「……カイザーセキュリティに出向?」
ある日のカイザーPMCにて。
エックスと理事長は例のごとく対談している。
「その通りだ。警備部門は業績が奮わなくてな。向こうに泣き付かれた」
「業績が奮わない……」
「警備に失敗している、それにより信頼が得られず仕事が来ない。そういう事だ」
「なるほど……それで?何故俺なんだ」
「世間体のいいお前が指揮すれば落ちた信頼は多少回復する。後は実績を積んで社員を育てる」
「なるほど」
「やるか?」
「良いだろう」
「意外だな。こんな仕事も手を出すとは」
「必要とされているのなら、応えるまでだ」
「その割にはアビドスでは好き放題してくれているな?」
「部下の教育がなってないんじゃないか?」
「言ってくれる……誰のせいだと」
理事長が頭を抱える。
それに悪びれもせずエックスは机に広げられた資料を手に取る。
「ふむ……今の現場はゲヘナか」
ゲヘナだと生徒が相手になるケースも起こり得る。
エックスは彼女達を撃つことは出来ない。
「俺が役に立てるとは思わないが……」
「わざわざゲヘナを経由して美術品をトリニティへ運ぶ手筈だと聞いている」
「……ゲヘナからトリニティへ?」
しかも、美術品と来ている。
エックスは、ある疑問を浮かべる。
「……本物なんだろうな」
「さあな。そんな事は俺が知るはずもない。依頼主に聞け」
理事長が1枚のカードを取り出し、エックスに投げた。
「これは?」
「見覚えがあるだろう」
「……予告状」
慈愛の怪盗からの予告状。
これがあるということは。
「本物……だが何かしらの手段で不当に奪われたって事か……」
「フン。面倒な手合いが居たものだな」
慈愛の怪盗……アキラが、今回の相手になる。
エックスは手を出すことが出来ない。
つまるところ……。
「現場指揮か」
エックスの仕事はそうなってくる。
指揮を執り、社員、傭兵たちで美術品を守り抜けばカイザーセキュリティの能力が評価される。
「責任重大だな」
「しくじるなよ」
「そのつもりだ」
エックスは立ち上がり、理事長室を後にする。
(ゲヘナ、か……)
脳裏に浮かぶのは、表情のコロコロ変わる天真爛漫な少女の姿。
(イブキは、元気にしているだろうか)
稀にモモトークにメッセージが来るものの、基本的にエックスはあまりイブキと連絡を取らない。
と、言うより彼女の周り……特に、議長がエックスの事を快く思っていないフシがある。
……まぁ、エックスらその事を知らないのだが。
エックスはスマホを取り出し、イブキに連絡する。
『ほんとう!?また遊ぼうね!』
すぐに既読が付き、返事が来る。
(遊び、か……この前のあれも、この子にとっては遊びの範疇なのかな)
まずは、カイザーセキュリティガードに合流しよう。
イブキ編スタート。