「入れ」
カイザーコーポレーションの一室に、エックスは通された。
「……失礼する」
「良く来てくれた。PMCの理事長から話は聞いている。是非顔を合わせたいと思っていた」
「それは、光栄だな」
「掛けると良い」
プレジデントに促され、応接用のテーブルを挟んだ向かいのソファに座らせられる。
(……部屋に特段トラップは無し。部屋の外には武装した警備員が2名。武器はショットガンとサブマシンガン……接近戦で鎮圧するのがメインか。……ん?室内は通信が遮断されてるな)
エックスが室内を一瞥し状況を分析する。
それを指摘することもなく、プレジデントは話し出した。
「初めまして、かな。噂はよく耳にする」
「それは、どうも」
「君のもたらしてくれる例の……デカグラマトンの
「……預言者?」
「おや、そこまでは知らなかったのか……良いだろう。君が相対した者たちは全て、デカグラマトンと接触し洗脳……感化されたAI群だ」
「では……全て元々キヴォトスにいたものだと?」
「スランピアのあの人形、心当たりはあるだろう」
言われてみれば確かにそうだ。
「ビナー、ケテル。この2体が預言者と呼ばれる存在であるとされている」
「ケテル……ゲヘナで遭遇したあの多脚戦車か」
「今はビナーの捜索中なのだろう。吉報を期待している……そして、本題なのだが」
テーブルの上に、カードが1枚置かれる。
デザインは簡素だが、エックスの持つカイザーPMC理事長から受け取ったカードよりも上質なイメージを与える。
「エックス。私直属の部下にならないか?報酬はPMC理事長提示の5倍」
「何……?」
「カイザー系列のサービス……PMC、金融、コンビニ……全て好きな様に使ってもらって構わない。悪い話ではないと思うが?」
「ならない」
「……なんだと?」
エックスは、カードを受け取らず毅然とした態度でプレジデントを見つめる。
「悪いが、先約がある」
「先約……?」
「俺はカイザーPMCに所属する以前に、ミレニアム学園のヴェリタスに籍を置いている。彼女達を裏切ることは出来ない」
「ヴェリタス……あのハッカー集団か。所詮子どもの遊びの範疇だろう?お前ほどの男が肩入れするほどではない」
「大人が、子どもの背伸びを助けて何が悪い」
「利益にならん」
「ああ。だが大人は子供たちを導く義務がある」
「くだらんな」
「そんな物言いの奴の下に付く気はない」
「フン……まぁ良い。今日のところは見逃してやろう」
「次が来る前に、帰れる事を祈るさ」
「分からん男だ。何なんだ貴様は」
「俺は、誇りあるイレギュラーハンターだ」
――――――――――
「……と言うことがあったんだが」
『お、お前……プレジデントの提案を……蹴ったのか……』
面談内容を理事長に伝えると、絶句していた。
「暫くはお前の部下だ」
『こんな言うことを聞かないやりたい放題する部下はさっさと転属して欲しいものだ……』
「お前の下の方が自由だからな」
『ぐ、ぬぅ……』
うめき声しか聞こえなくなったので、電話は切った。
(預言者、か……)
ヒマリにも伝えておこう。
……なお、プレジデントの面談の件でヒマリからも小言を貰うのだった。