アレは嘘だ。
……………日常パートになると途端に手が動かなくてぇ……申し訳無い……。
「ふぁー……」
時刻は2330。
エックスにおぶられているイブキが、眠そうな欠伸をする。
「……来てもらっておいてなんだけど……本当に大丈夫なのか?」
「うん……イブキ……おにーさんを助けるの……」
「あ、あはは……」
何故こんなことに……後ろに居るイロハの視線もやや冷たい。
イブキが呼ぶと言ってスマホで連絡を取って暫くすると虎丸を携えてイロハがやって来たのだった。
事情を説明すると協力するとは言われたが……。
『イブキが言わなければ絶対にしませんでしたよ』
とも言われてしまった。
カイザーセキュリティの面々に一応の説明はしたので防衛メンバーに選ばれているのだが……。
(これで、何とかなる相手なら良いのだが……)
とにかく、トラックが出発するまで後少し。
エックスのバイクが先行し、その後ろを第1班、トラック第2班、虎丸と言う布陣になる。
「イブキ、そろそろ虎丸に戻ろうな」
「いや……イブキはおにーさんと行くの……」
「バイクは危ないですからね。ほら、こっちへ」
「うー……」
イブキを抱き上げてイロハに渡す。
エックスはそのまま先頭に立った。
「隊長、時間です」
「よし、行こう!」
各々がエンジンを点火する。
もうどうにでもなれ、そう思うほど半ばヤケクソも良いところであった。
(頼むから、何も起きないでくれ……!)
エックスの願いは、夜空に儚く散っていった。
――――――――――
暫くして。
ゲヘナ領の外が見えた頃。
ここまでは順調だったのだが……。
(………………ん?)
雷雲が、迫って来ている。
(予報が外れた……?しかし、今日の降水確率は0%……)
「セレナ―……ドは居ないんだった」
スマホの中の居候は、本日は不在。
今ごろヒマリの手伝いをしている頃だろうか。
「少ししたら停車してくれ!」
部隊に停車の指示を出す。
「隊長!どうしましたか!」
停車後、トラックの運転手が窓から顔を出す。
「アレを見てくれ」
「ああ……激しいのが来そうですね」
「むにゃ……あ、せんぱい……すごい雲」
「そうですね……ん?何か……おかしくありませんか?」
「おかしい?」
暗雲を目にしたイロハが不審がる。
「あんな雲……ゲヘナでは見ることはありません」
「……なんだって?」
異常気象がこんなピンポイントなタイミングで発生するか。
エックスは思案する。
キヴォトスの気象はその実かなり気分屋かつ地域差が凄まじい。
アビドスは年中暑いし、レッドウィンターなんかはずっと雪が降ると聞く。
「……リコ、応答してくれ」
何の気なしに、リコを呼び出す。
ヒマリやエイミは流石に寝ている時間だ。
『は、はい!あれ、エックスさん今日はお休みでは……?』
すぐに出てくれて、まず一安心。
「モニター、見てるか?」
『はい』
「あの雲を分析してくれないか」
『えーっと、エックスさんの視線の先ですね……えぇっ!?』
「早いな」
『ゔ、ヴィアさん!!見てくださいアレ!』
『ん?エックスからか……どれどれ……げっ!!』
傍にヴィアも居たらしい。
しかし、反応は良いものでは無さそうだ。
『エックス、気を付けろ!アインヘルヤル八闘士だ!』
「………………なんだと!?」
『あの暗雲……おそらくバイルの手による人工的な酸性雨発生装置だ!そしてその管理レプリロイドがいる!』
『名前は……ペガソルタ・エクレールです!!』
エックスは、頭を抱えた。
生徒に手を出せないエックスに、美術品の防衛をさせるのは至難の業なので……ここはアインヘルヤル八闘士に一肌脱いでもらいました。