「くそっ……面倒なことになったな……」
エックスはイブキを背負って走っていた。
何とかスカーレットアラートを撒くことは出来たが……依然としてイブキを送ることは出来なくなっている。
「おにーさん、大丈夫?」
「あ、ああ……大丈夫」
「ほんとに?」
「……ああ」
こんな小さな子に心配を掛けてしまった事をエックスは恥じた。
(……俺がしっかりしないと)
「おにーさん?」
「絶対、俺が君の仲直りを手伝うから」
「……うん!」
しかし、どう動いたものか。
追手は来ていないが慎重に動かなくてはならない。
ふと、視線を上げると……見覚えのあるロゴが目についた。
「あ……!」
――――――――――
「総員、エックス臨時顧問に敬礼ッ!」
しばらくして、エックスはカイザーPMCのゲヘナ駐屯地に案内された。
「会えて光栄です、ミスター」
「こちらこそ」
司令と思われるロボットと握手する。
傍らに居たイブキは、呆気にとられていた。
「おにーさん……えらいひと?」
「たまたま伝手があっただけさ。それで……状況を説明してもらえるか?」
「はい」
司令が指を鳴らすと、会議室の照明が落とされ、モニターに光が灯る。
「発端は2週間前、我々カイザーPMCは攻撃を受けました」
「……スカーレットアラート」
「ご存知の様ですね。続けます。スカーレットアラートは元々は自警団……民間の自衛組織でした。ゲヘナのごろつきや不良生徒からの自衛目的で人が集まり、勢力として存在できるまでに成長しています」
スライドが切り替わり、先程見た……スカーレットの顔が映し出される。
「首領、スカーレットの指揮のもと最初は護衛等の……おとなしい活動をしていたのですが……2週間前の襲撃から組織が変わったかの様に苛烈な活動を開始しました」
スライドがまた変わる。
破壊されたトラック、略奪される店舗。
「破壊活動に略奪まで行い始め……ただのごろつき集団と落ちぶれました。そこから我々カイザーとも小競り合いが頻発するようになりました」
「なるほど……」
「今回……ミスターエックス、貴方が来てくれたお陰で災いの芽は摘み取れそうです」
「ああ……どうも、俺も敵視されている様だからな」
「ただ……懸念点がひとつ」
スライドが切り替わり……大きな黒いシルエットが映し出された。
「これは?」
「奴らが『センセイ』と呼ぶ者です。この者の指揮でごろつきがそれなりに統率を持つようになり……ゲヘナの風紀委員会も手を焼いています」
「協力者がいるのか……」
「ええ。それに目撃情報もありません」
「厄介だな……」
「なんだか……大きな亀さんみたい!」
「亀……?」
イブキが黒いシルエットを指さして言う。
……たしかに、これは大きな甲羅にも見えなくもないが……。
亀といえばイナミテンプルで戦ったレイニー·タートロイドを思い出す。
心優しいレプリロイドであったが……ゲイトの手により戦わざるを得なかった苦い思い出に、思わずエックスは顔を顰めた。
「おにーさん?」
「……ごめん、大丈夫だ」
「所でミスターエックス……そちらの」
「イブキだよ!」
「ミスイブキを何故連れ歩いているのです?」
「ああ……ちょっとした事情があってね。彼女を家まで送る途中だったんだ」
「ほう……ミスイブキ。君の家とはどのあたりです?」
司令がプロジェクターでゲヘナ自治区の地図を表示した。
イブキは少し考えた後……。
「あっ!ここ!」
「……む?」
イブキが指さした場所は……広い土地の様であるが。
「ゲヘナ学園……」
「うん!イブキね、パンデモニウム·ソサエティーなの!」
「なんと……!?」
「?」
イブキの発言に司令は驚くが……エックスはいまいちピンとこなかった。
「ご存知無いのですか……?」
「あ、ああ……キヴォトスに来てから日が浅くてな」
「彼女……ミスイブキは……ゲヘナ学園を統治する生徒会……通称『万魔殿』のメンバーです」
「……は?………………えぇっ!?」
亀型のレプリロイド……はて、誰だろうか。