「トラックに被弾!動けません!」
「クソ!何が……アレは!空に何か居ます!」
「なに……?」
イブキは、うとうとしていた目がスッと醒めるのを感じる。
戦いの気配。
イロハが空を睨んでいた。
「イブキ、いきますよ」
「うん!」
虎丸が動く。
迎撃用意。
「ハハハ!藻掻け藻掻けェ!」
バチバチと帯電……いや、雷の塊の様なものが空から降ってくる。
着弾地点に雷が広がり、カイザーセキュリティの面々は被害を被っている。
「イブキせんぱい、アレ!」
「ええ、敵……ですね」
虎丸の砲身が飛来するシルエットに向けられる。
「射撃開始ィ!!」
「む……!」
カイザーセキュリティの面々がライトで敵を照らし出す。
純白のボディは光を反射し、輝く。
馬のような頭部、背中に備わる翼。
両腕はランス状になっている。
「私の姿を見て、帰れると思うなよ虫けらどもが!」
「お前も、朝日を拝めると思うな!」
「何……ぐあっ!?」
「あっ!おにーさん!」
エンジン音と共に、エックスが戦場へ戻ってくる。
速度を上げ、その勢いのままバイクから飛び出し……空に浮かぶ馬頭のロボットに組み付いた。
「は、離せ!」
「チャージショット!」
エックスが至近距離からチャージショットを放ち、バランスを崩してお互いに落下した。
「……エックスさん、少し虫の居所が悪そうですね」
「わぁ……ワイルド?」
「見ちゃ駄目ですよ」
そのままエックスはイレギュラーの頭を蹴りつける。
「貴様、エックスだな……!バイル様の邪魔をする、イレギュラーめ!」
「イレギュラーはお前だ!ペガソルタ·エクレール!お前を排除する!」
ランスを振られ、間一髪で回避。
その隙に空へ飛翔された。
「はぁぁぁぁぁ!!」
ペガソルタがランスを天に向ける。
何処からとも無く落雷。
ランスに雷が集まる。
「天罰だ!」
「くっ……うわっ!?」
ペガソルタから、四方八方に雷が撒き散らされる。
「イブキ……!」
「わっ……」
「ガイアシールド!」
虎丸に向かって跳ぶ。
岩の防壁を展開し、イロハとイブキを守る。
「おにーさん!」
「下がって!危険だ!」
「でも……」
「イブキ、エックスさんの言う通りです……下がりましょう」
「でも、イブキも一緒に戦う……!おにーさんをひとりにしたくないの!」
「イブキ……」
「だって、おにーさんはひとりで戦うと無茶するんだもん……」
「俺は」
「はぁ……エックスさん。イブキを頼ったのでしょう?最後まで責任取ってください」
「イロハ、責任って言ったって……」
「来ますよ」
「ああ、もう!」
エックスはガイアシールドからグランドダッシュへ切り替え、岩の防壁へタックルして転がす。
突進してきたペガソルタはひらりと身をかわし、また肉薄してくる。
「藻掻け藻掻け!」
「ゼットセイバー!」
突き出されるランスを、エックスはゼットセイバーでいなす。
単調な突き。
だが、空を飛ぶ3次元軌道に加速が乗った一撃はやり過ごすのに苦労する。
「自由に飛ばれるのは、厄介だな……!」
「所詮貴様は地を這う虫けら……!私に敵う道理などない!」
『エックスさん!ペガソルタには氷属性の攻撃が有効です!』
「分かった!ショットガンアイス!」
ショットガンアイスは氷の塊が何かに着弾するとバラバラになり飛び散る性質を持つ。
だが、最初から氷の礫をばら撒けば範囲攻撃となる。
「小癪な……!」
「次は……」
「それ!」
「おわっ……!?」
いつの間にか接近され、蹄を模した足で蹴り飛ばされる。
結構な威力を相殺しきれず、転がる。
そのまま虎丸に頭をぶつけて止まった。
「くっ……!」
「おにーさん……!」
「大丈夫だ!」
虎丸から乗り出したイブキを手で制する。
だが、ペガソルタはランスを突き出し突進してくる。
「発射」
イブキが流石に告げる。
虎丸が火を吹いた。
「当たるものか!」
ペガソルタは素早く身を翻し放たれた砲弾を回避して再度飛翔した。
「このっ……!」
再度突撃したペガソルタをエックスは間一髪で躱す。
高笑いをしながら飛翔し、高度を上げる。
……が、
「イブキ……?!」
イロハの声。
虎丸の上を確認する。
……イブキが、居ない。
「やめて……!」
「なっ、触るな小娘!」
イロハと顔を見合わせる。
その表情はあまりにも血の気が引いていた。
「どうしてこんなことするの……!」
「バイル様がこの世界を手にするためだ!」
「皆で、なかよくできないの……?!」
「貴様らが、邪魔なのだ……!落ちろ!」
「ひ、ゃ……!?」
ランスに組み付いていたイブキが、振り払われた。
「あ……」
声にならない悲鳴。
この高度……キヴォトスに住む人々は平気かもしれないが……それでも、大怪我は免れない。
「「イブキ!!!!!」」
エックスとイロハの悲鳴が重なる。
――――――――――
ディープログにて。
「ふぁ……クリスマスなのに精が出ますね」
「あ?!アロナ!今忙しいから後にしろ!」
生あくびを噛み締めながら、ナイトガウン姿のアロナがヴィアとリコの元へ来ていた。
「ひどい挨拶ですね……先ほど廊下で『メリぃぃぃぃクリスマァァァァス!!』って叫んでいるレプリロイドが居ましたけど」
「あ"ぁ!?このクソ忙しいのに何やってんだヴァリシューラの野郎!リコ!」
「はい!すぐに……!」
「んで、なんの用だよ……!」
「いえ、そろそろだと思いまして」
「あ?そろそろ……あっ!メタルヒーローズが……!」
「来ましたね。丹花イブキと共鳴した姿……どうなるのでしょう」
「……観戦モードかよ!手伝え!!」
――――――――――
翼が欲しい。
落ちていく彼女の手を取るために。
「う、お、おおお、おッ!」
アーマーを装着する。
ファルコンアーマー……だが、あの高さに到達するにはブースターの性能が足りない。
もっと高く、もっと遠くへ。
飛ぶための力が欲しい。
「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
「おにーさん……!!」
エックスとイブキの間で、何かが繋がる感覚。
(……ゼロ?)
その中で、ゼロを感じる。
(また……力を貸してくれるのか……?)
『やっと誰かを頼る事を覚えやがって……遅いんだよ。ほら、餞別だ……持っていけ』
「……ありがとう、ゼロ!」
エックスのファルコンアーマーが輝く。
背中のブースターは大きな翼となり、手足に大きな爪が生え、頭部に大型のフィンが生成される。
白かったファルコンアーマーは、漆黒に染まる。
ファルコンアーマーよりも、早く、自由に空を舞う。
「イブキ!」
「おにー……さん……?」
「もう、大丈夫」
落下するイブキを受け止める。
エックスの外見の変化は終わっていた。
鳥のような姿から、悪魔のような姿へ。
「……かっこいいね!」
『エックスさん。貴方と丹花イブキの紡ぐ絆が新たな力を呼び覚ましました』
ヴィア達との通信に、アロナの声が乗っている。
『これは……フォルテか……!?』
『違います、データ上はゼロさんの力です!』
『名付けて……《アブソリュートゼロ·ゴエティア》それでは、頑張ってください』
『ちょっ、言いたいことだけ言って切』
通信が終わる。
雷雲が近づいてきている。
そろそろ時間が迫っているようだ。
「イブキ、もう君を降ろしている時間が無い。しっかり捕まっていてくれよ」
「うん!」
イブキがエックスの背中にしがみつく。
首に回された手を確認して、エックスはペガソルタへ飛翔する。
「ペガソルタ·エクレール!!」
「なっ……飛んでいる!?情報に無いぞ……!」
「カラミティアーツ!」
「ぐうっ……!?」
両手に備わった爪が、ペガソルタの身体を切り裂く。
反撃で振られたランスは虚しく空を切り、攻撃のたび死角に回るエックスの苛烈な爪が炸裂する。
「くっ……おっ……!?氷属性の攻撃……!?」
「うおおおおおおッ!!」
遂に、振り下ろした両腕がペガソルタの翼を切飛ばした。
「ぬ、うううううう!!バカな……この私が……!」
「終わりだ……!」
落下するペガソルタ。
それに高速で肉薄する。
「クリムゾンエンド!!」
交差した1対の刃が、ペガソルタ·エクレールをX字に斬り裂いた。
「虫けらどもに……!!」
爆発。
その勢いのまま、エックスは着地する。
……遠くの空で、閃光が放たれる。
どうやら、ペガソルタの管理していた装置もリンクして爆散しているようだ。
「終わった……のかな」
「うーん……?お仕事終わり?」
「……終わり、かな……?」
「おつかれさま」
イブキに頭を撫でられる。
くすぐったく思い、苦笑する。
「さて、救護班を呼んで部隊を再編して荷物を届け……えっ」
「あっ」
……トラックの荷台は、空。
これは、
「……アキラ……!」
してやられてしまった。
今年最後の更新もとりあえず終われました。
今回はコマンドミッションより、ゼロのパワーアップ形態アブソリュートゼロでした。
悪魔モチーフ、ゲヘナと組み合わせるならこれしかないなと。
お誂向きに氷属性ですしね。