アビドス、対策委員会部室。
「ぐ……うぅ……」
一時的に避難させられたエックスは、部室に通されてすぐ倒れ込んだ。
「エックスさん……!?」
すぐさまノノミが助け起こし、壁に背を預けさせた。
「大丈夫ですか……?」
「ハァ……ハァ……ホシノ、だっけ……?君の蹴りは……俺の親友よりも強力かも知れない……」
「言ってる場合ですか……!」
アヤネが診たと言っても、完全に専門外である。
せいぜい動いてるさなかにパーツがすっぽ抜けないかどうかレベルの手当てである。
「それで、コイツがエックス?」
セリカ、と呼ばれた少女が口を開く。
「ああ……ヴェリタスに所属ってことに……なってる」
「……え?カイザーじゃないの?」
「最初は……ミレニアムに拾われてな……」
エックスは、腰のポーチからミレニアムの身分証を出して見せた。
「ミレニアムサイエンススクール、ヴェリタス……臨時勤務員エックス……」
「じゃ、じゃあなんでカイザーなんかに……!」
「成り行き……かな……お互いの利害の一致で手を貸しているだけさ」
「利害の一致って……」
「……あの、砂漠の大蛇だね」
今まで黙っていたホシノが、会話に参加してきた。
エックスは、浅く頷く。
「そのとおりだ……ヤツの情報を集めるために、俺はカイザーに潜り込んだ……結果は……また来ることになった……かな」
「そうだったんですね……」
ノノミが、タオルでエックスの顔を拭いていた。
やらなくて良い、とエックスが手のひらをノノミに向けて止めたが指を絡められてしまいなすがままにされている。
「その、さ」
そして、ホシノが意を決して喋ろうとして……。
「無理に、言わなくて良い。キミは間違っていない」
「……え?」
「俺はカイザーコーポレーションに籍を置いたままここに来た。こうなる事は覚悟していた」
「でも……」
「君たちがこの場所を守るために必死なことも、カイザーコーポレーションの金融に借金をしているのも知っている……」
「わたしが危害を加えなかったら……負けなかったんじゃないの?」
「いや、俺はまだ負けてない」
エックスは立ち上がり、ホシノの目をじっと見つめる。
「まだ俺は動いている。立ち止まらない限り、俺は……俺たちイレギュラーハンターは負けてないんだ」
「………………ごめんなさい」
「………………過ぎたことさ。それでも気が済まないなら、一つ頼み事がある」
「頼み……?」
「酷なことを頼むが……俺を、カイザーのアビドス駐屯地へ連れて行ってくれないか」
「そ、そんな事……!」
「セリカちゃん」
ホシノが、セリカを止める。
「分かっ……」
「皆、大変……!」
突如、白髪の少女が部室に慌ただしく戻って来る。
「シロコちゃん……?どうしました?」
「外、見て!」
「外ぉ……?え、ええっ……!?」
エックスも釣られて外を見て……絶句した。
大きな音が鳴る。
「ヘリに……凄い人だかりだ……え?カイザーのマーク……!?」
「な、何事でしょうか……」
『アビドスの対策委員会!今はお互い因縁は棚に上げて協力を求む!』
拡声機らしき音質の声。
対策委員会の面々は顔を見合わせる。
『エックス隊長を迎えに来た!怪我人なんだろう!?この通りだ!引き渡してくれ!!頼む!!』
「ちょ……ちょっと何こよれぇ!?」
遠目でよく見えないが……カイザーのPMC達は揃って頭を下げていた。
「……エックス。一体、なんなの……?」
呆然と呟くホシノに、苦笑しながら伝えた。
「ただの、イレギュラーハンターだよ」
エックスは絶対にホシノを責めないけど、ホシノは抱えちゃうだろうな……。
アビドスとカイザーの因縁は晴れないから、どっちかが譲歩するしか無い状況……。
今更ながらなんて面倒な設定にしてしまったんだ……。