なので今回は総決算じゃないです。
「あっ!」
遠くからでも溌剌とした動きは目立って見えた。
「おにーさーん!」
声の主……イブキは、エックスの姿を見ると一目散に駆け寄ってきた。
「やあイブキ、久しぶり」
「久しぶり!今日はどうしたの?」
「面会……かな」
エックスは……今日、収監されたスカーレットの面会に来ていた。
「そうなの?」
「ああ。イロハは?」
「ここに居ますよ」
イブキから視線を外すと、すぐ近くにイロハが来ていた。
「案内します。着いてきてください」
「分かった」
イロハに案内され……暫くして。
「……来たか」
面会室の透明な壁の向こうに、スカーレットは座っていた。
表情は憑き物が落ちたかのように穏やかだった。
「では、ごゆっくり」
そう言い残し、イロハは部屋を出る。
「……久しぶりだな、イレギュラーハンター」
「ああ。随分と……落ち着いたな」
「まぁな……あの時の俺は洗脳状態にあった」
「単刀直入に聞きたい。Dr.バイルとはどこで?」
今回エックスがスカーレットに面会に来た目的。
Dr.バイルの潜伏場所を割り出すためだ。
「ゲヘナの辺境だ。俺達はその時ちょうどブラックストーンとやりあってた」
ブラックストーンというのはキヴォトスの小さなセキュリティ会社だったと言うのを記憶していた。
「ヘマを打ってな。部下を逃がして俺は負傷して動けなかった……そこへ、あのクソジジイと亀が来た」
「なるほど……」
「そっからはあのザマだ……暫くは塀の中だろう」
「情状酌量の余地はあるんだろ?」
「まぁな……洗脳と……更生の態度次第だ」
「ゲヘナのスラムはまだお前を必要としてる。そのうちでられるさ」
「ハッ……世話になったな、イレギュラーハンター。何かあったら、俺達はお前の力になる」
「ありがとう。その時が来たら頼らせてもらうよ」
――――――――――
『結局、手掛かりは無しか……』
「ああ」
ヴィアと回線を開いて現状を報告する。
何だか報告相手が増えてきていることに苦笑してしまう。
『どの道、出てきたら叩くだけとは言え状況は後手後手。そのうち取り返しのつかない事になりかねんな』
「ああ……全くだ」
そういえば、ヴィアに行こうと思っていたことがあったのを思い出す。
「なあヴィア」
『なんだ?』
「『ロックマン』、って?」
『え?あ……?どこでそれを?』
どこでそれを、か。
間違いなくヴィアは知っている。
この言葉の意味を。
「知っているんだな?」
『……悪い。忘れてくれ』
「そうは行くか。正体不明のAIが俺のスマホに居着いててそいつが俺をそう呼んだんだぞ」
『……は?待て待てどう言うことだ』
『こういうことです』
セレナードが通信回線に割り込んだ。
エックスとヴィアを繋ぐ通信はキヴォトス由来のものではない。
つまり、そこに割り込めるセレナードはキヴォトス由来のAIでは無いということだ。
『のわっ……!?ネットナビ!?』
『貴方は話が分かるようですね』
『そういうことか……エックスのスマホに居着いたってどうして……』
『変わった電脳世界を彷徨っていた所、知っている顔に出会ったもので』
「知っている……?セレナード、君は俺を知っているのか?」
『あー……その辺ちょっと混乱するだろうな……説明するぜ』
曰く、セレナードはエックス達の世界とは別のベクトルに発展した世界で普及しているレプリロイドの代替となる存在らしい。
「じゃあ、セレナードの居る世界にはレプリロイドは存在しないのか」
『そうなります』
「それで……ロックマンというのは?」
『エックスに姿が少し似ているネットナビだ。オペレーターの少年と共に何度も世界を救った英雄さ』
「俺と、姿が似ている……」
セレナードに画像を表示してもらうと……確かに、ヘルメットや腕がバスターに変形する機構は似ている。
しかし……。
「ロックマン……か」
『いやに拘るな』
「ひっかかるんだ、このフレーズに」
『それも、そうか……』
ロックマン。
この言葉はエックスの中に深く刻まれている。
『それで?貴方のことは何と呼べば?』
セレナードがそう問うてきた。
「俺の名前はエックスだ」
『なるほど、それではエックスと』
「それで……セレナードはどうするつもりだ?」
『どう、とは?』
「俺は元の世界への帰還を目指して活動している。君に帰るべき場所はあるのか?」
『帰るべき……場所……そうですね』
セレナードが目を閉じる。
『あります』
『……そうか』
ヴィアが意味ありげにセレナードの返答を咀嚼する。
「なら、俺達は同じ目的を持つ仲間ってことか」
『他に行く宛もありませんしね。暫く厄介になります』
「ああ、よろしく」
こうして、奇妙な仲間が増えたのだった。
セレナード、仲間にしたものの活躍の機会は作れるだろうか……。