった、任せてくれ。バブルスプラッシュ!」
――――――――――
エックスとマリーで花壇の水やりを粗方終わらせた後。
トリニティ総合学園の図書館は、伝統を重んじる校風もあり古書の類が多く……10代の少女達にはあまり向かないんじゃないだろうかとエックスは考えていた。
蓋を開けてみれば案外最近の本、ファッション誌なんてのも置いてあり割りかしターゲット層が若い蔵書を取り揃えていた。
「お初にお目にかかります!トリニティ総合学園1年、図書委員会の円堂シミコです」
「俺はエックス。よろしく」
眼鏡を掛けたツインテールの少女……円堂シミコはマリーの紹介で顔を合わせる事になった。
なんでも、この図書館の蔵書を読破した数少ない生徒だとか。
マリーは礼拝があると言って名残惜しそうに戻っていった。
連絡が取れるようにモモトークの件を伝えるとぜひに!と目の輝きを増して詰め寄ってきた。
……なお、連絡先の名前……4段目に自分が入ったのを見て若干輝きは失せたが。
閑話休題。
「トリニティの歴史について興味があると聞いていますので、こちらである程度ピックアップしておきました」
「本当かい?助かるよ」
「こちらこそ、こうして本に興味を持ってくれる人がわざわざ訪ねて来てくれるのはとても喜ばしい事なんです。気に入る一冊が見つかるようお手伝いしますね!」
若干主旨が伝わっていないような気がする。
それは置いておいて純粋な好意を受けているのでエックスは気にしなかった。
「こちらです!」
「わ……ぁ……!?」
エックスは思わず声を漏らした。
なぜなら……分厚い本がこれでもかと積み上げられていた為だ。
目算でざっと30冊はある。
「どうでしょうか?!学園創設理由から地理的情報まで、先に提示されていた条件から絞ってみたのですが……!」「絞った……?」
これで?と言う言葉を慌てて飲み込む。
『ハッ!凄い量だなエックスこれを読み切るには1週間はくだらないな!』
『ここから見える背表紙から選別していますが……どれも関係ありそうです……』
「ただ……」
シミコが続ける。
「マリーさんの言っていたトリニティに存在する地下空間についての記述は恐らくあまり無いかと思います」
「……どういう事だ?」
「無いんです」
「な、い……?」
「トリニティ総合学園には人が通れる大きさの地下空間存在しません」
「何だって……?!」
なら、アレはなんなんだ?
「やっほー、えっちゃん」
「「……えっ?」」
恐らくこの空間に全く似つかわしくない声。
振り向くと……ピンクの艷やかな髪が目に入った。
「ミカ……」
「今、時間ある?デートしない?」
――――――――――
マリーと別れた後……エックスは、再びいつぞやのカフェテラスに腰掛けていた。
眼の前には湯気のたつコーヒーがひとつ。
対面のミカはパフェを頼んで突っついていた。
……なお、エックスが手土産に選んだプリンはシミコに渡された。
「話、とは?」
「やだなーえっちゃん。デートだよ、デート」
「………………」
「ちぇー、えっちゃんのいけず。じゃあ用件だけ言うね」
ミカがフォークをテーブルに置く。
「あの地下空間のこと、あんまり他言しないでね?」
「……知られると、拙い事をしているのか?」
「まだお願いにしておいてあげたいけど……えっちゃんの身の振り方次第じゃ脅しになっちゃうよ?」
「………………」
ミカはエックスの首から下げられている身分証を流し見る。
それだけで言わんとすることは充分に分かった。
「デカグラマトン?だっけ。調査に必要なら分かり次第連絡してあげるから……地下のことはあんまり吹聴しないで欲しいかな?」
「……分かったよ」
元々、ミカの個人的な頼みからエックスが違和感を感じていただけの話だ。
「俺が少し配慮が足りていなかった……そういうことだな?」
「流石えっちゃん♪」
こうなると、エックスがトリニティに居る意味がなくなる……とは言わないが調査は振り出しに戻ってしまった。
「そんなえっちゃんにご褒美があるよ?」
「ご褒美……?」
「うん……はいこれ」
渡されたのは、地図。
スランピアと書かれた遊園地跡地だ。
「これは……?」
「これね、ちょっと前からティーパーティーで問題になってたんだ。少し前からここで生徒が行方不明になってるの」
「何だって……?!」
「今は大事な行事の準備で動けないから……出来たら調査に行って欲しいかなって」
エックスはすぐさま地図を受け取る。
「任せてくれ」
「……ちょっとは躊躇ったりしないの?」
呆れたようにミカが呟いた。
「これが、俺に出来ることだからな」
「少しは疑ったりとかしないの?」
「誰かが困ってるなら、俺は行くさ。戦わなければ何も変えられないのなら……俺は迷わない」
「……そうなんだ」
「君が何をしようと……俺は知らない。けど、困っているのなら……俺は助けになりたい、そう思うよ」
「……ふふ、そっか。えっちゃんは優しいんだね」
「優しい……とは違うと思うけど」
「そう言うのを優しさって言うんじゃないの?」
「……どうだろうな。俺の意思ではあるけど……誰かからそれを評価されたことは無いから」
甘ちゃんだ、甘いとは散々言われてきたが……優しい、か。
「今更だけど、これはご褒美なのかな……?」
「え、遅くない……?」