『そう言えばよ、エックス』
特異現象捜査部の部室にて。
若干暇を持て余したエックスは部屋の掃除を行っていた。
ヒマリとエイミは席を外している。
その時に通信が繋がり、誰かと思えばヴィアだった。
「ああ、ヴィアか。どうした?」
『いや、この間の戦闘で特殊武器は手に入らなかったのかってな』
「……君は、いやに俺の事に詳しいな」
『企業秘密って奴だ』
「答えになってないな……俺も答えないぞ」
『悪かったって……本当に言えないなんだ、その辺は』
「そうか……」
ヴィアとリコは、あまりディープログについて話したがらない。
機密事項が多い場所なのだろうと勝手に考えてはいるが……気にならないと言えば嘘になる。
「特殊武器に該当するものは確かに俺に備わった」
『へぇ……?』
「ただ……
『武器じゃない……?』
「俺もまだ試してないからどんな性能をしているか分からないんだがな……」
『いやに歯切れが悪いじゃないか』
「こんなの、俺も初めてだからな」
『じゃあ物は試しだ。撃ってみようぜ』
「なら、射場なり屋外なりに移動した方が良いだろう」
エックスは掃除機を片付ける。
「……そう言えば、射場とか行ったことないな」
――――――――――
ミレニアム学園、第3射撃訓練場。
銃社会であるキヴォトスには、当然のようにあちこちに射撃訓練場が設置されている。
ミレニアムの中にも、やっぱり設置されていた。
「そもそも俺の身分で利用出来るんだろうか」
モモトークでヒマリに確認したら、身分証の提示だけで大丈夫であると言われたが……。
「あ、エックスさんですね。どうぞ」
「え、ああ……どうも」
「薬莢は全部回収して帰ってくださいね」
「分かった」
……エックスのバスターからは空薬莢は出ないが。
射座に立つ。
隣のブロックとは仕切りが立てられている。
壁に防音ヘッドセットが掛けられているがエックスには規格が合わないので付けなかった。
……誰も居ない。
『この時間は授業中だろうし、人は居ないだろうな』
「そうだな」
エックスは左腕をバスターに変形させ、構えた。
……的が次々と現れる中、エックスは撃ちまくった。
『あ?使わねぇのか?』
「え、ああ……すまない、つい」
一通り的を撃ち抜いた後、ヴィアからツッコミが入った。
スコアが表示される。
得点は……九割と言ったところ。
それなりに好成績だった。
「なかなか……向こうだとこんな事する機会も無くて」
『それにレプリロイドだから射撃の上手い下手もないか』
「ああ」
エックスは特殊武器に切り替える。
名前が表示されていない、無名の武器。
『その武器、名前は?』
「まだ無い」
『ま、撃ってからだな……』
「それ……!うわっ……!?」
エックスが撃った瞬間、甲高い乾いた音と……大量のリボン、風船、機械のハトが飛び出した。
『な、何だこりゃ……!?』
『あ、ヴィアさん一人で何やって……エックスさん!?またウタハさんの試作品飲んだんですか!?』
通信に騒がしい声が追加された。
「やぁリコ……アレはしばらく御免被りたいかな」
『なんですかこれ……』
「この前の、スランピアの
『特殊武器……には見えませんねこれ。何より攻撃力が皆無です。小さな子を喜ばせる位の使い道しか無さそうですね』
「けど……俺の中にこうして特殊武器として備わっている……」
地面に散らばった色とりどりのリボンは、しばらくすると消えた。
「……でも、こう言うのも良いと思うんだ。あの子達は戦うための存在じゃなかった」
『そう、ですね……』
『よし、名前を決めるか』
「名前?そうだな……こう言うのは苦手なんだ、何か案は無いか?」
『うーん……マジック?ワンダー?うぅ、何が良いでしょうか』
その時……ぽん、とモモトークに通知が来た。
ポーチからスマホを取り出し、確認する。
……マリーからだ。
『今、お時間よろしいでしょうか?』
特に、これと言って予定は無くなった。
『良ければ……電話など……どうでしょうか』
「構わない、と」
『ん?なんだ?電話か?』
「ああ、マリーからだ」
『えっ!本当ですか……!むぐっ!?ヴィアさん!?』
『出歯亀は野暮だぜリコ。それじゃごゆっくり』
「………………」
通信が静かになると同時に、スマホにコールが来た。
「もしもし?」
『あっ……こんにちは、エックスさん』
「久しぶり、マリー」
『えっと……お元気でしたか?』
「まぁ、それなりに」
『そう、ですか……』
……何となく会話が続かない。
何か振れる話はなかっただろうか。
「えっと……救助された子達は、どうかな」
『あ、はい。順調に快復されて……すっかり元気になられましたよ』
「それは良かった。今回の件……誰も大事無くて安心した」
『誰もじゃ……ありません……!』
「え……?」
急にマリーが声を荒げた。
思わずエックスが驚く。
『エックスさん……貴方が、ボロボロになっていたじゃありませんか……』
「俺は良いんだ」
『良くありません!』
「……マリー、落ち着いて聞いてくれ。俺はレプリロイド……ロボットだから、壊れたら直せば良い。でも君達人間はそうはいかない。ふとした事が一生残る傷になりかねない」
『ですが……』
「君達が無事で、俺が傷付くのが一番良いんだ」
『……そんな事は、ありません』
マリーが静かに、それでいて力強く否定する。
『エックスさんが傷付く事で、辛い思いをする人がいるのを……どうか、忘れないでください』
「俺が……そんな、どうして」
『大事な人が、傷付いて……平気な顔をして居られると思いますか?』
「それは」
……エックスは、思わずゼロの事を思い出していた。
彼もまた……自己犠牲を伴ってエックスの背を押してくれていた。
「……それは、とても辛いことだ」
エックスは、無意識にそう呟いていた。
『……なら、どうして』
「どうして、か……俺が動かなくて、他の誰かが傷付く方が……もっと辛いからだ」
『なっ……頑固すぎます!』
「あはは……ごめん」
『エックスさんは……もっとご自身を大切にしてください』
「……考えておくよ」
『それはするつもりのない人の返答です』
「手厳しいな」
『治すつもりが無いのでしたら、毎日教会に来てもらいますからね』
「流石にそこまで予定は開けられないかな……?」
『なら、善処してください』
「……わかったよ。俺も、自分を大事にする」
『はい。そうしてください』
ふと、そこで思い付いた。
この特殊武器の名前の案をそれとなく聞いてみる。
『えっと……そうですね……』
告げられた言葉を聞き、エックスは直感で決めた。
「……ありがとう」
『お決まりになりましたか?』
「ああ。この装備の名前は……」
攻撃の為のものでは無く、誰かの為に使う特殊武器。
アンケートを設置したので良ければ協力頂けると助かります。