◇●◇
バスで移動する事数十分、火伊斗達がやって来たのはあらゆる災害や事故の現場を模したエリアが設置された巨大なドームだった。
「「「すっげ━━━!! USJかよ!!?」」」
『著作権とか大丈夫なの?名前⋯』
生徒達は一斉に湧き上がる。火伊斗は著作権を気にする。
すると宇宙服のようなコスチュームを纏ったスペースヒーロー『13号』が現れ説明をする。
「水難事故、土砂災害、火事etc.あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……
(((USJだった!!)))
連れて来られたのが本当にUSJだったので、A組は全員心の中でツッコミを入れる。
「スペースヒーロー『13号』だ! 災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わー! 私好きなの、13号!」
緑谷と麗日が興奮気味に言い、麗日に至ってはキャッキャとはしゃいでいた。
一方相澤は、オールマイトがまだ来ていない事について13号と話していた。
「13号、オールマイトは? ここで待ち合わせるはずだが」
「通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでいます」
「不合理の極みだなオイ」
13号がオールマイトの現状を伝えると、相澤は不機嫌そうにツッコミを入れる。
『オールマイト⋯制限ギリギリ?って何』
耳がいい火伊斗には全部聞こえているとも露知らずに
「仕方ない、始めるか」
「えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」
(((増える…)))
13号が小言を1つずつ増やすと、生徒達は心の中でツッコミを入れる。
すると13号は、自分の“個性”を生徒達に説明する。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の“個性”は『ブラックホール』。どんな物でも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その“個性”でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
緑谷が13号の話を聞いてそう答え、麗日はヘドバンをするかのように激しく首を縦に振った。
すると、13号が説明を始めた。
「えぇ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそう言う“個性”が居るでしょう」
「!」
『⋯⋯』
思わず右肘を触ってしまう。
筒美家の代々引き継いできた個性*1『ライフル』。
髪をネジって弾にすることで遠距離射撃が可能になる。
髪をネジればネジる程威力は増し、頭や心臓を狙って打ったら体を貫通して死に至る。
工夫次第で音もなく殺せるから公安からよく目をつけられていたなぁ、
「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた“個性”を個々が持っている事を忘れないで下さい。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めてる可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では…心機一転! 人命の為に“個性”をどう活用するかを学んで行きましょう! 君達の力は傷付ける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
「以上! ご清聴ありがとうございました」
「ステキ—!」
「ブラボー!! ブラーボー!!」
13号が礼をしながら締めくくると、麗日と飯田は声を上げ、全員が拍手を挙げる
「そんじゃあまずは…」
『⋯相澤"先生"!警戒態勢!』
「!」
なんでこんな時に来るかなぁ??
俺の目が捉えたのは中央の広場の黒い渦。黒い渦がが蠢き次第に大きくなっていく。
すると、渦の中から顔を手で覆った男が現れる。
「一かたまりになって動くな!!!」
相澤は生徒達に向かってかつて聞いた事ない程声を大きく張り上げて叫ぶが、火伊斗以外は状況が飲み込めずキョトンとしていた。
「13号!!! 生徒を守れ!!
筒美、お前の事情は俺と13号は知っている、だから⋯⋯」
『遠慮なくぶっ放していいって事っすよね?』
そう言い右肘からライフルを展開する
『あぁ、よろしく頼む』
するとクラスから声が上がる
「なんだアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!! あれはヴィランだ!!!!」
瀬呂が混乱していると、相澤が叫んだ。
すると、黒い霧のような姿をした男が声を上げる。
予定と少し違ったのか、男は怪訝そうに言った。
「13号に…イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが…」
「やはり先日のはお前らの仕業か…!」
「ほう! ご存知でしたか」
黒い霧のような男の発言に対して相澤が言うと、雄英が自分達の存在に気付いていた事に感心し声を上げる。
すると、手で顔を覆った男が上を向いたまま声を上げる。
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…子供を殺せば来るのかな?」
手を顔で覆った男が言う。
すると今度は切島が口を開いた。
「ヴィランンン!? 馬鹿だろ!? ヒーローの学校に入り込んで来るなんてアホ過ぎるぞ!」
「先生、侵入者用センサーは!」
「勿論ありますが…」
八百万が尋ねると、13号が答える。
すると轟が冷静に現状を分析する。
「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういう事が出来る“個性”がいるって事だな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数クラスが入る時間割…バカだがアホじゃねぇ、これは『何らかの目的』があって用意周到に画策された『奇襲』だ」
『何も考えねぇんならこんなカリキュラムを、盗んだりとかしねぇもんな』
轟が言うと、火伊斗も頷く
「13号、避難開始! 学校に連絡試せ! センサーの対策も頭にある敵だ、電波系のヤツが妨害している可能性がある! 上鳴、お前も“個性”で連絡試せ!」
「っス!」
相澤が指示を出すと、上鳴は“個性”を使って校舎との連絡を試みる。
すると緑谷が相澤に対して口を挟む。
「先生は!? 1人で戦うんですか!? あの数じゃいくら“個性”を消すっていっても!! イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の“個性”を消してからの捕縛だ、正面戦闘は………」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号! 任せたぞ」
そう言い残すと、相澤は一人で敵ヴィランの方へ突っ込んでいった。
すると敵ヴィランは下品な笑みを浮かべながら他の仲間へ声をかける。
「射撃隊行くぞぉ!!」
敵ヴィランの1人が声を荒げると、敵ヴィラン達は“個性”での射撃の準備をする。
『アイツら射撃素人だな。敵の前で露骨に銃身出しちゃだめだろ普通⋯!!』
「ツッコムとこそこかよ」
こっちはライフル Loveだぞ
呑気な会話をしていると広場の方では戦闘が繰り広げられていた
「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったか!? ありゃ誰だ!?」
「知らねぇ!! が、1人で正面突っ込んでくるとは大まぬけ!!!」
そう言ってヴィラン達が相澤を撃ち落とそうとするが、ヴィラン達は“個性”での狙撃が出来なかった。
「あれ? 出ね…」
ヴィラン達がキョトンとしている間に相澤は素早く捕縛武器をヴィラン三人に巻きつけ、捕縛武器を引っ張ってヴィラン同士の顔面をぶつけ合わせて倒した。
すると別のヴィランが倒れた三人に向かって叫ぶ。
「馬鹿野郎!! あいつは見ただけで“個性”を消すっつうイレイザーヘッドだ!!」
「消すぅ~!? へっへっへっ、俺らみてぇな異形型のも消してくれるのかぁ!?」
そう言って4本の腕を持つ異形型の敵ヴィランが相澤の前に立ち塞がると、相澤は異形型の敵ヴィランの顔面を正面から殴る。
「いや、無理だ。発動型や変形型に限る」
そして敵ヴィランの足に捕縛武器を巻き付け、右足を絡め取る。
するとその直後、別の敵ヴィランが背後から相澤に殴りかかるが、相澤は空中で身を翻して回避した。
「が、お前らみたいな奴の旨みは統計的に、近接戦闘で発揮される事が多い」
そう言って相澤が捕縛武器を引っ張ると、異形型の敵ヴィランの身体が奇襲を仕掛けたヴィランの方へと飛んでいき、巨体同士が衝突し合って二人ともダウンした。
「だからその辺の対策はしてる」
相澤がものの10秒程で5人のヴィランを倒すと、手を顔面につけたヴィランが不機嫌そうに首筋を掻く。
「肉弾戦も強く…その上ゴーグルで目線を隠されていては『誰を消しているのか』分からない……集団戦に於いてはそのせいで連携が遅れをとるな…なるほど、嫌だなプロヒーロー。『有象無象』じゃ歯が立たない」
手で顔を覆った男は、顔を掻きながら呟いていた。
「凄い…多対一こそが先生の得意分野だったんだ…」
『おい緑谷ァ!』
「分析している場合じゃない! 早く避難を!!」
イレイザーヘッドの戦いに感心する緑谷の手を火伊斗が呼び、飯田が避難を促した。
だが……
「させませんよ」
13号が生徒を連れて向かった先に、突然黒い霧のような男が現れる。
「初めまして、我々は敵連合。僭越ながら……この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃる筈…ですが、何か変更があったのでしょうか? まぁ…それとは関係無く…私の役目はこれ」
ヴィランが最後まで言い終わる前に13号が指先のキャップを外して個性を使おうとしたが、それと同時に二つの影がヴィランの前に現れた。
爆豪と切島は、同時にヴィランに攻撃を仕掛けた。
「その前に、俺達にやられる事は考えなかったか!?」
「危ない危ない………そう…生徒と言えど優秀な金の卵」
黒い霧が散ったかと思えばすぐに人型に戻り、ヴィランは無傷だった。
「ダメだ! 退きなさい二人とも!」
13号が叫ぶ。
二人が13号の攻撃射線上に入ってしまい13号がヴィランを捕らえ損ねてしまった。
「散らして嬲り殺す!!」
次の瞬間、黒い霧がクラスメイト全員を覆った。
「皆!」
『なんじゃこりゃ、吸い込まれる⋯!』
『チッ、阿修羅みたいな人!これ!』
そういい近くにいた阿修羅みたいな人にトランシーバーを渡す。
これは俺のヘッドホンと連絡するためのトランシーバーだ。状況確認で渡しておいた方がいいだろう。
慌てながらもトランシーバーを取ってくれた阿修羅。
だが、次の瞬間には殆どの生徒がその場から姿を消していた。
霧が晴れ、その場にいたのは13号と、芦戸、飯田、麗日、砂藤、障子、瀬呂のA組6人だった。
「皆は!? いるか!? 確認できるか!?」
「散り散りにはなっているがこの施設内にいる」
飯田が声を上げると、障子が複製した耳で全員の音を聞き取って報告する。
「後これだ。」
「何だそれは」
「筒美が投げて来た。多分アイツと繋がれるトランシーバーだ。」
すると瀬呂が声を上げる
「物理攻撃無効でワープって…!! 最悪の“個性”だぜおい!!」
瀬呂が黒い霧状のヴィランを見て言った。
瀬呂の言う通り、先程切島と爆豪の攻撃が通じなかったばかりだった。
すると13号が飯田の方を見て言う。
「………委員長!」
「は!!」
「君に託します。学校まで駆けてこの事を伝えてください。警報が鳴らず、そして電話も圏外になっていました。警報機は赤外線式…先輩…イレイザーヘッドが下で“個性”を消して回っているにも拘わらず無作動なのは…恐らくそれらを妨害可能な“個性”がいて…即座に隠したのでしょう。とするとそれを見つけ出すより君が駆けた方が早い!」
「しかしクラスを置いてくなど委員長の風上にも…」
13号が指示を出すと、飯田が反対しようとする。
委員長として自分だけがクラスメイトを置いて離脱する事など出来なかったからだ。
すると砂藤が飯田に向かって言った
「いいから行けって非常口!! 外に出れば警報がある! だからこいつらはこん中だけで事を起こしてんだろう!?」
「外にさえ出られりゃ追っちゃこれねえよ!! お前の脚で靄を振り切れ!!」
砂藤につづけて瀬呂も言うと、13号も飯田に言い放つ。
「救う為に“個性”を使って下さい!!」
「食堂の時みたく…サポートなら私超出来るから! する!! から!! お願いね、委員長!!
13号と麗日が言うと、飯田は覚悟を決めたのか力強く頷く。
すると敵ヴィランは13号を嘲りながら霧散していく。
「他に手段がないとはいえ敵前で策を語る阿呆がいますか」
「バレても問題がないから 語ったんでしょうが!!」
そう言って13号は、“個性”でヴィランを吸い込もうとする。
火伊斗の事情はまた今度書けたら書きます