アレは嘘だ。
結論から言うと、今回の仕事は成功した。
(……アキラ)
あの日、撤収準備をしていた時。
「すまない、電話だ」
周りに断りを入れて、電話に出る。
「もしもし?」
『10分後、指定の場所へ。ひとりで』
「は?何を……切れた」
ただその一言。
直後、ショートメッセージで場所が指定された。
「……すまない、少し出る」
――――――――――
「……居るんだろ」
廃墟の一角。
エックスは指示通りひとりでやってきた。
このタイミングで連絡してくる人物はひとりしか心当たりが無い。
「アキラ」
「……お待ちしておりました」
暗がりから、白い目立つシルエットの少女が現れる。
「何故俺に連絡を?」
「こちらを」
「……それは」
アキラが手で示した方向。
そこには……エックス達が運ぶ予定だった美術品が。
「……どう言うつもりだ」
「これは公平な決着ではないからです」
「決着……?」
「私は、貴方に勝ちたい」
「勝つ、だって?」
「今回の……火事場泥棒の様な勝ち方では意味が無いからです」
「………………」
「次は、対等な戦いを望みます」
アキラは、顔を覆うオペラマスクを外す。
暗い中で爛々と輝く蠱惑的な赤い瞳をエックスに向ける。
「それでは、御機嫌よう」
――――――――――
とまぁ、そんな事を馬鹿正直に報告書に書くわけにもいかず……ペガソルタ·エクレールの襲撃、及び撃退のみの記述となった。
協力してくれた万魔殿には相応の報酬(エックスの自腹)を支払い、イブキにはまた遊ぶ約束を取り付けられた。
(……あの子には、頭が上がらないな)
そして、アキラのこと。
今回は本人の美学に反したからか穏便(?)に済んだものの……。
(結果的に彼女の闘争心に火がついた形になる……また戦う事になるんだろうか)
ただ、エックスには予感があった。
もし、次があるとしてもお互いに決着が付かないだろうと。
(さて、理事長に提出するレポートもこんな所か……)
仕事が結果的に成功として終わったため、なんとかカイザーセキュリティも仕事が舞い込むことになったそうな。
(まぁ、なんにせよ無事に終わって何よりだ)
損害もそれなりに被ったものの、幸いにして死者は無し。
人工酸性雨の影響もあの廃墟一帯に留まった。
『あそこの解体もそのうち手を付けませんとね』
イロハは気怠げにそう言うのだった。
『イブキに免じて、貴方の支援に応じましたが……次、イブキを誑し込むような真似をしたら……許しませんからね?』
全くの誤解である。
「……さて、と。送信……」
ミレニアムの自室のPCから、カイザーへメールを送る。
これで、今回のエックスの仕事は終わりだ。
『お疲れ様です、エックスさん』
「リコか。そちらも夜遅くからお疲れ様」
『いえいえ。こちらには昼夜の概念はありませんし……私もヴィアさんもレプリロイドみたいなものですので』
「なるほど」
『そう言えば……ヒマリさんには報告はどうしましょうか』
「うーん……昼過ぎに済ませておくか」
『そうですね』
「……ん?モモトークか」
エックスのスマホが震える。
送り主は……。
「ミモリか……うん?」
『これを見たら大至急折り返しのお電話をお願いします。貴方にしか頼る事が出来ません』
「……嫌な予感がする……リコ、もう一度百鬼夜行連合学院に向かう」
『分かりました!先んじて情報を集めます!』
「それと、セレナードを呼び戻してくれ」
エックスは戸締まりをして、バイクに跨る。
「……何事も無ければ、それで良いんだが」
と言うわけで今回が正真正銘今年最後の更新になります。
期間が空いたり作者がヘラったり色々有りましたがここまで読んで頂きありがとうございます。
次の百鬼夜行連合が終わればいよいよラストになる予定です。
もう少しだけお付き合いくださると助かります。
それでは、良いお年を。