懇親会は特に問題なく進んでいるらしい。
新発表、新製品、グループ内での共同事業等など……。
そんな話をしているらしい。
……エックスは未だ、会場の警備に勤しんでいる。
特にこれと言って異常もなく……気は張るもののゆっくりと時間が過ぎていった。
屋根から庭に向かって飛び降りる。
勿論会場内から見えない位置へ。
警備員も庭を練り歩くなんて真似は出来ないので……懸念があるとしたらこちらからの侵入である。
ただ、フェンスが建てられているのでよっぽどのことがない限り張り巡らされたカメラに映り、見つかるだろう。
(妙な胸騒ぎがする)
それでも、不安を拭いきれないでいた。
「よう、真面目にやってるな」
「マック」
欠伸を噛み殺しながら、マックが声を掛けてきた。
「俺等の出番なんざ怪盗が出てからだろ」
「いや……少し胸騒ぎがして」
「お前ロボットなのに人間みたいな事を言うな……お前もどうだ?今ダブルのやつが毟り取られてるトコだが」
「やめておくよ。生憎持ち合わせは少ないんだ」
「……お前、何であんな事やってんだ?」
「あんな事、とは?」
「金にならねぇ事だよ」
金にならない事。
確かに……何よりも結果と報酬を重んじる賞金稼ぎらしい言い方だった。
「俺は……元々は人々の安全を守る為に戦うレプリ……ロボットだったんだ」
「あ?警察とかその辺の出だったのかお前。さては何かデカいことやらかしたクチか?」
「やらかし……か」
尊敬していた上官が反乱を引き起したのを鎮圧。
イレギュラーハンターとレプリフォースとの戦争。
衛星落下阻止の為の死闘。
治安自治組織との潰し合い。
……そして、軌道エレベーター管理人の処分。
やらかした、と言うよりはやらざるをを得なかったが正しいが。
「……俺がやらなきゃいけなかった事も多かった」
「難儀な性格だな……早死するぜ」
「肝に銘じておくよ」
「ふぁーあ……さて、俺はもう一眠りするかね……あちこち古くなってきてオイルの巡りが悪くて嫌になるぜ……」
そう言って、マックは踵を返した。
「早死する、か……」
そう遠くない未来。
エックスにも訪れるだろう死。
(自分が死ぬ時の事なんて考えた事がなかったな……)
今までは……ただひたすらに降りかかる火の粉を払い続けてきただけだった。
今だって自分で選んでる様に見えてより大きな事件に巻き込まれてなし崩し的に対応しているに過ぎない。
「俺の……生きる意味か」
最近、誰かと一緒に居る事が多くなり……こうして、一人で考え事をするのも随分と久しぶりだ。
「……うん?」
ポーチの中でスマホが着信アラームを鳴らす。
慌ててエックスはスマホを取り出して対応する。
マナーモードの存在をすっかり忘れていた。
……この時、相手の名前を確認するのを忘れていた。
「はいもしもし!?」
思わず声が裏返る。
……すると。
「『エックスさん……?』」
(うん……?)
エックスの聴覚に、ほぼ同じタイミングで同じ声が届く。
「や、やぁ……ノノミかい?どうしたんだ?」
「『……ここに居るんですか?』」
「え、いや……それは……」
「……あっ」
……頭上から、ノノミの声がする。
振り返って見上げると……2階のバルコニーから、ノノミが頭を出していた。
「あ、あはは……久しぶり」
「……はい。お久しぶりです……でも、どうしてここに……?」
「え……まぁ、仕事……かな」
さて、ノノミにどう言おうか。
彼女には危険を感じずに帰って貰いたかったのだが。
「……エックスさん。こっちに来て話しませんか?」
「あ、いや……俺は招待された訳じゃないから……そっちには行けないよ」
2階のバルコニーも会場の一部だから、他の招待客立っている。
わざわざ心象を悪くしたり雇い主の顔に泥を塗る必要も無いだろう。
「……どうしてもですか?」
「あ、ああ……」
逆光で表情が見えないが……何となく不機嫌にさせてしまった気がする。
「じゃあ、私がそちらに行きますね!」
「は……?えっ……!?」
「えい!」
次の瞬間、ノノミはバルコニーの手すりを乗り越え飛び降りた。
「ちょ、ちょっと……!何やって……!」
「ふふ、ナイスキャッチ、です」
エックスはダッシュで落下地点へかっ飛びノノミを受け止めた。
「こんな事をしたら、危ないだろう!?」
エックスは思わず叱った。
キヴォトスの人々が肉体的にかなり頑丈であることを忘れて……少女がやってしまった事に、怒った。
「あ……ごめんなさい……その、エックスさんに会えて……嬉しくて」
「全く……それに、せっかくめかしこんで居るんだから、汚れたりしたら勿体ないだろ?」
パーティーの参加ということで、ノノミも多少化粧している。
とは言え元から顔立ちが整っているのでそれほど厚くされてはいないようだが。
「え……そ、そうですね」
ノノミを降ろして、向かい合う。
実はノノミとエックスの身長はそれほど変わらない。
目線の高さはほぼ同じである。
「……えっと」
「?」
「あ、あはは……話したいこと、いっぱいあったんですけど……エックスさんの顔を見たら、飛んじゃいました」
「そうなんだ?」
月明かりで、ノノミの顔が照らされた。
なんだか、いつもより赤い気がする。
そして、月の光に反射して輝いている様に見えた。
「……月の光が、綺麗だな」
「……えっ?!」
エックスは空を見上げた。
ここは、郊外よりの立地のため星がよく見える。
「そ、そうですね……!」
ノノミが慌てて空を見上げた。
「「………………」」
二人は、無言で月を眺める。
「……綺麗、ですね」
「ああ……」
「……貴方と一緒に見る月だから、ですね」
「……そうなのか?俺が居ても居なくても変わりはしないさ」
「………………いけず」
「え?」
「何でもないです……!」
「そ、そう言えばどうしてノノミはここに?」
ノノミの機嫌が一気に悪くなったので、慌ててエックスは話題を変えた。
「……私の実家は……まぁ、それなりに太い所なんですけど……所謂付き合い、ですね」
「ああ……」
「正直に言うと来たくは有りませんでした。こんな所に女の子一人で来たら……想像つきますか?」
「……いや」
エックスは社交会、パーティの経験など無かった。
「聞きたくもない話、上辺だけのお世辞そんな応酬。とても……とても、疲れちゃいます」
「そう、か……」
立ち話も流石に負担になるだろうから、庭の一角にあるベンチにノノミを座らせた。
「隣、座ってくれないんですか?」
「……俺が座ったら、壊れるかも知れない」
「そうですか……」
「まぁ、その……ノノミとしては、ここにいる事は本気じゃないって事なんだな」
「そうですね……」
「……大変だな」
「はい。とっても……だから……ちょっとくらい甘やかしてくれると嬉しいです」
「はぁ……ノノミ、君は前から思っていたけど無防備が過ぎるぞ。年頃の女の子がそういうのはいただけないな」
「えっ……この流れでお説教されるんですか……!?」
「……確かに、ここで言う必要は無かったか」
「もう……せっかくの誕生日だったのに」
「……えっ、誕生日?」
「はい!」
「そうだったのか……おめでとう、ノノミ」
「ありがとうございます」
「参ったな、何も用意してないけど」
誕生日だと知っていたのなら何かしらプレゼントを見繕ったのだが。
「……なら、お願い聞いてもらえます?」
「……内容による……かな」
「私に雇われて、連れ出してくれません?」
「それは……」
「あっ、ならラウンズ提示の2倍でどうです?」
「あのな……」
アォォォォォォォン………………!
「……え?」
月夜に、狼の遠吠えが響いた。
「狼……?」
最悪4ボスで終わる覚悟の準備をしておいてくださいね作者(
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