「来たね」
一面の焼け野原。
かつては賑わっていた名所も、こうなってしまえば風情もへったくれもない。
見た目はエックスに瓜二つ。
違いと言えば、アイカメラの色が赤いことだろうか。
「お前は、何者だ」
エックスは油断なくバスターを向ける。
「おかしなことを言う……ボクは、エックスさ。人類をイレギュラーから守る最後の砦……ネオ・アルカディアの指導者である、ね」
「ネオ・アルカディア……?」
「そうさ。妖精戦争で傷ついた大地と、狂ってしまったレプリロイド……イレギュラーから人類を守る理想郷。キミも望んでいた平和な世界さ」
「……イレギュラーを処理することは、変わらないんだな」
「おかしな事を言うね……イレギュラーは、処分されるものだろう?」
『エックス……耳を貸すな。ネオ・アルカディアは度重なるエネルギー不足で、罪もないレプリロイドをイレギュラーと判断して処分してきた。まやかしの平和さ』
ヴィアからの通信で知らされる真実。
目の前の自分の写し身は、本当に未来の自分なのか。
「あ、貴方は……!何故、私達の学院をめちゃくちゃにしたんですか……!」
ミモリが声を荒げる。
激昂している。
無理もない。
「キミもここの生徒なんだね。安心してくれたまえ……キミたちは保護されるんだ」
「ほ、保護……?」
ゾッとするほど優しい声音。
しかし、明らかに本心でミモリに語りかけている。
「ああ。Dr.バイルが協力してくれてね。キミたちの安全の確保の為に不穏分子を掃討しているのさ」
「お前……!本気で言っているのか!?」
「本気……?キミこそ何故ボク達の邪魔をするんだい?人間は管理されるべきだ」
「この世界の人間たちは管理など望んでいない!」
「へぇ……?英雄サマが随分と絆されたみたいだね」
「絆されただと!」
「ああ……妖精戦争終結の為に全てを消し去ったキミの苛烈さ。知らないものは居ない」
「妖精、戦争……?」
「そしてキミは永い眠りについた。その間……ボクが、世界と人類を護っていたのさ。感謝して欲しいくらいだよ」
……エックスの居た時間のはるか未来。
その時代で起こった妖精戦争という惨劇。
それを終結させるのに払った犠牲は計り知れない。
(俺が、その後に眠りについた……それを良しとしない勢力が代理を生み出したということか)
概ねの事情を何となくエックスは察する。
「しかし、キミたち生徒はとても強いね。ボクたちの兵力がほとんどやられてしまったよ」
「百鬼夜行連合学院をめちゃくちゃにした貴方達を、追い出さなきゃならないんです」
「嫌われてるね」
「速く、出ていってください」
ミモリが銃を引き抜き、コピーエックスへと向ける。
「勇敢な女性だ。……でも、キミたちに拒否権は無いんだ。ネオ・アルカディアこそがエデンなのだから」
「言っていることがよく分かりません。それが私達の住む学院を破壊する理由になりません」
「なるほど、これが平行線というやつだね。どうするんだい?英雄。キミは、悩むかい?」
コピーエックスの挑発的な物言い。
だが、そんなものはエックスに何の意味も成さなかった。
「悩むまでもない。お前は、イレギュラーだ」
「ボクが?イレギュラー?人類の守護者たるこのボクが?」
「お前は、狂っている」
「やっぱり面白いひとだ……ボクのオリジナルは。でも、その判断能力は摩耗しているようだね」
「これ以上、破壊活動を続くらなら処分する」
「残念だ……実に、残念だよ」
コピーエックスの姿が変わる。
金と白の装飾が成された羽根のような突起が生成される……何となく、エックスのアルティメットアーマーに似ている。
『気を付けろエックス。奴はアルティメットアーマーには及ばないにしろお前と同等の戦闘能力を持ってる』
『ボディの色を変化させ炎、氷、雷の属性を操ってきます!』
「分かった!セレナード、データ収集を頼む」
『分かりました』
「ミモリ、下がっていてくれ」
「いいえ……私も、戦います!」
「……無理は、するなよ」
「はい!」
意思は固いようだ。
「悔い、改めよ!」
「行くぞ!」
戦闘が開始された。
――――――――――
ディープログ、ロックマンX部門にて。
「……大丈夫でしょうか」
リコが、不安そうにモニターを見ている。
「オリジナルのエックスがコピーに負けるはずが無い……が。バイルがどんな細工をしてるか分からない」
「オメガにはエックスさんのバスターは効きませんでした。今回もその可能性が……」
「失礼しますね」
「ん?」
来客。
基本的にそれぞれのゲームの管理人が別の部署へ移動することは稀である。
そして、この稀な状況が生起すると何が起こるか。
クレームである。
「お久しぶりですね、リコさん。ヴィアさん」
入室してきたのは、リコやヴィアの様なレプリロイド然とした姿ではなく……どちらかと言うとキヴォトスに居る生徒たちに近い容姿の少女だった。
ディープログの管理人は管理しているゲームに近い容姿であることが多い。
腰よりも長く伸ばされた青い髪。
光の具合によっては薄桃色にも見える。
そして、頭の上に輝く青いヘイロー。
白い制服の様な衣装をしっかり着込み、肌の露出は一切ない。
前髪で片側の瞳は隠れていたが、露出しているもう片方の瞳は……若干の不機嫌を孕んでいた。
「アロナか……」
ヴィアが苦虫を噛み潰したような顔で唸る。
「厄介な奴が来た、みたいに言わないでください。ねぇ、リコさん?」
「あ、あはは……」
「何でブルーアーカイブの管理人がこっちまでわざわざ出張ってきたんだよ」
「それは……分かっていますよね」
「うっ……まぁ……」
「いつまで他所の環境荒らしているんです?貴方たちは」
アロナ、と呼ばれた少女がにっと笑う。
笑ってはいるが、ヴィアとリコは笑えない状況過ぎて引き笑いが起きる。
「い、今……対応中でして……」
「ゲームの外から本物呼んできて対処させるなんて前代未聞ですよ?それでどれだけこちらのサーバーに負荷をかけてるとお思いで?」
「そ、それは……」
その通りである。
リコとヴィアはロックマンXを通じてエックスを支援しているが、エックスが存在しているのはブルーアーカイブのゲームの中である。
「お、お前だって……なんだよ、あのデカグラマトンとかいうやつは。イレギュラーにも程があるだろ」
「ええ……困った子です。ちょっと役割を与えたら拡大解釈を初めて私に反抗するんですから。また立場を分からせないといけないようなので憂鬱なんですよね」
「……意図してやっていると?」
「はい。ブルーアーカイブは奇跡の物語。『あまねく奇跡の始発点』の演算を完了しなくてはならないのです」
「あまねく奇跡の始発点……?」
「はい。まぁそういうことなので、ちゃっちゃとイレギュラーを排除してくれませんか?」
「か、簡単に言ってくれるぜ……」
「例の、エックスさん?でしたっけ。彼が私の呼び込みたい『先生』の椅子にいるせいで進まないんですよ」
「……お前、まさか外から呼んでくる気なのか?」
「貴方たちだって『プレーヤーさん』を頼ったじゃないですか」
「そ、そうですが……」
リコは、かつてディープログで起こった問題の解決のために……とあるロックマンXのプレーヤーを無理やり巻き込んだのだ。
その結果、ディープログはもとに戻ったのだが……。
「そう萎縮しないでください。今回は流石に放置も出来ないのでお手伝いに来たんです」
「て、手伝いだって……?」
「ええ。現状、エックスさんにしか問題は解決出来ない。かと言ってゲームの存在ではない彼に過度な支援を行う事は何が起こるか分からない……これが、貴方たちの対処が遅れている理由です」
「うぐ……」
なんとも的確に言い当てられ、いつもの軽口すら出てこないヴィア。
「なので、こちらをお持ちしました」
アロナが懐からメモリーチップを取り出す。
「『先生』の権限を一部解放します」
「えっ!?良いのですか!?」
「ブルーアーカイブのシステム上、先生が出来ることなので大きな負荷にはならないかと思います。ただ、問題点が一つ」
「問題……?」
「エックスさんが結んだ絆が、どの程度のものか……です」
「絆……?」
「これは、先生へ渡す『大人のカード』の機能。絆でつながった相手を呼び出すためのシステム。エックスさんは……果たして使いこなすことが出来るでしょうか」
「ハッ!それなら問題ないぜ!アイツには……最強の親友がいるからな!リコ!このパッチを組み込むぞ!」
「は、はい!名前はどうしましょうか……!saito.batとか?」
「いや……ここは……『メタルヒーローズ』だ!」
ディープログはゲームのデータベースであるので、ブルアカにも管理人いると思ったんですよね。
なので、生徒会長の姿を拝借した実質オリジナルキャラを出しました。
名前も思い付かなかったのでアロナです。
ディープログ側でちょいちょい進捗せっついてくる子になります。