「これが今回の些末だ」
「ほう」
エックスは例に漏れず、カイザーPMC理事長の下へ来ていた。
雇い主への報告義務である。
「ゲヘナでも派手に暴れて来たようだな」
「望んでやった事じゃない」
「最早そう言う運命の下に生まれたと言っても過言では無さそうだがな……」
「………………」
「フン、心当たりが多そうだな」
「どうだか」
エックスは過去の騒動を思い出していた。
イレギュラーハンターになってからの戦いの日々。
決して平穏に訪れなかった世界。
傷付いた仲間たち。
「まぁでも……それなりに平和には過ごさせて貰っているよ」
キヴォトスでも戦いは続いている。
だが、ここで得た安寧も少なくはない。
「そうか。そうだ、お前宛に貯まった依頼だ。確認しておけ」
「……俺宛に?」
「お前に頼めば荒事は大体解決できると企業は理解したらしい。セントネフティス以外からも殺到している」
「参ったな……自由に動けなくなるのは困るが」
「有名税だな。受ける受けないは好きにしろ」
「そうさせてもらう」
理事長から投げ渡されたUSBをポーチにしまう。
何だかんだこのウェストポーチもそろそろボロボロになってきてしまった。
そろそろ買い替えが必要だろうか。
頑丈でそれなりに物が入る代物を見繕わなくては。
「お前への報酬も再査定しておこう」
「分かった」
「次は何処へ行くつもりだ?」
「……百鬼夜行か、そうだな……」
先日のブリーフィングで見たポイントを思い出す。
「氷海だ」
――――――――――
「氷海?」
エックスは告げられた言葉を返した。
「ええ……例の、オメガの反応が観測されたのです」
「そうなのか……で、今度はどこの学園の敷地なんだ?」
「あの場所は何処の学園の領土でもないのです。なので今回は大手を振って普通に行きましょう」
スクリーンに映し出されたのは、一面の銀世界。
エックスの世界にも氷原はあったが、やはり人やレプリロイドの手が入った機械的なものだった。
「今回は私たちも現地でサポートする事になります」
「へぇ……それでエイミも色々用意しているんだな」
「はい。水着も買うとか言っていましたね」
「水着……?氷海で泳ぐつもりなのか??」
あまりにも当然の疑問が口から出てしまったが、ヒマリは特に気にしていなかった様だ。
この疑問は、あまり深掘りしない方が良いのかも知れない。
「出発まで少し日にちが空くので、それまでに色々準備をしておいてください。私も今開発しているAIを少しでも形にしますので」
「AI?」
「はい……今回、私も戦闘指揮として参加しましたが……いつもと勝手が違いまして。なかなか手が届かない局面がありました。それを埋めるための補助AIを用意しようかと」
「そうか……無理しないようにな」
「それは勿論」
しかし、AIか。
レプリロイドの頭脳と似た部分はあるが、ここキヴォトスでもそういったものを生み出す技術というのは確立されているのだなと改めて実感するのだった。
エックスは忙しそうに作業するヒマリをそっと見守り、部室を後にした。
――――――――――
「うん?」
ふと、スマホが震えた気がした。
ポーチから出すと、特に何も通知は無かった。
スマホが普及した現代、スマホが鳴った、振動した気がする、そんな現象も問題になっているらしい。
「俺にもそんな事感じる機能があるのか……」
『何故独り言を?』
「え?ああ……口に出ていたか。すまな……ん?」
エックスは辺りを見渡す。
……誰も居ない。
「……幻聴か?」
『ロボットの貴方にそんなもの聞こえない筈ですが』
「また聞こえた……」
本当に誰も居ない。
リコ達からの通信も届いていない。
「誰だ!」
『ここですよ、ここ』
「一体何処……」
『貴方の、ポーチの中の端末です』
「え……」
慌ててスマホを取り出す。
すると……。
『やっと見付けてくれましたね』
「……は?」
画面の中に、誰か居た。
褐色の肌に、黒いタイツの様なもので上半身を覆い、下半身は……サルエルパンツと呼ばれるスタイルのエキゾチックな見た目をしている。
背後に羽衣のようなものが2枚浮いている。
そして、エックスと似たようなオレンジ色のヘルメットを被っている。
見た目はレプリロイドの様だが……。
『こんにちは、
「……ロックマン?」
『?私の事を覚えていないのですか?』
「いや……君とは初対面だと思うが……」
『おかしいですね……?』
「俺もそうは思うが……君は?」
『私ですか?』
彼女……いや、彼か?
中性的な見た目をしているレプリロイドはしばらく思案し、口を開いた。
『セレナード。そうお呼びください』
エックスのスマホに、ネットナビがインストールされました。