百鬼夜行連合学院。
かつては内紛が絶えない土地であったらしいが、今は独自のルールを定めた部活や委員会が連合を組むことで成り立っているらしい。
エックスの視界に入る、桃色の花を咲かせる樹木……これはエックスの世界ではかなり珍しいものだった。
「確か、サクラ……と言うやつだったか」
そんな独り言を呟きながら、エックスは百鬼夜行連合学院の土地に踏み入る。
……が。
「……何の騒ぎだ」
遠くから聞こえる喧騒は、決してのどかな営みの音ではない。
キヴォトスでいつも耳にする銃撃戦の音でもない。
火の手が上がる家屋。
響く金属の足音。
バスターが放たれる音。
エックスが聞き馴染んでいる音ばかり。
「ヒマリ!聞こえるか!」
『……確認しました。何者かが戦闘中の可能性があります』
『エックス!こっちでも確認したぜ!こりゃ……お前と同じような奴がここにいるかも知れん!』
ヒマリとヴィアと連絡が取れることを確認した。
『今から陰陽部に確認を取っていては間違いなく後手に回るでしょう。どうしますか?エックス』
エックスの肩に、ホログラムで投影された小さなセレナードが現れ、そう問いかけてきた。
「現場判断により、戦闘に介入する!」
分かりきっていたのか、セレナードは微笑むと消えた。
『ハッ!流石イレギュラーハンター!了解だ!』
『エックスさんがやるのです!私たちもお手伝いしますよ!』
『ちょ……!エックスさん!また捕まりますよ!』
ヒマリの悲鳴のような忠告を聞き流して、エックスは走り出した。
資料でしか見たことのない古い作りの家屋を抜け、逃げ惑う人波に抗う。
比較的無事で頑丈そうな建物の屋根に飛び乗る。
着地の瞬間、屋根に使われていた……瓦?と言うものを少々砕く。
「おっ……と」
『気を付けてください。この様式の建物では貴方の体重を支えられないかもしれません』
「とは言え……地上は大混乱している」
『……!エックス、あれを』
セレナードが何かを見付けた。
エックスも釣られて視線を向ける。
そこには、大きな爪を装備したバリアントが市民を襲っていた。
「させるか!Xバスター!」
腕を振るうバリアントにフルチャージバスターを打ち込み、上半身を吹っ飛ばす。
「ダークホールド!」
特殊武器を選択。
周囲に居たバリアント達と……逃げ惑う市民、揺らめく炎ですら全てが停止した。
かつて相対した、時間停止能力を持つコウモリ型レプリロイドから入手した力。
これにより、乱戦の中速やかにターゲットだけを排除することが出来る。
「ゼットセイバー!」
すぐさまいつものアーマーからブレードアーマーへチェンジする。
抜き放った光の刃が、停止したバリアント達を切り捨てた。
「ふぅ……ここは大丈夫かな」
ダークホールドを解除し、元の姿に戻った後……尻餅をついてこちらを見ていた市民に声を掛ける。
「大丈夫か?」
「ひっ……!」
「俺は……」
「ば、化け物!殺るなら、殺れよ……!」
「お、落ち着いてくれ……!何があったんだ……?」
「と、惚けんじゃねぇ!お前らがめちゃくちゃにしたんだろ……!」
話が噛み合わない。
この人物は明らかにエックスに対して恐怖を感じている。
彼を救うための行動を起こしているが、それすら勘定されていないかのよう。
『話になりません。エックス、そこの監視カメラに私をプラグインしてください』
「え?」
『早く!』
「わ、分かった……!プラグイン!セレナード.EXE!トランスミッション!」
電脳世界へセレナードを送る。
彼が何か情報を入手出来ていれば良いのだが……。
『エックス。この辺り一帯の監視カメラのデータを1時間引っこ抜いてきました』
「え、ちょっ……それは……」
『非常事態です』
「いやまぁ……そうだけど」
『こちらでもデータを受け取りました。精査しますので3分ください』
「わ、分かった……」
改めて自分の手元に居るこのネットナビと言う存在は凄まじい力を持っているのだと痛感した。
あらゆるネットワークに侵入し電子的な作業全てを行うことが出来る。
軍用に使われていそうな存在が一般家庭に浸透しているのだから驚きである。
『えっ……?!』
ヒマリから驚愕の声が漏れる。
少しして、エックスのスマホに動画が送られてきた。
「これは……!?」
そこに映っていたのは。
『さぁ、悔い改めよ!』
青いヘルメットを被るレプリロイド。
その姿は間違い無い。
「俺……!?」