キヴォトスの日常は銃火と共にあるが……エックスはどの様に過ごせるだろうか。
「おはようございます!エックスさん!」
バイクをカイザーPMCの駐車場に停める際、背中から声をかけられた。
「おはよう、キリノ」
いつの間にか、キリノが来ていた。
D.U.に来るといつも会うな、と内心苦笑する。
「今日も元気だね」
「はい!本官はいつも元気です!」
「……何か良いことでも?」
「え、えへへ……実は新しくパンケーキの美味しいお店を見つけまして……」
「へぇ……?パンケーキか。俺もまだそれは食べたことないな」
「本当ですか?では本官が案内します!」
「良いのかい?俺と一緒で」
「はい!エックスさんと一緒……えぇ!?エックスさん、食べられるんですか……!?」
時間差で驚かれた。
「ハハハ……最近ちょっとあってね……何故か食事が出来るようになったんだ」
「は、はぁー……?レプリロイドも色々あるんですね……」
「ああ。本当に不思議だよ」
ちなみにエックスが飲み食いしたものはそのままエネルギーに変換されているらしい。
上限がどれほどのものか分からないが、今のところ空腹と満腹を感じることは無い。
「え、えっと……では……」
「俺は今日報告書を提出したら後は暇になる」
「で、でしたら!夕方頃にどうでしょう!」
「ああ、分かった。またモモトークに連絡をくれ」
「はい!」
――――――――――
「よくもやってくれたな」
理事長室に入ってすぐ。
……理事長は、凄まじい剣幕でエックスに圧をかけた。
「何のことだ?」
「惚けるな!あの人工太陽の件だ!何故アレを小娘どもに明け渡した!」
「アビドス駐屯地にバラしたアレを格納するスペースはない。それに疲弊してる部隊に管理させようものなら今度こそ潰れるぞ」
「何だと……!」
「それに、言ったはずだ。俺は子供たちの味方をすると」
「貴様……!」
「今回の戦闘データだ」
エックスはUSBメモリを取り出し、理事長に投げた。
危なげもなく理事長の手の中に収まる。
「くっ……何が一番腹立たしいか……これだ。貴様は俺に歯向かうくせに利益をしっかり出す……」
「そういう契約だからな」
「はぁ……全く……とんでもない奴を拾ってしまったな……。今日はこれで良い。報酬はまた振り込んでおく」
「お前も律儀だな」
「契約は大人の世界では絶対だ。お前は約束に反してはいない……ならこちらも誠意を示すべきだ」
「そうか」
「ご苦労だったな。今日はこれで良い」
「ああ。それじゃあ」
エックスは、理事長室を後にする。
――――――――――
「あ!エックスさん!」
西日が差し込み、D.U.が茜色に染まる。
エックスは近くにバイクを停めて、キリノと合流した。
「すまない。待たせたかな」
「いいえ!本官も先ほど来たばかりです」
「なら良かった」
「行きましょう!こちらです!」
キリノに手を引かれる。
苦笑しながらエックスも続いた。
「ん?」
エックスの聴覚が、銃声をキャッチする。
「銃声だ……」
「えっ、どこからですか?!」
「この先だ」
「まさか、お店から……」
「……嫌な予感がする」
エックスとキリノは、走り出した。
「D.U.は、ハッキリと治安が良いと言い切れないのが現状です……」
「……?」
「治安が良いというのは……どういう状態なのでしょうね」
「………………」
エックスは思案する。
この世界は、銃火と共にある。
生徒が当たり前のように銃を持ち、喧嘩として弾丸を撃つ。
そして当たり前のように怪我をしない。
「……そうだな。案外この状態なのかも知れない」
「えっ……?」
「誰も怪我せず、犠牲にならず……笑って、喧嘩して、お互い反省して仲直りして。青春って、そういうものなんじゃないかな」
エックスに青春と呼べるものは無かった。
常日頃からイレギュラーと命の削り合いをし、果ての見えぬ戦いの日々をずっと送ってきた。
だが、キヴォトスに来て……生徒たちと出会って。
彼女たちが懸命に日々を過ごそうとしているのを見て。
エックスは、そう結論付けた。
「そうでしょうか……本官は、まだまだ力不足を感じずにはいられません」
「そう思えるってことは、キリノはまだまだ成長できるさ。驕らず、ひたむきに努力する君は……絶対に前に進める」
「え……?」
「例え今がダメだとしても、その意志が、積み重ねが君の背中を押してくれる。だから、前を向こう」
「……エックスさんは……本官の背中、押してくれないんですか?」
「必要なら、かな。今の君は、ひとりで走れる」
「……ふふっ。いけずですね。でも……そうです!本官は頑張るだけなので!」
現場に到着。
エックスとキリノが現場に到着する。
……多くの人々で賑わうスイーツ通りの一角。
「あっ!パンケーキの……!」
店の前で、取っ組み合いの喧嘩をする2人。
お互い銃を抜くのは時間の問題か……。
(……ん?じゃああの銃声は……?)
「何をやってるんですか!往来のど真ん中ですよ!」
「こいつが横入りしやがった!」
「コイツが連れの肩にぶつかっても無視しやがった!」
「………………」
なんともキヴォトスらしいと言うか……。
「……それで?君は何故銃を撃ったんだい?」
取っ組み合いしている2人の傍に居た、1人の生徒にエックスは声を掛ける。
手には、拳銃が握られていた。
「え……あの……私は……人を、呼びたくて」
「……この二人を止めたかったんだね」
「は、はい……」
黒髪の、恐らく正義実現委員会の制服を着た生徒が頷く。
エックスとキリノは二人の間に割って入る。
「離せ!」
「邪魔だ!」
「何があろうとルールは決まっています!それを守らない人は罰を受けて然るべきです!」
「何言ってんだ……うわっ!?」
エックスが、銃を取り出そうとした生徒から銃を取り上げる。
「返せ!」
「駄目だ。こんな所で暴れたら周りに迷惑がかかるだろう」
「じゃあそいつは!?」
「勿論、ヴァルキューレから注意を受けるだろう。それで腹は収まらないかも知れないけど……それがルールだ」
「意味分かんねぇよ……!」
「いつかきっと分かるときが来る。今は分からなくてもいい」
「な、なんだよお前……説教くさいな……!」
「……えっ?」
思わず手を離してしまう。
「エックスさん……?」
「キリノ……俺は……説教くさいか……?」
「何で地味にダメージ受けてるんですか……」
ちょっとショックを受けるエックスだった。
思えば、アクセルも最初はエックスと話すのを嫌がっていたフシがあった。
「「ぷっ……あはは!!」」
さっきまで喧嘩していた二人が、毒気が抜けるように笑い出した。
「そこでショック受けんのかよ」
「ウケる」
「はぁー……悪かったよ、横入りして」
「あぁ?当たり前だろ」
「どうかしてたわ。そっちも、ごめんね」
「え、はい……」
なんだか、解決ムードだった。
「あはは……」
キリノは、笑うしかなった。
このあと、なんだかんだ営業が再開したお店で……エックスとキリノはパンケーキに舌鼓を打つのだった。
「美味しかったですね!エックスさん、また一緒に来ましょう」
「……ああ」
実は本編中以外で一番絡んでるのはキリノだったり。
だからキリノからの好感度もそれなりに高い。
次は誰にしようかな……。