1ページあたりの文字数を増やそうとしたらものすごい時間がかかってしまいました。
ヒナの案内で校舎に入る。
その姿に、近くに居た生徒たちは揃って二度見する。
方や黒を基調とした風紀委員。
方や白を基調としたロボット。
なんとも異質な組み合わせだった。
「この先に万魔殿の執務室があるわ。私はここまで」
「そうなのか……ありがとう、ヒナ」
エックスがお礼を言うと……ヒナは目を丸くした。
「どうしたんだい?」
「いえ……お礼なんて、久しぶりで……」
「そ、そうなのか……」
「……それじゃ。頑張って」
「え?」
ヒナが帰っていく。
それと同時に……見覚えのある赤い髪の少女がやってきた。
「やっぱり、来ましたね」
口角が上がっている。
まるでこうなることが分かっていたかのようだ。
「……先ほどまでと恰好が違いますね。正装ということですか?」
「正装……?いや、単純にパワーアップパーツを取り付けただけだが……」
「そうなのですか?」
「……多分」
レプリロイドに正装の概念はないが……思えば、レプリフォースのカーネルはアーマーが煌びやかだったし、シグマもよくマントを着用していた。
(俺もマントくらい着るべきだろうか)
「エックスさん?」
「ああいや……何でもない。実は……」
「……それ以上は、私ではなくあの子に言ってください」
「……ああ」
エックスはイロハに促されて、執務室のドアを開いた。
執務室と言うからにはやはりというか、カイザーでもそうだったがかなり装飾に凝らなければならないのだろうか。
明らかに不要な観葉植物やインテリアが置かれている光景にはエックスは未だに慣れなかった。
イレギュラーハンターの指令室は装飾や遊びが一切無かったためである。
機能性が重視されていて、それで運用されていれば問題はなかった。
しかし……執務室は、無人だった。
「会長は……今は別件で不在です」
「……今回のスカーレットアラートの件は?」
「存じていないかと」
それで合点が行った。
トップが不在のせいでここまで問題が放置されていたのかと。
「なら……何故俺をここへ?」
イロハが無言で視線を向ける。
エックスも釣られてそちらを向くと……。
「すぅ……」
隅のほうで、静かに寝息を立てているイブキの姿があった。
「なるほど……」
「私には権限が無いですが……あの子のお願いなら無碍に出来ませんし……会長もイブキには甘いですから事後承諾もしてくれるでしょう」
「……良いのか?」
「あの子は貴方の事を気に入っています。そうでなければあそこまで感情を激しく露わにしたりしません。それに私もサボ……」
「……なんだって?」
「こほん。私も無茶ぶりで鎮圧の命令を出されかねないので……貴方が動いてくれると楽なのですよ」
「そう、か……」
イロハは眠っているイブキを優しく揺らす。
「ん……?」
「おはようございます、イブキ。お客さんですよ」
「いぶきに……だあれ?」
「では、あとはごゆっくり」
したり顔でイロハは執務室を後にした。
「こんにちは……あっ!おにーさ……」
眠気眼を擦っていたイブキの顔がぱっと笑顔になる。
「……何の用、ですか」
……が、その表情は一瞬で陰った。
「……イブキ、俺は」
エックスはイブキの前に立ち、片膝をついて視線を合わせる。
「いや……ごめん、イブキ」
「ふぇ……?」
「俺は、君の意志を無視して……君を遠ざける事が正解だと、そう決め付けてしまったんだ」
「おにーさん……?」
「情けないけど……俺一人じゃどうにもならないかも知れないんだ……イブキ。俺に……力を貸してくれないか?」
エックスは、イブキに手を差し出す。
「おにーさんは……とても、都合の良いことを言ってる」
「ああ。情けなくて泣きそうだよ」
「……ほんとうに、泣きそうだね」
「俺は、大事なことを忘れていたよ……俺が手を伸ばすのも大事だけど……俺の手を取ろうとしてくれた人の手を、払ってはいけないと」
イブキは、少し迷って……エックスの手を取る。
「イブキに任せて」
「頼む」
「イブキが……おにーさんを勝たせてあげる!」
「ああ……反撃開始だ!」
おー!とエックスとイブキが意気込むところへ……イロハがやってくる。
「話は纏まったみたいですね。それで?作戦は?」
「イロハ……?」
「イブキが動くのですから……私も動かざるを得ません」
「イロハ先輩……!お願いっ!」
「ええ、イブキのお願いですからね……無碍にはしませんよ」
「ありがとう、イロハ」
「ただ……これ以上の戦力は、万魔殿からは出せません」
「充分だ……まずはスカーレットアラートとヒートゲンブレムを引き剥がす。詳しい会議の前に……俺の仲間を紹介するよ。通信設備は使っても?」
「構いませんよ」
エックスは案内されたコンソールの前に立ち、手首からケーブルを伸ばして接続する。
そして、モニターにヒマリが映し出された。
……今まさに手にしていたチョコレートを口に放る瞬間だった。
「『あっ』」
エックスとヒマリが同時に声を上げて、エックスは慌ててケーブルを引き抜いた。
「「………………」」
無言の空間が痛い。
一拍置いてエックスはケーブルを繋ぎ直した。
『お初にお目にかかります。私はミレニアムサイエンススクールの明星ヒマリと申します。以後お見知りおきを』
ヒマリがいつも以上にバッチリとキメ顔で挨拶していた。
「イロハ先輩……イブキ、チョコ食べたい」
「後にしましょう、ね?」
「す、すまない……こちらが俺が世話になってるヒマリだ」
「ご噂はかねがね。私達はパンデモニウムソサエティの棗イロハ」
「イブキだよ〜!」
『ご紹介に預かりました。ミレニアム随一の天才美少女ハッカー、明星ヒマリと申します』
『この人の言う事は話半分位で聞いたほうが効率が良いよ。和泉元エイミ。よろしく』
「……中々愉快な性格の方々ですね」
イロハがぼそりとそんな事を呟いた。
「そして……」
『こんにちは!ディープログの管理人のリコです!』
『同じくヴィアだ。俺達はエックスの専属オペレーターみたいなもんだから、今回の会議に同席させてもらうぜ』
いつもの二人も、モニターに表示された。
「……思っていたより大世帯ですね」
「気が付いたらこんな事になってただけさ」
「それだけ人望があるって事ですね」
「そうだろうか……」
気がつけはかなりの人数による作戦会議がスタートした。
「まずスカーレットアラートの動きを止めなきゃならない」
スカーレットアラート全体の動きを一時的に停止に追い込まなければならない。
『そして……切り離されたレプリロイド……ヒートゲンブレムを撃破する、と』
「ヤツの存在がバイルとスカーレットアラートのパイプである事は明白……と」
『洗脳されているのか、それとも自発的に協力しているのか定かではありませんが……』
『さてな……俺達の知る奴はシグマの奴に利用されてはいたが……』
「スカーレットアラートが豹変したのは……ここ最近の話なんだな?」
エックスが改めてイロハに尋ねる。
「ええ。お陰でここ数日の騒ぎの信憑性が疑わしく……万魔殿も風紀委員会も動く事は出来ませんでした」
『なにはともあれ、まずはそのレプリロイドを倒すべきじゃないかな』
「そうだな……」
エイミの意見は尤もだ。
だが……。
「どうやってスカーレットアラートを止める……?」
『万魔殿か風紀委員会で何とか出来ませんか?』
「とは言ってもですね……」
『罪状が用意できないんじゃない?』
「集めた証拠と一時的に留置している末端を駆使すれば恐らく立ち入りは出来るのではないでしょうか。風紀委員会の手を借りれば動きを止める程度は出来ます」
「分かった、それで行こう」
エックスの中で思考がヒートゲンブレムの対策へシフトする。
「……俺がゲンブレムを片付けないと始まらない」
『弱点は雷属性、背中の甲殻はあらゆる攻撃を弾く』
「雷属性か……」
『そういえばエックス、今はブレードアーマーなんだろう?なら特殊武器で何とかならないか』
「そうだな……有効そうな奴をピックアップしておく」
『あら、また姿が変わってますね』
「ヒマリ達にはまだ話してなかったな。これは剣の併用の為に調整されてるんだ」
『剣……ですか?エックスさんはバスターを主兵装としていましたけど』
ヴン……とエックスはバスターを変形させてゼットセイバーを展開する。
『そんな事も出来たのですね……』
「これは……親友から預かった武器だ」
『親友……元の世界の、ですか』
「ああ」
『よし、エックス。ゲンブレムの対策を練るぞ』
「ああ……ん?リコはどこへ?」
そう言えば先程から会話に参加していない。
何処へ行ったのだろうか。
『ああ……それは』
ヴィアは苦笑しながら答えた。
『始末書の処理さ』
「またか!?」
序盤に毎回倒されるゲンブレムが強キャラ扱いになってるのは自分でも驚いてます。